極楽艦隊RPG遊戯議事録
第9話<ママは宇宙傭兵>
第2章 リンダ絶叫す
宙港脇の市場をみていたリンダは、ギラ軍曹にであった。
それだけでもリンダには大変なのだが、事態はさらにややこしい方向へすすむ。
突然、小さな女の子がリンダに抱きついてきたのだ。「おかあちゃん!」と叫んで!
志尾原
「おお、少年! ようやくお母ちゃんを見つけられたか。よかったなあ」
リンダ
「んん! ちょっとまて。女の子をよくみる。普通の黒髪の子か?」
GM
「(ぎくっ。悟られたか!?)ん……可愛いよ」
リンダ
「スリの可能性がある」
GM
「ははは、なるほどね(安堵)。それはたしかに、こんな星域じゃよくある話だ。けど、そんなこともいってられんぞ。なんか、キミの隣を見ると、ギラ軍曹がぷるぷると怒りに震えてるんだ。
『リンダちゃん、あなたって人はあ……! まだ結婚もしてないのに! 婚前性交渉をもつなんてっ……!』」
リンダ
「ちがうっ! 違うんですよお!!」
GM
「許せないわっ!!」
リンダ
「いや、だからあ! 違うんだって!」
GM
「ふんっ! 見損なったわね!!」
リンダ
「だって、似てないやんホント! 遺伝子判定やってみないと!」
GM
「その言葉に周りの人たちが、『ええ!? なにいってんだ、そっくりじゃねーか!』と。志尾原くんも見て思うが、けっこう似てるぜ」
志尾原
「おおー。良かったなあ、子供たち(笑)」
GM
「ありがとう、お兄ちゃん!」
リンダ
「いや、だってよ! 第一、この黒髪だって自分のじゃないし! 染めてるんだし!」
GM
「オイオイ、そんなこと言っていいのか、こんな所で(注:彼女は犯罪者として公国警察に追われているため、名前も髪の色も変えているのだ!)」
リンダ
「うッ!? ちくしょう! 悔しいぃいいい!」
GM
「『お母ちゃん!』といって、二人がひしと足にすがりつく(笑)」
リンダ
「うおおおおおお!! ぬおおおおおお!!(号泣)」
GM
『リンダちゃん……!(怒) まあいいわ、仕事の話は別だしね。また後でね。ふんっ!』といって、軍曹は雑踏の中を宇宙港のほうへスタスタと立ち去っていく」
リンダ
「うおおおっ、650まんんんー!」
GM
「さ、もうギラ軍曹はいなくなっちゃったぞ♪」
リンダ
「…………(震える声で)その女の子に、『なんでわたしがお母ちゃんなのかなあ?』」
GM
「『トリディオでみたのー』といっている」
リンダ
「トリディオなんて、でてたっけえ?」
トリディオとは、現代地球でいうTVと電脳端末が一体化したような、この時代では一般的な家電製品だ。どこの家庭にも1,2台は置いてある。
SFによくある、立体画像TVの一種だと思えばよい。
GM
「そうだよ。特集番組とかにけっこう、ドラゴンを退治した話とか流れてるんだよ。暴走バーサーカーを倒したってことでね。もちろん異能生物とか怪獣って単語は巧妙に伏せられてるがね」
志尾原
「有名人なのか、我々は」
GM
「有名だよ。『ヤギ』(市販脚本『ドクター・ファナティック2』)のときに既に、全銀河に名前が流されてるんだから」
リンダ
「そういやそうだった」
いまだ衝撃冷めやらぬリンダであったが、どうにか気をとりなおし、双子から話をきいてみることにした。
喫茶店に入り、一行は腰をすえる。双子はどちらも10才くらいで、リンダによく似た顔をしている。店員の「おやおや、可愛いお子さんだねえ」という一言が、リンダをテーブルにつっぷさせるのであった。
ともあれ、まるで助け船をだそうとしない志尾原を尻目に、リンダは双子に尋問を開始する。
リンダ
「まず、最初から話をききましょうか」
GM
「『話も何もないよお母ちゃん。ひどいよー』といって、女の子は泣いているな」
リンダ
「どこで生まれたかぐらい、覚えてるだろ」
GM
「『そんなこと知らないよう、物心ついたときからこの星の孤児院にいたんだもの』辺境の星域じゃ、よくある話さ」
リンダ
「うーん。名前は」
GM
