極楽艦隊RPG遊戯議事録

 第15話<銀河帝国より愛をこめて>

第2章 メルカヴァルをさがせ
 降下すべき救助地点は4つ。山岳民族の居住地<林山>(リンザン)、成層圏ステーション<華命>(カメイ)、シェルター<風湖>(フウコ)、海上の豪華客船<連城>(レンジョウ)である。
 危ないところからまず優先的に、ということで一同はレンジョウをめざす。大荒れの大気圏に、<母飛>と傭兵艦隊が降下していく。


GM「『すさまじい大気状態だっっ』突入するやいなや、雷鳴と暴風雨に艦艇がゆさぶられる」
「これがカミナリというものか(笑)。というか知ってるわ」
GM「難易度8ね♪」
リンダ「8ッ!? 4.5しか出せないのよ〜(泣)」
志尾原「少しでも応援しましょう」
リンダ「やれるだけやります! Aのペア」
GM「こっちは3のペア、成功している。
 では、大きな客船が目に入る。数百メートル級の巨大な客船なんだけども」
「200メートルくらいのなら地球にもあるって。クイーンエリザベスとか」
GM「それのでっかいやつだろう、600メートルぐらい。いってみれば海上都市だよ」
八重樫「とりあえず、通信いれましょう」
GM「電子、難易度5」

GM「通じているな、状態は悪いけど」
「こちらは独立艦隊ナデ……ゲホゲホ(笑)」
GM「ガガガー……『メイデイ、メイデイ! こちらレンジョウ、救助をもとむ! 救助をもとむ!』」
リンダ「こちら傭兵隊! 救助にきました。えーと、すぐ乗りこめるように乗員をまとめておいてください!」
志尾原「1ダースごとに束ねておいてください(笑)」
GM「ではすぐドッキング・ベイに接続して、乗員の収容を!」
八重樫「そういうのがあるのか、便利だな〜」

 とはいえ、すさまじい暴風雨の真っただ中である。視界は最悪であり、衝突の余波でレーダーも使えない。雷鳴が轟き、稲光に山脈のような巨大な波頭が光る。咆哮する乱気流に、<母飛>や救援艦隊は姿勢を維持するだけでも大変な苦労を強いられる。

GM「ドッキングするだけでも大変だろうな」
「いやー腕が問われるねー、リンダくん!(笑)」
リンダ「うちらが成功したって、他の輸送船は大丈夫なのかな。何人いる?」
GM「500人っていってた」
リンダ「じゃ、輸送船一隻、うちらの先導で降りるってかんじだな」
「てか、がんばれ輸送船(笑)」
志尾原「最悪の場合、われわれがミスっても輸送船が無事ならなんとか。逆にいえば、我々がどんなに奇麗に降りても、輸送船が操縦をミスれば……ガァン! それっきりなんで」
GM「『いや。輸送船の操縦系統を君らの操縦系統にリンクさせよう』といっている」
「おお、信頼があついねぇ、リンダ・ラ・ロンドくん(笑)」
リンダ「しくしくしく……(泣)」

GM「難易度10ネ♪」
リンダ「10ッ!?」
「そこの縁石のところからハンドルきってねー(笑)」
志尾原「右折のとき、ちゃんと確認してねー」
GM「どうしても(<応援>の台詞が)車になるなあ(苦笑)」

 判定に失敗した。モニターをみながらリンダは叫んでいた。輸送船がよろめき、客船の上部構造物に衝突したのだ。外壁の一部が、ばらばらと嵐の海へ消えていく。幸い、輸送船、客船ともに、損害は軽微であった。
「どうしたっ、この衝撃はなにごとだ!? これ以上浸水したら、本船はもたんぞ!」客船の船長が叫ぶ。


リンダ「突風のために、ちょっと……」
「突風が、高波で、カミナリなんです!(笑)」
リンダ「もう一回判定やらなきゃいけないのー!?」
GM「『なんということだ、巨大な津波が後方に接近しているぞ! あと30分もつかどうか……!』 難易度11ね」

 しかも、みなの応援で出された札は、いざおもてにしてみるとバラバラだった。

リンダ「あ〜〜〜っ!! 8のペア!!」
志尾原「ぜったい無理だ……」
GM「むむむ? 5のペア! 奇跡的に成功しているっ!」
リンダ「しゃあっ!!」

 
注意書きにもかいたことだが、これほど高難易度の判定となると、成功する確率はほとんどない。まだこのときは間違った規則解釈にもとづいていたため、全体的に実質的な難易度がそうとう低くなっていたのである。このてん、注意していただきたい。正しい解釈にもとづくであろう今後、つまり第18話以降は、こんな奇跡はまずおこらない。


