極楽艦隊ＲＰＧ遊戯議事録
第１２話＜スィルとこわーい女傭兵＞
第２章：さくらで潜入する傭兵たち
廃棄航宙船置き場への侵入自体は容易だった。周囲をおおう金網は開放されており、なぜかエアカーが往来した痕跡があった。
問題は、その後だった。廃棄船置き場は、海岸に近い汽水域の沼沢地帯に位置していた。そのため一行は、生い茂るアシに似た植物と、膝近くまである生ぬるい泥水に満ちた湿地帯をかきわけていかねばならなかったのだ。
おまけに、航宙船の残骸自体、あちこちに点在しており、容易に目標の船を見つけられそうもない。昼過ぎの＜さくら＞の日ざしと、むせかえるような沼の熱気とが、容赦なく一行を包みこむ。
ＧＭ 草をかきわけて進むとね。こう、足首がね、ずぶずぶと生温かい水に沈むわけだ。ちなみに、海の水っぽいよ。ここは海辺だからね。で、一歩ごとに、羽虫がわーん、とたくさん飛び立つ。
リンダ 「明るく爽やか」はどこにいったんだろう……。
スィル 無駄ですってば。血と泥まみれの道しか通れませんよ、もはや。
リンダ うるさい！
ＧＭ でね、エアカーが何台か通ったあとがある。そこなら通りやすいだろう。
志尾原 海水は、身体によくないなあ。
牛 さびそうだな（笑）。
スィル 海は海でも、星の海のほうが好きなんだけどなあ……。
ＧＭ お、イイねえ（正しいスペオペ的演技である！）。
スィル こういうとこだと、宇宙フナムシならぬホンマモンのフナムシとか出そうで、イヤよ（笑）。前回ので、すごいトラウマになってますからね（笑）。イソギンチャクとかナマコなんて、論外！
牛 軟体動物系がダメなのか（笑）。
ＧＭ よしよし。今度、グリンドルツを百匹ほど出してあげよう（笑）。
スィル ひぃいいいーっ!! どういうものか知ってるだけに会いたくないっ！
ＧＭ （さすが、元文芸部部長にして清水作品研究家：ちなみにグリンドルツ出演作品は空科傭兵団では未掲載）
リンダ あ、さっきの何とかトカゲについて、結界で調べられないか？
ＧＭ 難易度２ね。［電子（ＩＮＴ）］。
リンダ、志尾原がいきなりアスセスに失敗するが、最下級ランクの＜電脳結界＞しか装備していないスィルがなぜか成功した。たまにはこういうこともある。最初から諦めず、みんなも判定にどんどん挑戦しよう。
ＧＭ スィルの脳裏に生物系データバンクの情報が、さーっと表示されていく。全長５０センチ程度、爬虫類系の生物。食性は雑食性らしい。あとは一般的なことが書いてある。
リンダ 敏捷度は？
ＧＭ 特に記述されてないようだ。
リンダ 色は。見てわからなきゃしょうがない。
ＧＭ 立体映像で脳裏に投影される。茶色っぽいかな。
スィル ＩＮＴ１だ（笑）。描写しづらいな（笑）。
ＧＭ 首すじのあたりに出力端子とかあるだろうから、リンダとかにはつなげて見せればいいんじゃないか。
志尾原 なるほど、この３人でつながって（一同笑）。
リンダ あー、なるほどー。なんてな（笑）。
牛 ちょっと気持ち悪いな……（笑）。
ＧＭ なんてサイバーパンクなんだ（笑）。なんか、リンダって端子に垢たまってそうだよな（笑）。
リンダ うるせーよっ！ メンテちゃんとやってるよ！
スィル 艦長とはつながりたくなかった……。どうせなら、「外見だけは」レクシーみたいのが。
リンダ レクシーとはつながりたくもねえな……。
ＧＭ ま、捕まえるのは簡単だろう。ただ、最後のほうにちょびっと書いてあるんだが。
このオリオンアシダカトカゲの分布と重なる地域に、３メートルほどの大型竜がしばしば目撃されているそうだ。トカゲとの関連は不明……。
志尾原 ……すいませーん。ハンドガン調達します。
ＧＭ 忘れてたな？
間抜けにも、一行は市街地に戻る。貧民街の怪しげな店に入り、闇経路で志尾原はリボルバー調達に挑戦する。
ＧＭ 裏世界の符牒をつかってな。「あー、＜アレ＞が欲しいんだけどなー」なんて。店のオヤジが奥から出してきて、「９ミリを使うアレかい？」
志尾原 まー、できればそのへんがいいかなー？（笑）
