熱砂の竜

 極楽艦隊RPG遊戯議事録1

                    清水三毛:編
Ver.1999.10.20.


      

        注*略称について

  GM:ゲームマスター。監督・(脚本)・審判役。司会もやる。

  PC:プレイヤーキャラクター。物語の中でプレイヤーが演じる登場人物。お話の主役。

 NPC:GMが演じる登場人物たち。広義では怪獣なども含む。PCを助けたり、敵にまわったりする、お話の脇役。



 [概略]
 世界観……6000年後の未来宇宙。金華帝国、ベスティンスタイン公国、しきがみおえど、の三国が舞台のスペースオペラ(宇宙冒険活劇)。



 
<金華帝国>
 中華風の国家。過酷な環境に適応するためか、国民は全員、各種の動物の遺伝形質をもつ<毛翁人>(いわゆる<ビーストハーフ>)である。秘境惑星が多く、冒険向き。



 <ベスティンスタイン公国>
 欧米風の貴族国家。貴族たちの華やかな暮らしぶりの裏では、軍事企業や宇宙海賊が暗躍している。宮廷ロマンスや社交界のムードに浸るならこの国だ。宇宙傭兵もこの国の出身が多い。古代<銀河帝国>の正当後継者を自認する国家でもある。
さらに、<超絶美形>という恐ろしい存在が……。



 <しきがみおえど>
 巨大な日系複合企業国家で、国民の全員が<サイバーウェア>を装備したサイボーグ・ビジネスマンである。さまざまな宗教や文化が入り交じっており、サイバーパンクな雰囲気が漂う。
また、商売好きな人はこの国が一番! だろう。


 [目次]
 1.これまでのお話
 2.キャラクター紹介
 3.放映リスト
 4.登場怪獣リスト
 5.第七話『熱砂の竜』/1 ピンクな女傭兵
            /2 船。またの名を鉄の棺桶
            /3 出現、二大怪獣
            /4 激突! 牛と地底巨竜
            /5 リンダの受難
 6.成長について
 7.パラフリRPG怪獣大図鑑:<熱砂の竜>篇
 8.G&Mのどきどき戦闘講座
 9.GMインタビューコーナー
 10.付録:[技能]一覧表
 11.スペースオペラのススメ−−あとがきにかえて−−




[これまでのお話]

 いますぐ使えるこれらの創作脚本が、 第2駐屯地にて掲載中!

 第1話「20光年を突っ走れ!」(脚本:清水三毛)

あらすじ:PCは金華帝国軍の依頼で運送契約を請け負い、駆逐艦で惑星蒼天までコンテナを運ぶことに。実はその中に入っていたのは、戦術生物の素体となる<シリウスジゴクガメ>だった。
 輸送中に艦内に逃げ出したこの戦闘生物(生体レーザー、生体粒子砲装備)を傷害を与えずにコンテナに戻すため、PCは大苦戦。さらにこれを狙う女宇宙海賊(ランバー、二十歳)まで現れて……。



 第2話「トリを見た!」(清水三毛)
あらすじ:公国の貴族が、家宝を宇宙海賊に強取されたという。犯人である宇宙海賊(ランバー一味)の駆逐艦が漂流しているのをPCが発見するが、すでに家宝<紅き光>は何者かに強取されたあとだった。
 犯人を追ってPCは帝国のガス惑星、沙羅星へ。古代生物の研究所のある浮遊村に行くと、横暴な軍事企業、ミルオーガン・バイオテック社の支社があり、何やら陰謀の気配が。実は、家宝というのは元々この村のもので、しかも伝説の宇宙渡り鳥の卵だったのだ。同社はそれを捕獲、兵器に転用する計画を立てていた。
 山中の秘密研究所で、激しい戦闘の末に一行は卵を取り返す。その眼前に、巨大な有翼生物が舞い降りる。
 一方で、研究所所員の生物学者であるセキレイハーフの少女(林 魅由)と<超絶美形>のPC(ウィルバルト)が婚約するのであった。



