極楽艦隊RPG遊戯議事録
第14話<勝者の黄金龍>
第6章 巨竜舞う
遊戯者たちは、連の特殊駆逐艦<母飛>(マーフェイ)の艦艇管理シートを渡され、それぞれの人員配置をきめて書きこむ。母飛は主砲の出力が落とされているので、とくにミサイル要員が重要となる。そのミサイルもふつうの駆逐艦とちがって4発しか搭載していないが。さらに、機動力も低く0.5しかない。操艦担当であるリンダの操艦技能と平均しても、機動判定値は4にしかならない。母飛の性能の低さに一同はそこはかとなく不安を覚えるが、ともあれ、いよいよ発進である。
翼を広げた優雅な水鳥を思わせる巨躯が、反重力エンジンの唸りをあげ、ゆっくりと浮上していく。精緻な竜頭の彫刻がとりつけられた艦首センサー群が起動され、あざやかな走査レーザー光を瞬かせる。
GM
「離陸判定、難易度3。天井のハッチが開いて、宇宙に出ていく」
牛
「(歌)わんだばだばわんだばだわんだばだ♪ 牧場の緑が左右に分かれ〜光るマシンが現れる〜♪」
GM
「(コーラス)あらわれる〜あらわれる〜……。
さぁ続けようか(笑)。ここは衛星だから、主星<火焔山>はすぐそばだ。高度を下げてもらおう。クレーターだらけの真っ白な土地が迫ってくる。難易度2」
途中、リンダが判定に失敗し、母飛は姿勢を崩したりもしたが、なんとか無事に<火焔山>に到着した。
白熱の融けた鉄球を思わせる太陽が中天にかかっている。大気がないため、地形にはまったく摩滅というものがみられない。険しい岩山が連なって、まぶしいほどに太陽光を跳ね返していた。山岳地帯の合間にのぞくわずかな平野には、巨大な隕石孔がいくつも口を開けている。あたかも大地の潰瘍が群をなしているようだった。
リンダ
「どうします連さん?」
GM
「目標の海へ降下してもらおうか。NOEだ、NOEは出来るだろうな? 君ほどの航海士なら」
NOEとは、Nap Of the Earthの略称。鼻先を地面にかすめるほどの超低空飛行、の意味である。隠密行動をする対戦車ヘリなどが行う、きわめて高度な飛行技術である。操縦士にかかる心理的負担は計り知れない。
途中、リンダは操艦に失敗したりもしたが、なんとか山岳地帯をぬけて目的地へたどり着く。
GM
「さて、岩山をぬけるとね。
一面に、真っ赤に融けた金属の海が広がっている。地殻運動のせいだろう、赤い金属の海はゆっくりとうねりをみせている。その上を幾つか黒い点が横ぎっていく……なにかの金属生物だろうね」
志尾原
「まさか鉛のプロミネンスはないだろうな〜」
GM
「その上を超低空飛行で君たちは飛んでいく。
『よし! 手の空いている者、レーダーを頼む。対水上ドップラーモードにあわせよう』」
牛
「手はあいているが……電子技能?(笑)」
ジャンケンの結果、牛が無謀にも(爆)レーダーを担当することになった。
牛
「難易度3か。よしこれだ! 勝負っ!!」
GM
「8か。(めくって)9だあ(笑)」
牛
「残念だった。『レーダーに機影なしっ』」
レーダー担当交代。田宮が次の判定を行う。
GM
「うまくいった。光点が見えるぞ。 『12時の方向に感あり。直ちに急行してくれたまえ』
機動判定を。鉛の海に突っ込むなよー」
リンダ
「12のペア」
レーダー反応があった地点に、一同は到着した。
眼前で突如、鉛の水柱が吹き上がった! 多量の溶融した金属の飛沫が、駆逐艦に襲いかかってくる。なんとか回避すると……。
GM
「かわしたすぐ横にしぶきが、『じゃばじゃばじゃば』。そして巨大な生物がでてくる」
鉛の海の主が、姿をあらわした。胴の太さだけでも優に駆逐艦ほどはありそうな、全長600メートルもの巨大な金属龍だ。金色の胴体が、灼熱の陽光にかがやいている。リンダらの乗っている駆逐艦の4倍以上はある大きさだ。
風間
「かっちょいい〜」
志尾原
「手こぎボートでサメをつるようなもんですね(笑)」
GM
「『うぬ、現れたなあ!』ガッシャン!」
風間
「銛の用意をしてるんだね」
GM
