極楽艦隊RPG遊戯議事録

 第9話<ママは宇宙傭兵>

第1章 今日も不幸だリンダちゃん



パラフリRPG初号版遊戯議事録第3集
 第9話<ママは宇宙傭兵>



[目次]
 一、遊戯者登場人物紹介〜ある軍曹の独り言
 二、<ママは宇宙傭兵>
  第1章:今日も不幸だリンダちゃん
  第2章:リンダ絶叫す
  第3章:敵!? 味方!? 謎の恐竜戦士あらわる!
  第4章:リンダ大いに怒る
  第5章:今日もふる降る血の雨が
  第6章:終焉、そして旅立ち
 三、L女史のフルオート講座
 四、GMなんでも質問コーナー






<遊戯者登場人物紹介〜ある軍曹の独り言>

 ふうう。疲れるわあ。またこの子たちの活動記録をギルドに提出しなきゃなんないの。まあ、わたしが手をかけたリンダちゃんの記録をわたしが教官として審査するのは分かるんだけど。それ以外はギルド無登録だもんねえ……。

 さて、今回の実働要員は、と。……あれ、3人だけなの。趙ちゃんは、実家のほうがお忙しいみたいね。


 まず、牛 孟闘さんね。20代、男性、牛ハーフ。素手で対戦車ライフル並みの破壊力を叩き出す、帝国の自称格闘家。むろん肉体派だけど、ときどき一行のまとめ役になってくれるみたい。でも、彼が民間人なら傭兵の9割は一般市民といえると思うわ(笑)。ギルド登録申請をすべきよね。

 次が、志尾原総一郎くん。20代、男性。<しきがみおえど>の人材派遣課職員。牛さんが肉体を極めた戦闘獣なら、彼は身体改造をきわめた戦闘機械といったところね。商売や交渉も嫌いじゃないらしいけど、狙撃の腕は帝国宇宙軍の特殊部隊以上の水準に達してるわ。何より、性格が色んな意味で凄いわよね。こんな人を無登録扱いしとくなんて、傭兵ギルドの名が泣くってものよ。……でもまあ、人格的に、なんか彼をギルド員にするのも不安なような気が…
…。

 最後がリンダちゃんね。公国出身、20代、男性。じゃなくって! 女性なのよね、うん。ま、わたしの弟子みたいなもんで、ちょおっとヤバイ仕事に手を出しちゃったりした都合上、ホロー・チャージなんて名乗って傭兵してるわけね。戦闘技術のバランスはいいけど、女の子なんだから、もうちょっと小奇麗にしないとね。何だかいっつも不幸な悲鳴をあげてて、可哀相みたい。今回は、何回叫んでるのかな?(笑) さて、まず最初のシーンは。モスコ=ミュ
ールのロング・ショットからか……。







パラフリRPG初号版第9話<ママは宇宙傭兵>




 銀河暦1998年6月7日、日曜日。朝9時、いつもの某所公民館の小会議室にGM、リンダ、志尾原の遊戯者集合。
 リンダは前回<レベル>が上昇、INTを4から5に上げた。現在レベルは5、以降は非常に上がりにくくなる。
 余談だが、これ以降の[レベルアップ]で戦闘系技能を上げるなら、[回避]がお勧め(詳細は後書きで)。あとは[社交][商売][噂]などSOC系技能を伸ばし、話合い等で戦闘を回避してもよい。また、SOC系で妙な技能をもつと個性が演出しやすいのも利点(たぶん)。


リンダ「で、モスコ=ミュールの現在の状態は」

GM「ミサイルが1本減ってて7本、装甲が(前回誰かさんが操艦ミスったせいで)150マイナス11」

リンダ「キツいな。アウトロースターみたく、対艦戦でアンカー・ボルト打ち込んで、ハッキングとかしてみたいなー(正確にはアサルト・アンカー)」

GM「<鉄鬼てっき>なら、艦隊戦で敵電脳ハッキングとかできるのもあった気がする。電子戦ならECMポッド買わないとね。
(このへんはGM独創設定)まあいいや、始めよっか」


