極楽艦隊RPG遊戯議事録

 第9話<ママは宇宙傭兵>

第4章 リンダ大いに怒る







 暗く、巨大な円柱状の昇降用シャフトを5分も降りていくと、2人の足もとが明るくなってきた。出口、つまり彗星の中心部だ。

 やがて2人は、青白い光に包まれた広大な球体状の空間の中にでた。

 そこここで、緑色をした巨大な植物の塊が漂っているのが見える。光源は見当たらない。光合成植物の透明細胞で構成されているらしい内壁が太陽光を導いており、それがこの空間全体をぼんやりした間接光で満たしているのだ。
 2人の身体は、その光の中、ふわりと宙に浮く。



リンダ「……ゼロG?」

GM「そうだ。零G空間だ!」

リンダ「やべえ! 零Gだよオイ! ここで撃ったら、うちら反動で吹っ飛ばされるぞ!」

GM「いいところに気がついたね(ニヤリ)」

志尾原「大丈夫。背中合わせで撃てば」

GM「そんなうまいこと、重心がピッタリ合うかい!」

リンダ「やべーよー」

GM「君ら、探知器でも持ってるだろう。ちょうど君らの真下、100メートルぐらいのところに浮いてる、ひときわ巨大な空中森林の中が発信源だ。根っ子がいっぱい出てる」

リンダ「銃を上に撃てば、その反動で……」

GM「普通に空気をかいて泳いでいった方がいいと思うぞ。[無重力空泳]? 技能があれば使っていい。STR、難易度4ね」

志尾原「STR……!」

リンダ「難易度4! たまんねーなー……2」

志尾原「13」

GM「Jの2カード。2人とも、思うようにすすまん! と空中でもがいていたと(笑)。ま、鳥と魚の合の子みたいな生き物が泳いでたりして、のどかな所なんだけど」



 と、目ざす下方の空中森林から『ドカン!』という爆発音が聞こえてくる。続けて、森の中で真っ赤な炎が弾ける。さらに、『バババン! バババン!』という銃声までリンダたちの耳に入る。再び、森の中で爆発。



リンダ「先客がいるんじゃん! しかし、こんなとこで3点バーストなんて危ないことやるんじゃねーよ、ホント」

GM「少しはコツを掴んだだろう、難易度3にしておこう」

リンダ「A」

志尾原「13」

GM「10のツーカード(笑)。やれやれ全く」

リンダ「うおお、なんだあ、全然泳げんぞー。もがもが」

GM「少しモタモタしすぎたようだな。[警戒(INT)]技能、難易度4」


 またGM側はツーカードをだし、2人とも判定に失敗。難易度判定(一般判定)は、GMが山札からめくっているだけなのだが。遊戯者側は、無意識のうちにカードを勝手にきっているんじゃ? そうすると不利になるぞ。(この頃は2山で遊んでいたもので、すみません(^_^;)。解釈の間違いでして、1山で遊ぶのが正しいのです)



GM「君らは奇襲攻撃に気付かなかったか。何者かが、背後から体当たりしようとして突っ込んでくる。ウィイインという反重力モーターの音とともに、30センチくらいの金属製のフットボールのようなものが突っ込んでくるぞ……目標は、リンダだ」

リンダ「突っ込んでくるなら、[戦闘]使っていいよな」



 近接戦なので、[戦闘]で回避判定。[回避]と異なり、攻撃を避けずに受け止めてダメージを避けることになる。



GM「[切り札]か、差は4枚? じゃ、6の4カードでコイツをカウンター攻撃したことになるのか。……当たってる。剣の基本ダメージが3だから、ダメージは5。君の攻撃はガァン! とそいつの表面を少し削ったことになる」

リンダ「少し!?」

GM「とみるや、その物体は君の至近距離で爆発する」

リンダ「うおおっ、ちょっとまてえ!?」

GM「『ズガガガァン!』すさまじい閃光と熱気がリンダを襲う! まず直撃ダメージを回避、次に巻き込み、KO。近接してるから、STR使ってもいいかな(いかん気がする)」


