極楽艦隊RPG遊戯議事録


 第9話<ママは宇宙傭兵>



L女史のフルオート講座





「みなさまご機嫌よう。今日は、僭越ながら、わたくしLによりますフルオート火器の実践的な講義をおこなわせていただきます」

「よろしくお願いします、教官……って、あなたアマチュアでしょ!? 傭兵 暦3年のこのあたしが、なんで生徒なの!」

「弾丸装填! 撃発準備! 安全子解除! 連射用意!!」

「はっ、はい!」

「てえッ!」

「(PAPAPAM!!)はっ!? つい反射的に……」

「ではさっそく。フルオート火器というのは、自動掃射、つまり連射のできる銃砲のことです。突撃銃、いわゆるアサルト・ライフルにみられるように、近代戦の基本ですね。これを知らなきゃ銃撃戦は始まりません。まず、この突撃銃の選定からですが、やはりボルト・ロッキング機構から」

「ルール解説だけでいーのよ。まずはダメージ表示から。
 [直撃/巻き込み*]となってるわけ。突撃銃なら[4/2*]となってるわ。
 *があれば、単発/連射選択式の銃で、**ならフルオート専用なわけね」

「フルオートで撃つと[巻き込みダメージ]および[追加ダメージ]が生じます。逆にいうと、突撃銃でも単発で撃てば、ダメージは4だけで、通常の小銃とかわりません。弾薬の節約をしたいときや、なるべく位置をさとられたくないときは単発で撃ちましょう。フルオートだと反動もきついですし」

「突撃銃をフルオートで撃つと、ダメージは4/2、*が1つだから直撃/巻き込みの追加ダメージの判定を1回、しなきゃいけないわ。1回の攻撃で、回避判定に合計4回成功する必要があるわけね。で、全部よけるのに失敗すると、12ダメージとなるわけよ」

「ではここで事例を」



 事例1

 敵の工作員の放った一弾が、屈強な狼人傭兵の頬をかすめた。
 彼は傍らの浮遊戦車の残骸に身を伏せ、サトウ44式小銃を構え、フルオートで撃つ。

 連続してほとばしる銃炎、一筋の金色の流れとなって大地に落ちる空薬莢。咆哮する小銃を肩で受け止めつつ、彼は最初の弾丸が敵の胸を砕くのを銃口の先にみた。

 まず最初の直撃ダメージ、これが4。

 つづけて彼は撃つ。目標本人にも巻き込みダメージは適用され、また敵は回避判定に失敗したので、2ダメージ。

 さらに銃弾は降りそそぐ。再度、追加直撃判定に敵は回避失敗。これが4。

 さらに運のないことに、追加巻き込み判定にも目標は回避失敗。これで2。

 工作員は普段着だったので装甲0、合計12ダメージ。

 銃声がやんだ時、大地に仰向けになっていたのは、もはや肉の塊であった。鮮血がその上着を急速に赤く染めていく。

「……任務完了」

 傭兵は呟き、空になった弾倉を弾薬のうに放りこむ。



「ダメージは増えますが、フルオート射撃には欠点もあります。いってみて下さい」

「キョーレツな反動のせいで照準が不正確になる、自分の位置を敵にさとられやすくなる……でもルール上いちばん重要なのは、フルオートで撃つと1ターンで全弾撃ち尽くしちゃうってことでしょ」

「そう、小火器なら弾薬の心配はいらないパラフリRPGですが、特殊弾薬や重火器、フルオート、3点射では話は別です。で、弾がきれたら弾倉交換が必要で、これには1回の手番をついやしてしまいます」

「じゃ、どういうときにフルオート射撃を使ったらいいかしらね?」

「相手がたくさんいるとき、フルオートだと巻き込みダメージが生じるので有利です。でも巻き込みは小火器では大したダメージじゃないから、たかがしれてますけどね。
 他には、攻撃回数を増やして、確実に初撃で敵を仕留めたいときとかには有効な射撃法といえるでしょう。でも、ちょっとここに数字の魔法がありまして……Tさん、ちょっといい?」