「銛もね、全長10メートルはあるような奴だから。ロケットモーターで推進して、誘導するからね(笑)。おっと、レーダー手、難易度2で判定を」
レーダー担当の田宮が叫ぶ。「もう1つ反応が! 3時方向、上空から急速接近する飛行体! 駆逐艦クラスです!」
田宮
「まあ、予想はつくが」
GM
「しかもIFF、つまり敵味方識別装置に応えない」
田宮
「警告を発します」
GM
「肉眼ではまだ見えないが、たぶんハンタードッグ級かな、というかんじ」
牛
「我々の当初の仕事を全うするためにはだな、連さんのいう通り、竜の周りをうまく飛ぶしかないね」
リンダ
「男の勝負にイキナリ痴話喧嘩をもちこまれるってのも、すごい展開だなー」
GM
「君は気付くんだけど。レーダー波を照射されている」
リンダ
「ロックオンされてますよぉー!」
GM
「赤外線反応確認、ミサイルが発射された模様! 30秒後に弾着!」
志尾原
「さあ撃ち落とすかな!」
GM
「さあ対空レーザー砲に活を入れてくれたまえ」
リンダ
「判定値、9.5です(笑)」
志尾原
「わたし対空レーザー射撃が13なんで(笑)」
GM
「まぢ!?」
志尾原
「……6たして19で、割る2すると9.5なんですよ(笑)」
GM
「十分わかりました(笑)」
志尾原
「しかし〜(手札が良くないらしい)」
GM
「あっ、迎撃できなかったぞ! 『回避! 回避!』」
リンダ
「NOOO!」
GM
「9の3カード」
八重樫
「鉛の海の上でミサイル……確実に殺す気ですよ(笑)」
GM
「(リンダの札を見て)うわ当たった被弾した! 装甲値マイナス32、耐久値マイナス2。耐久値が0になると動けなくなるぞ。
さあ揺れるぞ、みんな回避判定をDEXで。衝撃ダメージの回避難易度2だ。防具では防げないぞ。あ、社長も回避しなきゃな」
志尾原
「社長ォオオオ!(笑)」
全員、回避に成功した。ただひとり、社長をのぞいては(笑)。激しい衝撃に船内を転がる中年熊ハーフ!
GM
「『ウッ』頭から血を流して、『なんのこれしきィ!』」
リンダ
「うわぁ男だあ!(笑)」
GM
「秘書がコンソールから振りかえって、
『社長! ハープーン、ロックオンOKです!』
『よし、発射!』」
八重樫
「社長が戦ってるんじゃないような気が……(笑)」
リンダ
「なんかすげぇイイ秘書だよな。長い付き合いありそう(笑)」
GM
「はううう〜、いい札がないよう〜」
リンダ
「社長!」
志尾原
「がんばれ社長ぉ!(笑)」
GM
「……外したァ!(笑)
『ええいッ、ケーブル切り離し! 次弾装填ッ!』
なにしろ銛は10メートルあるから、装填に1ターンかかる」
いっぽう、敵駆逐艦はいよいよ接近してきた。社長を狩りに専念させ、リンダたちは敵艦の迎撃を試みる。窓のすぐ側を通過した敵艦のエンジンノズル形式などから判断するに、ハンタードッグ級らしい。志尾原が対空レーザーで射撃するが、素早く回避されてしまう。
敵艦はリンダたちを挑発するように、そのまま前方へ飛んでいった。いっぽう社長と秘書は。
GM
「ようやく当たったぞ。
『発射ァアアア!!』『命中しましたぞ社長!!』
と、秘書が嬉しそう(笑)」
リンダ
「苦労してるのね(笑)」
モニターの中、巨大な対艦ミサイルのような銛が、金色に光る竜の胴に突き刺さった。刹那、青白く光る雷電光が網の目のように竜の全身を駆け巡る。
ただの一撃で、竜は昏倒した。長大な巨躯が鉛の海を割って倒れこむ。天空にまで届く城壁のような真紅の津波が、対になって左右にまきおこる。
リンダ
「麻酔銃か!」
GM
「そう、金属生物に対してある程度の電圧の電撃は麻酔として作用する。これなら奥さんも怒ることがないと思ったんだろうな」
リンダ
「なるほどなるほど、そういうことか。よかったよかった。『やりましたね、社長!』」
GM
「『うむッ、君たちのおかげだ! ありがとう!』ガッシと握手している」
八重樫
「……社長。記念写真とっていいですか(笑)」
志尾原
「みんなで記念写真だあ♪」