 直撃ダメージをまずリンダは回避。次に巻き込みダメージ、ダメージ4なので最大回避難易度は4。爆心にいたリンダは、回避難易度4、志尾原は隣にいたので難易度2。これも2人は回避した。回避したので爆風系ダメージにつきもののKOダメージ判定を行う必要はない。


リンダ「なんだったんだよお!」

志尾原「変なモノが飛んできましたねー」

GM「下の森をみると、その銀色のフットボールのようなものが、ふよふよとたくさん浮いてくる」

リンダ「やべーよ……」

志尾原「一か八か、反動でいきますか」

リンダ「1つ爆発させて、誘爆させらんないか」

GM「そんなに密集してないだろう。そうだ、INT難易度五で判定を。[戦術][軍事]とか[傭兵業界の噂]技能があれば使っていいけど。……なんだ、2人とも失敗か。じゃ、そいつが何なのかは分からないな」

志尾原「技能はあるんですが、今日に限って……」

GM「あがってきたそのメカの1つが、『バババン!』という銃声とともに、空中で『グワン!』と爆発する。衝撃波で弾かれなかったかどうか、判定を。STR、難易度4」


 リンダは9のペア、志尾原は8を出す。
結果、志尾原は爆風に吹き飛ばされ、空中をクルクルとスピンしながら内壁に叩きつけられてしまった。衝撃なので防具は無効で、ダメージ1。意外とSTR系攻撃には彼は弱いらしい。

 と、牛の遊戯者がここで登場! いつものパターンで、武者修行の旅の途中、リンダらが乗っていたARACの貨物船に乗り合わせていたということにした。もうほとんど何でもアリ、という感もあるが、まあいいや、パラフリだから。などと都合よく適当に話を進めるGMであった。


GM「STRの強い牛さんは、無重力戦闘は問題ないな」

「宇宙時代の東方流には、無重力戦闘もきっと考慮されてるんだろう(笑)」

志尾原「対戦車ライフルの反動で一気にいきましょう」

GM「[射撃]使っていいけど、背中向きで突っ込むわけだし、普通の撃ち方じゃないから、難易度6」

志尾原「大丈夫です。[切り札]7ですから(笑)」

GM「じゃ、ドカン! という轟音とともに、志尾原はロケットのように森の中に突っ込んだ!」

志尾原「やったあ!」
「……ダメージは?(笑)」

GM「そうか、木の幹にぶつかって止まるんだよな(笑)。そのまま直撃は可哀相だから、……STR難易度5の判定に成功したら、受け身をとれることにしよう」

リンダ「だってコイツ、STR2だよ!?」

GM「仕方ないさ。そういうモノだよ(笑)」

志尾原「ダメージ覚悟(と、10をだす)」

GM「ダメだ。クイーン出ちゃった。じゃ、キミは浮遊植物の幹に激突! ダメージ2、防具は無効だ。痛いだろうな、打ち身だな(笑)」

志尾原「あいたあっ!」

「問題はどう突入するかなんだが」

GM「じゃ、牛さんの方にもその、機械でできたフットボールのようなものが、キュイーン! と反重力モーターの音とともに2、3個殺到してくるわけだ」

「なぁにいー(笑)。騒がしい音がするから、たまたま来てみれば、あそこで吹き飛ばされているのは(注:自分で飛んだとは思っていない:遊戯者談)、どこかで見たサラリーマン! あいや不思議! と思っている間に近づいてくる謎の機械群!(笑)」

GM「と、さっきのティラノサウルス・ハーフに似た声がする。『そこの2人、何をしている! はやく降りろ! AHAM(アハーム)に対抗するには、障害物を利用するんだ!』といっている」

リンダ「おお、障害物をね……AHAM? AHAMかい、おい、ちょっとお!」


北川は、ふだんから清水が描いた設定集などを熟読しているので、こういうとき反応が素早くて助かる。なかなかに傭兵らしい演技ができている。

もっとも、PCが傭兵でない一般市民なら、知らないほうが自然だろう。
その人物らしい演技をしてほしい。こういうとき、出身や趣味の設定が生かされるのである。


GM「リンダはさすがに知っているだろう。<鉄鬼>の一種で、浮遊自走機雷とでも言うべきものだ。プログラムされた一定範囲内を巡回して、目標をみつけると高速で突っ込んで、バズーカ砲なみのダメージで自爆する」