 第3話「復讐のハゲタカ!」(清水三毛)
あらすじ:魅由と婚約したPCの元に、1通のフォトンメイルが。惑星シルダムンで行われる生態調査に参加しないか……と。
 一方、しきがみおえどのPCは、野生動物の生態調査用新式マーキング・ユニットのテストを上司から命じられる。
 評価のために魅由が同行、PCと合流するが、そんなメイルを出した覚えはないという。
 シルダムンは高温多湿の自然保護惑星で、一般人は立入り禁止とされていた。一同はそこで甲殻竜にユニットを撃ち込み、調査を開始するが、程なくして魅由が謎のドラゴンにさらわれてしまう。彼女を捜してPCは大ジャングルをさ迷い、原住民に襲われるが、烏ハーフの元傭兵に助けられる。
 ドラゴンの迎撃を切り抜け、敵(バイオテック社と判明した)の秘密基地に侵入したPCを待っていたのは、かつてバイオテック沙羅星支社の支部長だったハゲタカハーフ、邪虎であった。彼はPCに復讐するためにわざわざこの星に呼び寄せたのだ。がしかし、PCは迷宮を突破、用意されていた怪物を蹴散し、邪虎を一撃で撲殺するのであった(哀)。



 第四話「壺中天」(朱鷺田祐介氏)
あらすじ:PCは帝国のちびうさ少女(笑)、明苓梨公女に護衛を依頼される。<滑魚侯>という重要人物に拝謁するため、一同は帝国直轄領である人工の球殻天体<壺中天>へ。 謎の時空激震を切り抜け、古代銀河帝国の遺産らしいこの小惑星に到達した一同を待っていたのは、烏ハーフの<仙人>、龍翔天の襲撃であった。
 彼は更なる上位仙人となるために滑魚侯のヒゲを求めており、PCの拝謁を妨害する。PCは彼の烏人としての習性を利用し、どうにか切りぬけた。
 滑魚侯は古代文明の生み出した巨大な生体時空振動兵器であった。
全長五十メートルの巨大ナマズであり、人語を解する。龍翔天にだまされて毒芋虫ハーフを呑み込んでしまった彼は、PCを呑みこみ、毒芋虫人たちを体内から連れ出させる。さらに彼は、龍翔天に一杯食わせるために、PCに協力を依頼する。そこで一同のとった策略とは……。



 第5話「ドクター・ファナティック」(朱鷺田祐介氏)
あらすじ:旅の途中、PCは自分の船が故障してしまったために修理のための資金獲得を余儀なくされる。ローゼンベルグ伯爵の屋敷でPCは謁見の順番を待つが、同じく謁見していたマッドサイエンティスト、ファナティックの解き放った戦闘用ヤギ(何故ヤギ?)<大怪獣キメラ>に襲われ、辛くもこれを殲滅。伯爵の好意により、駆逐艦を使った惑星上の運送を請け負った。
 が、勝手にPCをライバルと決めつけたドクター・ファナティックの妨害工作を受け、駆逐艦は密林に墜落。PCはコンピュータウイルスや<アーマードヤギ>の群れなどと戦う羽目に。艦に仕掛けられた爆弾を解除し、ヤギ兵器・ウサギ兵器(も出現!)を一掃したPCは何とか救出され、伯爵の屋敷に戻るが……。



 第6話「ドクター・ファナティック2」(朱鷺田祐介氏)
あらすじ:ファナティックの挑戦は終わっていなかった。全長50メートルの巨大空中機動ヤギ<ヤギ・ギガント>を繰り出し、自らの科学力を証明するために全銀河の征服に乗り出したのだ。彼は手始めにローゼンベルグ星系への侵攻を開始、住民と『我がライバルたち』であるPCに降伏を勧告する。
 ギガントの電磁シールドやレーザー・ファランクスシステムの前には、レーザー砲やミサイルなどの砲熕武器は一切通用しない。残された手段は、内部からの破壊工作のみだ。
 降伏したくなければ、私を倒しに来るがいい……PCは、この挑戦状と自分たちの情報がファナティックの超空間放送ジャックにより全銀河に放映されていると知り、やむなくギガントの体内に潜入、破壊工作を敢行する羽目に……



 [(GMの独断と偏見による)6〜13話主要遊戯者人物紹介]


 牛 孟闘……帝国出身の牛ハーフ。性格は『牛突盲進』。人間兵器の武人だけあって、近接格闘戦における破壊力はすさまじい。が、知性は……。

 リンダ ラ ロンド……何だかこっちが偽名みたいだが、これが本名らしい。一応、宇宙傭兵を名乗っているものの、実は公国に追われている大犯罪者。
 普段はホローチャージ(成型炸薬弾!)と名乗っている。どうしても頭の上がらない上司? がいる。公国出身。性格は割と普通。(これ今読むと、ウソつけムチャ短気やん! とか思っちゃうネ♪)