船が大きく揺れた。レーダー画像が真っ白になっている。
「レーダーで状況確認できない、誰か第二艦橋へ行って肉眼で確認してきてくれ!」
秘書が叫んだ。志尾原が走る。ハンタードッグ級と同様、この艦も感知器が故障したときのためにガラス張りの第二艦橋を備えている。ふだんは対空レーザー砲塔として使用されているものだ。
GM
「20メートルくらいある大きなマシンが、でかい斧をもって船体を殴りつけてるんだけど(笑)。確かに、昨日みた作業機械に似ている」
志尾原
「こっちからの攻撃方法は?」
GM
「対空レーザーは俯角をとれない、自分に当たっちゃうから。ふつう、戦闘機とかはそんなに接近してこないからね」
八重樫
「その機械、上に取りついてるんですよね? 落としちゃいましょうよ、背面飛行で」
GM
「その黒っぽい翼をもったロボットをみて、社長が、
『くそ、海賊どもめあんなものを持ち込んでいたのか!』とうめくんだな」
志尾原
「海賊? ということは、殺戮オッケイ♪」
リンダ
「殺ってイイってことやね」
牛
「海賊ってことは免罪符同様だから(笑)」
GM
「とりあえず会議が長すぎたので(笑)、ダメージ30、耐久値マイナス2。ガツーン!」
リンダが敵作業機械を振り落とすべく、背面飛行に挑戦する。難易度4。
GM
「うまくいった! だが、離れていない。『艦にアンカーを打ち込んでいるようです!』」
GMはレーダー判定をさせる。田宮は難易度2の電子技能判定に失敗してしまう。何も気付かなかったことになる。
艦橋の真正面に、突如としてもう1機の人型二脚機械が出現した。モニター全面に広がる巨大なセンサーヘッドに、リンダたちは息をのむ。
リンダ
「張り付いてんの!?」
GM
「ていうか次の瞬間にメインモニター潰されたからよろしく」
牛
「ガッシャーン!」
GM
「ちょい待ち、通信が入る。メルリアナさんなんだけど、
『ひょっとしてそっちのほうに何か飛んでいかなかったかしら』」
リンダ
「ナニわけわかんねえこといってんですか! こっちのほうにゃワケわかんないパワードスーツがとりついてんだ、いったいどういうことだオイッ!」
GM
「作業機械のつもりだったのに、あいつらが契約を守らなかったんですよ!」
リンダ
「あいつらって誰ですか」
GM
「私たちが土木作業を請け負わせた企業だったんだけど、ダミーだったようで」
リンダ
「はああ〜!」
GM
「元・奥さんは、『ここまで邪魔をするつもりはなかったのに、こんなことになって……』と謝っているよ」
リンダ
「おお、よしよし、イイかんじだ」
GM
「『しっしかし! この事態は何とかしなければ!』と社長が言っている」
志尾原
「あの、スーツ着て、上半身だけ(体を)外に出して対戦車ライフルで撃つことできますか?」
<しきがみおえど>のスーツは宇宙服にもなるのである。
熊ハーフが言う。「よし、攻撃機を出そう。操縦してくれるな? ホロー・チャージ……、いや。リンダ君と呼んだほうがいいかな?」
リンダ
「なんで名前しってるのー!?」
GM
「前の前の代の傭兵ギルド会長でもあったんだよ、このわたしは」
リンダ
「はああああ!?」
GM
「かねてから、ギラ殿からこのことは頼まれていた。君に、あの戦術攻撃機を与えよう!」
リンダ
「はああ……それ、どこにあるんスか」
GM
「貨物庫に来たまえ。例のブラックボックスである電子回路で起動させ、カタパルトで射出する!」
牛
「行ってらっしゃい。その間、操縦を誰がするかだな」
リンダが格納庫へいそぐ。薄暗い照明の中で、明らかに戦闘機や攻撃機とは違うかたちの巨大な機械がうずくまっているのが目に入った。
それは、巨大な機械の竜とでもいうべきものだ。10階だての建物ほど、全高30メートル、全長40メートルはあるだろうか。頭部に2つの角、右腕には3本づつ巨大な突起が飛び出している。リンダはそれを知っていた。いや、公国人なら誰でも知っているだろう。去年の<サイバードラグーン>前大会で優勝した機体、<大角>(ダージャオ)である!
