著者:エドモンド・ハミルトン 出版:早川書房 感想: 歴史的に有名な、宇宙冒険SFの金字塔。古典的スペースオペラといってもよい。 シリーズ全体を概説させて頂く。太陽系を舞台に、悪と戦う英雄<フューチャーメン>の活躍を描く。いつも喧嘩ばかりしているお供のロボット二人組の凸凹コンビっぷりや、機械に入って空中に浮いている<生きている脳>サイモンなど、登場人物がみんな個性的で楽しい。 また、話の筋もよく練られていて、めまぐるしいほどの大活劇である。毎回、簡単ではあるが、きちっと疑似科学的な伏線が冒険に組みこまれており、SF的思考の基礎が学べる。 火星や金星それぞれに宇宙人がいたり、宇宙のサルガッソなどの設定はいささか大時代ではあるが、SFの原点たる雰囲気があって、嬉しくなる。 また、キャラクター同士のかけあい、個性の出し方は、現代の目でみても、学ぶ点が大きいといえる。外観がモロに金属むきだしで荒っぽい性格のロボットと、人工皮膚をそなえた精巧なアンドロイドなどなど、性格設定が、外観や能力にまで如実に反映されるのは、SFならではの、楽しい手法であろう。 こうした、明るく楽しい未来世界での英雄譚が、戦前のアメリカにおいて広く大衆に認知されたからこそ、戦後、SFが本格的な文学として発展する礎が形成されたのである。いってみれば、SFの基礎的教養として、必読の作品である。 宇宙SF、スペースオペラを学ぶなら、これは一度は読まねばなるまい。シリーズ中でも本作は有名な一本。 |
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