SF・RPG基礎講座
教練3:スペースオペラの世界観
私まだ13歳なの。ホントよ。え? お胸がその割に大きいって?(爆)ギラ「宇宙SF・RPGでは、どういう世界観が考えられるのかな?」
 
 もちろん作品によってさまざまなわけだけど、そのなかでも共通項となりやすいものをみてみましょう。大きな要素から小さな要素へと細分化して講義するわね。

 スペースオペラを構成する世界の要素
 ま、ほんのさわり程度だけど、それぞれの要素の特色を概括してみましょ。

 <1、異星種族の有無>
 まず第一に、RPGの舞台となる宇宙には地球人以外の種族が存在するか?
 地球人しかでてこない宇宙SFを<地球中華スペースオペラ>
 さまざまな異星種族が存在する宇宙SFを<多民族スペースオペラ>と、以後よぶことにする。
 地球中華スペオペは、意外と多い。アシモフのファウンデーションシリーズは代表的である。白人優位思想を宇宙にもちこむと地球中華スペースオペラになるらしいというのが気になるところではある。が、科学的にはまだ異星文明の電波すら探知されていないのが現状だ。もちろんこのひろい宇宙に生物が地球にしか存在しないというのは非科学的だが、それにしても、高度な文明を持った種族は滅多に存在しない……というのは最近の定説であるらしい。
 地球中華スペースオペラは、設定を把握するのが容易である。異種族の文化や生物学的設定を覚える必要が無いので、どの星にいっても戸惑うことなく生活できるはずである。それは反面、スペースオペラの魅力のひとつである<文化・生物の多様性>という要素を殺すことにもなっているが。
 多民族スペースオペラは、なぜか海外SFに多い気がする。スター・ウォーズ世界など、その代表格である。画面に5秒しか出てこないキャラクタでも、名前と種族名、それに略歴などが設定されていたりするので、スター・ウォーズ世界は奥が深い。
 多民族スペオペの魅力は、なんといっても多彩な異星種族との交流である。言葉から航宙船の設計様式まで、ありとあらゆる点で相違があり、キャラクタは新鮮な驚きを味わうことだろう。設定をより深く理解するには文化人類学や生態学を学ぶとよい。エスニック料理店にいくのもよい(笑)。いや、多民族スペオペでは異種族が食べている奇怪な料理に挑戦するというのは隠れた定番行事であるからして。
 多民族スペオペを深く考えると、言語などもいちいち設定しなければならず、頭を悩ませるところが多い。これは人によっては面倒だと感じることがある。(実は地球中華のほうでも世界観をよく練るなら、避けては通れない問題なのだが)
 多民族・地球中華の中間的な世界もある。パラフリRPGもそうだ。かの世界には、もともとは地球人だったのだが、宇宙に適応するため遺伝子改造をした結果、異星人といってよいほどの身体的・文化的差異をもつようになった種族<ビースト・ハーフ>が存在するのである。たとえば高温多湿の星にはワニの遺伝子を持つワニ・ハーフが入植している、という具合だ。ほかには、人類のほかには1種類か2種類ていどの異星種族しか出てこない場合もある。手軽に世界観をまとめたい場合に便利である。<無責任艦長タイラー>などが好例か?


<2、政治形態>
 2−ア、星間連合
 星間連合というのは、現代の国連の宇宙規模のものである。あちこちの宇宙SFにおいてみかけられる。名前は作品によって違うが本質は同じだ。さまざまな惑星国家・星系国家が代表者を選出して組織する統一された政治組織のことである。星連は、軍事・経済・衛生・教育・環境保護などの部門において、宇宙の和平のために機能するさまざまな組織をその下に有する。
 RPGの舞台となる星域を包括的に統治する政治組織があるということは、いちおうその星域は一定水準以上の文明がどこの星でも保たれ、平和的であることが多い。もちろん種族それぞれの政治観によって例外は生ずるだろうが。スター・ウォーズ世界でいうなら、銀河共和国が健在だった時代がこれにあたる。もっともそこでは銀河文明は爛熟期をむかえ、徐々に衰退しつつあった。
 星連があるということは、そこに宇宙規模で一定の価値基準が存在するということを意味する。つまり宇宙的な国際法規・条約などがあるはずである。これはその世界のどこにいっても通用するわけだから、それさえ把握すれば、演技する場合に安心できる。そのRPGにおける世界観が端的に国際法規にあらわれるので、世界観の基礎をおさえられるわけである。たとえばマンガ<モジャ公>(藤子・F・不二雄)では、星連法によって地球人との接触が禁止されている。モジャ公世界の地球は、野蛮な未開の星とされているためである。この世界で異星人を演じるならば、地球人とはじめて会ったら脅えるかバカにするか、という行動をとることとなる。
 星連といっても、強大な権力をもつ場合とそうでない場合がある。現代地球の国連は、安全保障理事会が機能していないため国際政治において影響力が無く、後者にあたる。権力を持たない星連なら、結局はあってもなくても同じとなり、紛争や文明格差が生じる混乱の多い宇宙となるだろう。RPGの舞台としてはそのほうが面白いかもしれない。

