極楽艦隊RPG遊戯議事録

 第9話<ママは宇宙傭兵>

第6章 終焉、そして旅立ち







GM「『あーあ、全員やられちゃったよゼイゴ』と、さっきの女の子の声がする。奥のエアロックが開いてだね、例の双子がでてくる」

「しまった(笑)。ザコに全部[切り札]使ってしまった」

リンダ「きさまらー! よくも騙してくれたな、おらァ!」

GM「『警察の方が、あたしたちが犯人じゃないか、なんて勘ぐったもんだから、つい派手にやっちゃってねえ。とはいえ、よくここがわかったわネ』と感心している」

リンダ「どういう意味だ、このアマ! てめえら、実は外見より、かなり老けてるやろ!?」

GM「本当はね、騙したりなんかしたくなかったんだけど」

リンダ「オレは仙人系と、いけすかねえ嘘つく奴は大嫌いなんだよおッ!」

「ギラは?(笑)」

GM「男の子の方が女の子に言ってる。『なあショウリン、こいつらせっかく此処まで来たんだし、ここは一つゲームをやらないか』

『そうねえ……じゃ、あたしたちの愛用の鉄鬼と戦って勝ったら、アレの在りかを教えてあげる! 早くしないと、アレが完全起動して復活しちゃうわよ』
といっている(このへんの口調は<ウルトラマンダイナ>の<クラーコフ浮上せず>に出てきたスフュームっぽいぞ)」

リンダ「あれ……って、アレじゃねえか!?」

志尾原「さあ、何が出てくるかな?(笑)」

GM「ばごん! と隔壁が割れてだね、全長4メートルほどの、鋼鉄で出来たアンキロサウルスのような鉄鬼が現れる。ただし頭部はなく、そこには重機関砲が装備されている」




[Rちゃんのパラフリ科学講座]
 アンキロサウルスは、古代地球の生物で、よろい竜に分類される草食恐竜です。亀のような重装甲と、側面に張り出したトゲ、尻尾の先には骨で出来た打撃用の球体を備えているという、防御力の高い4足歩行型の恐竜でした。




リンダ「グレネード・ランチャー付き突撃銃、さっき志尾原が拾うっていってただろ」

GM「言ったか。まあ全員倒したし、拾っててもいいだろ。グレネードは2個みつかったよ。ちなみに、この鉄鬼のフルオートは本気で回避しないと死ぬよ、君ら(笑)」

志尾原「イニシアティブとって、グレネードを撃てば」

GM「まてまて。効果範囲が広いぞ、グレネードは」

志尾原「げ」



 しかしVIPは避難してるだろうし、双子以外は、志尾原本人をのぞけば誰も巻き込みダメージの範囲内(半径4メートル)にはいないことが判明。




志尾原「じゃあ、[複数行動]で、後ろに下がりながら、振り向きざまに撃ちます(本当は[移動しながら射撃]のルール。[複数行動]の方が大抵難しいからかまわないが)」

「動きがすでにバーチャロイド(笑)。きゅいいいん、ずばっ!」

志尾原「イニシアチブは」

GM「もちろんとってもらう。1人ぐらい死んでもらわんとな(にやり)」

リンダ「こら!」




 TRPGでは、PCが全滅するとそこで物語が終わってしまい、GMとしても面白くない。
 原理的にPCは甘やかされる傾向にあるわけだ。
 しかし、危機に陥らない遊戯ほどつまらないものはない。そこで、GMは、このように積極的にPCに苦難を与えるべきなのだ。
 遊戯態度が不真面目であったら、全滅させてお灸をすえてやれ。
 そう書いた本を読んだこともあるぞ(笑)。
 幸いリンダたちは、大変いっしょうけんめい演技してくれるので、そうした懲罰は必要ないのだが。




 イニシアティブは志尾原がとった。[複数行動]で絵札をすて、更に後ろに移動しながら撃つので[射撃]マイナス2。

しかし、それでも奴は[切り札]10を出した! アサルト・ライフルに装着された擲弾発射器から、轟然と40ミリ炸裂弾が放たれる!