「は?」

「突撃銃フルオート!(PAPAPAPAPAM!)」

「ぎゃほっ!?」

「あらまあ、全部回避に失敗? 見事にぶっとびましたね。

 でも軽軍装のおかげでダメージ4/2*が直撃、巻き込みからそれぞれマイナス1されるので、最終ダメージは3/1の倍、8ですむわけです」

「なにすんのよっ! 死ぬわよ、ふつー!」

「ところが、4/2*の合計に等しい6ダメージ武器で、[複数行動]で2発、速射したとします。
 たとえば携帯レーザー砲で撃つと……(ZAP! ZAAP!!)」

「おぐうっ!?」

「はい、また2回とも回避に失敗ですね。で、防御点は1発につき1回しかマイナスしないので、最終的なダメージは(6−1)+(6−1)で10点になるわけですねー」

「……つ……つまり、[直撃/巻き込み]にダメージが分かれてる武器だと、それぞれの判定で防御点がマイナスされるから……ダメージ合計値が同じなら、防御点が1回しかマイナスされない単発武器の[複数行動]で2回撃ったほうが強力になる、と……」

「でも[複数行動]は[切り札]でもないと面倒なルールですし、上級の敵には札を分散すると命中率がぐっと低くなりますから、普通の射撃ルールで、1ターンに2回射撃できるフルオートのほうが、一般的には有利なわけです」

「でもフルオートだと弾丸を撃ち尽くしちゃうわけね」

「まあ、野外戦だと対戦車ライフルや携帯レーザー砲のほうが使えるでしょう。もちろん、5/2**なんていう機関銃なんかは話は別ですよ。アレはベルト給弾式だから、3ターンもの間、フルオートで撃てますし」

「ということは、1回の攻撃でも、全部回避に失敗すると、ダメージは合計21になるのね。恐ろしい……」

「しかし! 真にフルオート火器が威力を発揮するのは閉鎖空間での戦い! コレですっ!(PAPAPAM!)」

「ひいっ、撃つなあっ!」



[閉鎖空間での巻き込みダメージ特則]
 巻き込みダメージの範囲より狭い閉鎖空間で、巻き込みダメージを有する武器を使用すると、直撃/巻き込みダメージがそれぞれ2倍に増加する。なおかつ、爆風や破片が反射するなどして回避しづらくなるため、[回避(DEX)]マイナス2の負荷が回避側に課せられる。



「はっきり言って、これは鬼です。と、そこでですね。高速機関銃で事例を見てみましょう。いわゆる対人バルカン、ミニ・ガンなどと呼ばれてる火器ですねー(ガチャン)」

「それって確か、STRが5以上ないと携帯できないんじゃ……」

「おほほほほほほほ!(VWOOOOOM!!)」

「ぎょおおおおっ!?」




[事例2]
 幅2メートルしかない通路で、上級貴族の娘が、桃色戦闘服の女傭兵に向かって高速機関銃をぶっぱなす。

 ダメージは8/2**なので、倍加して16/4**になる。追加判定に全て失敗すれば、合計ダメージは閉鎖空間内なら60になるわけである。

 たった1ターンの攻撃であったが、もはや人体は原形をとどめない。

「ふっ……さすが1秒に100発の発射速度」

 壁や天井一面にこびりついた大量の血と肉片を背にして、貴族の娘はにやりと口もとを歪めた。





「あーびっくりした。このルールは、フルオート火器だけじゃなく、散弾銃や手榴弾なんかにも適用されるから注意してね。ま、自分がそういう武器を持ってれば、屋内でザコがたくさんいる場合なんかには有利だけどね」

「もう、屋内戦はフルオートあるのみですね。単純なルールで、SMGなどの脅威をよく表現しているといえるでしょう」

「じゃ、フルオートはこれぐらいにして、3点射のほうを」

GM「まったく、3点射は設定に苦労したぜ。パラフリの大雑把なルール体系を崩さず、いかに細かく特色をだすかでなあ……」

「少し黙っててください(BABABANG!)。はい、静かになりましたね。このように、フルオートを制限して、弾丸を3発だけ撃つ射法を3点射といいます。ダメージ表記は、[(3)ダメージ値]となっています。
 SMGなら、3、(3)4とかいてあります。前の3は、セミオート、すなわち単発射撃のダメージを表します」

