SF・RPG基礎講座
教練1:キャラクター編


 
ギラ軍曹ちゃんでぇす♪ギラ「まずはPCなど、お話の中心になる登場人物についての講義よ」
 宇宙SF、いわゆるスペースオペラでは、どういう職業や階級の登場人物がいるのかしら。ファンタジーRPGだとファイターとかシーフとかが一般的よね。じつは宇宙SFでも似たようなものなの。いつもあなたがファンタジーRPGで演じている人物の職業を選んでちょうだい。宇宙SF風に考えるとどうなるか、みてみましょう。とくに、武装や防具が宇宙SFの世界だとどう変わるか、注意してみてね。
 武器などの詳細は、アイテム編の教練を受ければわかるようになるわ。今はあまり気にしないで、雰囲気だけ掴んでおいてね。
<あなたがファンタジーRPGでよく選ぶ職業は?>
戦士
盗賊
魔法使い
僧侶
亜人類


<宇宙SF・RPGだとどう変わるかな>
戦士→宇宙傭兵など
階級宇宙傭兵(陸戦型)
武器アサルトライフル、グレネードランチャー、手榴弾x4、拳銃、銃剣
防具ハード・ボディアーマー
技能格闘、白兵戦、射撃、無重量戦闘、軍用機操縦、航宙艦操縦、車輌操縦、戦術知識、生存、銀河生物学、空挺降下
所持品突撃銃予備弾倉x4、拳銃予備弾倉x1、グレネードx6、ナイフ、救急医療品一式、暗視装置、戦闘糧食x6、背のう、野戦服、宇宙服
所持航宙艦艇駆逐艦、シャトル、戦闘機
仕事内容貨物船の護衛、宇宙海賊・宇宙怪獣退治、軍事顧問、戦闘教官など
<詳細>
 戦士系、つまりカラダをつかった戦闘を専門にする者は、宇宙傭兵や宇宙海賊に多い。軍でいうと、陸軍の歩兵がこれにあたる。海軍の宇宙海兵隊もこれにあたるだろう。(海兵隊というのは、海軍所属の陸戦部隊のことである)
 近代戦はファンタジーと違い、戦闘の範囲が広い。戦士系のPCが担当するのは、殴りあいやナイフなどによる斬りあい(白兵戦という)から、ライフルによる中距離の銃撃戦までである。距離にすると0〜300m程度である。
 宇宙傭兵とは、特定の軍隊に属さず、宇宙を放浪する雇われ兵のことである。SF世界では武器はきわめて専門化しており、素人は扱えない(あなたは戦闘機を操縦できるだろうか?)。そこで正規軍を維持する人材をもたない辺境の惑星系などでは、流れの宇宙傭兵を雇うわけである。正規軍とは異なり、そうした雇用主は満足な武器を与えてくれないことが多いし、またどんな機種の武器が与えられるかわからない。そこで傭兵はあらゆる武器を使いこなし、さまざまな環境での戦闘に対応できる幅広い知識を求められる。ライフルひとつとっても、正規軍の歩兵は支給されたライフル1種だけを扱えればいいが、傭兵はどんな種類のライフルでも扱えねばならないのだ。こうした専門知識から、組織されたばかりの正規軍の教官役・軍事顧問として傭兵が雇われることも多い。この場合は直接戦闘に参加しないですむ。第2次大戦以後、つぎつぎと独立したアフリカ諸国では傭兵が教官としても活躍していたのだ。
 戦闘系のキャラクタというと、まず軍人が思いうかぶかもしれない。しかし軍隊は厳格な階級組織であり、物語の展開の幅が狭くなるおそれがある。GMとしても毎回の脚本が軍事任務というのはやりづらいだろう。戦闘系キャラクタを求めるなら、自由度の高い宇宙傭兵のほうがおすすめである。実際、物語をつくりやすいため、あちこちの宇宙SF小説などで主役となっている。
 職にあぶれた傭兵が海賊になりさがることも多い。が、清水的パラフリRPGの世界では、<宇宙傭兵協会>が仕事の斡旋や能力水準の維持をおこなっており、一流の戦士として海賊とは一線を画している。宇宙傭兵に対する民間の信頼も篤い。このように、傭兵の解釈は、作品によってさまざまであろう。ちなみに、SFではないが、近代戦における傭兵を知るにはマンガ<パイナップル・アーミー>がお勧めである。各国の政治情勢にあわせた依頼がある点に注目。架空の世界でもこうした点に注意すれば現実感を演出できるだろう。