GM「だめだー! この鉄鬼、機動力低いよー! と、ダメージが(この鉄鬼は装甲が[火力値]だから)倍倍、倍で、1が8に……
これ以上は必要ないや(笑)。
一撃で鉄鬼は大爆発して、真っ2つになってゴロリと転がったよ」

志尾原「勝利っ!」

リンダ「鬼だあ!(笑)」



 船の外壁はもちこたえたものの、操縦室は手ひどく爆風で破壊された。<アマノワタリ>制御用の機器が破壊され、異常に船の速度が上がっていく。がくがくと揺れるレセプション・シップ。
 そんな中、リンダたちは双子を問いつめる。



GM「『な、なんてことなのっ!?』双子は慌ててるね」

「てゆーか、よく生きてるな(んもう、平気で殺そうとするんだから)」

志尾原「さあ君たち、倒したから教えてもらおうか」

GM「まさか、ここまでやるなんて……。
 あの生物は、<薫風>軌道上のアマノワタリ養殖場に隠してたの。アマノワタリには狂暴な<アマノワタリ・アラクニド>が共生して防衛してるから、誰も近づけなかったしね、ちょうどよかったのよ。何しろ養殖自体、ぜんぶ遠隔操作でやるぐらいなんだから」

リンダ「そこにあの宇宙怪獣を隠してるわけ? オレの駆逐艦をよくもおっ! ゆるせんッ、貴様ら!」

志尾原「まあまあ。人間誰しも好奇心というものがあるから」

GM「『でも、一度リンダさんに会ってみたかったのはホントなの』といってるね」

リンダ「ところでこいつら、顔は偽装なの? 年齢は?」

GM「うん、本当の顔は誰も知らないって話だ。年齢は、話ぶりからだと外見どおりじゃないかって気もするけどね」

リンダ「いやしかし、世の中には宇宙の神秘みたいな人もいるからね、ホントに」

「うむ(笑)」

リンダ「もしかしたら仙人系かもしれねーしよ。やっぱ、ここで殺っといたほうがいいかもしれん」

志尾原「あえて殺る必要はないでしょう。ゲームは楽しんだわけだし、もう勝負はついたから」

GM「『ありがとう。面白かったわ』といっている」

志尾原「なかなか楽しかったよ♪(爽やか)」

リンダ「ちょっとまて! かね、カネ、金ーッ!」

GM「そのとき、『勝手なことをするな!』と、真空のはずなのに、船の外から声が響いてね。壁に、バリバリバリ! とビームで穴が開いてね」

リンダ「……はい……?」

「切り札が、切り札が……」

GM「背中に羽の生えた、孔雀人が飛び込んでくるね。『ガッシャーン!』(笑)」

リンダ「またかいーっ!! 仙人だああっ!」

「切り札が、切り札が、ないいいーっ!(パニック)」

GM「『わが名は<アグニの牙>所属、レンファン道士!』
キザっぽい若い孔雀ハーフだ。(孔雀の基準で)けっこうハンサムだぞ」

リンダ「くっそお!! なんだ、てめえはよお!?」

GM「『死ぬがよい!』 バッ! 掌からビームを撃つ」

リンダ「うわおい、ちょっとまてえ!」

「それはちょっとないなあ!」

志尾原「仙人は、まずいなあ」

「ところで、もうVIPの皆さんは退避して、輸送船に乗ってるよな。乗ってるよな?」

GM「そうだね」

「ここにいるのはオレ達だけだな。逃げよう(笑)」

リンダ「逃げるしかない、ちくしょー!」

GM「『おい、大丈夫かお前ら!』と牙竜くんが」



 仙人が光弾を撃つのと、避難誘導を終えた牙竜がその場に飛び込んできたのはほぼ同時だった。不運にも光弾は牙竜を直撃、一撃で彼は瀕死の重傷を負って気絶してしまう。



 ……NPCが複数でてくるとGM側の手続きが煩雑になるので、こうして処理してしまうのも、ひとつの技術といえるだろう(笑)。
 パラフリでは、雑魚NPCなら、巻き込み判定などはやらずにその処分を決定してもよい、とまで規則本にかいてある。物語中、重要なNPCはむろん、この限りではない。




