極楽艦隊RPG遊戯議事録

第12話<スィルとこわーい女傭兵>








第4章:さくら脱出作戦










スィル ただ、どうやってこのデカイのを背負って、警備網をかい潜って逃げるか。

リンダ 夜まで待つか?



GM エアロックに窓があるから見えるだろう。もう夜が近いようだ。海のむこうに太陽が沈んでいく。



スィル 夜になって警察が突入してきたらどうすんですか。

 反対側から逃げる!

スィル 全長3メートルの4つ、背負って?

GM しばって脚をたためば、そんなでもないよ。

リンダ あとはSTRで頑張って、ガーッ! 走ってもってく、と。

スィル 皆さんSTR幾つですか。わたしは4。

リンダ 5。

志尾原 なんでこう、筋力任せのパーティなのかなあ(笑)。
(彼だけはたしか、STR2だったはず)

 8!

リンダ だいじょうぶ、1人で2つもてる!(笑)






 とりあえず一行は、暗くなるまで待つことにした。待つあいだ、脱出しやすい場所などを検討するため、リンダらは船内をうろうろして調査する。






 それを背負っていったら、どれくらいペナルティ受けるわけ?

GM 暗くて、さっきよりは見つかりづらいから、難易度ちょっと下げるかな。でもデカいから、結局プラスマイナスゼロかな。

リンダ いざとなったら、電脳ハッキングするか。

GM 背負ってる人は、[隠密(DEX)]マイナス2ね。

リンダ オイそれじゃオレ、何にもできなくなる!

志尾原 STRは関係ないんですね。


GM リンダは、自動的に見つかることになるね。


リンダ オレが見つかったら、(判定上)みんな見つかることになるし……。

 わかった! キミが1人残って(笑)。

リンダ コラ!

志尾原 1人づつ行きましょう。そのほうが全員が見つかることもないでしょう。

スィル こわいなー。

GM 重さは、大したことはないが。

リンダ ハッキングして黙らせられないか。

GM 今やったら、逆にここに隠れてるのがばれるぞ。

志尾原 とにかく、1人づつ移動しながら、他の人間は、いつでも奇襲攻撃できる位置に隠れてて……。

スィル イザとなったら後ろからブン殴る(笑)。

リンダ 瞬間にハッキングする!

 そうとうの自信がおありのようだ(笑)。

GM すげえ、なんかヴェトナム戦みてえ(笑)。

スィル しかも我々、どっちかっていうとヴェトコン(笑)。スパイクボールでも作りますか(笑)。








 小林源文センセイの<Cat Shit One(キャット・シット・ワン)>を読んでみよう!
 米軍はウサギで、VCはネコのヴェトナム戦マンガだ。なんか金華帝国っぽいぞ(笑)!  月刊<コンバット・マガジン>連載中!
 軍事描写がすばらしい。傭兵、軍人の役割演技の参考になること確実!!








志尾原 基本的にそういう戦術で、よろしいでしょうか。

リンダ そうしよう、うん。ちなみにわたしの場合、絶対見つかるんだけど。もってたら。

志尾原 最初っからハッキングできる準備しときますから、こっちで。

GM じゃあ、1人づつ、暗くなった湿地帯を駆けぬけてもらおうか。背負いながらね。難易度4ね。







 警官に見つからないで隠れられるアシ原は、いちばん近いところで20メートルぐらいのところにあった。
 一同はトカゲを入れたズダ袋を背負い、貨物船の残骸の陰で配置につく。


 夜闇を利用できるとはいえ、蛭がいるこの泥沼を、荷を背負って、音を立てずに移動するのは至難の業といえる。







GM まあ、距離のぶんは札ださないでいいよ。誰でもだせるでしょ。

志尾原 じゃ、わたしから。いきなり見つかったらごめんなさい(笑)。6のペア。

GM ……(こっちのほうが札がよかったらしい)。

志尾原 ああっ! ウソお!






 志尾原は不用意にも、派手な水音を立ててしまった!






GM 「だれだ、そこにいるのは!」ライトが照らされる!

リンダ ハッキングー!

GM 対人だから、マイナス5ね。

リンダ マイナス5か!

