熱砂の竜

 極楽艦隊RPG遊戯議事録1

  2  船。またの名を鉄の棺桶

 オービタル・ファウンテン。元来は、スペースファウンテン(宇宙噴水)と呼ばれてい たこの施設は、ある程度以上の経済力のある惑星には必ず建設されている。原理的には、 噴水の頂点に乗ったピンポン玉が落ちてこないのと同じで、そのピンポン玉が宇宙ステー ションに当たるわけだ。何といっても、熱核エンジンなどで衛星軌道に上がるより、こう した軌道エレベータの方が遥かに経済的で手軽であるというのが、普及の理由であるらし い。

 電磁加速器により、秒速数十キロで軌道上に向かって打ち上げ続けられる磁性体の流れ をチューブで包み込み、頂点に設置した強力な磁石で上昇流を下降流へと歪曲させる。こ れがこの施設の基本構造である。
 その磁石の上に建設された宇宙ステーションのドックに、いまリンダたちはいる。



GM「……今、君たちの目の前にあるのは、かなり使い込まれた感じの旧式貨物 船だ。詳しいことが知りたければ、雑学か何か、知性関連で判定を」

リンダ「雑学? そんなのもってないよ。もういいや、これでやる!(といって 1枚、カードを出す) 9」

志尾原「俺もやりまーす。……5(笑)」

GM「……失敗したようだね」

リンダ「おい、引き分けだとダメか?(GM側も9だったようだ)」

GM「むう、どうだったかな。まあいいや、わかったことにしよう」



 <一般判定>や<対抗判定>(戦闘などに使う)において、引き分けというのはその行 為が失敗したことを意味する。PCはGM側のカードに勝たなければならない。
 但し、<交渉判定>だけは引き分けは引き分けとして処理される。
 とにかく、この時のGMの判断は誤っているわけで、以後の セッションでは判定が厳しくなるものと考えていただきたい。



GM「この船はね、マクダネル=コスモダグラス社の旧式貨物船だ」

「なんかどっかで聞いたような(笑)」

GM「特色としては、宇宙船には珍しい双胴型でね。胴体が二つ、並んでいて、 エンジンなんかはその間にあるわけだ。安全性重視で経済性を切り捨ててるんだろう、ブ リッジなどは2つづつあるようだ。そういう船だ。かなりボロボロだけどね。

さて、そこでエアロックがガシュンと開いて、トランが相変わらずハデなアーマーを着 たまま(笑)、
『ああ、来たわね。さあ、入って入って!』」

「よ、ねーちゃん♪」

「いいなあ、ああいうお洋服ほしいなあ」

リンダ「あんなモンはね、フリフリなだけで全然、防御力がないのよ。こういう 風に洗練された黒のスーツの方がいいのよ!
(この人、シャドーダンサーとか自称してたんだっけ、そういえば)」

:1999年10月現在では、北川氏は「恥ずかしい」と、この設定を否定しておられ る。

GM「ふん、それでも女の子なの?」

リンダ「生き延びるためには仕方ないのよ……」

GM「魚さんに向かって、『あなたはちょっと、近づかないでくれるかしら(笑)』」

「そんなこと言わんで姉ちゃん(笑)」

志尾原「何か欲しい場合は、言っていただければ本社から取り寄せますので」

GM「『これはどうも……』といって、つい腰が低くなる」

リンダ「なんか、キャラクターが違う(笑)」

GM「さて、じゃあ発進なんだけど。『やっぱりここは、あなた方に操縦してほ しいわねえ』
 [操艦]だから、知性(INTのこと)だね」



 [操艦](INT)と[操縦](DEX)、[砲撃](INT)と[射撃](DEX)は似て いる技能だが、はっきり異なるので注意されたい。
 なお、INTは知性、DEXは、器用度と素早さを示す数値である。

 操艦、砲撃は、コンピュータを介する大型もしくは複雑なメカニックを操作する場合に 用いる技能である。
 例えば、射程が数千キロにも及ぶ対艦ミサイルは、コンピュータの補助なしには発射で きないので[砲撃]技能を用いることになる。



