【登場人物】
第1章 語り手(GMのこと) まずは、君らのキャラクターを作ろうか。5分もあれば出来ると思う。 プレイヤーA 鳥の変化(へんげ)にしようとおもったが、タヌキ娘にしよう。 語り手 えっ。……いや、なんでもない。 プレイヤーA 難しい。弱点はどれをとろうか。 語り手 そのへんは余り悩まないでいいと思うが。メリットとデメリットが釣り合うと思ったら取ればいいよ。 プレイヤーB 合計8点を能力値に割り振るのか。「おとな」の値が低いと、電化製品をまともに使うこともできないわけですね。 プレイヤーA だいたい決まった。名前はどうしようか。タヌ子さんとかじゃあんまりだしな。 語り手 「このは」とか、そんなのでいんじゃね。 プレイヤーB 悩んでます。狐の変化でいこう。女の子で。……よし、あとは名前ですね。おっと、名前ストック・リストを持ってくるのを忘れてしまった。 語り手 そんなノートがあるのか(汗) プレイヤーA 「人間の姿」は、変身したときの姿か。誰にでもなれるわけじゃなくて、固定した姿を決めるんだな。性別は女の子、人間に化けているときの外見年齢は、10歳ぐらいにしておこうか。 実際の年齢は3歳ぐらいで。「へんげ」「けもの」がそれぞれ3点、「おとな」「こども」が1点ずつ、弱点が「おちょうしもの」「おひとよし」の、タヌキ変化にした。名前は「ちゃき」。 語り手 タヌキは、マイペースであったかなムードメーカー、というのがキャラ的イメージらしい。化けたりする特殊能力に強力なものが揃っているみたいだね。 プレイヤーB キツネ娘の、八九路 古鈴(はちくろ・こすず)です。「へんげ」4、「けもの」1、「おとな」2、「こども」1。「弱点」が、「威張りや」「つよがり」「へんてこ」。 あとは一人称をどうするかですね。「わっち」だと、今風すぎますし。「わし」にしときましょう。ヘンテコな外見は……そうだな、巫女服にしておきます。 プレイヤーA(以下、ちゃき) このキャラは金髪にしたいなあ。(金髪好き) 語り手 またかよ。 プレイヤーB(以下、古鈴) 金髪はキツネの独壇場っすね(笑)。でも、古鈴は銀髪ということにします。 ちゃき イイナァ……なぜワレはキツネジャナイ……(ギリリ)。 語り手 では、二人の関係性、「つながり」を決めてくれ。まず、街に対する「つながり」から決めてね。街や、仲間に対してどういう感情をもっているか? を決めるんだ。このゲーム、サイコロなどの乱数発生装置は使わないので、任意に決めていい。 ちゃき 街に対しては、なんとなく好き、ということで「好意」でいいや。街の名前は? 語り手 龍波町です。たつなみちょう。 古鈴 PCがお互いどう思っているか、も決めるんですよね。こちらは200歳という設定にしたし、キツネの変化はほかの変化から一目おかれているようなので、ちゃきに対しては、「保護」で。 ちゃき 古鈴の弱点は「つよがり」「威張りや」か、高校生の男の子がいたら普通にヒロインになりそうな設定だな(笑)。では、ちゃきのほうが十分の一ぐらいの年齢なので、古鈴に対しては「信頼」しているということで。 ★このTRPGでは、仲間やNPCとの信頼関係が、重要な力の源となる。あるシーンに登場できる変化は、その時点でもっている「つながり」の強さに比例した「ふしぎ」と「想い」を手に入れる。 ★「ふしぎ」は、変化が使うことの出来る不思議な術の源泉であり、マジックポイントのようなもの。「想い」は、判定において投入できるヒーローポイントのようなものである。 語り手 ゲーム的な能力には強さに差はないけどね。二人の場合、最初の「つながり」の強さは2点からで。キツネとタヌキ娘のコンビとは、なかなかに妖怪モノの王道だね(笑)。 古鈴 サンプルキャラのキツネ娘、ツンデレ的な王道キャラに仕立て過ぎでズルイですよ。こういうのみんなやりたがるでしょう。プレイヤーが他のキャラ作れないじゃないですかっ!? ずるいよ! (何かこだわりがあったようである) 語り手 そんなこと言われても。 古鈴 王道どおり長髪で。 語り手 始める前に、判定ルールを説明する。俺が難易度を宣言するので、能力値だけで失敗する数値なら、「想い」を自分の判断で足して、成功させたり、あるいはわざと判定に失敗したり出来るわけよ。シーンが変わるごとに、「つながり」の強さに比例した「ふしぎ」と「想い」を手に入れることができる。 