さよならダイノサウルス
 著者:ロバート・J・ソウヤー
 出版:早川書房
 感想:
 タイムマシンと恐竜をあつかう作品は数多いが、本作はそのなかでも、とびきり斬新なSFである。

 恐竜絶滅の謎をさぐるため、ふたりの科学者が、タイムマシンで中生代へと旅立つ。
 ふたりが現地に降りたってみると、なんと、恐竜時代の地球は、重力が現代よりも弱い。さらに、ふたりは謎の航空機を目撃し、言葉をしゃべる恐竜に遭遇する! はたして恐竜絶滅の謎とは?

 このふたり自体、1人の女性をめぐって争っていたりして、ドラマ面でも、よみごたえがある。
 なにより、現実の科学分野で大きな謎とされている恐竜絶滅に正面からとりくみ、奇想天外なアイディアでなぞ解きをする展開が、面白い。こういう、現実の科学を前提に発想を飛躍させるという手法は、SFの基本なのだが、ここまでしっかりと考えている作品も珍しい。

 展開は予想外だが、前提とされる科学設定は説得力がある。よみやすいハードSFといえよう。
 いやはやまったく、「アレ」の正体が***だったとは! これほどアイディアでうならせる恐竜小説も珍しい。ハードSFにありがちな、登場人物の描写がおざなりということもなくて嬉しい。

 
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2002.8..