志尾原 総一郎……企業(しきがみおえど)出身のサイバービジネスマン。対戦車ライフルをこよなく愛好する銃撃戦マニア。が、社交性も持ち合わせているためか、割と商売も好きなようである。冷静沈着な性格で、ひょっとして一行のまとめ役か?(いや、そんなことはない)

 アンドリュー ビルス……自称『音速の騎士』。持ち前の騎士道精神を遺憾なく発揮し、古代文明の遺産であるビーム剣片手に行方不明の両親を捜し続けている。今後の成長が楽しみ。

鳴沢あつし……企業出身のサイバービジネスマン。美少女(10歳以下)とみれば誘惑にかかる習性をもつ。銃撃戦はともかく、今のところ運動関係や白兵戦は苦手なようで、頭脳系のヤサ男といえる。

趙 月英……帝国出身、狼ハーフの少女。なぜかエラをもっている(「贈り物」)。人付き合いは下手だが、精神年齢は小学生? というぐらい、一途で無邪気。たぶんPC の中では一番まともな人物と思われる。いい人だ。両親を亡くし、旅に出た。

魚 魚魚……帝国の生臭坊主(五三歳)。ペンギンハーフなので泳ぎが得意。賭事と色事を愛好し、婚約者もいる。しかも皇位継承権までもつという、PC中で群をぬく異色人物。戦闘は苦手なようだが、なぜかサバイバル能力に長 けている。ちなみに、名前は戒名らしい。



 [放映?リスト]
 出演者略称:アン……アンドリュー
 現出演者年齢:趙(15)、アン(16)、リンダ(21)
        牛(23)、鳴沢(25)、志尾原(28)
        魚(53)



 *<放映日>1995年3月11日
     <出演>
第1話:20光年を突っ走れ! (牛、ウィル、志尾原)
第2話:トリを見た!     (牛、ウィル、志尾原)


 *4月2日
第3話:復讐のハゲタカ! (牛、礼子、ウィル、アン)


 *1996年5月6日
第四話:壺中天         (牛、リンダ、鳴沢)


 *5月12日
第5話:ドクター・ファナティック
            (牛、リンダ、志尾原、鳴沢)

第6話:ドクター・ファナティック2/巨大空中機動ヤギ・ギガントの襲来
            (牛、リンダ、志尾原、鳴沢)


 *11月3日 第7話:熱砂の竜    (牛、リンダ、志尾原、アン、趙、魚)



[登場怪獣リスト(主な怪獣のみ)]
 第1話……古代戦亀<シリウスジゴクガメ>
 第2話……伝説宇宙渡り鳥<キングファルコン>
 第3話……高速屠龍<サイバーラプトル>
      半機械竜<シルダムンドラクン>
 第4話……ナマズ型超兵器<滑魚侯>
      半烏仙人<龍翔天>
 第5話……山羊大怪獣<キメラ>
      重山羊兵器<アーマードヤギ>
 第6話……巨大空中機動山羊<ヤギ・ギガント>
      招雷山羊<電撃ヤギ>
      山羊戦車<ヤギクローラー>
 第7話……傭兵仙女<ギラ軍曹>
      地底巨竜<リュ・グ・ゾンド>
      遊砂斬魚<サバクトラザメ>

 備考:最多出演者……牛(全七話出演。彼らしいぜ!)
    2位……志尾原(5話)
    3位……リンダ(4話)
    4位……ウィルバルト、鳴沢(3話)
    5位……アンドリュー(2話)
    6位……趙、魚、礼子(1話)
注意:この第7話議事録執筆時の情報である。




 <状況開始!>

 銀河暦1996年、11月3日(日)。某公民館の小会議室にて。

 GMの清水三毛を始めとして水無月氏、KEY氏が第一次到着。やや? 遅れて北川氏、T氏が到着。今回初参加のT氏とKEY氏が、まずキャラクターを創り、セッション開始。