「女の子がショウリン、男の子がゼイゴ。字は知らないらしい。金華帝国系の名前だね。双子はずっと一緒だったらしい。ところで、『あれ、おいしそうだなー……』とかいって、隣の人が食べてるバナナ・パフェを指さしている」
リンダ
「ああ分かったよ、買っちゃるよ!」
GM
「うむ。美味そうに食っておるな」
リンダ
「で、この近くの孤児院にずっといたわけ?」
GM
「『まあ、そうなんだけど……ああいうところって……』
時々、新聞ざたにもなるんだが。虐待とかあるんだよ。特に精神障害者に対する係員の扱いはひどいらしい」
リンダ
「なるほどね……。で、これから何をしたいわけ」
GM
「そりゃもちろん、お母ちゃんと一緒に」
リンダ
「だから、お母ちゃんじゃないって……(泣)」
GM
「男の子のほうは無口で、航宙船の模型で遊んだりしてるね」
志尾原
「そうだリンダさん。実はわたくしの会社でですね、まあ、親が片方しかいない方とかが、子供を育てるのは大変じゃないですか。そういう方のためにですね、まあ奨学金みたいなものをですね、安価な利子で……(笑)」
リンダ
「やめろーッ、もう借金はこりごりだあッ!!」
志尾原
「やっぱりお子様を育てるのは大変ですから、よろしかったらそういう保険に加入してみては如何でしょう」
GM
「『おかあちゃーん!』ひしっ」
志尾原
「もちろん、お母さまが亡くなられた場合には、子供たちがちゃんと生活できる保険金もおりますし。いかがですか、リンダさん」
GM
「すばらしいね、<しきがみおえど>(笑)」
リンダ
「くううっ……(泣)」
その孤児院にとりあえず行ってみようじゃないか、とリンダは提案してみるが、双子は真っ青な顔をして泣きだす。どうも孤児院から脱走してきたらしいのだ。そこまで聞いたとき、唐突に、リンダ一行は店をでて、裏路地へと入る。その薄暗い路地で、リンダは転がっていた空き缶を地面に立て、いきなり剣で切りつけるよう双子に命じる。
むろん、10才児には無理な注文だった。
(
GM
「(何考えてんだ?)」)
「お、重いよう〜」
少女、ショウリンはリンダの剣を渡された途端、よろめいて転んでしまう。
「やってみるんだよ! 娘になりたいんだろうが!」
鬼のようなリンダの一言。少年、ゼイゴは志尾原が渡したチタン・ネクタイで切りつけてみるが、とうぜん、技術も何もあったものではない。
リンダ
「いや、戦力になるかと思ったんだけどね。頭のいい女の子なら、操艦とか」
GM
「でも、男の子のほうは興味があるみたいだ。上空をティンダロス2戦闘機の民間転用型が何機か通りすぎていくと、『わあ、ティンダロス2後期42型じゃん』とかいっている」
リンダ
「ゼイゴ、詳しいじゃん!」
志尾原
「キミよく知ってるねー。じゃあ、お兄ちゃんがアレを墜としてあげよう。ほら見ておいで。いくよ!」
GM
「おいおいおい!(一同笑)」
2人とも、リンダが期待しているような戦力にはならないようだった。孤児院の場所だけでも、とリンダはショウリンにきいてみるが、彼女は目に涙を浮かべるだけで、答えようとしない。質問をあきらめたリンダに、遊びにいきたい、とショウリンはいうが。
リンダ
「まずガンショップに」
GM
「な、なぜガンショップ!?」
リンダ
「拳銃もってねーんだよ!」
しかし、SOCの低い彼女のこと。容易に武器を[調達]できようはずもない。志尾原の[調査]技能でなんとか銃砲店を見つけ、一行は入っていく。ショウリンは興味がないらしく、志尾原が店の外で遊んでやっている。リンダはヘクトールP11(即興でGMが考えた。リュートがもっているブラスターはP9といったか)半自動拳銃と弾丸をとりあえず買う。
リンダはSMGを欲しがるが、むろん[調達]に失敗するのであった。黒の強化ナイロン製のレッグ・ホルスターもリンダは買いそろえ、更に特殊強化弾だの、カスタムだの、SOC低いくせに(笑)無理を言いまくるリンダであった。
が、やがてショウリンが退屈し始め、「おかあちゃーん!」といって店のガラスを叩き始めたため、仕方なく彼女は店をでる。ゼイゴは銃よりも、リンダの艦に興味があるらしい。