GM「乗客の喜んでいる声が無線越しにきこえてくる」
リンダ「ギラ式航宙艦操縦術がきいたんだ! さすがギラ式だ、ピンチに強い!(笑)」
GM「では巨大な輸送船が、これまた巨大な客船に嵐のなか接続して、救助作業を。すんだら、分離して飛び立つ。飛び立つ方はカンタンだろう」

 乗客や乗員は無事に輸送船に収容された。背後から、地響きにも似た振動が大気をふるわせてくる。人ごとのように八重樫がいう。
「津波が接近しているので、早くしてください」
 後方監視モニターにうつっていたのは、天を覆いつくす壁のような巨大津波だった。波高は2000メートル以上はあろうか。それはもはや、太古の神話の一場面をおもわせる非現実的な感覚をともなってさえいた。
「あああああー! やばいーー!!」
 映像をみて呆然とする志尾原たちを、リンダの絶叫が現実に引き戻すのだった。

GM「津波が徐々に接近してきているのがみえる。距離を考えると、その徐々というのは、相当な速度で接近してきてるんだろーなー、というのがわかる(笑)」
八重樫「輸送船にアクセスして、離脱時の出力をあげましょう。強制的に」
GM「難易度2で。……あっ、切り札になってるのか! じゃあ、上手くいっているようだ」
八重樫「乗客が乗り込んだ時点で豪華客船は無視できるんで、客船を土台にして、強制的に……」
GM「反重力は全部カットして、ロケットだけで上昇するかっこうになるね」
八重樫「全員が座席についたタイミングで切り離しを行います。死んでもしりません」
リンダ「最後のその一言はー!」
GM「実際、反重力エンジンは重量をゼロにするから、大気状態の影響を受ける。だからこういう時は、ロケットを使った方がいい。『では、発進を先導してくれ!』」

 リンダは操艦判定に成功、<母飛>と輸送船は無事、上昇を開始した。モニターのなかで、輸送船が巨大な火柱を噴射して上昇していくのが見える。そのすぐ下を、巨大な水の壁が突進していく。あまりに巨大な質量の通過により大気圧すら変化し、<母飛>の機体が揺さぶられる。豪華客船は、一瞬で巨大な波の下に消えた。
「あ、あぶないところだった」リンダは下方監視モニターをみながら額の汗をぬぐった。


リンダ「助けた人たちは、すぐ軌道上にあげるよね。次は山岳民族のところにいくか。でも、メルカヴァルさんに会いたいんだけどなー。さっき救助した人たちに、メルカヴァルさん知ってる? ってきいてみるか?」
志尾原「まず山岳のほうにいきましょうよ」
「次は山岳ー、山岳ー。停車時間は5分です。お乗りのかたは……(笑)」

 リンザンは、この星唯一の大陸にそびえる山脈だ。やはり巨大津波が迫っている。避難民は400人ほど。着陸判定は難易度4、高度があったため多少簡単だった。

GM「(リンダの操艦判定が)上手くいった」
八重樫「よかった。夢見が悪くならなくて」
リンダ「だからー、そういう……(苦笑)」
GM「400人を救助したぞ。これまた衛星軌道上へ」
リンダ「はーい、走らないでねー」
志尾原「『オラ走るんじゃねー!!』とかいってドガガガガ! ってマシンガンぶっぱなしてるんじゃないですか(笑)」
リンダ「まあまあまあ。そのへんはほら、平和主義者だから」
GM「どこがだよ」
「平和主義者マシンガン〜〜!(笑)」

GM「離陸判定、こんどは難易度2」
リンダ「なんとかなるかなあ」
志尾原「ただの右折みたいなもんですね。失敗されたら困りますよねー」
GM「(判定して)……うまくいった」