「ありがちだな。ありがちだが、厄介だ(笑)」




[GMによる独創設定解説]
 <鉄鬼>とは、高度な電子頭脳を内蔵した無人兵器をさす。
 正式には<自律兵器>とよばれる。高価なのが欠点だが、使い方を誤らなければ強力な兵器である。自爆型のものは、鉄鬼の中では最下級に属しているが、鉄鬼にしては安価なので、比較的、普及しているらしい。




GM「うん、1人1体づつぐらい回避して降下してもらおうか。まずは牛さんを入れて、イニシアティブを」


 まずはAHAMからの攻撃。リンダは敢然と拳銃で撃つ。命中してAHAMは自爆したが、破片は届かない距離だった。

ただし、それでも衝撃波には抵抗しなければならないし、拳銃の反動もあるので、GMはSTR難易度8の判定を行わせる。[無重力運動]技能があれば、使ってもよい、とした。



リンダ「それはキツイ……じゃ、これで」

GM「お、成功。じゃ、リンダはその発光している内壁に足をバン! とふんばって、そのまま反動で森に降下してくることにしよう。じゃあ、牛さん回避してくれ」

「回避しないとイケナイものなのかい?([回避(DEX)]は苦手な牛氏であった)」

志尾原「自爆しますから、殴るとヤバイですよ」

GM「近接信管搭載型だから(と、いま決めた)、避けても自爆するけどね。だから、遠くから撃ち落とさないと」



[ギラ軍曹の軍事講座]
 近接信管っていうのは、レーダー・ドップラー効果を応用して、目標に接近
しただけで起爆する信管で、普通は大型の長射程ミサイルなんかに搭載されて
るんだけどね。近づく前に迎撃しないととっても危険よ、気をつけなさい!



「信管を切ればいいんだなッ!?」

GM「そりゃ、そうだけど(笑)。装甲に覆われてるんだぞ。
で、近づくと自爆するし。これで1個100万ガメルはお得だなあ(笑)」

「確かに。うーん、困ったな」

リンダ「牛さん、右だ!(と[応援])」

GM「うまく避けたな。直撃は勘弁して、巻き込みダメージだけにしてあげよう」

「ふっ、愚か者め。たかがプログラムされた機械ごとき、避けられないわけがないだろう(一同笑)」

GM「じゃ、キミを通りすぎた後ろで、どんっ! と自爆する。巻き込みダメージ、食らえばKOも」

「2!」

GM「残念、ペアだ。爆風を食らって、少し(1メートルらしい)離れてるから、ダメージ3ッス。KO判定を」




[GMによるルール解説(防御について。必読!)]
 KO判定は難易度5だが、絵札を[運だめし]のように出せば、難易度を下げられる。しかしSTR値が高い人物なら、絵札を直接、抵抗判定に使用したほうがよいだろう。

 なお、盾をもっていない、あるいはライフル等の両手持ち火器を使用していて盾を装備できない人物でも、絵札を2枚だせば、防御力にプラス1される(盾はもともと、絵札を1枚捨てて初めて使用できるものなので、1枚目の絵札を防御力0の盾とみなすわけである)。これは累積され、以後絵札を1枚づつ出すたびに1点づつダメージを軽減できることになる。志尾原氏のような狙撃系人物は、この規則を活用すべきだろう。ただし、壁に叩きつけられる、などの衝撃系ダメージは基本的に装甲や盾では防げないので注意。

 また、ダメージ3以上の武器は、防御点1の盾として使用できる。ただ、ここにいう武器というのは、刀剣類に限るのが妥当だろう。ただし、ライフル等の両手持ち火器はこれに含むものと解する。いずれにしろ、専用の盾には防御力は及ばないので、[射撃]で切り札の使える者は片手で撃てる拳銃などを使い、盾を装備した方が、バランスがとれる。