 とはいうものの、現在リンダと志尾原しか遊戯者が揃ってない。このままでは操艦に必要な最低人員が確保できない。そこで、牛さんは後から来る予定なのでいることにして、あとはNPCの船員を2人、雇ったことにした。


GM「生活費をねえ……そうさな、各人マイナス10万ガメル。で、船員2人分の賃金が200万ガメル」

リンダ「この手のやつ、お金プールしといてそこから払うことにしない? 私ばっかり出すのつらいんスけど」

志尾原「とりあえず、牛さんのポケットから200万(笑)」

GM「オイオイ、本人がいないのに(笑)」

リンダ「とにかく、全員で共同出資ということにしよう」






<状況開始!>
第1章:今日も不幸だリンダちゃん



 レクシー騒動から3日が経ったある日。次の依頼があり、リンダらはその依頼客の指定した場所−−<しきがみおえど>領の辺境星域、<さつき星系>の惑星<薫風>に向かっている最中であった。
到着は間もない。すでに超空間をぬけ、ホロー傭兵分隊の母艦モスコ=ミュールは星系内の通常空間を航行していた。が!



GM「今ね、船の中には真っ赤な戦闘態勢非常灯が点滅していてね。
リンダはこう叫ぶんだ。『くそうッ、なんて機動性の高い船だ!』」

リンダ「ちょっとまってよお!(絶叫)」

GM「それで志尾原はね、『くっ、火器管制コンピュータが追いつきませんよ!』と、そう言ってくれたまえ」

志尾原「なにーっ(笑)」

GM「そして艦はすさまじい振動に襲われた。『ズガガガガァアン!!』
……さあ、戦闘を始めようか(笑)」

リンダ「ちょっとまて、どれくらいマイナスなんだ!」

GM「艦の装甲を10点ほど減らしといてもらおうか」
志尾原「買いたいものがいっぱいあったのにー(笑)」


 現在装甲は130数点。雇われた中年船員は「何なんだアイツはー!」「船長、こんなハナシ聞いてないッスよー!」などと叫び、「雇われたんならしっかり働けえ! キサマら海の男だろ!」とリンダが怒鳴る!


GM「『いやだあ、こんな仕事いやだあっ!』という感じで。また、ドガガァアン! と船が大きく揺れる」

リンダ「さっさとやっつけるしかねーだろーなぁ。操艦はわたしがやるから」

GM「そっちからのターンでいいよ。いま通常空間戦闘で、<距離ランク>は3、<砲撃距離>なのでレーダー・モニターに映っている。抽象化された図形や記号が、立体映像でブリッジに浮かび上がっているわけ」

志尾原「その距離だと機銃は届きませんから……ミサイルなんで、[砲術]になるんですよ。で、[砲術]技能はまだもってないんですよ」

GM「メーザーかミサイルが使える。ミサイルは威力は高いけど1発100万ガメルかかる。メーザーは弱いけど撃ち放題」

リンダ「つまり、奴を機銃圏内にもちこめばいいわけだ」

志尾原「まずは牽制でメーザーを1発」

GM「主砲発射には照準コンピュータで相手の軌道を予測して発射するから、使う技能は[射撃(DEX)]じゃなくて[砲術(INT)]だ」


 まず志尾原が11のペアで砲撃。しかし、敵はKのペアでかわす。つづけてリンダが艦を操り、距離をつめようとする。
[機動]判定で交渉判定。敵は驚異的な機動性能をもつが、リンダはなんと<切り札>5をだす。一気に2点距離をつめたこととなる。距離ランクの移動にはランク数ぶん判定に成功することを要するので、あと1回成功すれば<格闘戦距離>に突入できる。


GM「……2のペアか、機動判定成功だな。いま距離ランク2か。船内の人工知性が『格闘戦距離に入りました』と」

リンダ「グラップラー戦だ!(笑)」

GM「オイ違うぞ。……<ドッグファイト・レンジ>とモニターに文字が出る。ブリッジ−−3人肩を寄せ合うような、背中あわせに座ってる狭いブリッジなんだけど−−とにかくその、モニター・スクリーンが可視光モードに切り変わって、宇宙空間が目に入る。
で、そこに青白い光の尾をひいて飛んでいる、とんでもない大きさの流星のようなモノが見える。それが問題の船だ」