ＧＭ 志尾原はスペオペなのにリボルバーなのかあ……。
［ギラちゃんにおまかせ！］
んもう、闇市場はよしなさいって言ってるのに！
ま、ともあれ。やっぱり拳銃だと、今は半自動拳銃、いわゆるオートが主流なの。結局、闇市場での商品って、軍の横流しとか放出品だったりするわけで、軍や警察ではオートが主流になっている以上、当然そうなるわけよ。ただオートは可動部分が多いから、整備も綿密にした方がいいけど。まえ、某社の４５口径を試射してたら、遊底が吹っ飛んだことがあったし。わたしだからよかったけど。
［もっかいギラちゃんチェーック！］
よく考えたら、９ミリＡＭＰって弾丸はリボルバーには使えないじゃない！ これってＧＭの錯誤よね。だいたい、口径は同じでも、オートとリボルバーの弾薬って、ふつうは互換性ないのよね。リボルバー用は、エキストラクター（抽出子）用の溝が薬莢にきられてないんだから。オートの弾はたいていのＳＭＧにも使えるし、やっぱりオートを選択すべきだと思うんだけどねえ……。
ＧＭ エースね。
志尾原 あ、じゃあわたしだけ成功しましたね。
ＧＭ じゃ、賃貸ということで、５万ガメルほどで。傭兵の基本として、機関部や照準器の調整はちゃんと行っておくようにね。
リンダはギルド支部を探して、なんとか銃を入手しようとする。ようやく見つけた支部は、ここからエアカーで５時間もかかる山村のなかにあるという。
スィル 大自然のなかで吸うタバコは美味い（笑）。
ＧＭ いくのか？
リンダ そりゃ、いくさ！
志尾原 エアカーで５時間はまずいんじゃ……。
ＧＭ だいたい、犬サイズ相手に火器求めるなよ（笑）。
志尾原 わたしもう、リボルバーに５発こめましたよ。
リンダ じゃ、やめとくかあ。
ＧＭ いまので２時間ぐらいたってるよ。
リンダ ま、殺しても報酬もらえるしね。
スィル ……艦長。やっぱりあなたに「明るく爽やか」は無理です。
リンダ 明るく爽やかに言えばオッケーさ！
志尾原 今回の報酬は、２００万ガメルですから（笑）。
スィル 志尾原さん、あそこまで交渉で値をつり上げた意味は（笑）。
牛 オッケー、彼らは２００万か。残りは我々が（笑）。
一行は、またも無数の羽虫の群れのなか、じゃぶじゃぶと湿地のなかを進むが。
ＧＭ （さいころコロコロ）牛さんなんだけどね。くるぶしのあたりがチクチクする。
牛 これは……蛭（ヒル）？
ＧＭ みると、２０センチほどの黒くて細長いものが。
リンダ いやだあっ！
スィル このへんに棒きれありますよね。拾ってますよね。
ＧＭ まあ、あるだろう。
スィル 「うぉおおぁあああああっ!!」ガスガスガスッ！
牛さんのくるぶし、ひたすら乱打っ!!
牛 ……ええっ!?（嫌ぎみ）
リンダ うるさいから、後ろからバコっと殴る。
牛 とりあえず、はがそう。
ＧＭ はがす？ 血がとまらんぞ。
志尾原 そぉおんな時のために、わが社の救急医療セット！（笑）
［ギラちゃんにおまかせ！］
そーゆーときは、タバコ……は健康に悪いし、この世界では禁制品だから……、熱した銃剣とか、ヒート・バヨネット（高熱銃剣）で蛭の背を焼けばいいの。そうすれば、自分から落ちてくれるから。無理に取ると、毒牙が皮膚に残っちゃうから良くないのよ。痒いしね。
［ここで清水ちぇーくっ！］
とくに宇宙ＳＦでは、どんな病原体や危険な生物に遭遇するかわからない。宇宙傭兵なら、十分すぎるほどに用心したほうがいい。生物学・生態学技能なんて、役立つかもね。
スィル 蚋（ぶよ）、藪蚊、蛭！ ヤだなあ。
ＧＭ 錆びてボロボロになった宇宙船が何隻か転がってるが、奥のほうに、目標の船が見えてくる。旧型の貨物船の残骸だね。
スィル そのへんの残骸から、鉄パイプかなんか、ひっぺがします。
ＧＭ ところが、何かあったらしくてね。パト・ライトを点滅させた警察のエアカーが２台ほどとまってて、警官が１０人ほどいる。鑑識の人もいるようだ。むろん、「立入り禁止！」
と、目的の船の周囲に縄が張られている。