 き・り・ふ・だ・が、出せな〜い(笑)。さあ、さっきの説明を聞いていなかったツケがここに出た!(笑) 絶対できる自信はどこにいった!(笑)

リンダ ……もうダメだ。

スィル 努力と根性です!([応援]らしい)

リンダ ありがとう! 11のペア!

 対人ハッキングに努力も根性も関係は(笑)。


GM 基本的に警官は質のいい<電脳結界>を装備してるからねえ。防御力も高いよ(たしか電脳結界のランク−1が電子戦闘の防御力だったと思う)。……あ、キングだ。


リンダ うまくいってるよ!

スィル やっぱり、世の中努力と根性だ!

GM 少しだけ、時間をかせげたようだな。







 後ろ姿の警官は、一瞬だけ水音に振り返りかけた。すぐに何事もなかったかのように、正面の暗闇に向きなおる。
 志尾原は、黒く揺れる水面に冷汗をたらした。貨物船の残骸に潜んでいるリンダに、無言で感謝の視線をおくる。






GM さて。
 空の上から、サーチライトが照らされる。
 大型輸送エアカーのエンジン音が……反重力タービンの音が聞こえる。


リンダ なにー!

スィル ぽこぽこぽこ……。

GM そんな音じゃない! ビィーン、って感じだろう。
 警官たちが、「何だあれは!」とかいって見上げている。

スィル 警官がそう言ってるってことは……。

リンダ おっしゃ、いまのうちに!

志尾原 あからさまにライトが光ってるわけですね。

GM うん、君らのいる宇宙船を照らしだしている。

リンダ 消すのかっ!?

GM (オイオイ)ナントカ運送、というマークが車体に書いてある。

志尾原 あ、なるほど。

スィル お迎えですね。とっとと搬入!

リンダ でもうちら、禁制品もってるから、バレたらまずいじゃん。

GM そうこうしている内に着陸して、中からさっきのリック君と、部下らしい作業着姿のが2、3人でてくる。

 さて。アシ原に1人、船体に3人。1人は警官をおさえこんでる最中。どうなる、ホロー傭兵分隊!(笑)

スィル 武装ないのがイタイなー。

リンダ いよいよ分隊そのものが指命手配……。








 夜の沼地の50センチほど上空に、大型輸送エアカーが滞空した。反重力エンジンの唸りが一行の耳をうつ。アシ原と水面が、重力波と照明をうけ、金色の細かい波紋をえがく。

「やばい……」

 うめくリンダ。こうこうと照明がてらされ、動くに動けない。
 一同の間に、緊張が走る!






GM っていうかね。警官に、リックさんが色々と話しかけてるみたいだね。身振り、手振りでわかる。で、何か、スッ……と渡したりしてるんだな(笑)。

 その手があった!(笑)

スィル なるほど!

志尾原 しかし! ホロー傭兵分隊は貧乏ッ!!(一同笑)

GM 一方、輸送船の後部扉が開いて、作業員の2人が、早く早く! と手招きをしている(うーむヴェトナム戦だ)。

 我々にかい。

志尾原 とりあえず、飛び込みましょう。

GM そっちに注意がいってるから、難易度3くらいにしておこう。DEXで。

リンダ でもどっちにしろオレは……。

 それはしょうがないね。サーチライトに、(首の鱗が)きらきら〜(笑)。

志尾原 まさに虹を作るかのごとくに輝いて(笑)。

リンダ 誰か、とりにきてくれよー!

GM 泳いだらキミ。[水泳]技能を使っていいよ、STRか。それなら目立たない。

リンダ 背に腹はかえられません。泳ぎます!

志尾原 ウロコ光らせて泳いだら、トカゲハーフとか、泣いて喜びますね(笑)。

 どっちにしろ、キミは最後な(笑)。

GM リンダは、まあ航跡は残るだろうから、修正マイナス1ぐらいで。難易度3。

スィル 泥、もぐっちゃえ!

志尾原 息は一気に吸いこむんですよ!(笑)







 浅い水面下を、リンダはズダ袋を背負って泳ぐ。
 水底の泥が舞いあがり、首すじの鱗が微かに光って、まるで海中をいくイグアナである。
 ううむ、ちょっと気持ち悪いかも。内心つぶやく志尾原たちであった。

 リンダに続き、ついに一行も駆け出す。






GM (リンダ、なんてUSAゴジラなんだ)

リンダ 7、8、9、10!