リンダ
「乗りこみます!」
GM
「中に入ると、宇宙船と戦車のコクピットを足したような複雑さだ」
牛
「まあ、戦う前に落ちたりしないようにね」
GM
「よし、投下する。途中でブースターに点火しろ! エンジン系統も2系統あるから気をつけろ!」
いっぽう志尾原は、宇宙服を着てハッチから身を乗り出し、人間砲台となろうとしていた。牛も単分子剣を片手に宇宙服を着こんだ。「以前、全長10メートルのシャコミュータントを倒したこともある!」と、生身で巨大な人型歩行機械に戦いを挑む決意だ。
リンダ
「おとこだあー!(笑)」
GM
「対戦車ライフルも、オイルが蒸発するまでの1、2秒くらいは撃てるだろう。それ以上やると誘爆するから気をつけて」
志尾原
「対戦車ライフルを失うのも嫌なので、1発だけ撃って入りましょう。とりあえず正面にくっついている奴を」
田宮
「あの。わたしも撃ちたいんですけど、対戦車ライフル」
リンダ
「レーダー見ろよ!(笑) さすがに、見ておかないと死ぬってことぐらい……」
GM
「(判定して)ていうか気付いてないしー。ガツーン! 機体が大きく揺れて、『突入用ドリルを挿入されました!』」
リンダ
「やべー! さっさと射出してください!」
GM
「ドカドカドカと足音が迫ってくる」
牛
「なに、足音が迫ってくる!? だったら、わざわざ外に出なくても良いではないか!(笑)」
GM
「よし、リンダ君。射出するぞ!」
リンダ
「お願いしますっ!」
重いが鋭さのある振動が走りぬけた。<大角>直下の格納庫扉が左右に開く。制御卓の模式図のなかで、<大角>を意味する画像記号から支持架を模した記号が切り離されたのがみえた。同時に、リンダの身体が負の荷重によって座席から浮き上がりそうになる。モニター内で、すぐ下に真っ赤な鉛の海面が急速に迫ってきている。自由落下状態だ。リンダは奥歯をかみ締める。重力制御装置でも相殺しきれない荷重がかかり、ハーネスが両肩に食らいつく。
「海面まで60、50、40……」人工知性が発する整った女性の声に、
「いまだ、メインエンジン出力全開! 高度をとれ!」熊ハーフの野太い声が割りこんだ。
GM
「ブースターは最初から出力全開に。背中と足首についてるんで。機動判定値で難易度2」
リンダ
「5!」
GM
「うまくいった」
模式図の中で、<大角>の主反応炉に「出力全開」の金華文字が光る。今度はいままでとは正反対に、座席にめり込まんばかりの荷重がリンダを押しつぶそうとする。装備された全噴射孔から、激しい勢いで核融合ジェットが吐き出されているのだ。巨大な機械竜が、いままさに生命をふきこまれ、<火焔山>の空へと舞い上がっていく。
側面モニターに、真下に過ぎ去っていく母艦の姿が一瞬だけ映った。瞬時に高空に達したリンダは操縦桿をひねり、上空から駆逐艦<母飛>の姿を確認する。
リンダ
「近接戦で叩きます!」
GM
「右手の兵装を使え。核ペレットでそいつを射出する!」
リンダ
「使用禁止武器ッス!」
牛
「これでまた、犯罪者としての履歴が一段と……(笑)」
GM
「母艦の上に着陸してもらおうかな。マイルドにやらないと、中にいる牛さんたちが大変なので(笑)。
おっと、その前に3機め(の敵機)がビーム・ライフルで撃ってくる。Bukk−chuuuuuum!!」
リンダは慣れない操作系統をあやつり、メーザーの光条をかわす。
GM
「(リンダは上空から見て)さっきの駆逐艦が<母飛>に接舷しているのに気付くね」
志尾原
「もう接舷してるのかあ!」
リンダ
「駆逐艦には奥さん乗ってないよね?」
GM
「奥さんが乗ってるのは、さっき通信があった地質調査船のほうだ」
田宮
「ということは、いま何がとりついてるんだ?」
八重樫
「メカが2機と、船が突入ドリルを打ち込んでる」
田宮
「スゲェ(笑)」
GM