「キングのペア」

GM「成功した。じゃ、気絶はしなかったけど、爆風を食らって、クルクルと入口にむけ吹っ飛ばされたわけだ」

「やっほう!(笑)」

志尾原「あー、飛んでる飛んでる」



 次のSTR判定に成功した牛は、上手に壁を蹴って、反動で一気に下方の空中森林へと降下していった(「そりゃもう、無重力戦闘ならお任せを!(笑)」)。



志尾原「いやぁ、ようやく揃いましたね」

リンダ「ホントだよ。牛さんどこにいたんだよ(笑)」

「それはな……秘密だ(笑)」



 一行は空中森林の内部に勢揃いした。複雑な立体格子となって、宇宙植物の頑丈な根や枝葉が入り乱れて絡みあい、視界を極端に悪くしている。隠密行動には最適だが、火器の照準すら困難なほど、それらの植物組織は濃密に生い茂っていた。

そこは、緑色の闇であるとさえいえた。四方八方に張り巡らされた枝を足掛かりにして、一行は進撃しようとする。



GM「で、キミたちの前にいるんだなあ。さっきのと同じような格好をした、ティラノサウルス・ハーフが。
『お前ら、よくもオレの高い<ミュラーの友人>を破壊してくれたな』
INT、難易度3(簡単すぎるかな)。……ん、牛さんは出しても無駄だから出さないのか?」

「…………出せと?(一同笑) いうのなら」

リンダ「あ、(牛氏にしては)すごい! 2だ」

GM「こっちにも2があるが、でも牛さんだから分かったことにしよう。たまたまトリディオで観ていた!(笑)
 それはね、古代銀河帝国の遺跡から発掘される暗殺用アンドロイドで、人間そっくりに擬態できる<鉄鬼>のことなんだ。難易度11で7日間の[調査]判定に成功しないと見破れないほど精巧に擬態するし、かなり強いよ」


当然、清水の創作設定である。


「そうか。きっと格闘家にとって敵だから知ってるんだろうな(笑)」

GM「もちろん、古代文明の遺産だからね。こんなものを分身として任務に使用できるのは、ARACと傭兵ギルドによって古代の遺産の使用を許可された、<屠竜士>と呼ばれる超一流の上級傭兵だけだ」

「でも、世の中には許可されてなくても勝手に使う奴もいるんだろうな(笑)」



 リプレイおこしてて思ったんだが、これってもしやアルフェリッツ姉妹?
 やだなもう、彼女らはちゃんとARACの許可もらってますぜ旦那。早く試験を終えてマンガを描きた〜い……。



リンダ「と、いうことは、このティラノ・ハーフくんは<屠竜士>なのかあ!?
 どうも、どうもです(笑)」

GM「てっきり、お前らは海賊の仲間かと思ってたんだが、話をきいてると違うようなんでな」

リンダ「あなたは一体、何ものなんですか?(笑)」

GM「なあに、通りすがりの傭兵だ。今回、彼女に依頼されてな」

「(ため息)かのおんな、か」

志尾原「(ため息)そうか、そうか……」

リンダ「だから彼女がいたんだな……」

GM「なにしろ、ARACが動いているっつう情報があったからな。傭兵ギルドとしてはARACのシマ(領分)を侵すわけにはいかんからな、こっそり、って話でな」

「……複雑な人間関係が(笑)」

リンダ「じゃあ、彼女が動いてたんですかー」

「すでに<彼女>っていうのは固有名詞だね(笑)」

リンダ「そうだったのかあ。いやー、ホントにどうも、すいませんねえ。しかし、3点バーストにはビックリしましたよ、あのときは」

GM「ふふふ……やはりフルオート火器に限る(3点射は広義ではフルオート火器)」

リンダ「またかよ(笑)」

「だから、火器はダメなんだって(一同笑)」

リンダ「それはおいといて(笑)、『しかし、よくここが分かりましたね』」

GM「ああ、海賊のネットを逆探知したのはオレの方が早かったからな」

リンダ「じゃ、なんで、あの女の子−−ショウリンを連れ去ろうとしたんですか?」

GM「確証はもてないが、やはり確かめねばなるまいと思ったんだ。宇宙海賊と結びつきの強い、ギルドに属していない下級傭兵のなかに、変装術に長けていて、なおかつ電子戦闘技術に長けている双子の傭兵がいると聞いたことがある。ちょっと気になったもんでな」