GM Aのペア。やるねえ。

リンダ おっしゃあ! 泥に潜っただけあるぜ!


GM ま、リンダが成功したから、他の人はいいだろう(GM、腹へってるから急いでる)。
 ちょっと見つかりかかったかもしれんが、警官が見た時にはもう、貨物庫の扉は閉まりかかってる、と。


スィル なんでこんな季節はずれのサンタクロースみたいなカッコしなきゃいけないんだ!(笑)

GM リックさんは警官に手をふっている。輸送エアカーは飛び立っていくね。

リンダ あー。よかったよかった。でも泥まみれ(うーむヴェトナム……って、しつこい)。

スィル スタッフにきこう。「ちょっとまて、こんなハナシ聞いてなかったぞ! どのへんが体長50センチだ!?」

GM いやいやいや。はっはっはっは。

リンダ はっはっは、じゃねーよっ!

 ……最初から知ってたね?


GM すみませんねえ、どうも(笑)。こないだの<生物マニア>という雑誌よんでみたら、最新の研究によると、どうもあのアシダカトカゲが、ある条件が整うとホルモンが分泌されてですね、変態を遂げるらしいんですね。


リンダ はーあ……。


GM そうすると、ああいう生物になると。いやいや、これは気づかなかった!(笑)


スィル 艦長の背中の泥おとしながら、「……艦長。もっとふっかけちまったほうがよくないですか?」(笑)

リンダ いや……(今さら、イメージ悪化をおそれてる?)。

GM というわけで。「すごいですねえ、みんな生きてるじゃないですか」

 どこの軍隊に売るつもりだったんだい(笑)。

志尾原 でも4匹全部、袋を顔に(笑)。

リンダ しかもやたら手際がいい(笑)。

GM すごいですねえ。あなた方、ベムハンター協会にでも入ったほうがいいんじゃないですか(笑)。

スィル なんですか、そりゃ!







 みんな! <ベムハンター・ソード>(星野宣之)を読んでみよう! 宇宙を旅する一匹狼(ただしオッパイ型の変なエイリアン相棒つき)が、あちこちの異星生物を生け捕りにするSFマンガだ! 雰囲気抜群だぜ!

 あと、野田先生の<SF英雄群像>に書いてあるが、ゲリー・カーライルとかいう気の強い宇宙動物園の女園長が、あちこちでベムを捕獲しまくるスペオペもあったな。

[ギラちゃんちぇーっく!]
 ベムっていうのは、Bug Eyed Monster、つまり大昔の3文スペオペによくでてくる、昆虫目玉の怪物のことね。それが転じて、SFに出てくる宇宙生物を一般的に意味するようになったの。元はSF用語なんだけど、この時代では、純粋な地球系でない生物をさす俗語ね。知性のない生物をさす言葉だから、帝国の人とかに使うと差別用語になっちゃうわよ!








GM 1匹、110万ガメルづつ払ってくれる。

 じゃ、最初の話どおり、君らは55づつで、ボクらは105づつか。

GM 駆逐艦のメンテナンス代、100万ひいといてよ。

リンダ それは、例のプールのほうから。

GM 経験点は50点ね。

リンダ プールは現在、580しかないのか。山華龍泉まであと5回ワープ?

志尾原 1人10万づつカットして、こっちに40万まわしましょう。
 で、一人100づつ……。

 いや、50、50、あとは100づつ(笑)。

志尾原 いやわたし、最低限、100は受けとりますから。なにせ貧乏なんで(笑)。

 ちっ。

GM あの、この件はくれぐれもご内密に……。

志尾原 そりゃもちろん、我々は傭兵ですから。

GM (ほほう)

リンダ 会社名はメモしといたしね、ちゃんと。

スィル もう一声ほしい気もするけど(笑)。


GM さて。じゃあ、この星系から一番近いのはね、金華帝国領の惑星<白天(パイテン)>だ。距離は約20光年といったところだ。


リンダ おおっ、ついに思いっきり跳べる! 嬉しい!