「メッタ打ちですよ(笑)」
リンダ
「さっさとそいつら振り落とさないとな」
GM
「じゃ、近接戦闘モードに移行する。リンダの生の電子技能で判定を。難易度2」
リンダ
「電子、切り札!」
GM
「いっぺんに成功したことにしよう。コントロール・スティックが手を離れて、……ほら、仮想現実のグラブがあるじゃん、ああいうかんじのが手足に。その中にスティックがある。で、椅子が、ガシャンと持ち上がって……」
リンダ
「ガンダムファイトだっちゅーねん!(笑)」
牛
「(しゃがれ声)今日は、リンダがついに、初めてのモビルファイターになる日となりました。今日の相手は、黒いロボット。いったい鉛の惑星でどのような戦いが繰り広げられるのでしょうか。それでは皆さん、ガンダムファイト、レディ・ゴーッ!(笑)」
八重樫
「かなり乱雑ファイトってカンジっすよね(笑)」
この時点で、<大角>は母艦<母飛>の上部甲板に降りている。
黒い人型作業機械を前に、巨龍が牙の並んだ顎をあける。機械の怒号をあげ、身構えた。真っ赤な海面の照りかえしが、2つの巨大な兵器を戦いの色に染め上げる。
GM
「リンダさんのドラゴンが吼えて。乱戦だよね(笑)」
志尾原
「けっきょく宇宙服きちゃったところまできてるんで。じゃ、外はやるんで、中はお願いします!」
リンダ
「さっさと一撃でふっ飛ばさないと、船に影響悪い!」
GM
「機動判定値でイニシアティブをとろう。……2のペアか、(リンダが)とったとった。じゃ、右手の銛で一気に」
リンダ
「11の3カード。俺のこの手が真っ赤に燃えるゥ!」
GM
「<メガ・ハープーン>のダメージが30で、それが倍になるから60か(機甲戦闘なので)。じゃあね……」
<大角>の右手には、宇宙捕鯨用の巨大な銛が装備されている。その内部で熱核ペレットが炸裂する。射出された30メートルほどの銛が、敵・人型兵器の腰−−コクピットがあるとおぼしき場所−−を串刺しにした。火花と装甲鈑が敵機の後ろに飛び散る。
刺さった銛が、白熱した輝きを帯びた。次の瞬間、敵機が粉々に爆発炎上する。幾多もの破片が、甲板の上で飛び散り、騒々しい振動を内部につたえた。
GM
「……敵ロボットを粉々にふっとばす」
風間
「ほおお〜!」
リンダ
「本体は大丈夫なんですねっ!?」
GM
「大丈夫だ。安全に核ペレットの排莢は済んでいる」
牛
「排莢(笑)。それが船の上に、ガアンって(笑)」
GM
「そうそう、ギミックがあるんだ。<大角>の右腕の後ろに、ガシャンと放熱ロッドが1本つきだす」
志尾原
「くっついてるもう一機のは殺りますんで、上空のをお願いします!」
牛
「殺りますんで、って……、コレとアレが、同じ戦力か(笑)」
GM
「小さいから、志尾原には気付かないだろうなあ。撃っていいよ」
志尾原
「12の切り札です♪」
GM
「こっちは1枚なんで、差が11枚。プラス32ダメージ(火力値)か! じゃ、ロボットにかなりのダメージを与えた。右足が吹っ飛んだ。が、ロボットが振り返り、レーザースキャナーで君をみる」
志尾原
「『あ。』って、お互い目があった(笑)」
GM
「刃渡り7メートルあるヒート・アックスを志尾原に投げつけてくるんで。真空中なので、ぶんぶんぶんという音が聞こえないのが残念だね。当たったらちょっと痛いから、真面目に避けるように」
リンダ
「ちょっとじゃねーよっ!」
GM
「はい、Aの2カード」
志尾原
「え、そんなもんなんですか。7カード(笑)」
GM
「君の後ろで対空レーザー砲台がまるごと斬りとられて落ちていった」
リンダ
「あ〜〜〜っ!」
八重樫
「この船、もらうはずだったのに(一同笑)」
もう一機の巨人兵器が黒い翼をひろげ、上空から突っこんでくる。目標は甲板上にいる<大角>だ。巨人兵器は急降下しつつ、レーザー機関砲で掃射する!