今回、S氏は欠席、沢乃氏とたいれる氏は途中参加の模様。

GM「Tさん、なに、この……年齢53歳っていうの……」
T氏「いやー、私、生臭坊主っていうのやってみたくって」
GM「なまぐさ……で、どの動物ハーフにするの?」
T氏「マグロがいいんですけど」
GM「まぐろ……そういうのはちょっとないんだけど……」

 と、こんな感じでキャラクター創りも完成し、

北川氏「5以上が切り札っていってね、……」
T氏「ちょっと、よくわかんないんですけど」
GM「たとえば、宇宙船を飛ばすとしてだね……」
 しばらくルール(後述)解説が続いたあと、開幕。




 第7話「熱砂の竜」
                脚本/GM:清水三毛

 1  ピンクな女傭兵

 企業国家<しきがみおえど>の一惑星、さくら24。交易と商業の舞台として高度に発展した星である。

 その首都に林立する複合高層建築の谷間に、小さな公園があった。夜闇に覆われたその公園に人気はない。ただ、白々と街灯のみが寂しく光っている。頭上を行き交う飛行車や小型艇の騒々しい唸りも、ここまでは届かなかった。

 漆黒の戦闘服を着こんだ、傭兵らしい妙齢の女性が、さびついた児童用飛行車の傍らに佇んでいた。彼女の名は、リンダ ラ ロンド。腕利きの宇宙傭兵である−−ただし、別の人間として。

彼女はかつて犯した大犯罪のため<ベスティンスタイン公国>に追われており、<ホローチャージ>という名の別人として生きているのである。

今回、彼女は傭兵ギルドに仕事の斡旋をしてもらい、依頼主との待ち合わせ場所としてこの公園を指定されていた。

 近づく足音に、ふと顔をあげる。−−違った、依頼主ではない。よく見知ったサイバービジネスマンの無表情な面が、彼女を見つめていた。彼のバイザー・サングラス上で、いつものように光学投影情報群が瞬いているのが見える。

 無言で彼は、暗闇の向こうに手をふってみせる。街灯の明かりの下に歩み出てきたのは、まだ幼さの残る半狼の少女、それに体格のよい半ペンギンの僧侶。

 そう、彼女の新たな戦友たちである。



GM「ちょっとじゃあ、自己紹介してくれるかな」

北川氏(=リンダ)「……じゃ、一応……(口ごもる。女言葉が抵抗あるらしい)」

GM「演じるの嫌なら無理しなくていいよ、別に普通に喋って。最近は男言葉で演じるのも普通だし(と、ロードス島戦記RPGマスタリングハウツー本に書いてあったよーな気がする)」

リンダ「別に恥ずかしかねーよ(無理しちゃって )。じゃ、あたいは………」

GM「あ、あたい(笑)」

T氏(=魚 魚魚)「ふふふっ(笑)」

水無月氏(=志尾原)「うわぁ(笑)」

リンダ「……一応、傭兵やってるホロってんだ。よろしくね」

KEY氏(=趙 月英)「よろしくね、おねーちゃん♪」

「ねえちゃん、よろしくな 」

リンダ「なっ、なにこのペンギンは!? さわらないで!(一同爆笑)」

「あたま光ってるー!(何か嬉しそうである)」

リンダ「名前、なんだっけ」

「えっとねー、趙 月英っていうのー」

GM「いちおう、Tさんのキャラの名前も」

「はい。……わしは、ギョギョギョと申す。よろしくな(一同笑)」

「ヘンな名前、ヘンな名前ー!」

「(苦笑)戒名じゃ、戒名」

GM「で、そこに先ほどから佇んでおられるサイバービジネスマンは」

志尾原「自己紹介させていただきます(名刺をわたす仕種。ちなみに水無月君は背広にネクタイ、未来的なサングラスまでしてて殆どコスプレ状態。イカス)。私、こういう者でございます。志尾原総一郎と申します」

GM「まあ、じゃ、そんな感じかな」

「こわいお兄さん……」

リンダ「大丈夫。仕事以外のときは……ちょっと危険だけど……仕事だったら大丈夫だから(何が?)」

GM「で、ま、夜の公園で……エアカーやら飛行機やらが上を飛んでるわけだ。そうするとね、依頼主らしい人影が暗闇の向こうから現れるんだな」

リンダ「うむ」

GM「いちおう描写すると、いかにも傭兵だなって感じの若い女の子だね。18か19といったところか」

「よお、姉ちゃん!」

リンダ「イヤな予感がする。とっても嫌な予感がする!」

GM「(おいおい……こりゃ殆ど<G>恐怖症だな)まあ待て。『あたし、ヴェイラ・トランっていうの、よろしくね』と言ってその娘は頭を下げる。ポニーテールだ。ブロンドのね」