リンダ「知性……うーむ」

志尾原「知性……やりましょう。一番高いですから」

GM「あ、発進する前にみんな、難易度3、知性で判定してもらえるかな」

「どうすればいいんですか?」

GM「魚さんは知性(INT)が4あるから、4枚までカードを出せるんだよ。 1枚しか強いカードがなかったら、あと3 枚は捨てるカード(弱くて役に立たないカード)を出せばいい(これも戦略である)。別 に、1枚だけ出してもいいけどね」

志尾原「じゃ、10でいいや」

他一同「12」

GM「じゃ、12の人は分かるんだけどね、普通、宇宙船舶のブリッジには船籍 証書っていう、その船の所属している港……船籍港っていうんだが、それを記した書類が 必ず掲げてあるものなんだけど、ナント! どこを見てもこの船 にはそれがない。
 船籍証書は航宙管制局に登記・登録を行った証明となる重要な書類でね、これを備えて いないってことは、法律上何ら保護を受けられないってことなんだ(つまりは海賊船か盗 んだ船ってことなんだが、これを言ってしまうと、ちょっとあからさまに怪しいからな… …)」

志尾原「じゃ、俺1人だけが『よおし! やるぞお!』って張り切ってるわけで すね(一同笑)」

リンダ「これ、船籍証書ついてないじゃない!(笑)」
GM「……って言うの?」

「いえ、耳打ちで、『お姉ちゃん、この船なんか足りないんだけど』」

リンダ「足りないね(笑)。志尾原、志尾原……この船、船籍証書ついてないわよ (ひそひそ)」

志尾原「……ナニ!?(笑)」

GM「『なにひそひそ話してるのよ。さ、あんた方さっさと発進してちょうだい!』 と、席に座ってシートを後ろからガンガンけってます」

一同「うわあ(笑)」

志尾原「まいりましょう」

リンダ「なんか信用できないわね、このクソ女」


 わいわいと騒ぎながらも、どうにか船はステーションを発進した。ボロいエンジンが何 やらボゴンボゴンと怪しげな音を立て、一同の不安を一層かきたてるのであった(笑)。



 志尾原君が熱心に各種保険への加入を勧める一方で、

GM「ちょっとあんた、汗くさいわよこのスーツ!」
リンダ「この洗練されたスーツの良さがわからないの!? この黒い光沢! 美し さ!」
GM「ふっ、ピンク色じゃない服なんてダメね」
リンダ「あんたピンクハウスの申し子かいッ!」

 と、女どもの不毛な争いは続いている……。



GM「さて、星系は1時間ほどでぬけるから、そろそろ超空間航法、いわゆるワ ープに入ってもらえるかな(この世界では正確には、無限数存在点支配航法、通称<ジャ ンプ航法>というようだ。ルールブックにちゃんと書いてある) 」

リンダ「ワープに入る瞬間にブッ壊れるんじゃないの?」



 普通、ジャンプ航法でも難易度は3。一行は判定に成功し無事、超空間へ。
 ちなみに、この世界では20光年進むのに1週間かかる。

(後にこの設定は変更された。ジャンプ自体は一瞬で完了する。が、星系からの離脱と進 入にそれぞれ1日づつかかるので、結局20光年の超光速移動には、2日かかることにな る)