リンダ「その人たちに、メルカヴァルの居場所をきいてみるよ」
GM「さっき助けたばっかりでしょ。避難民は興奮状態で、話どころじゃないよ。震えたり、泣いていたりで」
「へんじがない。ただのしかばねのようだ(笑)」
リンダ「しゃーねー。よしよし、って小さい子供のあたまでも撫でたいなー」
「よけい大泣き(笑)」
リンダ「そんなことないさ! 子供は本質を見抜くもんさ!」
志尾原「だからよけい……(笑)」
「脅えて声もでない(笑)。ぴたっ。ガタガタガタガタ」
GM「このお兄ちゃん恐いよう〜(笑)」
リンダ「なんでお兄ちゃんなんだ! お前らァー!」

 次の救助地点はシェルターである。ビーコンで場所はわかる。平野部なので一度、津波にやられたようだが、シェルターは無事だった。人数は600人というので、輸送船を二隻随伴させることになった。

GM「同時にリンクさせて、二隻いっぺんに動かせばいい。座標だけずらして」
リンダ「みなさん、こんどは応援たのむねー(泣)」
GM「目的地はすさまじい地殻変動にみまわれて、地面があちこちで割れてマグマが吹き出している。しかも風速数十メートルという暴風雨が吹き荒れている。難易度6ね。
『猶予は40分しかありません!』」
八重樫「応援って何を出せばいいのかわからない」
リンダ「なるべく強い札を!」
八重樫「……責任は、マグマにありますから。」
リンダ「ああー!(泣)」

GM「お、10、11、12のシークェンスになってるね。こっちは2のペアだから、うまくいった。ぶじ降下したぞ。『あと30分です、急いでください!』」
リンダ「さあ皆さん、乗りこんでくださーい!」
GM「『あと20分!』じゃ、離陸判定を。難易度3」

 判定に成功。またも襲来した巨大津波をかすめて、船は離陸していった。リンダたちは、例によって避難民を軌道上の救援ステーションに移送する。

リンダ「(避難民にむかって)みなさんよかったですね! これはウチら傭兵部隊のおかげなんで、そこのとこよろしく!」
GM「そういうこと言わなければカッコイイのになー(笑)」
「そう、これはぜんぶ牙竜提督のおかげ(笑)」
志尾原「いやー牙竜提督、ありがとうございます(笑)」
八重樫「素晴らしいですよね」
リンダ「お前らー!!」

 リンダたちは、最後の救援地点、高層大気ステーション<華命>に向かう。巨大な亀に似た帝国風の浮遊基地で、下部にはさまざまな機器類がむきだしになっているのがみえる。暴風雨のなか、それは黒い城塞のように各所で航行灯をかがやかせている。
「もう反重力エンジンがもちません! 早く救助を!」
 緊迫した声で通信がはいった。

リンダ「200人いるのか。いま輸送船はいっぱいだから」
「はーい、あとは駆逐艦にのせるしかないでーす。一隻に25人のせられるから……」
リンダ「もしかしてこれって……連結ですかー!? 10艦を連結!?」
「駆逐艦で駆逐艦で駆逐艦で駆逐艦でゴーゴーゴーゴー! 駆逐艦で駆逐艦で駆逐艦で駆逐艦でゴーゴーゴーゴー! なんていいにくいんだ(一同笑)」

GM「『よし、電子連結だ』座標入力と反重力エンジン、熱核エンジンの出力バランスなんかを、全部コピーするわけだな」
リンダ「めっちゃ辛いッスよそれ!(泣)」
八重樫「……わたしたち、駆逐されたりして。」
GM「反重力エンジンの限界まで、あと30分です!」
リンダ「みんな応援たのむね! いくよっ!」
「なせばなる、なさねばならぬ何事も(と応援)」
八重樫「でも結局なんにもならなかったりして。」

 みなの応援のおかげで、ギリギリで判定に成功。
 乱気流に機体がかしぎ、リンダたちは座席から放り出されそうになった。暴風雨のなか、空中基地のドッキング・ベイに、駆逐艦の艦隊はどうにか接続できた。<母飛>の舷窓には、ステーションの外壁がぎりぎりまで迫ってきている。艦隊は一斉に隔壁をひらき、大急ぎで避難民を収容する。


GM「ドカドカと避難民が乗りこんでくる。わー、キャー! とかいいながら」
八重樫「あー、狭い。うるさい。」
リンダ「もうー!(苦笑)」

GM「『エンジン限界まで猶予は後10分ですよ! 離陸をうまくやってくれないと!』
『たのむぞ、ホロー』」
リンダ「はいっ、出来るだけのことはやります! 傭兵の名にかけて!」
GM「俺のライフルにかけて! っていえばいいんだよ」

 11のペア同士でひきわけ。離陸に失敗し、ステーションと艦隊はつながったまま、降下していく。このままでは双方とも地表に激突してバラバラだ!