「判定は、*ひとつのフルオートと同じだけど、巻き込みダメージが生じないから、手順が楽でいいわよね」

「そうです。3/1と4、合計は同じですが、敵の装甲が厚ければ3点射で撃ったほうがより大きなダメージを与えられます。敵装甲が1だと、フルオートSMGだと合計ダメージは4ですが、3点射だと6です。
 さっきもいったように、装甲値をいちいちマイナスするかどうかで変わってくる点に留意してください」

「まあ、装甲の値でも色々かわってくるんだけど、面倒だから省きましょ。要するに、原則としては、3点射は装甲の厚い敵に有利だってことかな。
 マガジンもフルオートと違って、2ターンもつし。
 だから、1ターン目だけ<3点射>で撃って、次のターンで<単発>にセレクターを合わせれば、弾切れしないですむのよ」

「ただし、屋内で撃っても、ダメージ倍加はしません。ここがちょっと、物足りない点ですね」

「それに、3点射だと<制圧射撃>もできないでしょ」

「そうです。あ、まだそれは説明してなかったですね(ガチャン)。
 <制圧射撃>は、フルオートならではの射撃法です。
 例えば、このアサルト・ライフルで<制圧射撃>しますよ、と宣言して、札を場に1ターンの間だしておきます。
ただし、[射撃]マイナス1されますが。で、撃つと」

GM「(PAPAPAPA!)うおおっ!?」

「(PAPAPAPA!)ひええっ!」

「(PAPAPAPAM!)このように、次にわたしに番が回ってくるまでの間、ずっとフルオートの弾幕をはっておけるわけです!(PAPAPA
 範囲は、目標との間の火線、*なら幅2メートル、**なら幅4メートルの空間です!
PAPAPA) この火線に踏みいる者は全て、場に出してあるわたしの札を目標に、回避判定を行わねばなりません!(PAPAPAM!) 結果的に、敵側の行動を1ターン、封じられるのです! ほーっほっほっほっ!(カチン) ……と、いうわけです」

「ふう……こりゃあ、牛さんの天敵みたいな射法ね」

GM「まあ、気をつけたほうがいいだろうな」

「でもなーんか、フルオートにしろ3点射にしろ、1回の射撃で何回も判定するのって結構めんどくさいわよねえ」

「そういう方には、これがいいでしょう(CLANCH!)」

「ちょ、ちょっと! なにコッキングしてんのよ!?」

「散弾銃、所謂ショットガンです(BAGOM!)」

「げぶうぅっ!?(B−CHANK!)」

「まあ奇麗。肉のプディングとでも形容すべきでしょうか。
 散弾銃のダメージは、4/4。フルオートじゃないので、追加判定はありませんが、屋内でのダメージ倍加は適用されます。判定も2回だけですので、割と楽ですし。パラフリの散弾銃は、通常で5メートルと、射程が異常に短いのが弱点ですね」

「ふう、死ぬかと思った……本当は、装甲の厚い敵にはショットガンって余り効かないんだけど、パラフリのショットガンって、ライフル並みの貫通力あるしね。大轟くんがこだわる理由もよくわかるわ。屋内戦なら最強よ。弾数制限もないし。
 それに、GMの独創設定で、<スラッグ>っていうショットガン専用貫通弾も用意されてるんだって。これだと巻き込みダメージはなくなるけど、射程が割とのびるのよね。ショット・シェルと併用すれば、多彩な戦術をとれるわよ」

「ダメージはショットガンと同じですが、手榴弾にはKOダメージがつきます。生命力の高い敵は、これで気絶させると楽に先に進めますね。ただ、1個5万とか10万ガメルとかするんですよね。もちろん使い捨てですし、入手も割と困難です」