GM「窓の外は一面、灰色の超空間に。あと2週間はこのままだ(本当は一週間 でした。すみません……)(だから、2日だけだって! >過去のオレ)」

「つまんなーい」

志尾原「仕事ですから」

リンダ「あと2週間もこの女と一緒……」



 ところで、ギョギョは趙さんを誘惑せんのだろうか? と、なぜか一同盛り上がる。



「15歳は対象外ですから。16歳から(笑)」

志尾原「16歳の女性ですか? 当社でご用意致しましょうか。もっとも、裏ル ートですのでお値段の方は少々……」

GM「おいおいおい!」

リンダ「……ところでふと思った。あたしには反応しないの?(一同爆笑)」

志尾原「女性らしくなるために、当社の方でお洋服などいかがでしょうか(笑)」



GM「数時間が経った。今どき伝声管で(笑)、『メシよお、みんな食堂に集まっ てえ』と、トランの声が」

リンダ「伝声管……いったい何なの、この船(汗ジト)」

「ごはんごはん♪」

GM「食堂もねえ。プラスチックのテーブルのあちこちに油がういてるわ、宇宙 ゴキブリがカサカサ這ってるわ、そんな感じだ」

リンダ「宇宙ゴキブリ……」

GM「そう、芋ようかん食わすと巨大化するんだよ(笑)」

 ナント、ここで趙さんら、爆笑する。

GM「このネタがわかるとは君たち、やるねえ!」

「すいません、わかります(爆笑中)」

 分からない人は、<激走戦隊カーレンジャー>を観よう(笑)。

GM「で、まあ、食事を始めるんだが。もちろん合成食品だ。まずい。」

リンダ「まずい(笑)」

志尾原「仕事ですから我慢しましょう」

「ぶー。材料さえあれば、作っちゃうのになあ」

GM「料理技能(あるとすればDEXか)もってんの?」

「そうじゃないけど、両親はたぶん中華料理屋だから。たぶんこの中で一番怒 ってるかもしんない、内心。『まずいまずーい、まずうい!』」

リンダ「(テーブルをばんばんと叩きつつ)こんなクソ女なんて、もお!」

志尾原「……仕事に私情は挟みません」

GM「『どうでもいいけどあんた達、本人の前で悪口いわないでほしいんだけど (怒)。まあいいわ……』と言ってこの人、いきなりスッと立って胸元からサブマシンガ ンを抜くわけよ。
 で、セイフティロックをガチャっと解いてだね、君たちに向けて発砲する。『どぱらた たたたッ!』ってな。
 ……さて、みんな回避してもらおうか」

「か、回避ですか(笑)」

リンダ「もう怒った! もうヤツ、殺す! もう殺ス!!」

GM「もう殺ス! ……というわけで、難易度判定(一般判定)でいいかな(こ こでは彼女の真意が攻撃ではなかったので)。難易度4で、みんなDEXで回避してもら おう」

リンダ「DEX回避でカウンター決められる?」

GM「いや、無理。STR(筋力、身体強度)じゃないと」


 白兵戦(斬り合い、殴り合い)では、防御側はSTRかDEXの好きな方で回避できる。
STRで回避すると、<大成功>(相手のカードを2枚以上、上まわった場合。多くの 場合、切り札による)した場合、<カウンター攻撃>をおこなえる。

防御側は、うわまわった分の札を攻撃札とみなし、攻撃者をカウンター攻撃できるので ある。攻撃者はこれを回避か防御しなければ、ダメージを食う。
大成功レベルが2以上(4枚以上カードが相手を上回っているとき)なら、追加ダメー ジも加わる。

リンダはこの攻撃が得意らしいが、今回は銃撃の「回避」なので、カウンター攻撃は不 可である。
カウンター攻撃するには、STRで「防御」せねばならない。



志尾原「食らっても大したダメージは受けないでしょう」

GM「サブマシンガン(SMGと略す。短機関銃のことで、屋内戦で特に有効な 火器である)はね、ダメージが3で巻き込みダメージが1。そのうち巻き込みについては 解説するよ。じゃ、みんな出してくれるかな……あ、ジョーカーだけで出しちゃダメなん だよ。何かと組み合わせないとね」