リンダ「くふふうっ(泣)」

志尾原「うーん(笑)」

GM「普通の船じゃないのは明らかだ。青白いプラズマ発光体につつまれててね。レーダーで調べりゃ詳細はわかるだろうが、とりあえずこっちの攻撃だ。回避してね。[操艦]で、[機動判定値]を使う。4.5だから、戦闘中1回だけ5を使える。
……で、『高エネルギー体接近!』とモニターにでるね」

リンダ「ああ、もうダメだ」


 リンダ、回避に失敗!(GM「(にやり)」)


リンダ「うっ! (モスコ=ミュールに)あたっとるやん、ちくしょー!!」

GM「ダメージ50ひいといてね」

リンダ「ごじゅうッ!?」

志尾原「そ、それはまずいッ!」

GM「駆逐艦の<耐久値>は15だから、それもひいといてね。50わる15で、3点いっきに減るのかな? ま、すごい衝撃だよ。リンダが今まで味わったことのない衝撃が、ブリッジを揺るがす! ガガガガガン!!
『まずいッスよー! こんなん初めてッスよ、あちきはー!』
と、船員が叫んでる」

リンダ「うっせーだまれえ! 今ここでオレに殺されるか、それとも逃げ出すかどっちかにしろテメー!!」


 艦の人工知性は、敵の兵器を分析するが<判別不能>。何を使って攻撃してきたのか分からない! リンダが[電子]技能で調査する。難易度は4、やや難しいという程度。

リンダ「今ここで調べとかんと死ぬ気がする……残り装甲79だもんな」)

 で、リンダは判定に成功する。しかし。


GM「『既存の艦艇に該当する種別はありません。赤外線および質量計による計測の結果……』といって、モニターにサーモ・グラフ立体映像が。宇宙艦艇のモノを遥かに超える高温で、殆ど真っ白に映っている」

リンダ「だから、それはなんなんだよ!」

GM「宇宙艦艇というより、生物じみているね。V字型の尾翼のような2本の尻尾、4つの脚をぴったりと身体につけている。どうもなにかの生物のようだ」

リンダ「いやだあああ!」


 清水パラフリ宇宙では、このテの生物は並みの機械兵器よりも強いのだ(笑)。


GM「さて。そいつは、ぐうん! と急角度で旋回して、キミの方に迫ってくる」

リンダ「くっそー、ちくしょー!!」


 もはや倒すことなど無理。志尾原が弾幕を張り、ひるんだ隙に急速離脱を試みるという作戦をとることにした。が。


志尾原「ぜったい当たらないんですけど」

GM「9か。外したな。『MISS! MISS!』とモニターに映って、『なにやってんスか志尾原のアニキー!』と船乗りが叫ぶ」

リンダ「るっせーテメー! テメーが撃つかァ!?」

GM「動力系もほとんど壊滅、こりゃダメっスよー!」

リンダ「ちくしょー……! 急速離脱だよ絶対!!」



 敵は追ってくる、リンダは離脱したい。
で、例によってGMとの[機動]判定(双方カードを伏せて同時にだす、という判定)。
 同時とはいっても、GMが何枚だしたかを見て、遊戯者は手の内を読んでもよい(「GMは1枚だしたぞ、あれはカスか[切り札]か?」とかね)。このへんがカードならではの戦略性なのだ。

奇跡的に、志尾原の[応援]でリンダはペアを出し、1点ぶん引き離した!