リンダ「なにいッ!!」

GM「双子の一人は一流の<鉄鬼使い>という話だ」

リンダ「マジかよちょっとお!」

「とりあえず露骨に騙されてたわけだな。君は」

GM「『来たぞ!』といって拳銃を構える。さっ! さあ、イニシアティブをとってもらおうか」



 先制攻撃は鉄鬼からだ! 3つのAHAMが襲来、一行に襲いかかる! 志尾原が「まずいな……」と顔をしかめる。牛も「近接信管さえなければ……(遊戯者発言?)」と、いくらか渋い顔。

まずは牛さんが目標となった!



リンダ「木の影に隠れたりできないの?」

GM「うん、鉄鬼側は攻撃しにくいだろうね。反重力モーターに干渉波が生じちゃう。ということで、こっちの攻撃札はちょっと下がりますねえ」



[GMから一言]
 遮蔽物の利用は、特に銃撃戦や対機甲(メカ)戦において重要である。手近なものに隠れると、マイナス1から2程度の修正が攻撃側につく。ことによるとその1点で、相手が[切り札]を使えなくなるかもしれないのだから。戦闘が始まったら、まず伏せたり隠れたりするのが、熟練傭兵らしくて演出的にも格好良いだろう。
 地味なようだが、苛酷な戦場では、この行為が生死を分けることもあろう。

 戦闘中に思い出して、隠れることを宣言した場合、それだけで1ターンを費やしてしまう(とする)。くれぐれも戦闘開始時に宣言するように。

 特に屋内戦では、爆発物やフルオート火器で攻撃されると[回避]にマイナス2の負荷がかかるため、最低限、伏せ撃ちをすることをお勧めする。そうすると攻撃側の技能にマイナス1の修正がかかり、回避側の負荷修正は実質マイナス1だけですむわけである。

 ただ、遮蔽物を利用すれば照準にはマイナス修正がつくが、銃弾そのものを防げるものかどうかに留意する必要がある。例えば、ルールブックにある[薄い壁]だと、防御点は3点なので、ライフル弾は防げない(4−3=1点のダメージがくる)。



GM「といいつつ、2のツーカード(笑)」

「うーん、[回避(DEX)]かなあ……巻き込みダメージは……よしっ!
 巻き込み覚悟で[防御]ッ!」


 などと、牛はAHAMの直撃/巻き込みダメージをうまくかわしていく。すごい、なんか格闘家っぽいぞ(笑)。



GM「こっちはエースか。成功だ。じゃあね、爆風が森の中を走り抜けて、葉っぱが『ざあっ!』と散っていく」

「あっぶねー! エースで勝負かけようかと思ってたところだった!(笑)」



 牛は上手く攻撃をよけても、近くにいる志尾原たちがAHAMの自爆による[巻き込みダメージ]を受ける。

 志尾原は、[切り札]を温存するあまり、爆風によって意外な窮地に追いこまれてしまう。手札の数が四枚まで減少する重傷を負い、なおかつKOされ、気絶してしまった(志尾原「もう受けるしかないです。寝ときますよ」)。



GM「じゃ、志尾原くんバッタリ……というより、爆風で身体が揺れて、ふわーりと梢のほうに漂っていくのか(笑)」

リンダ「ああっ、まって志尾原!」

GM「『ち、何やってんだ全く』と舌打ちするティラノサウルス。素早く予備マガジンを装填し、『3点射で勝負をつけてやる』」

リンダ「拳銃で3点バースト。無茶苦茶な武器もってんなあ」



映画<ロボコップ>体系において、ロボコップが使っている拳銃<オート9>が、最も有名な3点射可能な拳銃だろう。実在しないが。
オート9の原型は、ベレッタM93R。こちらはエアガン業界で有名な銃だ。