 結局、一番強いカードを出せたのは(つまり、いちばん素早く回避できたのは)趙さん であった。

GM「さて、ひとしきり部屋に轟音が響き渡るんだが、君たちには何事もおこら ない。空砲だったんだ」

リンダ「はーん……」

GM「で、トランがつかつかと趙さんに歩み寄って、『ふうん、あなたが一番デ キるようね』といって、さっきのクリスタルを、すちゃっと渡すわけだ」

「きれいきれいきれい♪」

リンダ「何なの、コレ?」

GM「だから、これはフェルテクト集積体ってやつよ。あなたねえ、傭兵やって てそんなことも知らないの? ったく」

リンダ「ぶちっっ(怒)」

GM「これはね、古代銀河帝国の遺跡からよく出てくる、情報蓄積媒体なんだよ ね。個人のID票として使われることもあれば、軍事機密処理に使われることもあるとい う。
 外からじゃ、中に何が入ってるかは分からない。
 で、トランが趙さんに言うことには、『絶対、肌身離さずもってること! これはどん なショックや電磁波くらっても壊れないけど、とにかく狙ってるヤツが多いんだから』」

「じゃあ、ペンダントにして首から下げときます」

GM「お風呂に入るときでもつけててほしいくらいよ」

志尾原「胃の中に入れておくとか。誤って大で出さないようにお気を付けを」

GM「あのなあ……(真面目な顔して言うなよな……)。
『特にARACアークとか、有名な某傭兵なんかに渡したら、もうあんたが たの身の安全なんてないも同然だからね』」

リンダ「ちょ、ちょっとまて! その某傭兵って一体!?」

GM「ふっ、決まってるでしょ。『彼女』よ」

リンダ「くふふうっ……と、1人、凍ってる(笑)」

GM「『もちろんコレ、はっきり言って禁制品だから、ARACとか現地の治安 組織に見つからないようにね』……と、声をひそめる」

リンダ「見つかったら射殺かい!? 趙さん、それ、気をつけてね」

「うん」

GM「じゃ、もうすることないかな?」

リンダ「ったくもう、こんな女と2週間も一緒だなんて! と心の中で思いなが ら」

「喜んでる(笑) すっごく喜んでる」

「とりあえず奇麗なものもらったから喜んでると思う」

志尾原「あくまで無感情」

リンダ「……ホントに大丈夫なのかしら……」



 というわけで1週間が過ぎ、ワープアウトへ(本当は1日ね)。判定は引き分けだった ので本当は失敗なのだが、今回のセッションでは成功としてしまった。
 さて、目的のその星とは……。



GM「ワープアウトしてしばらく星系内を行くと、青く輝く惑星が見えてくる。
 ごく標準的な惑星で……若干、赤茶けた箇所が多いかな。……そうか、あんたら惑星そ のものについては何も調べなかったな? まあいいや」

リンダ「し、しまった」

GM「さて、普通、星系内に入ったら惑星上の(航宙)管制塔から交信があるも のなんだが、まったく何もない。で、宇宙船を着陸させるときはクリアランス(管制承認) を求め なきゃいけないんで、とうぜん通信するんだが、そうすると応答が全くないわけだ。
 つまりは、大気圏再突入にあたって誘導管制がまったく行われていないわけで、船独自 の独立航法系だけで降下しないといけない。当然、難易度は上昇する」

志尾原「はい、幾つですか」

GM「まあ待て。そのとき、『これぐらいじゃなきゃ、傭兵やってる甲斐がない ってもんでしょ』と言ってトランがブリッジに出てくる。
 そうするとだな、いきなり照明が真っ暗になって、モニターやら計器類が機能を停止し ちゃうんだよ」

「うわあ」

GM「だもんで、宇宙船は大きくバランスを崩した。態勢の立て直し判定をやっ てもらおうか。とくに、魚さんなんかはコロコロ転がって壁にぶつかってる(笑)」

リンダ「魚さんはどうでもいいけど、クリスタルもってる趙さんが!」

「どうでもいい?(笑)」


 ……で、志尾原君は、態勢の立て直し判定に失敗した!