GM「早く薫風の宇宙港に逃げ込みやしょうぜ、姉貴!」

リンダ「にげこむよ、逃げ込むに決まってるだろーが!」

志尾原「さあ、どんどんにげましょう」

GM「……さて。では攻撃するか。『高熱源体接近!』」

リンダ「撃ってきたよおー!!」


 志尾原の[応援]の甲斐なく、敵の攻撃は命中! さらに装甲マイナス50。
装甲は残り29。


GM「ガガガガガァアン!」

リンダ「ちっくしょー!」

GM「被害報告がモニター上をずらーっと流れていく。
『……第1から第14まで装甲板剥離、艦内温度上昇中。スラスト・リバーサー、主砲励起部破損……』」

リンダ「くうう、モスコ=ミュールぅうう〜(泣)」

GM「耐久値は」

リンダ「<停止>一歩寸前」



[GMによるルール解説(輸送機器戦闘について)]
 PCの[ボディ]ゲージにやや似た規則で、[耐久値]が減っていくと、艦艇の判定で出せる札の枚数(ここが相違点)が減っていき、最後には<撃沈>されてしまうのだ!
 なお、耐久値が減る大ダメージだと、乗員も負傷してしまう。ここでGMは、すっかり適用を忘れているようだ(笑)。



GM「……これが、モスコ=ミュールの最期か……」

リンダ「うるさいっ!!」

GM「なんだけどね。そのよくわからん奴は、距離がはなれたんで面倒になったのか、クルリときびすを返して、星の彼方へと飛びさっていく。あっという間に見えなくなるネ」

リンダ「くああッ!? 削るだけ削っといてー!」

GM「姉貴、すごい加速ッスね! うちらの対消滅じゃ、あそこまでは出せませんぜ!」

リンダ「うるせー! そんなもん評価すんじゃねーよっ!」

GM「いや、やはり船乗りとしてこういうモノは!」

リンダ「ちょっとこっち来おい! といって連れていってドカドカと殴る」

志尾原「ドラゴン級の強襲攻撃艦、かな(笑)」

GM「ちなみに今、ブリッジは『ピー……バチバチッ』とかいって火花が散って、煙が充満してプラスチックの焦げる臭いがしてる。そんな感じだね。さてどうするかな?」


 この星の主な宇宙港は地上港だ。艦は管制官もビックリ! のボコボコの状態ではあったが、大気状態は良好で、モスコは何とか着陸に成功した。
 わりとさびれた宇宙港だった。リンダたちは型通りの検疫、入国手続きを済ます。むろん税関もある。

 余談だが、<銀河大航海時代>に輸送機器を通じてさまざまな疾病が広がった苦い経験をふまえ、検疫は非常に厳しくおこなわれている。特に代謝系の異なる国民の多い金華帝国では検疫が厳重で、リンダの一行でも、誰とはいわんが水虫で入国拒否された経験のある者は1人くらいいる筈だ。
<企業>だと水虫は根絶されているらしいが(笑)。


リンダ「水虫ってそんなにヤバイのか」

志尾原「皮膚ガンの原因になるとか(笑)」

GM「そーなんだよ、代謝系の異なる生き物ではそんなのもいるかもしれないからねえ(笑)」


 依頼客との待ち合わせ場所は宇宙港のロビーだった。さまざまな航宙船が窓の外を飛び立っていく中、モスコは黒焦げの無残な姿をさらしていた。大破状態である。

GM「ルークくんなら『What a piece of junk!』とでもいいそうだ」)。

各種の獣人や<企業>人、公国人が行き交う宇宙港の活気に満ちたざわめきも、リンダの耳には入らない。ただただ巨大な展望ガラスに張りつき、哀れな姿の母艦に涙をだくだくと流すのみであった。

 いっぽう志尾原は、接客をリンダに任せ、港を出る。サイバーウェアの追加購入をのぞみ、<しきがみおえど>サイバーウェア課支部と連絡をとり、出かけていったのだ。

 そして、ほどなくしてやってきた依頼客は、黒いスーツに黒いサングラスという出で立ちの中年らしい男性だった。彼はリンダを物陰に連れこむと、さっそく要件をきりだす。


GM「『アルファ6号とお呼びください。ところで、あれはあなたの駆逐艦ですか』と、鉄クズ(笑)をみやる」

リンダ「そーよ。来るときナゾのドラゴン型強襲艦に襲われてね……(げんなり)」

GM「そう、わたしたちが依頼した仕事の内容もそれなのですよ。2週間ほど前から、この付近の星域で謎の生体戦艦らしきモノが暴れておりましてね」

リンダ「それはもうよく分かりました、見ましたからホント」

GM「もちろん公的には、あくまで暴走した無人戦艦の一種ということにして報道しておりますが……」

リンダ「<バーサーカー>の一種として報道してるのか」

GM「(正確にはバーサーカーは古代の暴走兵器をさすが)そうです。まさか艦艇を沈めるほどの生物がいると報道してしまっては、治安の悪化や株価の大暴落までおこるかもしれませんからなあ」