自分が誰かを想うことが、妖術の源になり、誰かに想われていることが、いつも以上の力を出す源になる、というかんじかな。 ちゃき なるほどー。 語り手 あと、NPCも含めて、誰かの発言が、「かわいいナ」「癒されるナァ」と感じたら、発言者以外の参加者は、自分の判断でそのロールプレイを評価し、「夢」というポイントを一人1点、与えることができる。これはオハジキを実際に渡すことで管理する。 もらった「夢」が、「つながり」の源になって、それが最終的に「不思議」と「想い」になる、というわけだ。だから、なるべく可愛いくて、ほのぼのしたロールプレイをしたほうが良い。 古鈴 ……難しいですね。仲の悪い人とこのゲームやったら、「あっ、オマエ嫌いだから『つながり』下げとくワ、ほのぼの」みたいになりそうですね(笑)。 語り手 いや、語尾に「ほのぼの」付ければ良いってもんじゃないから(笑)。エブリデイ・マジックな作品なので、となりのトトロとか、カスミンみたいなかんじでよろしく。 あと、変化は、動物から人の姿に変身することができる。このときの対価として、「不思議」「想い」のいずれか、あるいは両者を混ぜて消費してしまう。朝とか昼の変身では、大きなコストを消費する。 ちゃき あのー、変化の存在って、町の人たちにも認知されてるの? 語り手 田舎町なので、お年寄りは変化のことを知っているだろう。普通の子供は、変化を実際に見たら、びっくりしちゃうだろうね。都会から引っ越してきた人なんかは、変化の存在を信じないだろうな。 【場面1】
語り手 始めよう。舞台となるのは、日本の田舎の漁村で、山からすぐに海につながっているような小さな町だ。町を見下ろす岬には鎮守の森があって、古くからの土地神さまが住んでいる。 古鈴 じゃあ、古鈴のお社も、その森に在る、ということで。町の人には忘れられてるのかな(笑)。「お参りが最近こないのう。油揚げも供えられておらんのう」 語り手 今日は天気もよく、時刻はお昼ごろ。岬の先のほうは眺めがよく、漁港と町が一望に出来る。初夏で、五月晴れで。沖合いには漁船が見える。ちなみに、いまの君たちは動物のままだ。人間になってもいいが、今、変身しておく意味はないだろう。 ちゃき まあー、とくに今することはないよね。 語り手 君らは、天気がいいから景色を眺めに来た、というところだろう。 古鈴 「今日もわしの社に誰も来ないから、自分で磨いておくかの」 仕える巫女もいないので、人間の姿のときは、自ら巫女服を着ておる。 「こ、この社は、寂れておるわけではない! 近寄り難い神聖さがあるだけじゃ!」 ちゃき 「へえ〜〜、そうなんだー?」 お人よしなので、信じてしまう。ちゃきは、人間のときはふつうの普段着を着ているよ。10歳の少女相応の。 語り手 さて、この森は土地神さまが治めているわけだが。「けもの」6点で判定してもらおうか。 ちゃき そんなの出せないよー! 古鈴 足りぬ!(笑) 語り手 さっきの強がっているところが可愛かったので、古鈴に「夢」を1点あげる(忘れないように、おはじきを渡す)。プレイヤー同士で「夢」をあげてもいいし、NPCにあげてもいい。 ちゃき せっかくだから、「思い」を3点使って、能力値を6にあげて判定してみるよ。 語り手 ちゃきだけ、気付いた。ここの土地神さまのお出ましだ。 ちゃき 「古鈴ちゃん! 土地神さまがいらっしゃるよー」 古鈴 「む? 気付かなかったわけではないぞ!」 土地神/語り手 「元気な変化じゃな」と、和服姿の妙齢の女性が現れる。もちろん、人でないことは君らにも分かっている。森の精気をまとった神秘的な雰囲気で、長い尾羽を生やしている。キジの土地神らしい。 「新顔かや? 人間たちはわたしのことを岬サマなどと呼んでおる」 ちゃき 「天気がいいんで、景色をながめてましたー」 岬サマ/語り手 「ああ、あの薄汚れた社は、そっちのお狐さんの……(笑)」 古鈴 「薄汚れてなどいないッ!」 ちゃき 「何をいってるんです岬サマ、ちゃんと毎日、古鈴ちゃんは自分で掃除してるんですよ?」 語り手 初めて出会うキャラクターに対しては、印象判定をすることが出来る。これをすれば、「つながり」を得ることができる。どの能力値で相手にアピールするか決めてほしい。岬サマは、「へんげ」で判定をする。まあ、岬サマから古鈴たちに対する「つながり」の内容としては、「憧れ」は変だから、「好感」2点になるかな。内心、「可愛い奴らじゃな」と。 ★印象判定のやり方をめぐって、かなりモメたが、そのへんは割愛する。 