GM
「2カード」
リンダ
「機動判定だよね。6、7、8!」
GM
「お、回避したか。じゃあ、<母飛>にボコボコボコ! と穴があく。船の装甲値マイナス4(笑)」
リンダ
「あ〜っ、しまった! 受けときゃよかったかも!」
牛
「我々が受けとるのはスクラップか?(笑)」
いっぽう、<母飛>船内では、乗りこんできた武装集団と、牛・田宮が通路で接敵していた。敵は、ライフルと抗弾服を装備した海賊どもが6人である。牛たちにとっては、もはや見慣れた敵である(笑)。
GM
「で、そいつらがライフルを乱射してくる(笑)。『死ねッ、ホロー傭兵分隊! お前らの首に賞金が懸かっているんだ、<アグニの牙>によってな!』」
牛
「そりゃ〜懸かってるだろうな(笑)」
GM
「6人いる。でたらめに攻めてくるよ、低級な海賊なんだろう」
牛
「6対2か」
八重樫
「てゆーか……、どうするよ、オイ」
社長と秘書は、牛たちの後ろの艦橋にいる。海賊が発砲したら、まずいことになる。通路の幅は2メートルなので、アサルトライフルなら<跳弾効果>が望める。
1ターンめ。最初はフルオートで撃ちたがっていたが、田宮はけっきょくセミオート射撃を選ぶ。切り札6による射撃で、1人の海賊の眉間を撃ち抜いた。海賊は脳漿を撒き散らしながら仰向けに倒れる。
GM
「次はリンダか。上空からロボットがつっこんでくるんだけど」
リンダ
「殺るしかないでしょう。メガ・ハープーンで」
GM
「突っ込んでくるから、近接距離になるかどうか? 飛んでるんだぜ」
リンダ
「飛んでるんなら、撃つよ。メガ・ナパームならいいんだね?」
GM
「そうそう。戦術核爆弾を反応させてX線レーザーに変換するという武器サ。1発しか撃てないからね、中が融けちゃうから」
リンダ
「ああ、そう(笑)。撃ちます! 4の3カード」
牛
「ここにきて急に目がよくなってきた(笑)」
八重樫
「ファティマとか乗っててほしい機体だな〜」
極太の白熱光の柱が<大角>の左腕から放たれた。急降下してくる敵・巨人兵器の胴体の真ん中が消し飛ぶ。反応炉が誘爆したのか、すぐに全身が大爆発をおこす。燃えさかる金属片が、流星雨のように<大角>のまわりに降り注いだ。
リンダ
「なんて燃える情景なんだ」
GM
「で、破片が母艦にもガンガン当たると(笑)」
リンダ
「あ〜〜〜っ!!」
GM
「『よし、左腕部を切り離せ!』社長が言ってる」
操艦担当の八重樫の手番である。八重樫は機動判定にいどみ、敵駆逐艦をふりほどくべく<母飛>を急加速させる。判定は成功、突入用ドリルは抜けた。
なお、GMはきっちりと、甲板上の<大角>が振り落とされなかったかどうか判定をさせた。結果、<大角>はおっこちた(笑)。
GM
「『バーニア全開!』機動判定、難易度2。成功したか、じゃ<大角>は飛びあがったと。次は牛さんの番だな」
牛
「幅2メートルの通路に2人づつ並んでて……5メートル離れてるの? じゃあ<複数行動>(で殴るの)は無理だな。これで走ろう」
牛は走り、残りの札で殴る。切り札10。一撃で海賊はひしゃげ、たおれる。ライフルが床に転がる。
志尾原
「さ〜て、きたきたきた! 撃ちます。12枚です♪」
GM
「こっちは切り札6だから……なかなかのダメージだ、腕の装甲鈑が吹っ飛んだぞ。しかしそいつは空に飛び立って、<大角>へ向かっていく」
空戦で、機動判定を交互にやらせてドッグファイトらしく演出してみたりした。
<大角>の背後をとろうとする巨人兵器だが、リンダは華麗な操縦で後ろをとらせない!
いっぽう、艦内の戦闘。海賊のひとりが、目の前の牛さんをあえて無視して(笑)、田宮をライフルで撃つ。装甲で軽減されてダメージ1。二人目の海賊は牛さんを撃つ。
GM
「クイーン」
牛
「5、6、7のシークェンス」
GM
「あ、かわしてる。すごいな。3人目の海賊は……おっと、八重樫さんを狙う。お、ラッキー。スペードの5があった♪ はい、スペードの5」
牛
「やべえ、よりによってそこにそれを!(笑)」
攻撃を回避できない場合でも、なるべく多くの札を出した方が良い。そのほうが<大失敗>によるダメージを少しでも軽減できるからである。
八重樫
「回避ってDEXですよね。3のペア」
GM
「差が3枚で、ダメージが6になる。急所に当たってる」
八重樫
「てか……、死にそう?(笑)」
操縦席ごしに背中からライフル弾を受け、血を吐くサイバーOL! ダメージはボディゲージの5にまで達してしまった。重傷である。
八重樫
「……ハープーン用意です、社長」
GM
「えっ、いやさっきので最後なんだが(笑)」
その後、牛と田宮が艦内の海賊を一掃した。
いっぽうリンダは、必死に<大角>を操縦していた。母艦の上空で、巨大な兵器がめまぐるしく戦闘機動をくりかえし、互いに有利な位置を占めようとする。空戦の最中ではメガ・ハープーンは使えない。そもそも空中で敵機に接触したら墜落してしまう。
リンダは仮想現実手袋をにぎりしめ、操縦桿のひとつをひっつかむ。主砲の引き金に指をかける。敵機が電子照準の光円に捉えられた。発射許可の記号がヘッドアップディスプレイに光る!