「最後の1体だね。反撃できないというのが、非常にムカツクなー」

GM「(ザコのつもりが、意外に面白い敵役になっているなあ。良きかな良きかな)さて、目標は。なんだNPCか」



 恐竜人は、3点射の初撃で遠距離にてAHAMを撃墜!  大した敵ではないがしかし、数が多すぎる。こうなれば敵の頭を叩くしかない。敵の本拠地に肉迫するのみ! という彼に牛らは同意し、無重力密林の中を進撃していく。



リンダ「さっさと起きろ志尾原! ぱんぱんぱん!」

志尾原「はっ、ここは……ぷしゅっ! おおっ、回復回復。ドラッグ・シューターを使ってしまった(笑)。これで48時間戦えるぞ!」



 しばらく行くと、森の中にぽっかりと空間があった。そこには1メートルほどの球状のグラス・シールドに覆われた小型の電脳があった。

 果たして壊してよいものか?

 さっさと銃撃して壊そう、とリンダはいうが、それはまずいだろうということで、一行は電脳の外観からその性能を推測する。しかし、無謀にも(笑)挑戦した牛が分からないのはもちろん、他の全員も、外観からは何も分からなかった。
 とりあえず、ちょくせつ[電子]技能で探ろうということで、何か音を立てない武器でこのシールドを割ろう、という話になった。



リンダ「そうだ、単分子剣があったんだ!(笑)」

GM「おおっ、ついに<太陽剣オーロラプラズマ返し>が!(笑)
 ぢゃぢゃんぢゃぢゃん♪」


 遂に、牛の伝家の宝刀、<単分子剣>が抜き放たれる時が来た! 微かな金属音とともに真っ二つになるシールド!


「後は任した。オレに出来るのはここまでだ(笑)」

志尾原「じゃあ、[電子]で。[切り札]9カード」

GM「おお、それは大成功だね。これは、ハッキングするときの出所を分からなくするための、ダミー中継用無線機でね。
しかも、[大成功]だから分かるだろう。本当の発信地はここじゃない。さっきの警察署からだ」

リンダ「……つーことはやっぱり……あの……! くっっそおおお! だましやがったなあ! オレの良心を裏切りやがったなああぁ! 裏切ったな! オレを裏切ったなあああああ!(切歯扼腕している。いつもながら扱いやすくて面白い奴め)」



 こちらからハッキングし返してやろう! と、リンダは[電子]の[切り札]で攻撃プログラムを送る。だが、使いなれない電子機器だったこともあり、敵側−−先刻まで無邪気な子供と思われていた−−も[切り札]を出し、あっさりとリンダの攻撃プログラムは防御されてしまう。
 敵はかなりの使い手らしい。



志尾原「こっちからじゃ、勝ち目なさそうですね」

GM「さすがに、君らの回りに四方八方から浮遊機雷が集まってきている。
『やべえな。ここは撤退したほうが良さそうだ』
と、また、マガジン・チェンジ(弾倉交換)」

リンダ「AHAMは遠隔操作なのか」

GM「『いや、違うなこいつは。この電脳とは関係ない独立系だ。誰かが事前にプログラムして起動しときやがったんだ』
鉄鬼には全自動操作と遠隔操作があるけど、AHAMみたいな安物は全自動だけで、じゃっかん判定値が下がる」

リンダ「じゃ、一点集中で一気に抜けるしかねえな!」

「それが正しいね。何かこう、つぶてのように投げるものがあれば……」

GM「なるほど。コウモリのように、モノを投げると騙されてそっちに行く、と」

「かなり敵を分散できるんじゃないかと。……ある程度、質量のある物がほしいが……木の枝! そして、ここには万能包丁!(笑)」

リンダ「ああッ、万能包丁いうなあっ!」

GM「な、なぜお前がそれを持っている!? まさか傭兵ギルドに無認可で使ってるんか!」

「傭兵じゃないです。ただの格闘家ですけえ(笑)」

GM「……何ということだ。世界はまだまだ広い(笑)」

「とりあえず、そのへんの木の枝を適当な大きさにぱんぱんぱん、と切って、力一杯投げる。無重力だから大変にいい飛び方をしますねえ(笑)」

GM「(AHAMが騙されたかどうか判定して)ピピー! といって、5、6体のAHAMが、一斉に木の枝の後を追いかけていく。
で、『カッ! カカッ!』と閃光が重なって、遠くのほうで連続爆発(一同爆笑)! すごいね、単分子剣を初めて戦いで使ったよね」