GM「どうやら重力制御システムに異常をきたしたようだ。船は大きく態勢を崩 して落下していく。
 みんな、転ばなかったかどうか判定を。DEX難易度3でね、まあ魚さんは転んだって 言っちゃったけど(笑)」


 結果は、全員判定に失敗。頭やら尻やらを壁にぶつけて、ダメージが1。

なお、こうした衝撃系のダメージは防具では打ち消せないので注意すること。


「みんな、ごめん! うっかりこいつをつれてきちゃった」
 言って、ポニーテールの少女は拝むように片手を上げる。振り返ったリンダ達は、彼女 の桃色の肩アーマーの上に、闇の塊としか形容しようのないものが鎮座しているのを見た。
 トランが謝っているところから見て、電子機器の機能停止はどうやらこの物体の仕業ら しい。
 そのわだかまる暗闇にトランが声をかけ、手を入れて撫でてやるや否や、照明や機器類 は機能を取り戻した。同時に、その闇の中からは、なにか動物のものらしい鳴き声が漏れ 出てくる。すっかりくつろいだ様子の、甘えた声だった。


GM「ペガッサ星人って知ってる?」

「知ってます(笑)」

 注:<ウルトラセブン>にでてきた異星人のこと。臆病で、いつも個人用の暗黒領域に かくれていた。

GM「やるな。あの<ダークゾーン>にイメージ的には近い。<ソードワールド >の<シェイド>みたいな感じか」

リンダ「なんなの、コレ?」

GM「いやあ、これはね、ある星であたしが捕まえた<エルレリア>っていう動 物なんだけどね」

「とりあえず、頭を撫でようとする」

GM「さわるとね、毛はふさふさしているよ」

「おもしろい面白い!」

GM「でもでも、つるつるしてるところもあるなあ。さらに、ウサギみたいな長 い耳もあって、なんかヒダヒダもあるし、ツメと牙はとんがってるみたいだ。そして肉球 がある。まあ、手触りだけなんだけどね」

「とりあえず、毛のところを触って喜んでる。『かわいー 』……って、顔はあ るんか?(笑)」

リンダ「なんでいきなり電子機器が狂ったの?」

GM「こいつはねえ、<吸電能>って能力をもっててね。幅広いスペクトルの電 磁波を吸収・遮断しちゃう能力があるわけよ」

リンダ「対電子戦には効果絶大だな」

GM「そう! いいところに気がついたわね、あなたにしちゃあ(笑)」

リンダ「ナメてもらっちゃ困るわ(笑)」

GM「たぶん、古代のバイオテクノロジーで創られた電子戦用の生き物だと思う んだけどね」

志尾原「私はどうも身体がだるい」

GM「そうだな、そうなるよな(笑)。まあとにかく、興奮させたりすると電磁 波を一気に吸収、遮断しちゃうわけだ。 で、『ちょっとこいつを部屋に置いてくるわ』 と言って、トランがブリッジを出ていく」

「ねーちゃん♪  といいながら、追いかけます(笑)」

GM「えッ、追いかけちゃうのかい!?」

リンダ「あ〜あ、また行っちゃったわ」

GM「(いまそっちに行かれちゃまずいんだよな)そしたらね、いきなりまた、 ぶわッ! と暗闇が広がるわけだ。何もみえない。わかるのはブリッジの方向だけだ(笑)」

「えー、無視して進めないんですか?」

GM「この宇宙船、旧式なもんで、あちこちにパイプやら梁やら出てて、ぶつか ると痛いよ。それでも行くなら、回避判定をしてもらうけど。行く?」

「やりませんよ(笑)。あきらめて戻ります」

GM「……あれ、そういえば今、態勢の立て直しに失敗してなかったっけ」

「コロコロ転がってますけど(笑)」

「うみゅー」

GM「わかった。じゃあね、エルレリアっていう生き物の話を聞いてる間に、宇 宙船は既に『ドンッ!』って大気圏に突入してて、自由落下状態だ」

リンダ「ぐおおおおお!」

GM「窓の外には真っ赤なプラズマがめらめらと(笑)」

リンダ「ああああああ!」

GM「ちなみに、さっき失敗してるんで立て直しの難易度上げます。難易度6、 INT(操艦技能使用可)。むずかしいぞ」


 それでも志尾原くん、船の態勢立て直し判定に成功!