 <バーサーカー>は、現在の宇宙軍でも破壊できる。が、既存の科学常識を超越した戦闘種族である<異能生物>(清水の造語)となると、そうはいかないのだ。


リンダ「そこまでおこるか」

GM「なにをいうのです、商業航路に大打撃を与えますよ。ということで、すでに貨物船や客船が10隻ほど破損または沈められる事件が起こっておりまして」

リンダ「でもさっき、管制官は何も答えなかったぞ」

GM「おそらく報道管制でしょう。こちらの自治省には、我々は関わりがないので詳しいことは知りませんが……、奇妙なことに、襲われた船は皆、エネルギー源を抜き取られておりましてね。生存者はいる場合もあれば、全滅という場合もありまして。とにかく、機関部だけは残しておくようです」

リンダ「なるほどね。で、その謎の宇宙兵器に関して、そちらはどう思ってるんで?」

GM「どうも、我が組織の別ルートの諜報部によれば、この付近に縄張りをもつ海賊が絡んでいるらしくて。もちろん、ああいう形態の船となると……3国で数十年前に取り交わされました<古代遺跡管理条約>がありますね?」

リンダ「ARACはでてきてねーのかよ」

GM「だから。わたしたちがARACなんですよ」

リンダ「なにーっ! なるほど、やっとわかった。だから黒づくめなのね」

志尾原「ARACでも手を焼いているのか……オレはこの場にいないんだ(笑)」

GM「そこで、条約をうけて立法された<古代遺跡管理法>違反の疑いがあるんですね。で、極秘裏に例の艦について調査を担当していただきたい、と」

リンダ「しかし、よくわたしたちのことが分かりましたね」

GM「以前の事件の関わりもありますしね。とにかく、この星系が根城になっているらしいのです」

リンダ「受けてもいいですけど、うちらの駆逐艦は……」


 計算すると、艦の修理費に1000万ガメル! を要するらしい。リンダは茫然とする。修理費をARACにもってもらえないか、とリンダは交渉する。
リンダ「くそー、SOCか!」)

ともあれ何とか交渉判定に成功し、3分の2、費用をもってもらえることになった(なんて図々しい)。


リンダ「うおお、嬉しいですー! ありがとー、すりすり♪ なんてやっちゃうよ(笑)」

GM「ゲッ! と身をひく」

リンダ「なんでだ! 女がやってやってんだろーが(笑)」

GM「薄汚れた海賊ねーちゃんじゃなあ(苦笑)」

リンダ「ちくしょー」

GM「我々はあくまで三国共通で設立された、遺跡保護が目的の公的機関です。海賊との派手な戦闘が予想される調査など、おこなうわけにはいかないのですよ。そこであなた方に依頼したわけです。もちろんこの件は、ご内密に」


 ここでフト思い出し、GMは航宙船の管理費も100万ガメルマイナスさせる。航宙船を一回動かすと、維持費、宇宙港使用税などでそれぐらいかかるのだ。

 それはさておき。要件をすませた<アルファ>氏は暗号化パスワードが入力された結界通信カードを渡す。公衆結界通信機か、電脳結界で通信できるものらしい。


GM「しかし、過度の通信はひかえて下さい。<敵>に傍受されるかもしれませんからね」

リンダ「もうちょっと情報はないんですか」

GM「難しいですなぁ。もちろんこちらとしては、提供できるレベルの情報はお渡ししているのですよ。先ほどのものでも、3級程度の遺跡保護機密に属しておりましてね」

リンダ「じゃ、一番上の情報は」

GM「『それはさすがに公開するわけにはいきません。傭兵ギルドといえども、民間の軍事援助組織でありまして、公的な組織ではないのですからね。とはいえ、軌道を計算すれば……』といって、胸元から小型コンピュータを取り出す。で、ぶぅん、と立体映像が浮かぶ(薫風の星系<さつき星系>の手製の軌道図をGMがみせる)。
『ちょうどあなた方が襲われたのが低軌道1号線、このあたりです』」