 2−イ、銀河帝国
 スペースオペラにおいて銀河帝国といえば、舞台となる星域まるごと(たいてい銀河系)を支配する強大な帝国をさす。星連と同じく全宇宙規模の統治形態であるが、世襲制の帝位を戴く者を頂点にもつ点がことなる。演技の基準となる宇宙的な価値観が存在することになるのは星連のある世界と同じだが、背景に民主主義や平和主義はない。スペースオペラで「帝国」といえば、強大な軍事力をもつ軍事国家である場合がほとんどである。
 こうしたスペースオペラ世界では、搾取、圧政や抵抗運動が絶え間なくつづき、PCは反乱などの戦争に巻きこまれやすくなる。宇宙戦争を扱うスペースオペラでは、作品中にかならず1国は銀河帝国というべき国家が登場する。対するのは反乱軍または共和国軍、というのが一般的だろうか。星連が敵対して宇宙を二分する場合すらある。
 帝国という国家形態は、民主主義国家に生きる我々にとっては異質なものである。そこには特異な政治や文化形態をもりこむ余地が大きく存在し、スペースオペラの魅力を引きだしやすくなる。これが、あちこちで銀河帝国が存在する理由と思われる。
 ただし。
 もし宇宙SF・RPGを創作するときに設定をひねりたいなら、以上のような「銀河帝国=軍事国家」という安易な図式は捨てたほうがいい。立憲君主国家という政治形態があることを考慮しなければならない。これは、国民の基本的人権を尊重する近代的な憲法の下でのみ、皇帝(君主)の存在を許す国家である。主権者は国民であり、国家は国民の権利に奉仕するためにのみ存在する。そこでは「帝国」という名前がついてはいても皇帝の権力は大幅に制限され、象徴としての意味しかもたないことすらある。某国国王について評した「君臨すれども統治せず」という法格言が端的にそれをあらわしている。
 そうした立憲的な銀河帝国ならば、圧政を敷くことはなく、戦乱が巻きおこることもないだろう。戦前の「大日本帝国」と現代の「日本国」の差異を考慮に入れながら設定を考えると分かりやすい(天皇の権限の差などは学校で習ったはずだ)。ただ、立憲主義にもとづいた銀河帝国なるものが、特異な世界観を形成しうるかどうか、言い換えればハナシとして面白くなるかどうかは考えどころだ。

 2−ウ、無秩序型
 銀河を統一する価値観・科学技術が存在しないという宇宙で冒険をする場合もある。そこでは星連も銀河帝国もなく、各惑星は孤立している。こうした世界では各惑星ごとの技術程度の差異が激しく、石器時代なみの暮らしを送っている場合すらある。そこまでではなくても、1つの惑星のなかで無数の国家が乱立しているという混乱した状況の宇宙もありうる。←これがいちばん現実的といえようか(笑)。
 さすがにこうした世界観のスペースオペラはあまり見かけない。宇宙を自由に飛びまわるにはそれだけ星間航行の技術が発達し、航路がはりめぐらされているということを意味する。そこでは必然的に文化や人材が流動し、相互の利益を調整するための巨大な組織を形成することになるからだ。それは政治組織でなく、経済、科学や宗教の組織であるかもしれないが、いずれにしろ一定水準以上の科学技術や文化形態の発展をうながすこととなり、「無秩序」という状況にはならない。
 以上のことからすると、無秩序型の世界観では星間航行の技術が存在しないか、そもそも航宙船をとばすような文明が極端に少ないということになろう。ここでは宇宙戦争や宇宙傭兵などの存在はなく、種族は地球人のみで、「調査船に乗りこんで未知の星系を探査する」などといった脚本が多くなる。つまり、スペースオペラではなく本格SFやハードSFという分野に近くなる。
 しかし、たとえ星連や銀河帝国がある世界でも、開発がまだ進んでいない辺境星域では、こうした未知の領域があってもおかしくない。パラダイス・フリートRPGの続編<パラダイス・フロンティア>はそうした物語を扱っている。
 見慣れた種族、いや見慣れた星座すら存在しない未知の星域。そこはもっとも冒険心にあふれた者がめざす場所である。