 自由度でいえば宇宙海賊も同じである。こちらもSF愛好家には憧れる人が多い。実際、低級な傭兵は犯罪行為に走りがちで、海賊と大差ない場合もある。最初から無法者を演じてみたいなら、宇宙海賊を選ぶといいだろう。ただ、海賊はあくまで違法行為を前提としており、治安組織に常に摘発されるおそれがあることを忘れてはいけない。このため、軍人とは別の意味で、行動範囲が制限されてしまう。
 宇宙海賊は、おもに貨物船を強奪し、貨物や船を売却することで生計をたてている。船や貨物に傷をつけないため、威嚇射撃などの脅迫により乗員を退船させることが多い。戦闘は可能な限り避けるだろう。伝統的には被害者の船に乗り移って白兵戦をする印象があるが、顔を覚えられないために極力接触をさけるはずである。また、襲撃は宇宙港に停泊中の船舶を狙っておこなわれる。そのほうが補足が確実であるからである。小規模な海賊は単純な略奪しかしないが、大規模な組織になると強奪した船舶の権利書を偽造して辺境星系で密売したり、資金獲得のために麻薬取引なども請け負うことが多い。他の海賊組織との抗争もある。
 海賊の多い星域では、いわゆる「海賊保険」が盛んである。これは、保険会社が、積み荷や船舶の損失および運送契約の履行遅滞による逸失利益などを限度額のかぎりで保証するというものだ。(金融・法律面の設定をキチンとすると、それらが未発達なファンタジーRPGとの差別化をはかれる)
 もう少し志の高い海賊としては、反政府組織や義賊が考えられる。かれらは現行の国家体制に不満をいだき、自らの信念のために海賊とよばれることに甘んじるのである。こうした海賊なら市民の信頼をかちえるだろうが、軍や警察と対立することでは何ら犯罪組織たる海賊と変わらない。反政府軍として革命を起こす、などというキャンペーンシナリオも面白いだろう。その場合、宇宙傭兵が雇われることも多い。

 スペースオペラにおける戦士系キャラクタは、手術による身体改造をいとわないことが多い。たとえば、夜間での銃撃戦を可能にする電子眼をうめこむ。自身の神経を銃器と直結させるなど。装甲を皮膚にうめこむ者もいる。(そうした身体改造器具をサイバーウェアという)
 だがなんといってもスペースオペラらしい改造戦士は、宇宙戦闘機の操縦士であろう。かれらは自らの神経系を戦闘機の電子機器に直結し、文字どおり自分のカラダのように機体をあやつるのである。ちょくせつに電磁波の眼で敵を見、直感的にすばやく戦闘軌道をわりだせるため、常人の操縦技術をはるかに凌駕する。太陽風を肌に感じ、愛機のエンジンのうなりが自分の鼓動となる……メカ好きの人間なら、一度は演じてみたい。まさにスペースオペラRPGならではの職業である。サイバーパンク小説だが、ハヤカワ文庫の<ハード・ワイヤード>がそうしたメカを愛する戦士の物語として非常に面白く、参考になる。また、同文庫の<星界の紋章>には、機械的手段ではなく、遺伝子工学で航宙船の操縦などに特化した種族が登場する。かれらの脳には無意識のうちに軌道計算をおこなう部位すら存在しているのだ。スペースオペラを学ぶなら星界の紋章は必ず読んでおきたい。
 ただ、戦闘機や航宙艦の維持費は膨大である点には注意が必要だ。パーティに整備兵を雇うべきかもしれない。上記の一覧表には書かれていないが、操縦士系の戦士なら、整備機材や機械工学の知識も必要になる。搭載する兵器などを調達できる人脈も必要だろう。陸戦を得意とする戦士でも、傭兵なら自分の艦艇をもっていたほうが信頼されやすいし、行動範囲がひろがる。ひとつ頑張って、自前の戦闘機や駆逐艦を手に入れてほしい。