 船はどうにか適正降下軌道に乗り、大気圏突入を果たした。
 大気の底に降りていくにつれ、天空が漆黒から蒼へと変じていく。眼下には、広大な砂 漠が広がっている。

 駆逐艦モスコ=ミュールが、高度数キロまで降りたときである。唐突に、通信が入った。



GM「『こちらはロア・ギブリ防衛軍防空隊! 貴船は交戦領域に侵入している、 直ちに退去されたし! 貴船の安全は保証できない!』
 無線状態は悪いが、かなり緊迫した声だ。周波数からみて、戦闘機かららしい。窓の外 をみると、惑星上で戦闘が行われているような感じだね」

リンダ「伝声管でトランを呼んでみるかな」

GM「そうか。じゃあ、呼ぼうとしたときなんだけどね。いきなり『どかぁあん!』 つって、船が大きく揺れるんだよね(笑)。どうも、どこか爆発したみたいだ」

リンダ「くうう(苦笑)」


 再び態勢の立て直し判定、難易度10! 今回は、リンダが挑戦。シナリオの都合上、 ここは絶対PCに失敗してもらわなければならないので、GMは自分の手札を投入!


ルール上、ゲーム開始時のGMの手札はキングが4枚にジョーカーが2枚となっているの で、これは強力だ。


GM「んー……キングの5カード(はあと)」

リンダ「シャレになんねえ! ぐはあああ!」

GM「ほほほほほ(はあと)  もちろん失敗だな。船のあちこちで爆発が起こ って大変なことになってるよ。それで、トランさんがさっき出ていった方のドアが『ぼお ん!』と吹っ飛んで火柱が噴き出てくるわけよ」