GM「離陸しようとした艦隊が一斉によろめいて(笑)。体勢の立て直し判定を! 難易度4」
リンダ「あーどうしよう! フォースを信じろ、じゃアルフェリッツ・ミリィになっちゃうしなー、ルークもいいけど……。みなさん援護(応援だろ)おねがいっ!」
GM「『コンピュータ照準器はどうしたっ!?』って?(笑)」

 リンダは操艦に成功した。離脱した艦隊が衛星軌道にあがる。宇宙空間は静寂にみちており、惑星上とは別世界のようであった。眼下には青い惑星が、一見、平和にひろがっている。雲海の下では惑星はじまって以来の天変地異がまきおこっているのだが。

GM「『救助活動の成功を、心から祝福させてもらうよ』と、軍の下士官が形式的な祝辞を」
リンダ「『ありがとうございます』これで1200万くるのッ!?」
志尾原「いやここは戦闘空域だし、星を一旦離れないと」
リンダ「じゃ、他の人は帰ってもらって。うちらはメルカヴァルさんを探さないと」
「仙人ならあの地表でも平気かもしれないし、とっくの昔に飛んで逃げているかもしれないし」
GM「『ただいま緊急情報がはいりました!』と報道番組が」

 艦橋に、緊張した面持ちの青年ニュースキャスターが立体映像でうつしだされる。その表情をみていると、脈拍すらかんじとれそうに思えた。
「もうひとつの巨大な彗星核が、<山華竜泉>星系の竜泉2号星へと接近しつつあるようです!」


「実は彗星爆弾なんじゃないのか?(笑)」
リンダ「ここに飛んでくるのか!?」
GM「いや、竜泉2号はこの星ではなくて、ガス惑星だ。遺跡があって、厳重な警備システムがあるらしいんだが。
『まあ。あのガス惑星には人間はすんでないしな。警戒ステーションがあるだけだ。資源採掘用のステーションはあるが、今は動いてないしな』」
リンダ「しかしガス惑星に彗星がぶつかったら、うちらに余波が」
GM「心配はないだろう。外惑星だからな」
「シューメーカー・レビーが木星の地球側にぶつかってたら、大変だったかもしれないけどな(笑)」
リンダ「あとどれくらいでぶつかるの?」
GM「ただいま計算中です」

リンダ「牙竜さんは避難民を助けたから、これでギラ師匠に顔向けできますねえ」
GM「うむ。良かった……」
リンダ「その『良かった』という言葉に色々な意味がこめられている気がしてならない(笑)」
志尾原「じゃ、人も助けたということで、ミサイルを再装填しておきますか」
GM「いや。メルカの調査にいくなら、また惑星上に行くわけでしょ。まだ駄目だよ」
リンダ「メルカの調査にいこうぜー。助けた奴に、『メルカヴァル・ユンカースさんのこと、知ってますか?』って。調査だよな?」
GM「いや、聞きこみだからSOCで判定だな」
志尾原「じゃあ、わたしが適当に情報を集めましょう」
リンダ「ううう(泣)。志尾原たのむ」(リンダはSOCは低い)
「じゃあ、わたしが適当に情報を集めてみようかァ。おい貴様。メルカヴァルというモノをしらぬか?」
志尾原「知ってますよ。イスラエルの戦車」(それはメルカバ)

 辺境星域でよくあるように、ここの住民もまた、部外者に対して人見知りが激しかった。GMは聞き込みがうまくいったかどうか、交渉技能で判定をさせる。まずは、どの地域の住民がメルカヴァルについて知っているか、から聞き込みをせねばならない。
 輸送船の格納庫は臨時の避難所になっていた。鋼鉄の大広間に、毛布や布団、それに圧縮非常食などが雑然とおかれていた。無秩序に、さまざまな動物ハーフがしゃがみこんでいるのがみえる。数百人もの人間がいるにもかかわらず、そこは墓場のような沈黙に支配されていた。たったいま失った故郷を悼んでいるかのようだった。赤ん坊の泣き声、それに負傷者のうめきだけが、格納庫に響いている。