「こんにちわー」

志尾原「私、こういう者でございます」

GM「そいつの着ているアーマースーツというのがだね、ちょっと変な感じで……ピンク色であちこちにふりふりのフリルがついてるっていう、ミーハーな感じの娘なんだ」

「うわ」

GM「リンダさんの方をちらりと見て、鼻でふんと笑って、『だっさい服!』などと言ってる」

「お姉ちゃんいじめちゃだめ!」

リンダ「ダサくて悪かったな(怒)」

GM「『まあいいわ、仕事の話に入るわ。仕事は簡単にいうとね、運送と護衛なんだけど』
 そこで胸元から取り出すのがカードみたいなものなんだが、表面には複雑な回路みたいな結晶構造というか、模様がキラキラと虹色に光って見えてるわけだよ。
『これは<フェルテクト集積体>っていうんだけど、これをロア・ギブリっていう星に運んでほしいわけよ。その星にあるラジェランドラっていう場所に、ギブリ・ヒルトンホテルってのがあるから……』」

リンダ「ヒルトンホテル(笑)」

GM「ヒルトンホテルなんだよ。7000年後の世界だから……(ホントは約6000年後の世界である。睡眠時間が1時間しかなかったせいか、今回はとくにミスが多いぜ)。
『そこにいって名をなのれば、レイっていう女がコンタクトしてくる筈だから、ま、報酬はそいつからもらうってコトでね』」

リンダ「運ぶだけでいいの?」

GM「『んー、まあそうなんだけど、あたしの護衛も兼ねてるから、あたしの船に乗り込んできてくれればいいわ』と、相変わらず蔑んだ目付きで」

リンダ「……もしかしてその船、フリフリの変な模様の護衛艦じゃないでしょうねえ?」

GM「『ふっ、余計なお世話よ』といって鼻で笑う」

リンダ「この女ぁあ……!」

「お兄ちゃんお兄ちゃん、お姉ちゃんたち喧嘩してるの?」

志尾原「そういうのは、放っておけばよろしい」

「依頼主って美人ですか?」

GM「(何でそんなことをきく?)美人です」

「じゃあ、目尻を下げていやらしく笑ってます(笑)」

GM「じゃ、口に手なんか当てて、『何なんだろうこのペンギンは、いったい……』という感じでみていよう(笑)」

志尾原「報酬の方は如何程ぐらいになりますか」


 彼女の言い値は、全員分で3000万ガメル。新米傭兵に払う額としては、まさに破格だ。(普通は1人100万ガメルくらい)
 リンダは怪しむのだが……。



志尾原「よろしい、お受けしましょう。みなさん、よろしいですね?」

「お金がいっぱい、お金がいっぱい♪」

リンダ「なあ、一応<ホローチャージ>ってのはみんな知ってるんだろ。志尾原総一郎と……」

GM「あそうか、その2人は有名なんだよな。前、ヤギ退治やったから。巨大ヤギ要塞に侵入して破壊工作してね、全銀河にその名が知れ渡ったんだよ! この牛もね!(おいてある牛氏のキャラシートを指さす)」

リンダ「牛さん、いま休暇に入って婚約者と会ってんだ(勝手に決めてる)。おかしいねえ、(休暇が)1日のびちゃったみたいね。二人でアツアツ〜ってカンジ、みたいな〜」

GM「みたいな〜、じゃねーよ!(笑)」

志尾原「そのようなことでは商社マンは勤まりませんよ」

「商社マンじゃないもん」

GM「『そうそう、これはちょっと言っとかないとね。あなたがたが契約上、不利になるからね。

今あのロア・ギブリって星はね、ある事情があって閉鎖されてるわけよ。表向きはあそこの開発を請け負ってたアルバート重工の採掘基地が閉鎖されるから、その廃棄物処理のために……ってことなんだけど、ま、傭兵ネットで違法アクセスしてみれば色々とね……(にやり)。ま、そのへんはあなた方の興味に任せるわ』