<3、自然環境>
 異なる文明だけでなく、異なる環境との出会いもスペースオペラの魅力のひとつである。代表的な惑星世界の環境をみてみよう。
 3−1、非地球型
 地球中華スペオペRPGでないなら、「非・水圏支配型平均気温摂氏15度1気圧重力1G大気組成窒素酸素岩石系惑星型」などと呼称すべきだろうが、面倒なので端的に非地球型環境、といおう。
 これは太陽系の各惑星を思い浮かべて、名前だけ変えた、という場合が多い。よくあるものを以下にしめす。

 水星型→高温で大気はなく、地球より小さな星。融点の低い金属が溶融して湖となっている場面をスペースオペラではみかける。真空なので夜になれば逆に極寒。岩石・金属系の生物が見かけられる設定にするとそれらしい。

 金星型→濃密な大気をもつため、地表は高圧。地球の深海並みの圧力がかかるため、耐圧仕様の船でないと降下できない。温室効果により高温を維持している。地表では濃硫酸の雨が降り溶融した鉛の川が流れる。水は水蒸気のかたちでしか存在できない。

 火星型→薄い大気がある。気温は上下とも地球生物には適さないが、それでも最も地球のそれに近い。惑星改造して地球型にするのは容易。ここの生物は地球の砂漠や南極にすむものから発想するとよいだろう。

 木星型→上記3種と異なり、ほとんど気体によって構成される。ガス惑星とよばれ、地表というものは存在しない。大気の上層部では極寒だが、内部では超高温・超高圧となっており、地球生物はお呼びではない。この惑星がもう少し大きければ星の中心部で自然に核融合がはじまり、太陽のような恒星となる。逆に言うと太陽のなりそこないであり、地球の十数倍以上の直径をもつ大型惑星である。ガス・ジャイアントともよばれる所以である(セーラージュピターも背が高かった)。重力も強く、安物のエンジンをつんだ船で降下しすぎると重力圏を離脱できなくなる。成分は水素・アンモニアなどだが濃密な大気があるので、浮遊生物がいると面白い。この大気は航宙船の燃料などにも使われ、宇宙開発資源として重要である。
 土星・天王星・海王星は木星型惑星に岩石群でできた輪っかをかぶらせただけ。よくみると1つではなく多重の輪である点に注意。

 小惑星帯型→むかし存在した惑星が粉々にくだけたか、星になり損ねた太古の微惑星たちなのか。砂粒から直径数千キロ程度までの大きさの岩石が群を成して公転している領域がある。アステロイド・ベルト(小惑星帯)というと、映画では岩がゴロゴロしている画面が多いが、実際はあれほどには濃密ではなく微粒子が多い。微粒子とはいっても高速で航行する宇宙艦艇に当たれば被害は大きいため、むかしから小惑星帯での競走や戦闘はスペースオペラでの佳境として描かれる。基本的に宇宙空間なので降りて人間どうしで戦うことはない。
 大型移民船などを建造する場合に巨大な小惑星を利用することが多く、資源として重要。<21エモン>では別荘地になっていた。

 冥王星型→星系のはじっこにあるが岩石系。主星である恒星の光がほとんど届かないため、絶対零度に近い凍てついた世界である。大気が存在しないことが多い(固体となって地表にへばりついている)。動きの鈍い珪素生物や結晶生物(?)がいるとスペースオペラらしいか。主星がほとんど他の星にまぎれてしまうほど小さく、暗黒の世界である。そのため、スペースオペラでは凶悪犯罪者の流刑の地として使われることが多い。そのばあい高重力だとなおよいが、星の大きさからいってさほどではない。