志尾原 あそうだ、いま<企業>にいるんですよね。
 あの(清水が書いた)TEXTデータにあった特殊スーツ、[調達]したいんですけど。


GM あー、オレが設定したヤツかあ。値段いくらだっけ? 印刷してなくてねえ。
 ……値段200万にしとこう。[調達]してね、防具となると。難易度は6だが、志尾原は有名だから5にしておこう。
 ……クイーンのペア? やるねえ。じゃ、そのスーツで装甲プラス3、5になるのか! 値段3百にしとこ。調達自体にもカネかかるからね。情報量とかね。


志尾原 足がでちゃったー! また借金だー!

GM あ、生活費、10万各自マイナスしといて。

志尾原 すいませんリンダさん、いちおう50貸してください……(笑)。






 スィルも防具を入手したがるが、[調達]に失敗。牛も同様。どうやら人脈がないらしい。





リンダ なあ、ギルドに売ってる普通の黒の皮グローブほしいんだけど。黒のコンバット・ブーツもね。

GM それは[電子]でギルドに問い合わせてくれれば。20万ね。難易度2。

 傭兵通販(笑)。

GM 届くまで時間かかるから、さらに生活費マイナス10万ガメルね。

志尾原 しょんな〜!

 はいはいはい、はーい!(笑) 艦長。個人的な意見いわせてもらうと、あなたの買い物でボクらは足止めされてるんだよね(笑)。

スィル そうだ、モップとかの替えを!

GM そんなのギルドいかなくてもそのへんで買えます! 判定いらんよ、生活費に入ってることにしとく(笑)。

志尾原 手榴弾、どうしましょう?

GM あー、そうか。忘れてた。せっかくだから、もってきたまえ。(たぶんギルドが根回ししてくれたのだろう。特例よ)

 れべる・あーっぷ! レベル6ぅー! [回避][交渉]1つづつあげた。

スィル [回避][犯罪]1点づつあげました。総合レベル3です。

GM じゃ、そんなところか。







 かくして、モスコ=ミュールは再び超空間をめざす。

「今回は、1人も殺さなかったね」

 操縦桿を握りながら、虫でも逃がしてやったかのような口調で、リンダがいう。隣でレーダーモニターを眺めながら、志尾原も軽い調子で応じる。

「そうですね。たまにはいいもんですね、平和で」

 狭苦しい艦橋の隅で、スィルは計器類を掃除している。濡れ雑巾をもつ指に、後悔の念が形をとってにじみ出てくるような気がしてきた。

 本当にオレ、こんなとこに入って良かったんだろうか。そこそこの冒険めざして民事傭兵ギルドに首をつっこんだのに……これじゃまるで、毎日が戦場だ!

「でも、やっぱり寂しいものですね。50口径を任務中、1回はブッ放さないと」

「だね。やっぱりあの反動がないとなー」

「ふ、愚かな。頼るものは己の拳のみ! 火器になんぞ頼るから税関をとおれんのだ!」

 あ。そろそろ夕食の支度しなきゃ。青年は腰をあげ、腰をかがめて耐爆扉をくぐる。後ろにした艦橋から、リンダの脳天気な声が流れてくる。

「座標設定完了。白天にむけ、ジャンプするよーん」

 ふはあ。今日もまた、重いため息が新米傭兵の口をついて出るのだった。


                                     [つづく]







<次章予告>
 極寒の惑星。そこは軍事対立の激しいペンギン人たちの星だった。
 <しきがみおえど>の依頼で特殊潜水艦作製キットを販売にいく一同だったが、
 おもわぬ大事件にまきこまれてしまう。
 宇宙海賊どもを陰であやつる黒幕とは?
 謎の巨獣の正体は?

 そして、ついにモスコ=ミュールが……!

 壮大な戦いの物語が、いま幕をあける!






表紙へパラパラふりふりッ、とネ♪



モッケンディー「ま、僕みたいに洒落た人間になりたかったらさぁ、つづきよむことだね」


ギラ「洒落た殿方っていえば……やっぱり、鱗や牙や甲羅がないとねえ……はふー。(ため息)」