リンダ「がりゅううー!」

GM「『全く、この双子は勝手なことをして困る。(リンダらにむかって)君らはこの場で、美しく消してあげよう』
と、きゅうううん……と光が掌に収束していく」

志尾原「ひとまず、逃げましょう。効かないモノは、どんなに[切り札]出しても効きませんから」

GM「レンファンの手からビームが放たれる」

リンダ「ちょっとまて、死んでまうがなー!」

「[複数行動]で、回避しながら走って逃げる! ……ところで標的は誰?」

GM「牛さん」

「うっ!(笑) カウンターしても仕方ない、2で」

GM「かわしたね」

リンダ「ナイスだ牛!」

GM「ふむ。これはそろそろ、わたしも本気でお相手する必要がありそうですなッ!」

「きたああああっ!(笑)」

リンダ「にげろおおお!」

GM「『まって、レンファン道士!』と双子が。『<あいつ>が加速してこの船に追いつきつつあるよ』といってる。とうとう<アレ>が飛び立ったらしい」

「でーれん、でーれん……(<ジョーズ>のテーマ)」

GM「『ふむ、さすがの猛スピードだな。このプラズマ・レールをエネルギー源にして加速しているから、あと2十分もすればここは粉々に破壊されるだろう。ふ、まあいい。君たちは残り2十分を十分に楽しみたまえ。おっと、面白い置き土産をあげよう』
 といって、パチンと指をならす。と、床が、ばきばきばき! と割れて」

リンダ「まだ敵がいるのかいッ!」

「さらばだネモ君(笑)」

GM「このような巨大な昆虫のような怪物が出てくる」

リンダ「アラクニド・バグ!」


 みんな! 映画<スターシップ・トゥルーパーズ>をビデオで観てみよう!(現在、たぶんまだ出てないケド。いや、99年7月現在、もうとっくに出てます)


GM「さっき双子が言ってたけど、リンダもネットで見ただろう。スター・バタフライの幼虫がアマノワタリを食べるんだけど、そいつをこのバグは排除することで、アマノワタリから栄養分をもらってるんだ。つまり、共生だ。こいつの苛烈な戦闘能力のために、今までいかなる盗賊も養殖場には侵入できなかったんだ(と、図を示す)」

「ほおお」

GM「(体高は2メートル、全長は4メートルくらいか。人間より大きい)この大顎をね、くわーッ! と開いて威嚇するわけよ。この攻撃用の鋭い前脚を高く振り上げてね」

「ま、威嚇ですめばよかったんだがな。残念だ」

GM「仙人は双子とともに、外にでていく。自動修復メカの粘着弾で、空気はもれないから安心だ」

志尾原「それ、1体だけですか? なあんだ。アサルト・ライフルは丸々残りますね。グレネード1発で終わりますから」

「1体だけか。よおし」

リンダ「さっさとつぶそう」



 イニシアティブは志尾原から。彼は[切り札]11のグレネード・ランチャーをぶっぱなす。脚をがしゃがしゃと鳴らし、一行に猛烈な勢いで迫ってくる巨大昆虫は、大爆発に巻きこまれる! 渦まく火炎と黒煙! ……しかし。


GM「11枚か、カード捨てよう。仕方ない。ダメージは、プラス10で16ダメージ!
 すごいね、脚とかかなり吹っ飛んで、緑色の体液をジャバジャバまき散らしながら、キシャアッ、キシャアッ! と、鋭い脚を振り回しながら飛びかかってくるぞ」

リンダ「まだ生きてるのかよ! じゃ、オレ撃つわ。最後の3点バースト、[切り札]! もっかい[切り札]!」



 リンダの短機関銃が吠え、9ミリの連弾をバグに叩き込む。

 その甲殻にボコボコと弾痕が開き、かなりの傷を負わせた。
 だが、巨大昆虫はより激しく荒れ狂い、その大顎でリンダたちを食いちぎろうと迫ってくる。
 このころになって、ようやく事態の深刻さをリンダたちは悟る。