盗賊→特殊部隊など
階級元・特殊部隊隊員
武器短機関銃(狙撃手はスナイパーライフル)、手榴弾x4、閃光衝撃手榴弾x2、拳銃
防具ハード・ボディアーマー
技能白兵戦、逮捕術、射撃、無重量戦闘、戦術知識、隠密、電子技術、爆薬技術、空挺降下
所持品SMG予備弾倉x4、拳銃予備弾倉x1、ナイフ、救急医療品一式、暗視装置または銃器用照明器具、簡易電子端末、降下用ロープ、ハンマー(突入時に窓などを破壊する)、探査機(建物内部を偵察する)、市街戦用戦闘服、宇宙服
所持航宙艦艇シャトル
仕事内容潜入破壊工作、捕虜奪取、人材奪取、暗殺
<詳細>
 ファンタジーにおける盗賊は、屋内や洞窟において罠を発見したり、潜入に長けている。これをSFでおこなうなら、特殊部隊であろう。
 特殊部隊は大別して、軍の所属か警察の所属かに分類される。むろんそのまま軍人や警官とすると、気軽に銀河を放浪する冒険の旅にでられないので、上の例では「元・特殊部隊」とした。
 まずは軍の特殊部隊から説明する。
 正規軍を投入できない事情があるとき、密かに敵の軍事施設に潜入して情報収集や破壊工作、捕虜奪還などの危険な任務を実行する精鋭……それが特殊部隊である。破壊工作だけでなく、現地人を正規軍の味方につけるために広報活動をおこなうこともある。
 戦争がはじまってからは、敵の後方に大部隊で降下する空挺部隊も、特殊部隊といえる。主力部隊のための陽動や撹乱を任務とするのである。
 こうした軍の特殊部隊は野外での任務が多く、その場合、装備などは前述の「宇宙傭兵」と同じになる。ただし、正規軍未採用の試作用火器などをまわしてもらえたりもする。
 まあ、ファンタジーRPGのシーフと関連づけるなら、あくまで建物への突入・潜入を任務とする特殊部隊にかぎることになるだろうか。とはいえ、敵基地まで長距離を走破し、それから基地に潜入するなどという場合、装備・技能は宇宙傭兵との中間になるはずである。

 警察の特殊部隊は、ふつうの警官では対応できない凶悪犯罪に対抗するための部隊である。戦闘範囲は、25mていどまでの接近戦が多い。あくまで警察なので正当防衛以外では犯人を射殺しないが、精鋭であることに変わりはない。武器も防具もふつうの警官より重装備となる。篭城事件や航宙船ハイジャック事件などで内部に突入して戦う。(とはいえ実際は犯人との交渉で事件の90%が解決される。警察の特殊部隊は滅多に銃撃戦をおこなわないのだ)
 屋内や船内の戦いでは、弾丸が敵を貫通したり跳ね返ったりして−−跳弾という−−、設備や人質に被害をあたえると困るので、貫通力の低いものをつかう。また、狭い場所でも扱いやすい小型の火器を選ぶ。ここが野外で戦う傭兵や兵士と違う点だ。
 屋内戦では跳弾がとびかって危険なため、床に伏せたり障害物に隠れながらの戦闘となる。そのへんを意識して演技しよう。戦闘開始時は必ず、障害物にかくれることを宣言するとよい。また、銃器は片手で扱えるようにすること。犯罪者逮捕や人質確保のときに一方の手をつかえて便利だからである。とはいえ、短機関銃を片手で制御するのは反動が大きく難しい。
 隊列の先頭となる人物は、部隊を保護するために抗弾盾をもつことがある。2人目は、曲がり角を安全に確認するため、伸縮式の手鏡をつかう。
 また、部隊を援護するため、建物周辺に狙撃班を配備したほうがよい。狙撃手と監視員で構成され、必要に応じて犯罪者を狙撃するのである。自動防衛システムを外部から破壊することもできるだろう。
 警察の特殊部隊では、人質をとったり起爆装置をもった犯罪者を最初の1発で射殺せねばならないため、100m以内に狙撃班が配置される。1000m以上から狙撃することすらある軍隊とは性質が異なるのである。射撃精度は、100mの距離から500円玉を撃ちぬくほどだ。
 仕事内容は、以上の性質からすると、企業に依頼され機密を競合企業から奪取したり、軍の陰謀をあばくなどになる。屋内戦を得意とする以上、電子錠や自動防衛システムに対処する技術をもたねばならない。コンピュータに関する知識も要するだろう。SFではコンピュータ網や偵察用ロボットを使って、事前に建物の内部構造を把握しておくことができる。作戦立案などに積極的に利用しよう。強力な銃器が存在するSF・RPGにおいて、作戦もたてずに突入するなど、自殺行為である。
 