リンダ「だけど、だけど! そんな使い方ーッ!(笑)」




 一行は無事に極の宇宙港にたどり着いた。そのままARACの高速貨物船に乗り、3時間かかる道程を<薫風>に向けて戻っていく。その途中、恐竜人がぽつりぽつりと事態の真相を語る。

やはり、今回彼に仕事の依頼をしてきたのはギラ軍曹だったのだ。
本来、この事件はARACの管轄なのだが、ギラ軍曹は、なぜかこの事件を傭兵の手で解決させることにこだわっていたという。恐竜人はなおも語る。



GM「彼女は、古代兵器の悪用ってやつが絶対的に許せないらしくてね。しかしARACの手前、派手にやれないからオレにこっそり頼んだらしい」

リンダ「あの、恐竜ハーフさんの名前は」

GM「おっと悪い、名乗り忘れていたな。オレは牙竜(ガリュウ)という」

リンダ「また漢字か」

GM「金華帝国人だからな、中華風なんだ。彼のマシン・ピストルにも中華風の紋様が。『……なんだか銀河の端っこのほうで、イルカ・ハーフの船が何か見つけたとかでな』」

「ぶーっ!(笑)」

GM「彼女はしばらくこっちの方に戻ってこれんそうだ」

「きっと戦争が起こるんだろうな(笑)」



 このネタが分からないキミは、<知性化戦争>(上・下、ハヤカワ文庫SF)を読んでみよう!



GM「さて。警察から通信が入る。『た、大変だ! 警察署が海賊の集団に襲撃されて、双子がさらわれた!』」

リンダ「(暗く)……違うな。なるほど、そういうことか。どっちの方向に逃げたか、わかる?」

GM「う、うむ。どうやらレセプション船の方に……まて、いま通信が……なにッ!? レセプション船が海賊に占拠されただとっ!」

リンダ「やっぱそうきたかー!」

GM「『なんということだ、たった今発進したばかりだというのに! 乗客はVIPばかり20人、ああ困った! 実に困った! うちの署の装備はせいぜい拳銃どまり、奴らにはかなわない! どうしようかなあ!』といって、通信機ごしに君らをすがるような目でみている(笑)」

リンダ「うちらがいくしかないだろ、もう!(笑) いきますよ、そりゃもう!」

GM「モニターを見ると、まだレセプション船は惑星上の低軌道を遷移しているだけだ。本来はこのままエンジンをふかして中軌道に遷移していく予定だったらしいが、海賊はどうするつもりか分からないね」

リンダ「いいや、強襲かけよう。あ! 急いで強襲しないとヤバイわ。この星域、確かわけのわからない生体兵器が飛んでるんだよな(本来の任務だろうが、それが)」

「そいつを倒してからVIP救出作戦じゃ遅すぎるから、それが来たらきた、でしょうがないんじゃないか」

志尾原「それ以前に、この程度の船じゃ倒せません」



 リンダが輸送船の操縦をかわり、まずはアマノワタリのプラズマ回遊路に軌道を合わせる。宇宙空間に果てしなく伸びている緑色の巨大な光の束が、一行の視界に入ってきた。



「方法としては、隠密でいくか速攻でいくか」

GM「『ふふふ……久々に暴れられそうだぜ』ちゃき!(自動拳銃の撃発準備(コッキング)の真似をするGM)」

リンダ「あー、強襲モードか。皆さん血がたぎるだろうね、ホント」

「はいそこ右ねー。ほらブレーキ遅いよー。……それは、教習モード(笑)」


 一行は電脳網でレセプション船の見取図を入手し、侵入軌道経路、突入作戦を検討する(こういうダンジョン系の場面は、SFだと手軽で良い)。作戦というほど綿密なものでもなかったが……。