古鈴 「変化」で判定するのじゃ。岬サマに「憧れ」を抱くか。 ちゃき 「思い」を使って、「けもの」4で判定する。岬サマを「信頼」するよ。これでこのシーンの「思い」が0になっちゃった。 岬サマ/語り手 お互いに「つながり」を得たところで、岬サマが本題に入る。 「実は近ごろ、この森でおかしな鳥の変化が暴れておってな。ちと話をして鎮めてもらいたいのだ。土地神のわたしがわざわざ出向いて話をするのも、仰々しいのでな。おぬしら、頼まれてくれるか?」 眉にしわを寄せている。 ちゃき 「鳥の変化といっても、どんな鳥なんですか?」 岬サマ/語り手 「鶏に似ているようだが、そうでないようだ。この国のものではないかもしれんのう」 古鈴 「ほう。南蛮渡来の化生かや?」 岬サマ/語り手 「大陸のほうから来たのかもしれんな。あるいは天竺あたりから……?」 あっ、いま妖怪モノっぽい会話してるよね!? 古鈴 そんなところで満足してどうする(笑) ちゃき 「長生きしてるだけあって、難しい言葉を知ってるんだね〜」と、眺めている。 岬サマ/語り手 とまあ、そういうおかしな鳥がいて、森の動物たちをいじめているらしいんだ。だいたい夕方から、いつも暴れるらしい。というところで、場面1は終わりだ。 【場面間の処理】 語り手 シーン間処理として、変化は、さっきの場面でもらった「夢」を使って、自分から相手への「つながり」を強めることができる。……で、いいのかな? ちゃき 合計2点もらったー。 語り手 うわ、それじゃ「つながり」が強くならない。もっとお互いに「夢」を与え合わないとダメなんだな。「つながり」を強さ1から強さ2に上昇させるだけでも「夢」が5点必要らしいぞ。(ルールブックを読みながら) 古鈴 「つながり」の内容変更は、特にないぞよ。 【場面2】 語り手 次のシーンは、夕方、同じ森の中だ。じゃ、君らの目の前に、猛々しい鳥のようなバケモ…… ちゃき 早っ! 情報収集ぐらいさせてよ(笑) 語り手 そうか。じゃあ夕刻の少し前、森を調べたりするなら、「けもの」2で。 ちゃき わたしの「けもの」は3なので、成功だね。そのへんのネズミとかに話をきこうか。 語り手 変化といえども、違う種類の動物とは会話できないよ。様子を観察するぐらいはできるかな。じゃあ、突っつかれてボロボロになったネズミさんが、よろよろと逃げていくのが見えた。という程度かな。 ちゃき 「なるほど。そうだ! 古鈴さんのお社に来る人から、何か話を聞けないの……あっ(口を押さえる)、お参りの人なんて来ないんだっけ(汗)」 古鈴 (ピグピグとこめかみに青筋を立てつつ)「……そ、そのような俗世の事がらには関心がないのじゃ」 語り手 君ら面白いから「夢」あげるわ(笑) 古鈴 「ま、あれこれ悩んでいるよりも、じかに会って話を聞いたほうが早かろう?」 語り手 では、夕方になった。森の木陰から西日が差しこんで、暗くなり始めている。そこに、鳥の唸り声のようなものが聞こえてくる。視線を巡らせると、居るね、そいつが。茶色っぽい鳥で、ニワトリにしては、大きいようだ。 ちゃき 「すいませーん」と話しかけてみる。(←いま動物モードなんだが) 語り手 いきなりだな(笑)。それなら、「こども」3の判定をしてくれ。相手が怒っていそうな雰囲気なので、なだめることができるかな? ちゃき・古鈴 二人そろって「こども」は1じゃ! 語り手 ……。 ちゃき じゃ、「想い」を2点使って、3点で説得してみる。 語り手 実は君ら、言葉、通じないんだけどね。動物の種類が違うから。ぶっちゃけ、君が事前に鳥のPCを作るっていってたから、このNPC、鳥なんだけどね(爆) 古鈴 (笑) ちゃき なにーッ! 先に言ってよー! 鳥の変化/語り手 「モガガガガ!」と、なにやら怒っている様子だぞ。「へんげ」で判定をしていいよ。難易度2で。 古鈴 「へんげ」4なので成功じゃ。 語り手 古鈴は気付いた。どうやら、この鳥も変化らしい。不思議なちからを感じる。 古鈴 「ならば、人間の姿に化けて話をすれば良さそうじゃな」 黄昏どきだし、変身するのじゃ。 ちゃき うん、耳とシッポを出したままなら、消費0なんだよね。変身するよー。どろろ〜ん。 鳥の変化/語り手 こちらも変身する。猛々しい翼が背中から生えた、やんちゃそうな男の子だ。浅黒く日焼けした肌をしている。 「ホウ。この国にも変化がいるのか」 古鈴 「ぬしはどこから来たのじゃ」 鳥の変化/語り手 「うむ。