リンダ 殺シか？ 「すいません、どうしたんスかー？」
スィル 聞いちゃって大丈夫なんスか？
リンダ 大丈夫さ。
志尾原 いやあ、さすがに犯罪者が２人いると……。
リンダ 髪の色まで、かえてんだぞ！
ＧＭ ま、すぐにはバレないだろ。「いや、１週間ぐらい前からな……」
スィル 犯罪者が２人？ 誰のことです？
リンダ ……あのさあ、スィル。ちょっと話しあおうか。ちょっとこっち来い！
スィル なにするんスか、艦長！
リンダ うるせえ！
ＧＭ いいなあ。夫婦スペオペ漫才だな。
リンダ こんなヤツと夫婦（めおと）になりたかねェ！
スィル マスター。オレにだって、選ぶ権利はあると思います。
リンダ また殴られたいらしいな……！
ＧＭ 警官が教えてくれるだろう。
「１週間ほど前から、この宙港の警備員が、この付近で首を食いちぎられて殺される事件がおこっていてな。というわけで立入り禁止なのだがね、君たち」
スィル しきがみ警察かあ。トレンチコートか（笑）。
ＧＭ パトカーには＜企業警察＞って書いてあるかな。
志尾原 ＜さくら星系警＞とか。
リンダ 木之本巡査部長とか……。
ＧＭ （そらもう、ええから）
リンダ しかし、１週間前か。見事に一致するなホント。頭を食うなんて、かなり狂暴だぞ。他にはなにか……？
ＧＭ 部外者に語る意味はないだろう。さっさと立ち去りたまえ。
志尾原 当面の問題としては、トカゲじゃなくて、警察。
リンダ とりあえず離れよう。
牛 そうそう。懐に入れた拳銃が見つかる前にね（笑）。
スィル 指命手配されて艦長みたいになりたくないし。
リンダ そうかいそうかい。
牛 確かに、ああはなりたくない（笑）。
リンダ おいっ！
志尾原 いや、でも、そう簡単にこうはならない。
リンダ おおいっ!!
一行は、とりあえず手近な草むらに隠れて作戦会議をおこなう。
潜入には夜間が好都合だが、こちらの射撃には不利になる。
しかし、いま潜入するとなると、警官が障害になる。果たしてどうすべきなのか。
リンダ まわりにアシが生い茂ってんだろ。まわってけば、なんとかなるだろ。
スィル それだと蛭とかが……。
ＧＭ 警官は、目標の宇宙船全体をぐるっと取り囲んでいるぞ。宇宙船は全長３０メートルくらい。
志尾原 相手も火器を装備してるもんなあ。
スィル 警官が、食われて全滅するのを待つとか。
リンダ だから、なぜそうデッドリーになるんだ。明るく爽やか、だよ！
スィル ……もう無駄ッスよ、艦長。
牛 大丈夫だいじょうぶ、トカゲのせいにして警官を全滅させようとか言い出さないだけ（笑）。
志尾原 そうか、その手があったか！
ＧＭ それさあ。うちの９歳の弟が最初に言ったよ。ショットガンで……って（一同笑）。まあ、君らなら勝てるだろうが。
志尾原 例のジュラルミン・ケース（対戦車ライフルの隠語らしい）があればなあ。５００メートルくらい先から、１人づつ消して……。
リンダ 「うひょ、楽しい！」ガーン（笑）。死体燃やしてくの？（笑）。
牛 ほら、犯罪者の発想だから（笑）。
ＧＭ （カスタムしてない対戦車ライフルはそんなに届かないが……）
スィル 海賊、２人おるし（笑）。
リンダ 海賊じゃないっ！ 傭兵っ！ 一線を画してるから。
２人の間には玄海灘があるッ！
ＧＭ うむ、偉い。あの有名な＜エンファルツの傭兵王女＞の言葉を思い出す……。
スィル でも、海賊より傭兵のほうが凶悪な気が……。
リンダ 気のせいだ。
ＧＭ この世界（清水パラフリ世界）では、傭兵は人気職種だから。小学生のアンケートでも「なりたい職業」上位３位には入る（笑）。
牛 人気があれば正義の味方とは限らない。
まあ、世の中、ピンからキリという言葉もあるし。
志尾原 みなさん、傭兵だったんですかー（笑）。
ＧＭ ていうか、牛さんとか、無登録だし（笑）。
牛 ホラ、僕はこう、ただの流れの格闘家だから（笑）。
志尾原 流れのセールスマン（笑）。
リンダ 流れ、じゃないだろ！