「交渉なら2枚だせる」
GM「難易度3ね」
リンダ「だしゃいいんだろ、出しゃ。ううううう(泣)」
「ききたくないなら無理にきく必要はない。わたしは、こう、コミュニケーションをだな……」
リンダ「犯罪技能つかっちゃだめ? 『ガッ! ちょっとこたえてくれるかなー?』」
GM「やりたきゃやってもいいが、怒られるだろうな」(ていうか警察につかまる)

 ふたりとも判定に成功した。仙人信仰がみられるのは、リンザンの山岳民族に多いという話である。

志尾原「山岳民族のほうにレッツゴー」
GM「炊き出しに列をつくっているのがみえる」
リンダ「部族の長老に会いにいったほうがいいとおもう」
志尾原「じゃ、わかれましょう。長老に会いに行く人と、艦内放送で呼び出す人と、列でさりげなくききだす人と……」
八重樫「……イライラしている人。」
リンダ「八重樫、一緒にいこう(笑)」

GM「牛さんから。電子技能で放送を。難易度2」
「リンザンの山岳民族の皆さん、このたびはご苦労様でした。メルカヴァル・ユンカースさん、この放送をきいていたら、ホロー傭兵分隊のリンダ隊長……」
リンダ「あーーっ!」
「『……いや、ホロー隊長がお呼びです。至急、管制室まできてください』13」
GM「あ、失敗。スイッチ押したら、キーン! ハウリングだ」
志尾原「ハウってるぅー(笑)。じゃ、わたしはとりあえず炊き出しの列なんかに入って」
GM「目につくところでは、小汚いクマハーフの一団がボロボロの衣服を着て並んでいますが」
志尾原「ちょおっとお伺いしたいんですけどねー。仙人のメルカヴァルさんって方、ご存知じゃないですか?」
GM「『……あんた、どこの村のもんだい』そういうかんじ。難易度4で交渉判定を」
「見た瞬間にどこの村の者でもないのは丸わかり(笑)」

 クマハーフの老人は警戒心が強かった。加えて大災害の直後で、精神的にも緊張している。2回の交渉判定に成功し、ようやく志尾原は村民の警戒心を解くことができた。クマハーフの小柄な老人が、ようやく口をひらく。
「メルカヴァルさまは、<蓬莱核>(ホウライカク)にいらっしゃるときいたことがあるのう」


志尾原「蓬莱核? それはどのへんでしょう?」
GM「あれは<浮遊大陸>だから。この星には昔から幾つかある」
志尾原「ラ●ュタは、ほんとうにあったんだ(笑)」
リンダ「長老にききにいこう」
八重樫「……リンダさんにあらかじめ断っておきたいのは。わたし、SOC2ですから。」
リンダ「なにいってんだ。SOC1のわたしよりマシ(泣)」
八重樫「……怒らせるなら、早いうちに。」
「五十歩百歩(笑)」

 放送して、リンダは長老を管制室によびだした。偏屈そうなアルマジロ・ハーフの老人だ。リンダは難易度4の交渉判定にいどむが、失敗する。なにもききだせなかったということだ。

リンダ「八重樫、きいてみる?」
八重樫「なにをきいたらいいのか? わたし、犯罪的行為しか思い浮かばないし。」
リンダ「<うるうる君>でこのヒトをおとしてみない?」
八重樫「そういう媚びるようなモノはつけてませんし、こんなオジサンみたいなむぐっ。偏屈そうなジジ、いやっ。えっとですね。」
GM「もういってよろしいですかな?」
八重樫「結構です。長生きしてくださいね」
リンダ「ちくしょう。覚えてろ」(そーいうことをいうかね君は)

 リンダと八重樫というペアは、考えてみれば交渉にもっとも適さないくみあわせだったかもしれない(笑)。

リンダ「あとで悪口とかいいまくってる(笑)。なんだアイツ〜」
八重樫「アルマジロだから偏屈なんですよ」(そんなことはない)
リンダ「しょせん丸まっとけってカンジィ?」
志尾原「転がせ転がせ〜っ♪」(人種差別だってば)
八重樫「人道的に問題のあるパーティだ(笑)」

 一同は合流した。電子技能で、志尾原が蓬莱核の場所をしらべてみる。大気状態などが悪いので、難易度は7と高め。だが成功した。
 中央大陸の西の平原に、墜落した浮遊大陸の残骸があるとの情報が入った。