リンダ
「主砲うちます、8ペア!」
GM
「ダメージ10か。ちょうど墜っこった。今ので大爆発をおこしてバラバラになったね。ズガアン! 翼なんかくるくる回って落ちていく」
敵駆逐艦は、虎の子の巨人兵器が全機撃墜されたのをみてとったか、即座に逃走していく。距離ランクは3だったので、<母飛>が追いつくには合計3+2+1=6回もの機動判定に成功しなければならない。八重樫はやる気がないらしく、いい札がでない。けっきょく、追跡をあきらめて<母飛>は戻ってきた。
八重樫
「最後の最後までやる気をみせなかった(笑)」
リンダ
「八重樫っぽい(笑)。『あ、戻ってきた。収納してもらいたいんですけど』」
GM
「着艦か、これがまた難しいんだな。もちろん誘導はあるけど、最終的にはパイロットの腕が問われる。逆噴射とスラスターを上手く使ってね。尻尾と脚をうまくひょっ、と上げて。難易度4にしておこうか」
リンダ
「さすがに尻尾はもってないからなあ、どんな感覚かわかんねーしな。3のペアっ!」
八重樫
「しっぽ……」
<母飛>の腹が左右に開く。リンダは慎重に、電波誘導と目視による有色灯を見比べながら機体をもっていくが……、
格納庫扉に接触してしまった。はずれた格納庫扉が鉛の海に落ちていく。
リンダ
「あ〜っ、またやっちゃった!」
GM
「<母飛>と<大角>にそれぞれ装甲値マイナス10ね。衝撃もあるけど、(乗員への)ダメージはいいや」
八重樫
「八重樫の怒りゲージが大分たまってきてるんですけど。いかなる戦闘よりも着艦が難しかった(笑)」
次の判定で<大角>はなんとか着艦した。支持架が自動で巨大な機械竜の身体を固定する。しかし扉がないので、格納庫内は真空のままだ。むろんリンダは<大角>操縦室から出られない。彼女は<母飛>が宙港に戻るまで、ずっとモニター越しに格納庫のキャットウォークやら配管やら機械装置をむなしく眺めていた。
途中で舵手交代。志尾原の慣れた操艦で、<母飛>は宙港に無事、降りた。
GM
「宙港のハッチが閉じる。空気が注入される。タラップから降りてね。だいぶ母艦はボコボコになってる。あちこち焦げてるし、裂けてるし(笑)」
リンダ
「ゲフゲフ! いや〜ほんとに、やっぱ海賊は許せませんね、こんなに船をぼろぼろにするんですから、やっぱ悪ですよね!」
GM
「わたしは君たちに無償でこの船を贈与しようと思っていたんだが……」
リンダ
「が!? がですかッ!?」
GM
「……ちと不安になってきたなあ(笑)」
リンダ
「そ、そんなっ!?」
GM
「まあしかし、他でもないギラ軍曹の頼みでもあることだし……」
リンダ
「あの、すみません。1つだけきいていいですか? あのー、ギラ軍曹とはどれぐらいのお付き合いで?」
GM
「いや、別につきあっているわけではないが。代々の傭兵ギルド会長にはすべからく彼女の息がかかっているのは当然のことで」
リンダ
「『代々……! 何歳なんでしょう師匠……!』心の中で思っておく。口には絶対ださない(笑)」
GM
「『若者よ』ぽん。肩に手を。『触れてはいけない謎もあるものだ』」
リンダ
「『そうですね!』(笑) 一緒に遠くを見つめていよう」
八重樫
「……医者はどこだ?」
地質調査船も無事に戻ってきた。息子と妻が連のもとに駆け寄ってくるのがみえる。どうやら仲直りしているようだ。リンダは聞き耳をたてる。
GM
「奥さんに謝っている。『すまなかった。あの機体を譲るにふさわしい者を探さねばならなかったから……。狩りのほかにそれが目的だった。まあ、現時点ではかれらが最高のパイロットだろう』」
リンダ
「現時点では(笑)」
八重樫
「3ヶ月後にメールが届いて、『よりふさわしいパイロットが見つかったので返品たのむ』(笑)」
連一家は無事によりをもどした。幸せそうな笑顔をうかべて語りあう父子、そして夫婦のすがたが、戦場の匂いさめやらぬ<母飛>を前に明るく映えていた。
