著者:ロバート・J・ソウヤー 出版:早川書房 感想: 肩の凝らない宇宙冒険SFだが、同時にハードSFともいえる、よみやすい傑作。 探査宇宙船スタープレックスは、地球人のほか、知能化イルカや異星人の乗組員とともに、いわゆる「ワープゲート」の謎をさぐる旅に出た。 宇宙のあちこちに残された、長距離の瞬間移動を可能にするその「ゲート」は、誰が建造したのか、まったく謎につつまれていた。 スタープレックス号は、その謎に迫ろうとするが、驚くべき生命体に遭遇する。銀河創世の秘密を知る、巨大な天体のような生物との、ファースト・コンタクトである! 予想もしない展開で、最後は、銀河創造の秘密にまで肉薄する展開がすばらしい。今回は、天文学的なネタが満載である。ダークマターの正体が、まさか**だったとは!! ふつう、SFでは、作者が架空の設定を作り上げた上で、その架空世界の謎を解くという構造が定番だと思う。 しかしソウヤーは、現実に科学者たちの間で議論を呼んでいる現実の科学的な「謎」を、巧妙な伏線と物語展開のなかで、解き明かしてしまうのである。こういう物語の構造自体、非常に個性的でおもしろい。 そして、登場人物も、じゅうぶん魅力的にえがかれている。よみやすい娯楽SFではあるが、同時に、現実の科学をふまえ、科学的なテーマを堅持している点で、ハードSFともいえよう。 |
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