志尾原
「実はねえ、このお母ちゃんの艦の火器管制コンピュータはねえ、ボクなんだよ(一同爆笑)」
GM
「『すごいや! ひょっとしてお兄ちゃん、<しきがみおえど>の人!?』といって、ゼイゴは目を輝かしている」
志尾原
「まあ見てごらん! と、ガチャガチャ身体じゅうのメカを展開(笑)」
GM
「わあ、何この肩の! すごいな、すごいな!」
志尾原
「今度ねえ、これで宇宙戦艦おとしてあげるよ」
GM
「(おとされてたまるかっ!)『お母ちゃん、スゴイ人と旅してるんだねえ』と女の子は呆れている」
ゼイゴが艦を見たがるので、一行は宇宙港に。モスコ=ミュールは、自律機械(作業ロボット)により修理されている真最中である。
リンダ
「女の子はつまらなそうに見てるんだろうな」
志尾原
「じゃ、相手をしましょう」
リンダ
「お願いね」
志尾原
「商品一覧をみせて、ホラ、こんなのとか可愛いでしょう、と。あとでお母さんに買わせてあげるから(笑)」
リンダ
「やめろー!」
ゼイゴは改造されていない機関部などの平凡さに、不平をこぼしはしたが、それでも民間転用されていない艦を見たのは初めてらしく、ブリッジなどを見て喜んでいる。
リンダ
「ミサイル誤射させんなよ」
GM
「男の子はコンソールをいじって、勝手に模擬戦モードに切り替えてる。かなりの腕前で照準したりしてるね」
リンダ
「おっ! そんな特技があったのか!」
GM
「ゲームでよくやってるんだ」
リンダ
「最近のゲームはそこまで……」
GM
「ううん、そんなんじゃないよ。軍のネットに違法アクセスして、フライト・シュミレーターをパクるの」
リンダ
「……ゼイゴ! 船とばすの、手伝わないか!」
いっぽう志尾原は、
「本当によく似合うねー。これもお母さんに買わせてあげよう。うーん、このブランドもいいね。この帽子、可愛いよ!」
などと勝手にどんどんリンダの財布を軽くしていくのであった。
(
リンダ
「やめろー!」)
GM
「まあ、2人とも脱走してきたばかりで汚い身なりだから、女の子のほうは特に喜んでるだろうな」
志尾原
「そうだ。お嬢ちゃん、キミが結婚する時のために、ドレスを用意しておいてあげよう(笑)」
GM
「『うわあ!』といって、目を輝かせている」
リンダ
「ちょっと待ったア! ガン、と外にでる(笑)」
GM
「3ケタいくんじゃないか(笑)」
と、ゼイゴは「眠いよー」などとぐずり始める。最初はおぶっていこうとするリンダだったが、本人は船で寝たがっている(ここでこうしないとまずいのだっ)。航宙船乗りであるリンダたちにしてみれば、地上にいる間くらいはまともな宿に、と思うのだろうが、本人の強い希望で彼は艦に残ることになる。
「どこもいじるなよ!」とリンダは言い残し、ゼイゴを艦の自室で寝かしつけるのだった。
GM
「『お母ちゃん! これとこれとこれとこれと……ぜぇんぶ買ってえ!』と、女の子が」
志尾原
「さあ、買っていただこうかな(笑)」
あくまで手抜きといいつつ、SOC判定をリンダとおこなう志尾原。むろんSOC1のリンダは負け、10万ガメルほど払わされてしまう。ショウリンが飛び上がって喜んだのは勿論である。
出かける前に、リンダは宿をとる。<アマノワタリ亭>という、辺境にありがちな個人経営の民宿である。
GM
「例によってスーツ、ストッキング姿で『いらっしゃいませー!』
<しきがみおえど>だから和風だね。でも、浴衣はまだ早いぞ。女の子が、『前、孤児院に来た人が言ってたんだけど、<水蓮1号>にある<みさき動物園>とかいきたいな』と」
リンダは[電子]技能でネットにアクセス、あれこれ調査をおこなう。和風な民宿の内装にはあまりにも似合わない、先端技術を駆使した3次元映像が虚空に浮かび上がる。
志尾原
「和室のちゃぶ台に座って、立体映像が(笑)。なんて<しきがみおえど>なんだ(笑)」
GM
「<水蓮>ってのは、オールト雲の中にある、<彗星緑化計画>で最初に開発された彗星核でね。名前からわかるように、<しきがみおえど>系ではなく帝国系資本で開発されたようだ。で、彗星の核というのは、直径10キロていどの汚れた雪のかたまりみたいなものなんだ。有機分子とかが混じっててね」