リンダ「<薫風>がここで、これが主星?」

GM「2連星だ。宇宙では2連星のほうが普通だからね」

リンダ「<メイ>、<あおぞら>?(惑星などの名前)」

GM「そうですね、そのへんは公共のネットでもわかるので。
とにかく、敵艦の出没地域は<薫風>を中心とした低軌道域から中軌道域に集中しておりまして」

リンダ「<緑風>のほうには入らないのか」

GM「ええ、おそらくそうではないかと。しかし、外惑星系との何らかの連絡がある可能性もあります。オールト雲の中に基地があるというのも、よくあるパターンですし、海賊の根城としては。もちろん、海賊が関わっていると明確に判断されたわけではないのですが……」

リンダ「根城はどのへんあたりなのか分からんか」

GM「オールト雲の中の、彗星核のどれかを利用しているのではないかとも思われますがね」


 オールト雲とは、恒星系の外縁部を球形に取り囲んでいる<彗星の巣>をさす。ここではその手前のカイパー・ベルトも含んでいるが、性質は同様である。太陽系にもある星域。遥か恒星間宇宙にまで広がっていて、一説によれば近隣星系ともその縁を接しているともいう。
直径10キロていどの薄汚れた雪玉。それが彗星の核であるが、それが5000天文単位に1つくらいの割合でひしめいている広大な空間なのである(1天文単位は地球−太陽間の距離。光速で約8分)。ひしめいているといっても、地球−月の距離が38万キロ(光速で1秒ちょっと)であることを考えると、随分まばらに思える。

ただ、この星系では非常に核同士は密集している(後述)。ときどきオールト雲の中にある彗星核が軌道を乱されて恒星に近づくとガスを噴出し、彗星となるわけである。


志尾原「ふう、こんなにつけました(大金つぎこんでずっとサイバーウェア強化に専念していたらしい)。<サイバーアイ>、<図太君>、<スーパー合体君>、<戦術演算回路>をつけました♪ 残り115万ですよ、もう」


今おもうと、このとき志尾原のサイバーウェア貧乏は始まった(笑)。


れべるあっぷせずとも、サイバーウェアを装備すればどんどん強くなれる。
戦闘系のみならず、交渉系なども、である。実にGM泣かせだが、とりあえず敵に電磁ライフルや爆発物をもたせておけば、まあまあ遊戯の均衡はとれるので、良しとしよう(鬼)。



リンダ「エステ使用後か!(笑)」

志尾原「こんなに強くなりましたよ(^^)。[射撃]技能が12、[対空レーザー]が13、[操縦]6、[砲術]7、[調査]9、[操艦]6、[戦術]7、[電子]9、です」

GM「はあ……(全部<切り札>じゃんか!)」



ちなみに、パラフリRPGでは技能の最高値は13である。ここからも志尾原の強さがわかる。



リンダ「鬼のように技能増えたな……」

GM「しかしSOC技能が1個もない(笑)。ある意味、かわらずアンバランス(前は奴の技能は[射撃]たった1個のみだった)。

『この星系では経済状況はよくないんですけどね。オールト雲で、<彗星緑化計画>がかなり進行しておりましてね。その関係で、オールト雲の中に基地がある可能性も』」

リンダ「彗星緑化計画?」

GM「ま、そのへんは公共ネットで。基本的には、低軌道域、つまり1号軌道と2号軌道の間、とくに<アマノワタリ>の養殖実験場のあたりが非常に怪しく」

リンダ「なんですか、そりゃ」

GM「『惑星間を回遊する巨大な宇宙昆虫ですよ。この星系に昔から自生しておりましてね、開拓前からいたようで。いまこの街は、辺境にもかかわらずけっこう賑やかでしょう?』
 といって、ロビーから街のほうを見渡す。たしかに高いビルは余りないけどね。<しきがみおえど>だから、スーツ姿の人々がみんなリアカー引いてたりして、農業惑星っぽい雰囲気だ。で、道では露天商が野菜をたたき売りしてたりして、活気があふれてる。エアカーもけっこう飛んでるしね」