  魔法使い→ハッカー、超能力者など
階級ハッカー
武器拳銃
防具ソフト・ボディアーマー
技能電子技術、電子工学、無人兵器操縦・整備
所持品拳銃予備弾倉x1、暗視装置、電子端末、各種ソフトウェア、通信機器、各種無人兵器
所持航宙艦艇シャトル
仕事内容情報収集、電脳戦
<詳細>
 スペースオペラは娯楽性が強いが、それでもSFである以上、科学っぽい雰囲気が必要である。「魔法」が存在するとそうした雰囲気をそいでしまう。間接的に味方を支援したり、敵を攻撃するという役割から考えてみると、魔法使いはハッカーに近いといえるだろう。
 なにしろ宇宙SF・RPGの舞台になるのは、高度な情報化社会である。電子頭脳(コンピュータ)を自在に操れるハッカーなら、情報収集はもちろん、敵の指揮系統を混乱させたり、戦闘機や宇宙戦艦を操ることすらできよう。近代戦においては情報収集と作戦指揮がなにより重要なのである。電脳をのっとって命令系統を破壊するだけで、勝利したも同然である。戦闘機や戦車にも電脳が搭載されており、これが制圧されるとまともに戦えない。さすがに、拳銃やライフルのような単純な火器は電子頭脳とは無縁だが。
 ハッカーの電子技能は、味方の援護どころか、勝敗まで決するほどの重要性をもっている。その気になれば一国の軍隊はおろか、経済や政治まで撹乱することが可能だ。これは強力な魔法使いに匹敵する働きぶりといえる。
 さらに、スペースオペラにおいては各種の無人兵器を操作するのもハッカーの役目となろう。ハッカー本来の役目ではないが、電子技能に秀でているからである。無人兵器というのは、たとえば無人偵察カメラや無人攻撃機など。<スター・ウォーズ 帝国の逆襲>や<エピソード1>に無人偵察ポッドがでてきており、参考になる。これは、魔法使いでいうなら使い魔や召喚魔法にあたるだろうか(笑)。
 偵察ポッドのような無人兵器は現在でも米軍などで開発中であり、スペースオペラ世界では発展しているものと思われる。毛細血管の中を通れるナノテク兵器から無人戦艦まで、ありとあらゆる形態が考えられよう。無人兵器は人的被害をださないですむため、米国のように世論を気にする国家や団体には必須だ。また、人が乗らないため、有人機では行えないような作戦をおこなえる。たとえば生命維持装置が不要なので、長期間の待ち伏せ・隠密行動ができる。人間が耐えられないような高機動戦闘もおこなえる。実際、現代地球ですら戦闘機の性能限界は機械工学によってではなく人間の肉体によってもたらされているという。反面、柔軟な判断能力は人間のほうが上回っている。将来的にはこれも人工知能で代替できるかもしれないが……。
 初心者ハッカーでも、電脳網をつうじて事前に敵の情報収集をしたり、味方が潜入する航宙船の設計図を入手するぐらいはできよう。突入や潜入前の作戦立案は近代戦では必須である。実際の潜入がはじまってからは、敵の防衛システムをハッキングして味方を援護することが重要な役目だ。ハッカー系の傭兵諸君には、おおいに腕をふるってもらいたい。

 超能力者について。科学的・理論的に説明できれば、「超能力者」という存在がSFにあってもおかしくない。<スター・ウォーズ>の<ジェダイの騎士>や、マンガ<星方武侠アウトロースター>の<TAOマスター>などがすぐ思い浮かぶ。しかしこの2例は、たぶんにファンタジー的要素を意識しており、本質的にはSFにそぐわないといえる。理論的な説明がなされていないのである。スペースオペラとはいえ一応SFなのだから、安直に超能力者という設定を採用することは避けたい。超人的な存在をあえて描きたいなら、せめてマンガ<強殖装甲ガイバー>のように、遺伝子工学でビーム発振器官をそなえるとか筋力増幅された肉体になるとか、そうした方向性を模索したい。現代の科学に忠実である必要はない。ただ、それっぽく感じられる程度の設定は必要だ。