八重樫「衝突の衝撃による、浮遊大陸の軌道への影響などを調べてみます」
GM「予測の範囲でしかないが。浮遊大陸は、どうやら現在のテクノロジーをこえた技術で建造されているらしく……」
志尾原「オーバーテクノロジー!」
GM「暴風雨ていどでは墜落するものではないという。全長数キロ以上もあるから、墜落したら大被害だ。これ以上の詳細は、環境の激変のせいでわからない」

 ここの住民は嘘つきが多いですよ。と、メルカを捜しにいこうとするリンダたちに乗員が声をかけた。念のため、もう一度艦内の聞きこみにいく。リンダたちではまずいので、牛と志尾原がさきほどの長老に会いにいく。志尾原はさすがに交渉がうまい。

GM「あー、メルカヴァルね。蓬莱核にいるかもしれんね」
志尾原「蓬莱核の場所はご存知ですか?」
GM「『いやいやいや……』『蓬莱核のは、3000年前に封印されたという金色のアレじゃないのか? アレに手をだすのはまずいだろう』と、脇で村役場の人たちらしいおじさんが」
「(大塚明夫ばりに力強く)アレ、とは?」
GM「『いやいやそれは別物でしょう。関係がないよ』とアルマジロがいっている」
「(さらに力強く)アレ、とは?」
GM「難易度4、SOCで。……あ、失敗してる(笑)。『いやぁ、古い伝説で。気にする必要はありませんよ。大昔にちょっと、ええ。アレがねぇ』」
志尾原「浮遊大陸の場所は?」
GM「『フウコの湖底深くにあると聞いたが』『カイレイ海溝でしょう。海溝の底にあるんですよ』『いやいや、蓬莱核だよ』と、アルマジロたちがめいめい勝手なことをいっている」
リンダ「アルマジロ、嘘ついてんじゃねーのー?」

 むろん、いつもNPCが正確な情報をくれるとは限らない。人生は厳しいのだ!

GM「あっ、さっきの怪しい女!」
志尾原「来ちゃったんですね」
「なんだ、君たちは!(笑)」

GM「『いいか、くれぐれも<アイツ>に手を出すんじゃねぇぞ。あんまり遺跡に手をだすもんじゃねぇんだ!』といってきびすをかえす」
「あっ! ひょっとして、その遺跡って……隣の星にあったりしませんか?」
GM「応えようとしないで、寝ようとしている。『あーもう今日は疲れた』」
「その辺にさ、備え付けの生活資材ってあると思うんだ。ちょっと試し割りを(笑)」
GM「そうくるか(笑)。それも犯罪だけどね。被害者に直接有形力が行使されなくてもいいんで。SOCで成功したら、威圧できたことにしよう。難易度2。……失敗したね、残念」
「残念、引き上げよう」

 リンダは電子技能で仙人の場所を調べる。遺跡がらみなので難易度7と高い。しかし切り札7をだしたので、成功。

 報道番組が告げる。彗星衝突まで、あと16時間。


GM「やはりメルカヴァルの居城は蓬莱核にあるらしい。さきほど墜落したと書き加えられている。かつて中央大陸だった場所に」
「わたしはあのガス惑星が怪しいとおもうな。あの老人たちのうろたえぶりが……。第二惑星をつっついたら、みんなそそくさと寝やがった。やるなら、16時間以内だ」
八重樫「現在展開している艦隊は、第二惑星についてはどうしてますか?」
GM「第二惑星のほうにまでは、まだ展開していないな。ただ駆逐艦などの射程距離内には入っている。外惑星とは呼ばれているが、ずいぶん近い軌道のようだ」

 山華竜泉上にある蓬莱核は、となりのガス惑星にいくよりも遥かに短時間で行ける。1時間でつけるという。一同は、まず蓬莱核にいく事にした。たった今はなれた暴風の惑星に、リンダたちの<母飛>が降下していく。

GM「<母飛>は、暴風の中、かつて蓬莱核があったという中央大陸の上にでる。いまは彗星衝突と地殻変動のせいで、海になってしまっている。
 そうすると、3〜4キロはある巨大な島のようなものが、嵐の海から斜めに突き出しているのが見える。ときどき稲光に浮かび上がって見える」

 着陸難易度は7。
「逆噴射、出力60パーセント!」
「反重力、出力しぼれ!」
 着陸脚が接地する鈍い衝撃が艦にはしる。
 みなの応援もあり、リンダは上手に着艦させた。斜めになった険しい山岳地帯のような場所だった。雷鳴と稲光が、彼方の荒れ狂う水平線を断続的に光らせる。