リンダ「まだ生きてんの!? オイオイちょっとまて、信じらんねえよ!」

志尾原「おいおいおい……」

「オイオイオイ……!」

GM「こっちの攻撃だな。目標は志尾原だ」

リンダ「志尾原、大丈夫かあッ!」


 鋭い2本の脚が同時に突き出される。楽に大人を串刺しにできる、凶悪な武器だ。しかし、その2回攻撃を志尾原はかるく回避する。DEXは高い志尾原であった。


「じゃ、オレか。……死ね。9枚」


 牛の必殺の拳が唸り、アラクニドの甲殻を粉砕した。そのまま内臓にまで拳をねじり込み、中枢神経節をぐちゃりと握りつぶす牛。噴水のように体液が噴き上がった。活動を停止し、巨大昆虫は重々しく床に転がる。


GM「むう。13ダメージ……流石にそれは死んだな。牛さんは緑色の返り血を頭から『ばしゃーっ!』と浴びる」

リンダ「バグ・バスター(笑)」

GM「やってくれるな。さて。『ピーッピーッピーッ! 接近警報!』」

「お前ら、[切り札]使い切ったんじゃないだろうな? このあと逃げなきゃいけないんだから!」

リンダ「さっさと牙竜くんを連れて、輸送船に乗り込んで逃げないと! 牙竜さーん、大丈夫?」

GM「『はっ!? ヤツはどうしたっ!』と、ごつい変な銃を握って飛び起きる」

リンダ「生きてんの!?(笑)」

「引きずって貨物船に飛び込んで発進だ!」

GM「『わーっ、オレに<激光槍げっこうそう>を撃たせろーッ!』とわめいている」

リンダ「いいから(笑)、さっさと乗ろう! [操艦]が一番高いのはオレか?」

GM「シャトルの入口まで行くと気づくんだけど。隔壁の外から、ざわざわコリコリきちきち、という音がするねえ」

リンダ「さっきのバグが集まってきてるんだ! さっさと逃げねえと!」

GM「ためしに窓から外を見てごらん。ぞわぞわと3、400匹は船に集中して、君らのほうへと押し寄せてくる」

リンダ「にげろ、逃げろーっ!」
「とりあえず、即離陸」

GM「待ちたまえ。シャトルのエアロックに鍵がかかってるから。[電子]難易度4で解除だ。15分したら、アレが来ることにしよう(1回の操作で5分かかる設定)」

「なぜ鍵が!?」


 ふふふ。ここで2回も解除に失敗すれば残り時間5分。こりゃもうドキドキだろう! などと目論むGMであったが、その目論みはもろくも崩壊するのであった。ああ、強い。強すぎるよ君たち、いろんな意味で……。



リンダ「[電子][切り札]!」

GM「よし、開いたあ!」

リンダ「馬鹿やろう、閉める奴があるかあ! オラァ!」

GM「誰かが律儀に閉めていったんだろう」

リンダ「どっかのVIPだろ、まったく。よっしゃ、シャトルに乗ったァ!」

「シャトルが飛んでなかっただけ、よしとするさ」

GM「……! ちいいっ! その手があったかッ!(笑)」

リンダ「さっさと離陸や!」

GM「離陸、難易度は3」

リンダ「さっさと逃げよう」

GM「おっとそのとき! シャトルが大きく揺れる!」

リンダ「ちくしょう!」

GM「何かがシャトルのエンジン噴射口にこびりついてる! 難易度5に増加ね♪」

リンダ「いいや、いくよ! 2、1、K……あっ、4枚になってる!(志尾原の[応援]のおかげ。しかし、演技をちゃんとしてくれないとイカンよ)」

GM「こっちはA、離陸成功だな。しがみつこうとしていた2、3匹のバグが宇宙空間にふり落とされる。レセプション船は数百匹のバグの群れに覆われていくけど、君らのシャトルにはさすがに手出しできないね」

リンダ「さっさと安全な軌道まで逃げよう」



 いろいろあったが、輸送船はどうやら離脱に成功、<薫風>への軌道をとった。
 窓の外に目をやると、宇宙の果てまで続いてるような巨大な緑色のプラズマ回遊路の彼方から、青白い光の塊が猛烈な速度でかけてくるのが見えた。真空のはずなのに、一瞬、輸送船が衝撃波で揺さぶられる。通常の艦艇とは推進方法が異なるらしい。