僧侶→星間商人・学者など
階級銀河考古学者
武器拳銃・電磁ムチ
防具ソフト・ボディアーマー
技能銀河考古学、銀河民族学、電子技術、射撃、ムチ戦闘、白兵戦、アクロバット、戦術(罠解除に専門化)、車輌操縦、戦闘機操縦
所持品拳銃予備弾倉x3、電子端末、学術調査用器材、登山用具、古代銀河帝国翻訳機、古代語辞書、万能宇宙手帳
所持航宙艦艇戦闘機、駆逐艦
仕事内容学術調査
<詳細>
 スペースオペラは科学が発達した未来宇宙を冒険する物語である。したがって、ほとんどの場合、神や悪魔は実在しないことになっている。つまり、ファンタジーRPGにおけるほどには僧侶という階級が権力をもっていない。もちろんSF世界でも宗教はあってもおかしくはないので、宇宙宣教師というのも悪くはない。しかし、悪魔やアンデッドを相手どって戦うというような場面は存在しようがないので、他の職業と比肩しうるほどの見せ場がない。SFによっては「もはや人類は宗教を必要とするほど幼稚ではなくなっていた」として宗教そのものが存在しないという世界設定のものすらある。
 そこで例によって職業の性質から考えてみる。
 ファンタジー世界では宗教や科学が完全に分化しておらず、魔導士ギルドや僧院が現代の大学がわりになっていることがある。中世ヨーロッパの庶民は文盲ばかりで、知識は書物をよめる僧侶に偏っていた。つまり、僧侶というのは、ファンタジー世界における知識階級の代表であるといえるわけである。難しい聖典や経文を覚えるという行為が、それを象徴しているといえよう。
 武器に頼らず、知識欲を動機として大宇宙を冒険する職業というと、学者や星間商人である。商人は知識というより商売が目的だが、戦闘系の職業でないという点で一致している。

 学者は、野外調査をする分野を専攻とする人物だと物語に参加しやすいだろう。たとえば民族学や動物行動学など。宇宙植物学や宇宙古生物学もおもしろい。清水パラフリ世界では、傭兵学者などというわけのわからない職業まで存在するほどである(笑)。白衣が似合うようでは宇宙を冒険するには向かない。映画<ジュラシック・パーク>の古生物学者のように、普段着で野外をとびまわるような学者こそ大宇宙を冒険するのにふさわしい。
 ほんらい宇宙傭兵は、戦いについての専門知識をかわれてメシを食うわけである。学者もそういう生き方を選び、大宇宙をとびまわることがあってもおかしくない。とくに、銀河考古学は物語に生かしやすい。滅亡した古代の銀河帝国、という設定はスペースオペラでよくみかける題材である。そうした遺跡には優れた科学技術の産物が眠っているため、企業や軍がらみの争奪戦にまきこまれたりして面白いだろう。ただ盗掘して遺物を売り払うだけでも生計がたてられるかもしれない。
 もっとも、スペースオペラにおける古代遺跡には先端技術による自動防衛兵器が備えられているだろうから、潜入は命懸けである。古代の超兵器を狙う企業や軍の工作員との戦闘もあるだろうから、最低限の武器や戦術知識は必要となる。いやもちろん研究室にだけ閉じこもっていればそんな危険には巻き込まれないのだが、やはりスペースオペラRPGたるもの、派手な展開にもっていきたいものであるからして……。
 銀河民族学者も面白いだろう。広い宇宙にはさまざまな種族が存在している。その文化的軋轢から生じた揉め事を仲裁するために、学者が相談をうけ、現地にとぶことがあると思われる。そしてもちろん、その種族の特殊な風習についての知識がかけていたりして、学者本人も揉め事にまきこまれるのだ(笑)。
 また、宇宙怪獣の弱点を調査するために学会から派遣される、ということもあるだろう。いかに奇妙な種族・風習を設定できるかで、この種のハナシの面白さは決まる。GMは、日頃から生物図鑑や、旅行記のようなものを読んでおこう。スペースオペラ脚本の発想は、まず地球にあるオモシロイ事柄を宇宙規模に拡大することから始まるのである。
 あとは、昔のスペースオペラにあったように、珍しい宇宙生物を集めて回る宇宙動物園園長というのも良い。この場合の階級は生物学者、とくに宇宙動物行動学者であろう。この場合、生物学といっても、分子生物学などではなく、生態学の分野を主にあつかうことになる。希少な宇宙生物の保護のため、密猟者と戦う生物保護要員というのもありうる。いわゆるレンジャーである。この場合、生物学知識のほかに戦闘用の車輌と火器、それらを扱う技能が必要になる。宇宙生物の捕獲を職業とする男を描いたマンガ<ベムハンター・ソード>が参考になるだろう。
 生物学といえば、<宇宙船ビーグル号>(ハヤカワ文庫SF)が面白い。学者たちが宇宙のあちこちで遭遇する、信じられないような奇怪な超能力を持った生物とのやりとりを描いている。主人公たちが科学者であり、非常に参考になるだろう。余談だが本書に出てくる猫型の知性体クァールや、壁抜けできる超生物イクストルはSF界では有名な連中だ。1度は読んでおこう。
 また、環境保護というのも文明が発達したSFの世界ならではの題材であり、ファンタジー世界との差別化がはかれて面白くなる。各種の環境保護法や、逆に企業を保護する法律なども設定するとそれらしくて良い。そう、場合によっては環境汚染物質を排出する巨大企業と戦うこともありうるのだ。そうした企業は金にモノをいわせて優秀な傭兵や海賊を雇うだろうから、激戦が予想される。あくまで学者であるから、その場合はこちらも傭兵を雇うべきかもしれない。インディ・ジョーンズのように自分で戦うのも悪くないが。