この町のショウガッコウとかいうところにいたのだが、ある日急に、この森に連れてこられて、置き去りにされてナ。頭にきたから暴れてやるのだ。つついてやる……つつきまくってやるゾオオ! モガー!!」 ちゃき 「そ、それなら小学校に戻ればいいじゃないですかぁ〜! 誰に置き去りにされたんですか?」 鳥の変化/語り手 「龍波ショウガッコウのケンタという子が、生き物係として、俺の世話をしてたのだがな。俺は、ケン坊は良い友人だと思って、親愛の情をこめて蹴飛ばしたり突いたりしてやってたんだ。他の鳥が近づこうものなら、俺が頭領であることを示すために激しくつついてやったりもしたもんだ。なのに、なのにケンタは……ッ!」 ちゃき 「コミュニケーションの仕方が間違ってるんじゃないかなぁ」 小声で古鈴にささやくよ。 古鈴 「愛情表現のやり方が間違っておったのかもしれんの(遠い目)」 語り手 ずっとカゴに入れられて運ばれてきたので、龍波小学校の住所は分からない、と言っている。 ちゃき 「古鈴ちゃんは長生きしてるから、小学校の場所とか知ってるよね?」 古鈴 「ふーーーむ。ま、それはさておき。」 ちゃき 「なっ、ちょ、流さないでよ! もしかして分かんないの?」 古鈴 「いやいや。決して、町に下りる機会が余り無いとか、誰も手入れしないお社を放置して町に下りるのが怖いとか、そんなことは全くないぞ?」 鳥の変化/語り手 「帰りてぇ……ケン坊のいるあの鳥カゴに、帰りてぇよ……」 古鈴とちゃきを無視して、暮れなずむ龍波町を見下ろすのだった。 ちゃき 犬の知り合いがいれば、匂いをたどって小学校の場所をつきとめるんだけど。 語り手 君らでも小学校の場所ぐらい知ってると思うよ。人に化けて町を歩くことぐらい、あるでしょ。そこらへんの公園とかに、町の案内図ぐらいあるだろうし。 ちゃき 「だけど、小学校の場所が分かっても、ケンタ君との関係を何とかしてあげないと、また繰り返しになっちゃうよね」 古鈴 「つまり我らが、そのケンタという人間にあって、なぜこの鳥を捨てたのか話を聞けばいいのじゃな。でないと、またこの……そなた、名は何と?」 鳥の変化/語り手 「チャタロウ。ケンタは、俺をそう呼ぶ」 古鈴 「そうか。とにかく、チャタロウとケンタとの関係を直してやらないと、またチャタロウが捨てられてしまうかもしれぬ。まずは、会って話をしてみようぞ」 ちゃき 「じゃあ、小学校に潜入捜査! ってやつですか?」 ちらっと古鈴を見る。 古鈴 「ん? 問題なかろ。見よ! ここに、わしを崇めた人間どもが納めたお賽銭があるのじゃ!」と言って、さっそうと巫女服の懐から一万円を取り出す。 語り手 おおー、一万円も(笑)。 古鈴 「この一万円を使えば、たちどころに人間は、小学校とやらの場所をわしに教えるじゃろう!」 語り手・ちゃき 何か勘違いしている……。 古鈴 「とにかく、町に下りてみるかや。まずケンタとやらに会ってみよう」 チャタロウ/語り手 「そうか。では、楽しみに待っているぞ」 言って、また鳥の姿に戻って、あたりを走り回っている。「モガガガガ!」 ちゃき 走りまわっちゃ困るんだって! チャタロウ/語り手 「俺ァずっと戦いつづけてこの国に来た。他のことは知らねぇ」 見たかんじ、かなり脚などに筋肉がついてる。「またケン坊をつついてやりてえ……」 ちゃき なんなのこの殺伐とした変化。 古鈴 きっと軍鶏か何かなんじゃろな。 ★ここで、初対面のNPCなのでお互いに印象判定を行った。しかし、まだルールがよくわからないので、またモメた。(割愛) チャタロウ/語り手 「けもの」2で印象判定する。ちゃきや古鈴は、どの能力値を使って自分をアピールするのかな。 ちゃき もう「想い」が底を尽きちゃってるよ。判定できない。想い貧乏ダヨ。 古鈴 「変化」で判定したいけど、チャタロウに対して「憧れ」「尊敬」はヘンじゃな。「保護」かもしれぬ。 【場面間の処理】 語り手 シーン2はここで終わり。「夢」を使って「つながり」を強化してくれ。 ちゃき 全然「夢」が貯まってないよ。3点だよ。あとは、チャタロウからの「想い」が1点だけ入ってる。こっちからは関係を結べてないんだけど orz 語り手 ドタバタしてたからね(笑) ★「つながり」の内容は変化させず、次の場面へ。 |
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