リンダたちは、<母飛>をドックにいれて検査してみる。<母飛>全装甲値150のうち、81点も減少していた。駆逐艦の主砲10発ぶんである。
八重樫
「それはそれでいいとして。リンダ・ラ・ロンドさんによる破壊点が19点あります」
リンダ
「エッ、数えてるのっ!?(一同笑)」
八重樫
「まず敵機破壊による破片による被弾。同被弾。最後はハッチ破損による、全19点」
牛
「ダメージの25パーセント、そして全装甲値の1割を仲間の手で(笑)」
とりあえず、<母飛>と<大角>をホロー分隊は手に入れた。しかし修理費も、給料も連はくれなかった。これだけの兵器を無償で贈与したのだから、当たり前である。
志尾原
「最大の問題は(収容所に入れられる)前の金額ですが……」
GM
「いちおう残しておきなよ。そのうち請求できるかもよ」
志尾原
「はー、その程度の金額でしかないんですね」
リンダ
「タントアポロさんを捕まえたらまずはカネを稼がせたい。それよりも、
『連さん、ありがとうございました』」
八重樫
「ありがとうございました。修理費まで出していただいて……」
リンダ
「いや、それは(笑)」
GM
「『わたしの傭兵ギルドでの名前は吼 堂山(ホウ ドウザン)という。覚えておいてくれたまえ』サイバードラグーンの名パイロットでもあったという」
リンダ
「修理するのに幾らぐらいかかるの?」
GM
「装甲値1点で10万ガメル」
リンダ
「じゃあ、わたしがそのうち皆さんに絶対払うということで、とりあえず許しておいてね」
志尾原
「いやぁまあ、しょうがないでしょう。みんなで払いますよ」
田宮
「海賊の武器とかはもってていいんでしょうか。ただのライフルでしょうけど。こう……、比較的きれいに殺された人とか、いるじゃないですか」
リンダ
「イヤな表現だ、こいつ!」
田宮
「いやー、武器とか集めてるだけなんで」
GM
「レクシーさんと話あいそうね(笑)。好きにしてちょうだい」
リンダ
「その前に船の中の死体さっさとかたずけて」
GM
「血と内臓の臭いが残ってるからなー」
牛
「けっきょく今回の敵が誰だったのか、最終的にわからなかった」
リンダ
「またかい。アグニの牙?」
牛
「推測にすぎん」
GM
「じゃあアサルトライフルは返して。田宮さんが死体からガメたライフル6挺、売れば60万ガメル」
田宮
「一挺は自分でもってる」
志尾原
「5点ぶん、装甲の修理にまわしましょう。……リンダさんがぶつけた分すら直ってないですね(笑)」
GM
「いや、もう出港だから、<山華竜泉>で売ることだね。経験点は、うーん。75点にしよう」
新たな母艦に加え、ホロー分隊は強力な特殊攻撃機まで手に入れた。しかし今その母艦は、宙港に駐機している船のなかで最も鉄クズに近い航宙船となっている。現在の分隊の金額では、損傷の1割しか直せない。<山華竜泉>では大規模な戦闘や天体規模の災害がまきおこっている(らしい)というのに、はたしてこんな船で突入して大丈夫なのだろうか。リンダたちは非常な不安を覚える。
「君たちの航海に幸あらんことを!」
宙港を離床する<母飛>を見送って、モニターのなかで熊ハーフが傭兵式の敬礼をばっちりきめてみせた。片手を操縦桿からはなし、リンダも敬礼をかえす。
新たな船の新たなエンジンの響きのなかで、リンダはモニターに広がる星空へ目をやった。
ホロー分隊戦記 第14話状況終了
追記
:八重樫六緒は今回3レベルに成長した。電子技能が合計12に。
ギラ
「後書き対談やNPC情報はこ・こ・か・ら、よん♪」
清水
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リュート
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牙竜
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2000.7.8.作成 清水三毛.