リンダ
「だから緑化計画なのか」
GM
「宇宙暦以前のね、ダイソンっていう科学者が提案してたアイディアなんだけど。彗星の核にね、遺伝子工学で創りだした宇宙植物を植えつけるわけよ。宇宙空間に100キロくらい幹をのばすやつをね(GM、図をみせる)。
で、その先端に巨大なパラボラ・アンテナのような<集光葉>を作らせる。
いっぽう、根元のほう(彗星核本体)には、光合成をおこなうパラボラ・アンテナ状の小さい植物を繁茂させる。これが<光合成葉>。
そうすると、太陽の方向に集光葉を常に正対させておけば、核のほうに反射・収束した太陽光線で光合成葉が酸素や栄養を作り出す。
いっぽう、彗星核の中をくり抜いて零G居住区を造っておいて、その酸素などを利用して植民をおこなう。
彗星核はね、1個だいたい100億トンくらいで、資源としては、酸素が約60パーセント、鉄が9、炭素が8、水素が5パーセントと、宇宙開発に欠かせないものばかりなんだ。
だから、オールト雲の開発計画っていうのは、理念としては割とあったらしくて、古代銀河帝国時代にはかなり行われていたらしい。これもその遺跡の1つで、それを転用して人工重力場発生装置を設置して、居住区をつくっとるわけだ」
リンダ
「はー……」
志尾原
「……」
GM
「彗星核内部の居住区は、このように、1からレベル10まで分かれていて、だいたい1つのレベルの高さは高度1キロといったところだ。中央部は文化遺産を残すために、零G植物公園になっていてね。で、北極と南極に、宇宙港と中央移動シャフトがある。そういうところです、<水蓮>は。1号から11号まである」
リンダ
「行くのは時間かかりそうだな」
GM
「そうねえ、星系離脱には1日かかるから、オールト雲までは……シャトル(星系内連絡艇)を使えば、3時間くらいかなあ」
リンダ
「しかし、核って雪玉のかたまりだろ? なんか謎の異能生物とか氷づけになってそうだな」
GM
「そうぽこぽこ異能生物が出てきちゃ困る(しかし、『燃える』情景ではあるな)」
志尾原
「じゃ、さっさといきましょう」
リンダ
「いま何時? ……4時すぎ? 遅いから、明日いこう。そうしよう」
GM
「うん、女の子も納得したようだ」
リンダ
「っしゃー! 今夜は酒盛りだーッ!」
GM
「といっていると、『おかーちゃん、お風呂一緒に入ろうよ』といって、水をさすんだな」
リンダ
「……ちくしょー」
GM
「一般的な大浴場だね。大理石張りの」
リンダ
「しゃーねーなー。入ろう入ろう。青い髪の女の子がいないことを願おう(笑)」
志尾原
「じゃ。お先に飲んでますんで(笑)」
GM
「いいなあ、そういう関係(笑)」
サイバーウェア装備女性の入浴! これは目立つ! と当初は思ったGMだったが、ここは<しきがみおえど>。サイバーウェア装備が法律で義務づけられている国である。そんなものはごく日常的な風景なのであった。
人種的にも、<しきがみおえど>は日系人が中心ではあるが、アラブ、アフリカ、混血系などさまざまなので問題はない。
おかげでリンダは、ショウリンに背中など流してもらい、落ち着いて湯船につかることができた。
戦いを忘れられるひとときだった。これから先、どれだけこのような幸せな時間がリンダにはあるのだろうか(笑)。
<予告>
リンダはこの星系で進行中の一大星間運輸計画について調べてみる。
そこで得られた情報とは?
はたして、この星系で何がおころうとしているのだろうか?
そして、リンダと志尾原たちの前に立ちはだかる、かつてない強敵とは?
次章、
<敵!? 味方!? 謎の恐竜戦士あらわる!>
次章もすごいぞ!!
清水
「続きはこっち。あと少しだから、設定解説っぽい台詞、がまんしてくださいな(笑)」
表紙へパラパラ♪
ギラ
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