リンダ「なるほどねー」

GM「この、アマノワタリを利用した一大運輸事業が計画中でしてね。宇宙船航行用に利用するのです。船舶の運用コストを一気に引き下げられるので、<しきがみおえど>運輸事業部では、現在、社運を賭けたプロジェクトとされているようで。辺境星系にもかかわらず割と活気があるのは、そのせいなんですよ」

リンダ「あとで志尾原に調べさせよう」

GM「この計画の前は、宇宙植物をたたき売りするだけしか特色のない惑星系だったんですがね……おっと、依頼の話から離れてしまいましたね」

リンダ「いえいえ、あなたもなかなか、この星系が好きみたいで」

GM「『いやいや、こんな辺境支部にとばされたから、もう仕方ないのですよ』と、ふっと寂しげに笑う。とはいえ、この<さつき星系>は、もっと辺境に行くための中継ステーションとして、そこそこ有名なんだよ。リニア・カタパルトなんかも装備している(JRなら、大宮駅みたいな感じか)。
『もちろん仕事が終わりましたら、報告書を作成して完了を報告して下さい。なお、この星系はですね、アマノワタリを含めて第1級遺跡指定を受けておりましてね。派手な破壊活動はつつしんでくださいよ』と、クギをさす」



 それだけいうと、彼はさっさと雑踏の中へと消えていく。露天商の兄ちゃんに話を聞きたいというので、リンダは宇宙港の外にでて、そこで戻ってきた志尾原と合流した。



第2章:リンダ絶叫す



GM「そうね、今は3時過ぎくらいかな。星によって20時制だったり、30時制だったりするけど、まあ感覚的に昼過ぎくらいと。2つの太陽だけどね」


 とりあえず宇宙港で駆逐艦の修理手続きをとったあと。2つの太陽が照らす賑やかな商店街に、リンダと志尾原は降り立った。典型的な発展途上星系の<宙港街>である。

宇宙港の周囲にはその経済効果のために市街が発達することがよくある。たいていそうした街は無秩序で雑然としているが、活気に満ちているのが通例で、この港町もそうした街の1つだった。

 さすがに辺境の港町らしく、踏み固められた土がそのまま街路となっている。
だが、その活気は<中核世界>の繁華街に勝るとも劣らない。そして、その空の深い青は、航宙船ぐらしの長い一行にとって、何より心の休まるものだ。

 街路には各星系の人々が行き交い、さまざまな露天商が軒を連ねてにぎやかに呼び込みをしている。店先に並べられた色とりどりの雑多な品々を見てまわるだけでも、十分楽しめるだろう。だがリンダは、情報収集という目的を忘れてはいなかった。


リンダ「露天商って、なに売ってんだ」

GM「露天商ねえ、妙な果物や野菜を売っているのが目につくね。『安いよやすいよ!』と叩き売りしてる。でも<しきがみおえど>だから、スーツ姿なの(笑)。肩に埋めこまれたホログラム投影機から、『お値段ただ今3割引き!』なんて、空中に文字が投影されている」

リンダ「にーちゃん、これどうやって食うんだい」

GM「あんたホシノツルイモをしらんのかい。アマノワタリに寄生してるつる植物で、歯ごたえがあって美味いぜ」


 話をきくと、アマノワタリは航宙船よりも大きいという。この星の人々も期待しているプロジェクトらしい。と、聞いたまではよかったが、リンダは<さつき水晶>という妙な果物を買わされる。青白い結晶のような固い果実で、中の果汁が美味いという。保存がきくし、顎もきたえられるぞ! と露天商の青年は笑ってリンダに押しつけた。

 (余談だが、宇宙SFにおいては市場って、その世界の特産品などで雰囲気を演出できるので、個人的に好きな舞台である。そのうち市場や交易を主題にした脚本もやりたい)


