知性化戦争

 著者:デイヴィッド・ブリン
 出版:早川書房
 感想:
 現代の宇宙SFのひとつの到達点を示す、本格SFである。
 本作は、五つの銀河系を支配する列強種族たちの、長きにわたる戦いの中における1エピソードである。

 この世界において、知性体は、みな上級の知性体によって<知性化>され、それら種族に数百万年にわたってつかえるという主従関係をとっていた。
 そんな強力な銀河列強種族のなかで、知性化なしで宇宙航行をなしとげた地球人類は、鬼子として偏見と羨望の視線をむけられ、苦難の道をあゆむこととなる。
 地球人類は辺境の奇形種族にしかすぎなかったのだが、あるとき超古代文明の遺産を発見してしまい、列強種族たちの恒星間戦争にまきこまれてしまうのだ。

 なんといっても、本作では、壮大かつ異様な銀河系文明の設定が素晴らしい。戦闘機ひとつとっても、数千年もの寿命をもつ世界である。本作は、鳥型種族グーブルーに対抗する人類のゲリラ戦を、辺境惑星の森林を舞台に描いている。

 本作は「サンダイバー」「スタータイド・ライジング」の続編にあたるが、これのみでも、十分面白い。
 さまざまな異星人の文化、生物学・文化人類学的設定、それに「主族と類族」という独自の設定が素晴らしい。銀河世界を、これほどの迫力と、それっぽさをもって書ける作家は、他にいまい。たとえば、巻頭には、異星言語の辞典が掲載されているほどである。
 本作のこうした設定の緻密さは、リアル、かつ壮大な宇宙SFをかこうとおもったら、絶対に見習う要がある。

 いま、ニュー・スペースオペラといえば、本作を抜きには語れまい。本作以降も、同じ世界観で、邦訳が出版されていることからも、人気のほどがうかがえる。

 設定だけでなく、登場人物も個性的。ネオ・チンパンジーのファイベンと、ティンブリーミーのアサクレーナが印象的である。
 さまざまな動物に似た異星人が出てくるので、パラフリRPG愛好家は必読! ヒロインのアサクレーナは、数ある異星人美?少女のなかでも、状況に応じて身体構造を変化させるなど、素晴らしく魅力的であるっっ。嫁。いや、よめ! あさくれーなああああ!!

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Copyright Mike Shimizu 2003.8.4.