 次に星間商人である。文字どおりの職業だが、これが実は大穴なのである。星間商人はスペースオペラでは花形の職業で、思いつくだけでもR.A.ハインラインの<銀河市民>(ハヤカワ文庫SF)、パラフリRPGの企業国家<しきがみおえど>などがある。<星界の紋章>でも設定上重要な役割をはたしている。運輸業まで含むと、<宇宙人ビッグス>、<惑星カレスの魔女>(創元SF)やアニメ<宇宙船サジタリウス>など、さらに範囲が広がる。<スター・ウォーズ>のハン・ソロも実は密輸を請けおう非合法の運送屋であった。
 一口に商人と言っても、個人で運輸業をおこなうものから貿易をおこなう巨大商社までさまざまである。共通するのは、商売の過程で宇宙を飛びまわるということだ。これは、宇宙での冒険を楽しむというスペースオペラの醍醐味に直結した職業であるといえる。だからこれほどまでにあちこちの小説などで脚光をあびているものと思われる。さまざまな惑星世界や種族と接して営業をおこなうのは、困難もあるだろうが非常に知的な冒険心を刺激される行為だろう。ぜひ挑戦して頂きたい。
 商人とはいっても、おもに運送や貿易関連の商業活動が多くなるだろう。とくに運輸業は、もはやスペースオペラの王道ともいえる。SF界では、戦闘機をもつ主人公より貨物船をもつ主人公のほうが多いのではないか?
 なお、星間運輸業をやるなら自前の船をもっていたほうが信頼される。辺境では航宙船(宇宙船のこと)が不足しているから自分の船があれば稼ぎやすい。それにスペースオペラでは航宙船は相棒ともいえるメカだから、自分のものだと愛着がわいて地に足がついた演技ができるだろう。どうせなら改造して個性を出したい。戦闘機とも互角に戦える改造貨物船で軍隊すら翻弄してしまう<ミレニアム・ファルコン>(映画スター・ウォーズ)の勇姿は忘れがたい。
 あまり惑星土着の文化や風習が絡んでこない金融業などは、いまひとつスペースオペラの題材としては生かしにくいと思われる。保険会社の調査員などは、事件に巻きこまれやすくて面白いかもしれない。まず事故が発生して、その調査のために現地に派遣されるのであるから。ハリウッド版ゴジラや平成ガメラの1作目でも主役の1人は保険会社の人間であった。
 傭兵や特殊部隊は紛争など揉め事がないと出番がないものだが、商人はいつでも活躍できる職業である。それに現実にある職業だから親近感がわいて、現実感ある演技が出来る。これも利点の1つだろう。
 とにかく、宇宙時代の商人であることを心がけたい。現代以上に対象は幅広いだろうし、独自の金融・経済機構なども考案するとファンタジーとは違った雰囲気をだせる。むろん、それらは現実のものを流用するだけでも、グッと雰囲気が本格的になること請けあいである。
 なお、交渉が中心となる商人は、強力な武器をもつ必要はない。客に威圧感をあたえないため、武器や防具の類はあまり装備しないほうが良い。社交系の判定で不利になるおそれがある。
 戦闘では商人はめだてない。主に取り引きや交渉場面が見せ場になる。仲間が火器や航宙艦の部品を買う場面でも、君の交渉能力が生かせるのだ。なにしろ冒険には資金がかかるので、そうした能力は貴重だ。