GM「で、君らは人ごみの中をブラブラ歩いてるわけだ」

リンダ「とにかく、さっさとしらべんとあかんなあ」

GM「『あら、リンダちゃんじゃない!?』と声がする」

リンダ「うわあッ、ちょっとまってえ!(笑)」

GM「『奇遇ねえ』といって、迷彩服姿で青い髪の、色白の女の子が(笑)」

志尾原「素敵なご友人をおもちですね(笑)」

GM「『志尾原くんも久しぶりー』といっている」

志尾原「いやあ、ホントにお久しぶりですね」


遊戯内時間では、最後にギラ軍曹にあってからまだ3日しか経ってないのに(笑)


リンダ「師匠、久しぶりです(泣)」

GM「どうしたの? なんか艦がボロボロになってるみたいだけど。大変ねえ」

リンダ「ナゾの生体強襲艦にいきなり襲われまして……」

GM「『そんなことがあったの』と、表情を陰らせている。『もしかして、誰かの依頼とか受けちゃったわけ? 知ってれば、あなた方に頼んだのになあ』


リンダ「え? だって……」

GM「あ、いやいや、こっちの話」

リンダ「ちょっとまって……師匠はなんでここにいるの」

GM「いやあ、ちょっとね。急に辺境星系に旅立たなきゃいけない用事ができちゃってねえ」

リンダ「はあ、辺境にいかれるんですか」

GM「うん、もうすぐ船がでるからね。行こうと思って、こっちのほうに来てたの」

リンダ「(ぼそっ)船にのる必要ない」

GM「『……余計なお世話よ』と、耳うちする(笑)」

リンダ「あ、そうだ! 師匠、この前の650万ガメル、どうにかなんないんですか!?」

GM「うッ!? ぐはっ! 『さ、さぁて何のことかしら?』とかいっているが、その額には汗がタラタラと(笑)」

リンダ「し、師匠!(笑) 頼みますよホントにぃ! 艦がボロボロで直さなきゃいけないし、強襲艦の調査もしなきゃいけないんですよ!」

GM「うぅん、そうねえ。メルカのやつなら何とかしてくれるかもしれないけど、ここからじゃちょっとなあ」

リンダ「メルカって、誰ですか……?」

GM「『まあこんなとこで話もなんだし、あとで船の上からでも連絡するわ。それより、ちょっとお茶でも飲まない?』といっているな。近くに屋台があるぜ。店員は例によってスーツ姿だけど、泥まみれで、生活感がひしひしと感じられる。(笑)。
『こういうとこではね、地元民の利用する店にいくのが通なのよ』といってる」

リンダ「はあ、そうなんスか」

GM「さて、と言っているとね。『お母ちゃん!』と声がする。人ごみの中から、ショートカットで黒髪の、10才くらいの可愛い女の子が、リンダさんのほうへ、たたたた……と走ってくる」

リンダ「………………どーゆーこと?」

GM「で、リンダさんの足に、ひし! とすがりつく。『お母ちゃん、こんなところにいたの!』」

リンダ「えっ!? 違うよ、ちょっとまってえ!(ガタン! と椅子を動かしてのけぞる遊戯者)」

志尾原「いやあ、お嬢ちゃん。そうか、このコワいお姉さんの娘さんだったんだねー」

リンダ「ちがうっ! ちょっと! ちょっとまてえ!!」

GM「『そうなの。TVで観たの!』とすごく嬉しそうにしているぞ」

志尾原「よかったねー(笑)」

リンダ「だって、10才でしょ! だったら生んだのが10才ってことに……」

志尾原「そうかあ。早いご出産で(笑)」

リンダ「だから、違うでしょー!」

GM「『お母ちゃんっ!』ひしっ! 足にすがりついて、まわりの人も、『おうおう、えがったなあ』と(笑)」

リンダ「ちょっとまってえー!」

GM「『姉ちゃん、ホントに母ちゃんなのか』と、黒髪のおとなしそうな男の子がついてくる。双子らしいね」






<予告>
 はたしてこの双子はリンダの子供なのか!?
 すごいぞリンダ! 男ひでりに見えたけど、実はもう子持ちだったなんて!!

 真相やいかに!?
 うずまく愛と希望を胸に(謎)、次章へつづく!


清水「続きをよみたまえ。今回はかなり本格SFだぜ」


表紙へパラパラ♪


ギラ「パラフリ議事録一覧へ戻るのね。お帰りはこちら〜」