GM「でも、いろいろとオレが独創設定したから、選んで使うとプロっぽくて格好いいぞ。レーザー兵器を減衰させる爆煙手榴弾とか、照明弾とか。面白いだろ?」

「んもう、わたしのコーナーに出てきちゃ困ります(BAGOM!)。
 あら、また床が汚れましたわね」

「……あンたと話してると、良識ってもんが崩れてくるわね。まあとにかく、武器って、最後は好みなのよねえ」

「KOといえば、鉄鬼やサイバー・ビジネスマンにお困りの皆さんは、プラズマ兵器や電磁ライフル系火器を使うと便利ですよ。KO+1の追加ダメージを電子機器に与えられますからね、どんなに強い鉄鬼でもイチコロです。まあ、対EMPコーティングされてなければ、の話ですけど」

GM「うむ、特に電磁アサルト・ライフルとでもいうべき、このアシャル・イルギューフなんていいね(なぜアーヴ語なんだ過去のオレ)。フルオートだから、最高でKO判定を志尾原に4回もさせることができるじゃないか! うむうむ、1挺買っていこう」

「連射速度が凄いけど、弾体が小さいから人体に使うとアサルト・ライフル程度ですけどね。[火力値]がつくのもいいですよね。対戦車ライフルほど長くなくて扱いやすいし。ただ、弾倉がやたら高いんですよね」

GM「この、信号拳銃なんて鬼だぜ。拳銃なみの大きさで、ダメージは対戦車ライフル並み(笑)。実質、対戦車ピストルだってよ。射程は短いけど、個性的だよな」

「これは……HSR? 超音波小銃ですか。音波兵器まであるんですねえ。この、衝撃砲なんて、音波兵器の中でも人道的で、面白いですね」

GM「ほとんどKOダメージしか与えないやつな」

「(武器一覧をみて)色々ほかにもあるわねー。独創設定で、ルールブックの4倍くらいに火器の種類が増えてるんじゃない? まあ、じっくり見て選べば面白いでしょうね」

GM「うん……武器もだけど、オレのパラフリRPGはまだまだ先は長い。
 したがって、本気でついてくるつもりの人はだね、<独創武器一覧>とか<清水版パラフリ用語辞典>等を熟読しておいてくれると、長生きできるし、楽しいと思うぞ。じっくりと読んでね♪
 あんな武器もたせたらカッコいいだろうなー、とか、自分のキャラとイロイロ組み合わせて想像すると楽しいぞ。

 あと、見過ごしがちだが、武器の射程にも注意したほうがいい。拳銃なんて通常で20メートルしか届かないからな。ライフルもってる奴と、野外では戦いたくないだろ?

 最後にちょっとした助言。一流の傭兵は、やたらにフルオートで弾丸をバラまかないほうが、それらしいぞ。おちついて1発づつ、セミオートで敵をしとめる。自動小銃つかってても、そうしたほうが一流の雰囲気を演出できるぞ。やたら弾丸バラまくのは、新兵だけだって話だからな」

牙竜「ま、オレは一流と自負しているが、常にフルオートだ。オレの技術なら全弾命中させられるし、暴牙人の誇りだからな」

GM「そ、そうなのか……(呆)」

「まあ、自分の戦闘形式、スタイル、流儀、趣味。そんなものを早く確立することよ。それに合わせて武器を選択すれば、そうそう悪いことにはならないわ。何より、<武器は人を語る>ってのが、傭兵の常識だしね。凝ったほうが面白いと思うわよ」

「そうです。では、よりよいフルオート・ライフを楽しんでください。ほほほほほほほっ!(PAPAPAM!)」



                     <L女史のフルオート講座:おわり>


ひきつづき、GMいんたびゅうコーナーをお楽しみくださいナ。



震星なのじゃ!震星「つづきはこっちじゃ! とうぜん読むじゃろ?」
まめ震星たち「みゃっ、みゃっ、みゃーっ♪」



表紙へパラパラふりふりッ、とネ♪


ギラ「に、にぎやかね……(--;)。途中退場でパラフリ議事録一覧を めざす方はこちらへどうぞ」