リンダ「エアロック2から突入するとして、突入要員は牛と志尾原と……」

GM「屋内戦の経験はあるか」

「山ほど(笑)」

志尾原「いやというほど(笑)」

GM「(これで傭兵じゃないってんだから、世の中どうなってるんだ全く)敵はこのへんじゃ勢力のある海賊だ。おそらく最新鋭のフルオート火器で武装しているだろう。厳しい戦いになるぞ」

「好きだねえ……」

志尾原「相手が何をもっていても、先につぶせば関係ない」

「だから制圧用の衝撃手榴弾が欲しいと……」

GM「それは牛さんっぽくなあい!(笑)」

リンダ「弾幕はれるフルオート火器が欲しいっていってんのに!」

GM「キミがSOC低いのが悪いのさ(笑)」

リンダ「この船、消火器ぐらいあるだろ。それをほうり込んで、泡だらけにして、でてきた敵を撃ち殺す」

「その場にVIPがいないことを祈ろう」

志尾原「ま、不可抗力ってこともありますしね」

GM「(オイオイ、冗談じゃないぞ)これは一応、警察の依頼だからな。法規の範囲内での行動が要請されるぞ」

リンダ「VIPと海賊なんて、見ればわかるだろ」

「見て分かっても、みんなバーチャコップとかで撃つんだよね。『あれ?』とかいって(笑)」


 水も漏らさぬ綿密な突入計画を立てる、本職の特殊部隊とはえらい違いだ(場合によっては人質一人づつの顔まで隊員は暗記するんだぜ!)。GMはやや不安だったが、まあここいらへんが、非常に彼ららしいといえばそうである。


GM「じゃ、2号エアロックから侵入。消火器をほうりこんで、オレがまずエアロック・エリアの敵を陽動して、レセプション船に接舷している海賊船を制圧する。その間にお前らが突入、挟撃をかける。いいな」

リンダ「牙竜さん勇敢やねー」

「プロですけえ(実質、あんたらもだよ)」


 やがて、光りかがやくプラズマ・レールの上に、巨大な緑色の植物昆虫体が見えてくる。
アマノワタリだ。

アマノワタリに牽引されているレセプション船自体、秒速数百キロという高速で疾走しており、普通に接舷するだけでも困難だが、さらに敵の視界やレーダーにとらえられないよう接近しなければならない。

輸送船は、アマノワタリの直径100メートルはある光合成葉や支持組織をかいくぐることになる。

がしかし、リンダは仲間の[応援]と絶妙な操艦技術で、敵に気づかれることなく相対速度を合わせ、接舷に成功した!



リンダ「なあおい、この船の装備とか剥がして盾がわりにしちゃいけないか? 後で返せばいいだろ」

GM「『やめて下さい、ARACの資産です!』と操縦士があせる。ちゃんとSOCで[調達]判定して買ってね、そういうモノは(笑)」

「さあ牙竜どの。しゃべっている間に突入を(笑)」

GM「くそ、オレとしたことが、手榴弾をもってき忘れるとはな……」

志尾原「対戦車ライフルやめて、鉄扇と名刺シューターにしておこう。いざとなればライデン・レーザーで(笑)」

GM「オイ。火力値つく武器は、船の隔壁を貫通するぞ」

リンダ「だからSMG欲しかったのに、畜生! あの店主ブッ殺してでも手に入れればよかったな!(オイオイ……)」

GM「SOCをあげろって。第一、武器の性能に頼るんじゃない!」

「うむ、その通り!」

志尾原「そのとーりだっ!(こいつらもなあ……)」






<予告>
ついに、宇宙海賊どもに正面から戦いを挑むホロー傭兵分隊。
しかも、構成員は、分隊内で最も戦闘能力に富んだ連中だ。
はたして、この戦いの行方は!?
次章、<今日もふる降る血の雨が>、おたのしみにっ!

って、このまま読んでね!


ミリィ「お、いよいよ突入戦だね! まったくこいつらときたら、血なまぐさいねぇ。ま、続きを読むならこっちだよ」


表紙へパラパラ♪


リュート「お姉ちゃんは遠くから大量虐殺してるじゃないの(呆)。まったくもう。……パラフリ議事録一覧は、こっちですよ」