八重樫「マスター、その前にやってたことにしていいですか? 格納庫のマイクにプログラムして、<メルカヴァル><遺跡>という特定キーワードに反応して集音するように仕掛けておきます」
GM「プログラム組まなきゃイケナイから難しいが……成功している。『あいつら、キンシャラさまを目覚めさせるんじゃねぇかなあ』『キンシャラさまのほこらに触れちゃなんねぇ』とかいっている」
八重樫「銀舎利がどうとか、いってますけど。」
GM「メルカヴァルさまも最近すがたを見せねえし、おかしなことばかりだ。それだけじゃねえ、最近、行方不明の仙人さまが多いっていうじゃねぇか。それにこの彗星騒ぎときたものだ。桑原くわばら……」
八重樫「だ、そうです」
GM「で、いま君らの船は大陸の上にいる」

 舷窓の外、稲光に浮遊大陸が浮かび上がってみえる。山岳地帯だったらしい地形に、直径300メートルはあろうかという巨大なクレーターが3個、口を開けていた。周囲の木々がなぎ倒されているのがみえる。これは人為的なものなのだろうか? リンダたちの脳裏に疑念がよぎる。
 クレータのなかには植物が生えていない。新しいものらしい。
「彗星の破片がぶつかったのか?」窓の外をみて、牛ハーフがいう。
「いやー。わたしは、そうは思わねーなー」
 リンダの声は、1オクターブ低くなっていた。ゆっくりと、みなの耳に染みこませるようにいう。
「仙人が住んでた場所に、新しいクレータがあるってんだろ」そこで黙る。顔をあげ、いう。
「仙人が来たんじゃないのか?」

リンダ「仙人同士の痴話喧嘩とか」
GM「それは単に君の好みだろ(笑)。さて、大陸に降りるのかな。外は風速50メートルの暴風が吹き荒れているぞ」
八重樫「まあ。暴風雨。」
リンダ「外に出る前に、<母飛>のレーダーで周りを調査してみるよ」

GM「クレーターが3個ある。そして……高速移動する熱源体の反応が幾つかある。クレーターの付近に、上空から降下してきたような」
「高速移動する熱源体……?」
GM「規模は数メートル、勢力は5。それ以上はわからない」
「それだけわかれば十分だよ」
リンダ「なんだって?」
八重樫「危険です。外に出たら、間違いなく死にます。」
志尾原「近いんですか?」
GM「接近中だ。まあ、お友達かもしれないじゃないか(笑)」
八重樫「フレンドリーな殺人鬼は嫌ですよね。(一同笑)」

  「IFF、応答ありません。」八重樫がぼそぼそという。
「目視します。わたしにまかせてください」セミロングの企業人が舷窓をみすえ、瞳をひらく。積層レンズとアクチュエータの集合体が、音もなく眼球の中で作動した。遠距離であることにくわえ、天候も最悪である。普通なら目視など出来ない。が、すぐに拡大映像がとらえられたようだ。志尾原はおちついた声で告げる。
「全長およそ4メートル。丸みをおびた小型戦車のようです。赤外線投光器をそなえています、明らかに軍用スペックですね」
「敵だー!」
 頭をかかえるリンダのよこで、牛が胴着を整えている。たくましい腕をぼきぼきとならす。
「では、外で出迎えてやるとしようか!」

GM「みているうちに、そのうち一機が停止した。中から、高さ2メートルほどの鉄の巨人のようなモノが出てくる。ごつい鎧のような宇宙服というか、そのようなものが、ズシャリと降り立つ。銃をもっているぞ。体の大きさに見合った、特大の銃を」
「さあリンダくん。歓迎パーティといこうか?」

<次章予告>
 惑星上の単なる調査の予定が急転直下、ホロー分隊最大の危機となる。敵の正体は? そして、帝国艦隊をも打ち破る最強の艦隊の正体とは、いったい何者なのか!? 次章、ホロー分隊は初めての艦隊戦を経験する!!

 
清水「つづきにょ」


清水「パラフリの総合目次にょ」

清水「ホロー分隊戦記14話から26話までのパラフリ議事録の一覧にょ」

清水「うむッ。ホロー分隊戦記13話までのパラフリ議事録一覧です」

表紙へパラパラ♪
2000.7.28.作成 清水三毛.