 次の瞬間、プラズマ回遊路上にあったレセプション船に青白い光の塊が激突し、船は粉々に破壊された。飛び散る破片と、数百のバグの死骸の向こうのまばゆい光の中に、リンダたちは異様なものを見る。



GM「それはどちらかというと哺乳類に似ている、3、40メートルほどの巨大な怪獣だ。金色の毛皮が青い虎じまに覆われている。耳は長いぞ。2枚の尾翼のような尻尾を振り立て、宇宙の彼方へと消えていく」

リンダ「うちらが最初に会った、アレですか。ARACのおっちゃんにあとで話しておこう」

「ロンヴァ**……(それはリュートちゃんの<獣鬼兵>でしょうが)」



 輸送船は無事、宇宙港についた。人質にされていた政府要人たちは、口々にリンダ一行に礼をいう。
 ようやく一息つく一行であったが、任務終了を告げる報告書をARACに提出しなければならなかった。

 結局、海賊の謎の戦艦の復活を阻止できなかったし、レセプション・シップも破壊されてしまった。
 非常に報告書は書きづらい内容のものとなる。ちなみに、報告は面談(SOC)で行ってもよいのだ。



志尾原「じゃ、わたしを中心に報告書を作るということで」

リンダ「頑張れー。と[応援]」

GM「というわけで、INT難易度6ね」

「始末書(笑)」

志尾原「2のペア」

GM「Kのペア」

リ・志「よかったあ!」

GM「かなり渋い顔をしているけどね。肝心の異能生物は逃がしちまうわ、船は破壊されるわ……」

リンダ「VIP助けたやろ、ホントに!」

「だいたい、敵を中枢部に潜入させてしまった警察の責任が、その前に問われるべきだ」

リンダ「オレもそう思うぜ」

GM「(ARACとは関係ないぞ)まあ、あの状況でVIPを助けて、しかも敵の何人かは殺してない。なかなか優秀な腕前だ。仕方ない、こちらの経費から報酬を各人に400万ガメルづつ支払おう」

リンダ「で、モスコの修理費を3分の2、負担してくれるんだよね」

GM「『それは既に振込ずみだ。任務に使うのかと思ったのでな』とはいえ、修理には数日かかる」

志尾原「じゃ、わたしはサイバーウェアの追加に」

「買い物もしたいな」



 ということで、リンダたちは数日間、港町を中心にぶらぶらと過ごしていた。
 あれだけの戦闘のあとでは、さすがの牛たちもしばらく休暇をとらねば身体を壊してしまう……いや、平気かもしれないが。特に支出していないところをみると、生活費はどさくさに紛れ、ARACに支払わせたらしい。

そんなある日、宇宙港にたちよったリンダに連絡が入った。



GM「宇宙港で呼び出しがかかる。ギラ軍曹から遠距離通信だ。
『どうだった? アレの復活は阻止できた? 話にはいろいろ聞いたけど』」

リンダ「阻止できませんでしたぁ(泣)。あの子供ふたり、仙人だったみたいで、1人は鉄鬼使いで、1人はハッカーで……それに、孔雀の仙人まで出てきたんですけど!」

GM「『やっぱり、あの<邪仙>どもが動きだしてるわけか』とかぶつぶつ言ってるね」

リンダ「ところであの、牙竜氏と知り合いなんですか」

GM「ああ、彼ね。わたしの事務所でけっこう修行してたからね」

リンダ「……苦労したんだろうなあ」

GM「『どうも近ごろ、一部の海賊と仙人で変な動きがあって、やーねえ』といってる。『ああいう連中は、ぜったい許せないわ!』と1人で燃えてるな」

リンダ「ところであの、阻止できなかった金色のアレはなんすか?」

GM「アレは……」

「昔、リュートちゃんが創ったやつじゃ(笑)」

GM「違う(笑)。『正直いって……まずいのよね、状況的に』」

リンダ「まずいんですか!? いや、師匠がまずいって言うぐらいにヤバいんですか!?」

GM「詳しいことはまだ言えないんだけど。わたしも当分、外宇宙(アウター・ワールド)に行かないといけないし」

リンダ「はあ……」

GM「そういえば、この間の武器の話。650万、払ったままだったわよね。そこからだとちょっと遠い辺境なんだけど、山華龍泉(サンカリュウセン)っていう星にいけば、そこにいるメルカヴァルって人が、いい武器をくれるかもしれないわ」