 カイパーベルト〜オールト雲→星系の外縁部には「彗星の巣」とよばれる星域がある。氷などでできた小惑星、つまり彗星の赤ちゃん(核)が集団で惑星系の外側を球型に包んでおり、これがオールト雲とよばれる。その内側にある惑星の公転面にそった円盤状の「彗星の巣」がカイパーベルトである。彗星の巣とはいっても5000天文単位に1つていどで、やはり映画のようにゴロゴロしているわけではない。彗星の核は宇宙開発用の資材として有望視されており、レーザーで核を発見して飛び石伝いに燃料補給しながら外宇宙に乗りだしていくという宇宙開発計画もある。オールト雲の端は付近の星系にある他のオールト雲とくっつきあっているという説もある。
 こうした領域では、彗星の核にすむ宇宙植物やそれの上に成りたつ生態系があるとおもしろい。

 深宇宙→星系を離れた恒星間の空間。スペースオペラでは外宇宙ともいう。銀河系外の空間をさすこともある。星雲をのぞけば、星系内よりも浮遊している分子が希薄であろう。基本的に何も無い。たまに、どこか遠くの星で打ち上げられたり追放されたりした迷惑な生物が放浪していたり、休眠状態で獲物をさがしていたりする。<宇宙船ビーグル号>のイクストルのように生身でこうした場所を漂う超生物と遭遇した場合、真剣に対処しないととり返しのつかないことになる。気をつけよう。

 3−2、地球変異型
 地球にある特殊な環境を惑星規模に広げた星。手軽に異世界観を演出でき、しかも面倒な宇宙服や大気設定などが不要なので、スペースオペラでは<非地球型>よりもよくみかけられる。清水三毛のパラフリ議事録の舞台となった星はどちらの型が多いか、思い出してみていただきたい(笑)。

 海洋惑星
 むやみと海だらけの星。温暖化で陸地が水没した星もふくむ。すばらしく巨大な海洋生物との格闘や海洋冒険シナリオを楽しめる。ただし海上には細菌が少ないのであまり長く滞在すると免疫力が落ちるかも。映画<ウォーターワールド>が参考になる。

 砂漠惑星
 むやみと砂漠だらけの星。昼は暑くて夜は零下に冷えこむ。砂漠に適応した特殊な生態系がある。なお、砂漠といってもほとんどは岩石や岩山などで構成されていることに注意。<スター・ウォーズ>出演率1番の惑星、タトゥイーンが代表格。

 密林惑星
 むやみと森林だらけの星。しかも熱帯雨林だったりすると、高温多湿のうっとうしい冒険を楽しめる。体内にタマゴをうみつける昆虫などがざらにいるので面白い(皮膚の下を這い回るウジをリアルに演出しよう)。新薬など生物資源の宝庫であり、企業の争奪戦などもあるだろう。砂漠と並んで苛酷な環境だ。

 極寒惑星
 むやみと寒い星。星まるごとが南極である。氷の下に謎の古代宇宙船が眠っていたりすると王道的なものをかんじる。


<4、科学技術>
 これだけは知っておいてほしい。スペースオペラにおいて必須の航宙船関連の基礎的な技術用語である。

 反重力エンジン
 これをつかうと、恒常的に浮遊する車輌がつくれる。惑星の重力場に反発する性質を持つ動力機関である。定番中の定番。エアカーから戦艦にまで搭載される。重力源を離れると使用できないという設定のものもあるだろう。

 通常推進
 星系内や大気圏内でつかうふつうの推進方法。ジェット、ロケット、熱核融合、反物質反応炉などがよくみかけられる。現地住民や環境への配慮から使用が制限されることがある。

 超光速推進
 光より速いエンジン。またはその推進方法。ワープ・ドライヴともいう。それぞれのSFにおいて作者が知恵を絞ってさまざまな原理や名称を考えるもので、SF作家の腕の見せどころである。要するに空間をまげて膨大な距離をイッキにとびこえるという推進機関である。
 現代科学によるとどうしても光速は超えられないのだが、それでは広大な宇宙の冒険が制限されてしまう。隣の星系まで出かけるのに4万年もかかっていてはスペースオペラはなりたたない。そこでこうした架空のエンジンが必ず用いられる。もっとも、船内で世代交代させたり、乗員を人工冬眠させる航宙船ではこのエンジンは不要となるが、スペースオペラでは一般的な手段たりえない。
 
 どうだった? SFは世界設定の幅が広いから、ここにあげたのとはまるで違う独創的なスペースオペラ世界もあると思うわ。もし創作するならいろいろ考えましょうね。実際につくらなくても、設定を練ることは演技にも役立つはずよ。深みのある役割演技は、舞台となる世界観の把握なしには成立しないものだしね。

 ↓つづきよ。いよいよまとめよ!
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