「ええっ!」

リンダ「お、トラン死亡か!(嬉しそう)」

GM「もちろん、真っ赤な警告灯が点滅して、むいーっむいーっといってだな、 『総員、直ちに脱出してください。総員、直ちに……』と電子音が響き渡る」

リンダ「もちろん速攻で脱出するわよ。みんなあんな女のことなんかいいわよ、 ネッ! ……『ネ』のとこ強調(笑)」

「で、でもなんか悲しいから、行きます!」

リンダ「うるさあい! と言って、蹴る(笑)」

GM「トランが出ていった方のドアは炎がごうごうと燃えて、梁なんかが崩れ落 ちてきてるんだが」

「惜しい美人を亡くしたのう……と言って、ほろりと」

志尾原「雇い主が、雇い主があっ! お金が、お金が!」

「お姉ちゃん、死んじゃったの?」


 報酬は、別の人間が支払うと言っておいたはずなんだが(笑)。GMの話はよく聞いて、 必要ならメモしておこう。

 さて、大あわてで一同は脱出ポッドへ。


GM「判定は勘弁してあげよう、自動発進だ。窓はなくてかなり狭いね。ぎゅう ぎゅうに身体をくっつけあってる」

リンダ「ちょっとギョ! くっつかないで!」

「くるしい〜(笑)」

GM「しかも、暗い。ただモニターの明かりが見えてるだけ。で、『強制射出』 と電子音がして、『ボッ!』とGがかかるわけだ」

「おもい〜(笑)」

GM「モニターを見てみると、船にあるもう一個の脱出ポッドは船内に残ったま まだ」

リンダ「さらば、トラン(笑)」

「おねえちゃん……」

リンダ「あッ! 報酬が! 3000万ガメルが!」
志尾原「さらば、報酬金(笑)」



 ポッドはどうにか着陸した。重い耐爆ハッチを開けて外に出てみると、一同を待ってい たのは2つの太陽と、一面に広がる大砂漠であった。



GM「湿気はないから、汗は瞬間的に蒸発して、どんどん出てくる。ものすごい 熱気!」

「わかるわかる」

GM「で、遥か彼方にゆらゆらと見える蜃気楼の向こうでだな、パッパッと爆炎 が光るのが見える。4秒くらい遅れて、『どかん、どかんドカアアアッ!』と爆発音が」

リンダ「4秒! けっこう近いわね!」

GM「で、なにか……巨大で細長い何かが、砂の下で蠢いているのが見える。こ う、地響きがね、ずどどどど……と」

リンダ「<サンドウォーム>じゃねえか(笑)。こういう風な場合、関わらない方 がいいわね」

GM「その蛇みたいな奴は、赤っぽいのと青っぽいのとが見える」

「みみずー♪」

GM「で、上から戦闘機編隊が爆弾など落として攻撃している」



 砂の下から放たれた指向性光学兵器(ビーム弾に見えた)により、ほどなくして戦闘機 編隊は全滅してしまう。「自衛隊と同じじゃねえか(笑)」とは、リンダ氏の弁。



GM「というわけで、砂漠には黒煙が上がっているだけで。真っ昼間のさなかな んですが、シーンとしてますな。
 太陽だけがぎらぎらと照りつけている。魚さんの禿げ頭が、汗でテカテカ光るほどに (笑)」

「あついのう、あついのう」

リンダ「ペンギンにはこたえるわよね」

志尾原「電子パーツに余りよくないですね」

「あーつーいー! 脱ぐう!」

GM「ぬ、脱ぐのか!?」

「うそ(笑)」

GM「やれやれ、読者サービスが……って、読者はいないが(一同笑)」
(この時はいなかったのだ)

「とりあえず一番上のボタンだけ外しとく」

リンダ「同じことしよう」

「じゃあ、思わず『リンダちゃ〜ん』と(笑)」


 こらこら、『ホロちゃ〜ん』でしょうが。


リンダ「こういう時だけ来ないで!(笑)」

志尾原「……Dレベル第7ブロック冷却開始……」


 あたりは一面の大砂漠。砂丘が延々と連なっている。ぬけるような青空……。
 途方にくれつつも、とりあえず志尾原君が惑星管理局にアクセスして、情報を入手する。



GM「えっと、『R−29星系第3惑星ロア・ギブリ。赤道直径は約2万キロ、 重力は約0.9G。主星は、標準的なG型系列の恒星が2。
リンダ「また『G』という言葉にピクン、と(笑)」)
32年前にアルバート重工がその豊富な地下資源に着目して開発を開始したが、予想よ り早く各種重金属の枯渇が始まったため、2年前にアルバート重工は株主総会の決議によ り採掘基地の撤退および設備投資の中止を決定。
 8ヵ月前から基地の解体および廃棄物処理を開始。現在はアルバート重工船舶の運行を 優先するため、関係者以外の入港は禁止されている』」

リンダ「地形だよ、地形」

GM「基本的に砂漠が多い。平均気温は約摂氏40度」

リンダ「町とかは」

GM「町か。首都は、ギブラーズ・シティ。人口は約600万」


 いま思うと、この星は帝国領なのに、なぜ英語っぽい名称なのだろうか。そうか、外資 系の産業が開発したせいだな(笑)。


リンダ「で、現在位置はわかる?」

GM「それは別に判定を。難易度4(INT)」


 リンダ、また引き分けで成功。本当は失敗なのだが。


GM「意外なことに、ギブラーズ・シティのわりと近くですな。ここから約30 キロ」

リンダ「……30キロ」

GM「うむ。宇宙時代の基準でいえば、至近距離と。ま、そういうことっすね」

リンダ「なるほど。ちょっと近くに町があるみたいだけど、そっちに行かなくち ゃね、みんな」

「え、でも歩くしかないんでしょ? 30キロって、けっこう……」

「でも、うちの高校、マラソン大会で男子33キロ走らされましたよ」

GM「……………(ふっ、甘いな。真っ昼間の大砂漠を何の装備も予備知識もな しに行軍すればどういうことになるか、とくと味わうがいい! このために俺は、『コン バットバイブル/第25章:砂漠地帯でのサバイバル』を熟読しておいたのだッ!)」