亜人類→異星人など
階級ナマコ人傭兵(棘皮系種族)
武器内臓噴射砲
防具ソフト・ボディアーマー
技能水中戦闘、ナマコ戦闘、水中電子技術、水中車輌操縦
所持品予備内臓x2、水中電子端末、カクレウオ予防薬、詩集
所持航宙艦艇特殊駆逐艦(潜水艦にもなる)
仕事内容海底戦闘や沈没船引き上げなど
<詳細>
   地球人もしくは地球系の種族ではない、全く異なる星で生まれた者たちをさす。地球人でも他の星でうまれれば「異星人」だろうが、ここでは体の構造じたいが異なる異種族のキャラクタをさしている。世界設定によっては地球人以外の知的生命は存在しないこともあるが、異種族がいる世界を前提に講義する。だってそのほうが面白いもん。まあ、上の表にあげた一例は極端もいいところだが。

 存在感としてはファンタジーのエルフなどと変わらない、人間そっくりで髪の色や耳のカタチが違うだけ、という異星人も多い。<スター・トレック>のヴァルカン人スポックはこの典型だ。
 しかし、ファンタジーと違って、宇宙SFでは突飛な生物との出会いが楽しみの1つとなっている。そう考えるデザイナーがつくったTRPGでは、多様な非人間型の異星人が登場するはずだ。最近だと<スター・ウォーズ エピソード1>にでてきた悪のレーサー(笑)セブルバが面白い。腕で歩いて足でハンドルを握る小人族なのである。基本的な体の形態からして人間離れしていると、RPGの演技上は制約が多くなるだろうが、そのぶん「異星人を演じている」気分に浸れるだろう。逆にいえば、人間に近いカタチをした種族のほうが初心者むきである。
 SFでは「価値観の転換」が魅力となる。異星人の設定にもそれが顕著にあらわれる。ハインラインの<宇宙怪獣ラモックス>に、地球人の狩人が奇妙な生物を射殺、剥製にしたところ、それがじつはその星の大統領夫妻であった、という挿話があった。むろん星間戦争になりかかってしまうのだが……。要するに、それほどまでに地球人からかけ離れた姿をしていても、知的生命であるというところに「驚き」を感じさせてくれるわけである。<ウルトラセブン>のチブル星人やヴィラ星人なども、とても知性体に見えぬ独創的な形態が興味深い。
 とはいえあまりに独創的すぎても演技しづらいので、そこそこ人間的な「獣人」系種族がよく設定される。たとえば<スター・ウォーズ>のチューバッカやイウォークのような類人猿的な種族。手足の数や身長は人間と同じだが、多毛であり、仕種や言語も地球人と異なっている点が異種族らしい。
 猫系種族も人気がある種族だ。昨今のアニメをみる限り、このてんは説明不要だろう。欧米SFでも<ノーストリリア>のク・メルなど、魅力的な猫娘がみかけられる。
 余談だが、なぜかSFと猫は縁がある。いくつかのSF作品に有名な猫がいる。<星界の紋章>のディアーホや<夏への扉>のピートは忘れがたい。ドラえもんも猫型ロボットだ。
 爬虫類、昆虫、水生生物などに似た異星人は、さらに異種族らしさが濃厚となる。このみが強く別れるところである。親しみを感じにくいため、スペースオペラや怪獣映画では敵役として登場することのほうが多い。たとえば<ガメラ2 レギオン襲来>の宇宙大群獣レギオン、ウルトラマンのバルタン星人など。こうした種族をそれらしく演じられるというのは、変わり者だが相当な実力者なのだろう。
 水生生物に至っては、宇宙服ならぬ「空中服」を着用しないと我々とともに行動できないのだ! あるいはこちらが潜水するか。しかし、深海底に広がる水中都市という情景はSF愛好家のココロをいたく刺激するようで、あちこちでみかける。最近ではスター・ウォーズ エピソード1のグンガン人の都市<オータ・グンガ>が良かった。<アビス>にもある。これの類推で、木星のようなガス惑星に浮遊する文明圏も考えられよう。ペガッサ星人のペガッサシティのような星間都市もおもしろい。
 そもそも異星種族では呼吸する大気の組成すら違って当然、という解釈のSFもある。マンガ<21エモン>では、客の多くが宇宙服、というか「地球服」をきてホテルにやってきていた。TRPGでは、演技上の制約との兼ね合いが必要になるところか。
 外形は地球人と同じでも、性別や繁殖形態で差をつけるというのも常套手段である。萩尾望都の<11人いる!>などを参考にしたい。放射線が強い環境下で進化する生物では、性別が多くなるとの指摘もある。遺伝子欠陥のホモ化をふせぐためであろう。カタツムリのような「雌雄同体」も面白いが、高等生物では一般的な繁殖戦略ではない。特殊な環境を設定してやる必要がある。