と言って、彼女はポニーテールをなびかせて、すたすたと勝手に去っていく」

志尾原「ハッキングはお任せを」

GM「ああ、そうそう! 待ち合わせの日時を言うの忘れてたわね。明日、オービタル・ファウンテン6の第7ドックで会いましょう」

リンダ「またフリフリの服着てくるんじゃないわよ!」

「また会えるのか、嬉しいのう(にやにや)」

「おねーちゃん、明日は喧嘩しちゃダメだよ」



GM「……ということで、みんなホテルへ」

リンダ「じゃあ、違法アクセスしてみようかな」

GM「(ゲッ、いきなり違法アクセスかよ)ほほお、さっそくやりますか。アクセスは[電子]技能が使えるよ」


 [解説]

依頼者がPCを騙して利用することもままあるので、行く先の惑星や、依頼主についてコンピュータで情報を入手しておくのは常識である。通常アクセスは難易度3で、大抵の人物なら失敗することはない(一部のキャラは除く)。

が、プロテクトを破って軍や企業などの機密情報や裏データバンクなどにアクセスする<違法アクセス>では、格段に難易度が高くなる。

さらに、<大失敗>した場合は、自分の<電脳結界>(装備していれば)にダメージを受けたり、当局に逮捕されることすらある。注意して行うべきであろう。
 いずれにしろ、パラフリが宇宙SFである以上、電子技能は多用される。とっておいて損はない。




リンダ「というか、あの女いけすかないから。信用できないから調べる!」

GM「難易度高いぞ……電子(INT)(=知性度)7だな」


 このRPGでは判定にトランプを用いる。プレイヤーの手札は1人6枚で、カードの強弱の序列は<大貧民>による。つまり、3よりは2のカードの方が強く、1枚のカードよりは、2枚同じカードが揃った方が強い。

 <一般判定>では、『難易度Xで判定、使う技能はX』とGMが指定したら、まずPCが自分の判定値(能力値+関連技能値=判定値。技能がないなら能力値のみで判定を行う)分のカードを出す。

GMはあらかじめ難易度分の枚数のカードを山札から出して机の上に伏せておくので、プレイヤーはGM側がカードを出すのを待っている必要はない。
 プレイヤーがカードを出したら、そこで初めてGMは伏せておいたカードを表にして判定を行うわけである。

 標準的な行為の難易度は、3である。




リンダ「いくよ?」

GM「だして!(こっちを待ってても意味がないんだってばよ)」

リンダ「切り札」

GM「……マジ? スペードの6……」



 <切り札>は自分の判定値が5以上のときに使える、スペードの5以上のカードのこと。

例えば、自分の判定値が4しかないのにスペードの5を出しても、それはただの単カードの五として処理される。
 判定値が7だとしたら、スペードの5、6、7が<切り札>として使えるわけである。これはそれぞれ五、六、七枚分の<役>として扱われ、強力(クリティカルヒットの同義語だ)。
もちろん、NPCでも判定値が5以上の者なら切り札が使えるわけで、注意が必要である。とある宇宙傭兵、牙 狼々は切り札での対戦車ライフル射撃をサイバーラプトルにあっさり回避され、大ショックを受けていた。



GM「(伏せてたカードをめくる)こっちは6のツーカード。余裕でそっちが勝ってるなあ、これは全部情報が入るぞ」

リンダ「で?」

GM「データバンクに、色んな傭兵から送られたメイルが入っとるんだがね、それがモニターにチーッ……などと表示されていくわけだ。『かなり大規模な古代銀河帝国の遺跡が存在する痕跡……それを会社が見つけたらしくて、三国 の政府が共同で裏工作をして、無理やり閉鎖させたらしい。で、A・R・A・C、通称<アーク>(古代遺跡管理委員会)が暗躍してるらしい、みんな気をつけろ、何かキナ臭いぞ』……と、そんな情報」

リンダ「ARACアークってのはうちら、知ってんだよねえ?」

GM「うん……」



 ARACというのは、数十年前に<古代遺跡管理条約>に基づいて結成された特殊治安組織だ。現在の科学水準を遥かに凌駕する、古代<銀河帝国>の遺産の悪用を事前に防止するのをその主な任務とする。
 特務機関であるARACの実態を知る者は少ないが、噂によれば対仙人特殊部隊(!)すら存在するらしい。
 また、この組織には広汎な独立裁量権が認められており、遺跡の盗掘者などは、その場で射殺されることすらあるという。(清水による創作設定)