リンダ「それってもしかして、師匠の友達?」

GM「まあ、そんなとこね」

リンダ「男性か、女性かだけでも教えてください」

GM「女性」

リンダ「………………」

GM「なんでそこで沈黙するッ!?」

リンダ「いや、師匠の知り合いで、女性っていうと……けっこう、『濃いい』人なんじゃないかと(笑)」

GM「まあ別に、ごく普通の女性科学者だけどねえ。あとでOLSMで情報おくっとくわ」



 OLSM(オルム)とは。

 Over Light Speed Mailの略称である。

 つまりは超光速郵便をさす。ジャンプ航法では質量のある物質は最大20光年までが1回の移動の限界だが、情報だけなら、最大2000光年まで1回のジャンプで送信することができるのだ。OLSMは清水の独創設定で、しかも後付け(笑)。遊戯当時は普通に「メール」と言っていたと思う(笑)。




 ギラ軍曹の話によれば、ここから<山華龍泉>までは120光年も離れているという。
 船の最大ジャンプ距離は、1回で20光年、2日を要する。
 さらに、1回のジャンプに要する船の運航経費は100万ガメル。
 がんばって行く先ざきで金を稼がないと、なかなか行き着けそうもない。



GM「こっちの『そういう』事情にもそのメルカヴァルって人は詳しいから、まあ、そのメルカちゃんにきいてちょうだい。じゃっ!」

リンダ「あっ、師匠……120光年……」

GM「経験点は……ま、簡単ってわけでもなかったし」

リンダ「この嵐のような戦闘で、簡単!?」

GM「じゃ、1人70点ね。レベルアップは誰もなしか」





 新品の装甲鈑が、<さつき星系>の2重太陽の日ざしをきらきらと跳ねかえしている。
 主機関が唸りを上げ、噴射口から離着床に叩きつけられた白い噴射炎が、青空にのぼっていく。
 重力機関の放つ蓋然波が、モスコ=ミュール近隣に停泊している航宙船をかすかに揺るがす。
 あたかも新造されたかのようなモスコ=ミュールは、今まさに飛びたたんとしていた。


「120光年かあ。面倒な旅になりそうね……」

 先が思いやられる。リンダはがっくりと操作卓に顎をつく。

「いいではないか、これも修行のうちだ」

 拳をかためて見せる牛。彼は航行中、殆どすることがないので、気楽なものである。リンダはため息をもらす。

「機関部、第1から第4まで全て正常起動。出力安定、その他、点検項目すべて正常。いきますか、ホローさん」

 操作卓を手早く叩きながら、志尾原がいう。観念したように、リンダは操縦桿を握った。
 瞬間、彼女の神経系と艦の感知器群が接続され、モスコ=ミュールはリンダのもう一つの身体となる。彼女は、この瞬間が好きだった。

「ま、しゃーないか。モスコ=ミュール、発進!」

 噴き上がる駆動炎。青空に航宙駆逐艦が舞い上がる。

 今日もまた、ホロー傭兵分隊は銀河を行く。




                                     <つづく>





<予告>

かくしてひとつの物語は終焉をむかえ、また新たなる冒険が幕をあける。

メルカヴァルとは、いったい何者なのか?
この銀河で、いったい何がおころうとしているのだろうか?
幾多もの疑問を胸に、ホロー傭兵分隊の冒険はつづく!!


とりあえず、レクシー女史のフルオート射撃講座やGM質問コーナーを続けてお楽しみください(^^)。


震星なのじゃ! 第15話に初登場じゃ!震星「つづきはこっちじゃ! 読まぬとまめ震星でおしおきなのじゃ!」
まめ震星たち「みゃっ、みゃっ!」


表紙へパラパラふりふりッ、とネ♪


ギラ「なんかさ、前より数が増えてない?(--;) ま、それはともかく。パラフリ議事録一覧はこっちよ」