  清水から一言:こういう軍事系の本は、スペースオペラや銃撃戦の多いSF(笑)を 演出するときには、参考になるよ。兵器描写なども、それらしくなるしね。

リンダ「じゃ、なんとか行くわね。ペンギンは置いておくとして(笑)」

志尾原「蹴り転がしてゆけば(冷静)」

「ひどい〜!(笑) 人権を無視した発言!」

志尾原「ペンギンですから(笑)」



 人権といえば、<金華帝国>では、昆虫ハーフなどには人権は認められていないようだ。
 基本的人権が保障されているのは、両生類、爬虫類、鳥類や哺乳類といった、陸棲の脊 椎動物ハーフだけらしい。



「あるこう、歩こう〜♪」

リンダ「あるくの、だいすき〜♪」

GM「じゃ、2つの太陽の照りつける中を歩き続けるわけだ。
 砂丘なんだよね、基本的に。1歩踏み出すたびにずぶっと足首まで沈んでさ、60度く らいもある砂が足首を灼くんだよ」

「うあああ……火傷ですね」

GM「で、だれか戦術技能(INT)もってる人いる?」



 戦術技能は、戦場で作戦を立てたり、奇襲されそうな場所を知るのに使用する他、イニ シアティブをとるのにも使われるので、意外と役に立つ。
 また、GMの趣味として、軍事マニア的な知識や<対怪獣戦術>の判定をこの技能でさ せたりすることがあるので、とっておくと便利かもしれない。個人的に、傭兵やってる人 にはもっていてもらいたい(趣味)。



リンダ「戦術!? 戦術は、牛さんしかいないんだあ!」

GM「じゃあ、軍の砂漠戦の教練は知らないわけで、みんなよりによって一番疲 れる歩き方をしてるわけだ。さて、1時間もいったところか。みんな、生存判定をしても らおうか。STRで、[生存]技能を使えるよ」



 毒や気絶、睡魔との対抗など、サバイバル関連に用いられる技能が生存技能である。し ぶとさの指標ともいえる。

 今回、難易度は7とかなり高め。全員、判定に失敗!



GM「じゃ、みんな意識が朦朧としてきたね。目は回るし、胸やけはするし、何 だか熱ぼったくなってきたようだ。まあ、わかるでしょ。日射病の症状だよ。ダメージは それぞれ、2受けてくれ(無論、防具は無効だ)」

リンダ「ふざけんなー!」

志尾原「……ラジエーター……オーバーヒート……」

GM「まだ歩く? なら心臓の鼓動が不規則になってくるんだけど。足取りはお ぼつかなくなってきて、視界がグラグラ揺れるし」

「もう、根性ない奴からパタッと(笑)」

GM「どうするんだ、みんな」


 (しーん……)


リンダ「…………たすけてえええ!(一同爆笑)」

GM「じゃ、ポッドに戻るか、このまま行くか、ここでバッタリ倒れるか」

リンダ「ポッドまでまた1時間……ポッドにはどんなもんがついてんだよ」

GM「(PCが)何も言わなかったからな。君らは飲料水ひとつもたずに飛び出 してきたんだよ(笑)」

リンダ「どっしぇえええ!」

<次章予告>
 一行は、夜を待つ。
 3つの月が輝く夜の砂漠は、神秘的ですらある。
 だが、夜の砂漠は、狂暴な野獣が荒れ狂う狩り場だったのだ!
 はたして、リンダたちの運命は! このまま砂漠の虫の餌になってしまうのだろう か!?

表紙へパラパラ♪

志尾原「第2章後半と、第3章もぜ ひお読みください。ただいま、特別割引価格でのご奉仕と……」
リンダ「商品じゃねーだろがっ!」

志尾原「パラフリ議事録の一覧は、こちらとなっております」