志尾原「アーク……神の名前ですね」

GM「Ancient Ruinsナントカだったかな、忘れた(続きはAdministering Committeeである)。
 そして……<G>! Gがッ!!」

リンダ「じっ、じい!?」

GM「Gが動いているらしい! といっても、他の人には何のことかわかんないけどね。傭兵の間では有名らしい」

リンダ「Gだあ、Gが動いてるううう! Gがあああ!」

GM「『みんな、あの星へ行くな! もし<G>を敵にまわしたら……』とか書いてあるねえ。ま、それぐらいだ」

「おねーちゃん、何それ?」

リンダ「……(遠い目)人間にはねえ、拭いきれない過去ってもんがあるのよ……」

「よくわかんない」

GM「他の方は何かやる?」

志尾原「本社にアクセスします」



 ちなみに、この星のある<さくら星系>は、<しきがみおえど>の本社のある国家中心星系なのだ。適当に名づけただけだったのだが、あとでルールブックをみたら、偶然そうなっていた。



GM「ん、難易度3ね。君はそのまま通信できるよ」


 サイバービジネスマンである彼は、脳内にある<電脳結界>により手近なコンピュータネットを利用、通信することが可能だ。基本的に電脳結界は自分の装備するサイバーウェア(電脳結界がないとサイバーウェアは装備できない)の総合管理システムであるが、このような使用法もあるわけだ。




志尾原「とりあえず、ただのエースです」

GM「……でも、成功してる。あ、上司の名前とかも決めとかないとなあ。とりあえず上司Aということで、
『どうした、志尾原君?』と、中年のおじさんが椅子ごとクルリと振りかえる(一同爆笑)。例えていうなら、<サンバルカン>の長官ってカンジ? <オーレンジャー>のオープニングでもいいがね」

志尾原「依頼主の素性を本社側で洗ってもらいましょう」

GM「『ふうむ、会社としてはそういうことはあまり好ましくないのだがな』
 あまり乗り気じゃないようだ。交渉判定してもらおうかな」



 <交渉判定>は一般判定とは異なり、キャラクター同士の駆け引きで使われる判定である。SOC(社交性、魅力度)関連の技能を用いる。交渉を行うキャラクター同士が、自分の手札を『伏せて』場に出し、『同時に』表にして判定を行う。

GMが先に札を場にだすので、裏返しではあるが、PC側はその枚数から自分がだすべき札を考えることができる。

GM側が1枚だけだしたりすると、<きりふだ>かもしれないので恐いぞ。

 等と、いろいろ戦略を練れるのが、トランプの長所だ。
シナリオ中、重要な交渉においては、<4段階処理>を導入することもある。この場合、1回判定に勝つごとに1点加算され、合計値が4点に達した者が交渉に勝つ。
 交渉判定はパラフリのシステム的な目玉なので、よく覚えておこう。




志尾原「……お、11。勝った!」

GM「しかたがない、会社のデータバンクで調べてやろう。
……ふむ、ヴェイラ トラン。18歳、国籍はベスティンスタイン公国か。
 流石に詳しい事情まではわからんが、3年ほど前から傭兵稼業に転じて、そこそこ活躍している三流傭兵といったところだ。で、そいつから仕事を受けたのか、志尾原。どこでの仕事だ」

志尾原「基本的には一応、話しましょう。信用のおける上司ですから」

GM「なるほど。『……ロア・ギブリだと? あそこは閉鎖されたはずじゃなかったのか?』」

志尾原「もし何かあったら、連絡をしていただきたいのですが」

GM「ただ、あそこはどうもな。この数ヵ月、非常に通信しづらい電波(超空間波)状況になっていてなあ……本社としては、君を派遣するのはあまり勧められないのだが…… まあ、健闘を祈る。仕事が終わったら、簡単に報告をしてくれたまえ」

志尾原「かしこまりました」

GM「ま、傭兵の間の委任契約だからね、会社の方とは関係ないんだけど。(データバンクを使った以上)一応、ということでね」

志尾原「情報としては、社におさめます」

GM「もういいかな。じゃあ、日を送るよ」



表紙へパラパラ♪

リンダ「第二章も読まねえと殺すぞコラ」
ギラ「女の子でしょ! なんて口の悪い!」

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