 種族というより道具かもしれないが、ロボットという存在もスペースオペラではよく見かけられる。人間と対等な存在である機械、というのは好奇心と同時にかすかな恐怖もかんじさせ、SFらしい題材だ。ただ、現在ではアシモフのロボット3原則が広く認知されているから、人間社会に対してロボットが反乱をおこす、というような筋書きは通用しまい。
 世界によってはロボットが人間と同じ権利をもっていることもあろうし、単なる自動機械としてあつかわれていることもある。それぞれの世界観を把握した上で演出・演技したい。
 殺戮のためにだけ作られた自動兵器が、創造主である種族すら滅ぼしたあとでも活動をつづけ、宇宙を放浪することがある。これは狂戦士、バーサーカーとよばれ、宇宙旅行者のあいだでおそれられる。なにしろ機械は恐怖をかんじないし、刺し違えてでも人類を滅亡させようとする。敵にすると厄介な相手だ。形態としては小型の細菌兵器のような機種から大型の自動戦艦まで、さまざまなものが考えられる。バーサーカーが自己修復だとか繁殖機能(!)まで備えると、他の文明圏にとって大きな脅威となる。この恐怖を克明に描いているのが、実は<ガメラ2 レギオン襲来>である……という風評がSF愛好家のあいだでささやかれている。レギオンはただ街をこわすだけでなく、種族ぐるみで地球の生態系をまるごと改変しようとする恐るべき宇宙怪獣であり、一見に値する。

 職業や装備について。
 およそあらゆる生物が元ネタになりうるので、いくらでも考えられる。その生物ならではの習性や文化をうまく表現できるよう設定したい。小道具ひとつとってもその種族を雄弁にものがたるものである。たとえば映画<プレデター>の宇宙狩人は、人類のような知的種族の狩猟を楽しむ性癖がある。かれらの装備は反重力カッターやヒート・レザー砲、伸縮式の槍など武器のかたまりであった。きわめつけは、腕に装備した核自爆装置だ。
 かれらは、捕まえた人間を手早く処理して記念品に加工する薬品・器具、さらには救急医療用具までもっている。こうした点が、かれらが日常的に狩猟をしている種族であることを視聴者にうかがわせる。<プレデター2>では、アパートの壁をすりつぶして処理し、薬にする場面があった。そうとう狩猟文化が長く維持され、宇宙のあちこちを調査しなければあれほどまでに汎用性が高い治療器具は開発できまい。(と、ほんの1場面だけからでもアレコレ考察するのがSF愛好家の楽しみなのである)
 アシモフの<ロボットの時代>に登場するアンモニア呼吸生物の軍隊では、酸素を兵器として使っていた。種族がかわると武器すら変わるという好例である。かれらガニメデ人のレーザー砲は、最高出力でも対象物を摂氏30度ていどにまでしか熱しないが、これも極低温に生きる生物にとっては残忍な武器となりうる。また、アニメ<宇宙海賊ミトの大冒険>には、水に触れると火傷してしまう種族がいた。元ネタは<たったひとつの冴えたやり方>(ハヤカワ文庫SF)であろうか。

 総じて、異星の種族を設定したり演じるのには、多少の考察と勉強が必要といえる。科学雑誌、動物雑誌や生物図鑑を日頃から読む習慣をつけたい。ただ外見を面白がるだけでなく、動物の図鑑などをよみ、その元ネタである動物の習性を役割演技におりこむとSFらしくなる。そうした特異な習性や文化的差異が元で脚本がうごきだすこともあり、馬鹿にできない。そういう演技や勉強を煩雑に感じる人なら、異種族を演じたり設定しないほうが良い。地球人しか出てこない宇宙SFだっていくらでもあるのだから。労力は要するが、異星人はスペースオペラの魅力を端的に象徴する存在である。挑戦する価値はある。



ギラ「どうだったかな。文中でSFの定番的な概念をさらっと述べたりしているから、何度も繰り返し読むといいわよ♪」

ギラ「次の講座よ。SFによくでてくるアイテムについて勉強しましょ(^^)」


ギラ「ココからSF・RPG講座の一覧へ!」


ギラ「ココから表紙へ戻れるわ。って、もう戻るの?」