ＧＭ ということは、正真正銘の無登録傭兵はスィル君だけか。ていうか、海賊か。一応いっとくと、傭兵は海賊を目の敵にしてるからなあ。無登録傭兵、つまり海賊がよく犯罪組織に手をかしたりして、傭兵のイメージが低下するんで。
リンダ そうか、じゃあ、いつかスィル君を殺れるかもしれないんだ。きらーん♪（おいおい）
牛 まっとうな傭兵なら手をださない仕事に手をだすから、ギルドに睨まれるわけだな。例えば、密輸品の取り戻しとか（笑）。
ＧＭ ……まあ確かに。この依頼も、ギルドを仲介してないしね。ヤバイ仕事なんだろうな。まあ、民事傭兵っていっても、実際は軍事傭兵との区別は曖昧なんだ。超一流傭兵以外はね。とはいえ、専門の軍事傭兵は民事傭兵を馬鹿にしてるがね。
牛 しょせんアイドル傭兵（笑）。
スィル ベッドの上で死ぬことを目標にする傭兵（笑）。
ＧＭ いやだ、そんなの！（笑）。
リンダ 一度、ちゃんと教えとかないとな。
ＧＭ さて、話合いが長すぎたな。「誰かそこにいるのか？」
と、警官が声をかけてきた。突入を検討しているらしく、アサルトライフルをもっている。
牛 とりあえず離れようよ。離れるそぶりは見せないと。
ＧＭ うちの弟のワニ傭兵は、［水泳］の［切り札］で潜入したけどな。ゴボゴボ、と泳いで（笑）。
志尾原 さぁて皆さん！ こんな時こそ企業特製ダイビングセットお！（笑）
ＧＭ ここで志尾原ちぇーっく！（笑）
さて、しばし一同は潜入策を検討する。提出された案をちょっと書き出してみよう。ううーむ。
１、そのへんの残骸から金属板でも見つけて上にのっていく。軟体動物嫌いの某氏の発案だが、牛曰く「それって見つけてくれって言ってるようなモンだよな」。
２、軟体嫌いの某氏を気絶させて水中を引きずっていく。これなら蛭に吸血されても気づかない。で、覚める前に蛭をはがす。とっても後輩思いの某女傭兵の発案。牛曰く「気絶したまま水中ひきずったら、普通おぼれ死ぬンだけど」。
３、警官に当て身をくらわせる。と、牛氏は２の案を誤解していたらしい。
４、リンダかスィルが手榴弾で自爆して注意をひきつけ、その間に他の要員が侵入。ＧＭの案。一番むごい（笑）。リンダかスィルってとこに、ＧＭの愛が感じられる（？）。
ＧＭ とか話してると、だいぶ君たち足が痒くなってくるだろうねえ。（コロコロ）牛さんには１匹。スィル君には６匹！
（一同笑） リンダ、志尾原には４匹か（笑）。
スィル ひきはがす気力もなく、フラフラと乾いたところにあがって、ドサっ。ひよひよひよ（笑）。
牛 それはともかく。まあ、全長３０メートルの船のまわりに警備が１０人なら、かなり手薄だろう。でも逆に、中でいつ鉢合わせしてもおかしくないよな。
ＧＭ なかにはいないって。貨物船の残骸の横腹に、大きな裂け目があるんだが。その脇でライフルを構えたまま、警官がヒソヒソと話してるんだよ。内容までは聞こえないが、どうも中に入る気がないようだ。
スィル 隙をうかがうしかないでしょうね。
志尾原 ……あ、そうだ！ 電脳結界で、警官に偽の情報を送り込めば！
リンダ ハッキングか！
牛 そうか、１人でも警備をはずれれば、だいぶ入りやすくなる。
ＧＭ それ、犯罪（笑）。
牛 では、とりあえず……［戦術］でもっとも警備の薄い場所を探す！ これなら７枚だせる（笑）。
スィル 隠れた才能が（笑）。
ＧＭ 知性、難易度２。
牛 １２のペア！
ＧＭ 成功だ。後部エンジンのあたりが、やや警備が薄いようだ。
牛 潜入するならこのあたりだと思うんだけど。どういう方法をとるかは任せよう。
ＧＭ 今なら、走ってでも潜入できそうだ。ただ向こうに警官が立ってるから、音がしちゃうと……。
リンダ あ、そうなの？ じゃ、それは［隠密］で何とかしよう。
牛 見つかったら、当て身をするか、電脳結界でごまかすか、言い逃れをするか。まずは［隠密］で。
志尾原 じゃ、いきますか。
＜予告＞
いよいよ突入作戦だ！ はたしてうまくいくのだろうか！
次章へつづく！！
リュート「続きもどんどんよんでくださいね♪」