著者:ロバート・T・バッカー 出版:新潮文庫 感想: 戦いのさなか、愛する伴侶を失ったばかりの若い女性が主人公。彼女を中心につづられていく、愛と冒険の物語である。 ただし、主人公はユタラプトルという肉食恐竜だ。 舞台は、はるか大昔、白亜紀の北米ユタ州。作者はハーバードの博士号をもつ古生物学者さんで、「恐竜温血説」を提唱した人であるとか。<ジュラシック・パーク>の非公式顧問でもあったそうだ。 こういう人が書いている本作だが、決して、堅苦しい小説ではない。恐竜が大自然を生き抜いていく厳しさ、主人公レッドの恋愛に揺れる心理描写、美しい中生代の自然の情景描写などが素晴らしい。 それらが、最新の恐竜についての学説や進化論で裏打ちされているのだから、たまらない! 読むと進化論もなんとなく分かってくるほどに、うまく物語にそうした科学知識を組みこんであるのだ。上級技術である。あと、「ガッキ・ゴッキ竜(子供)」が可愛いネ。(読めばワカル) 登場人物にホモ・サピエンスが1人もいなくて、恐竜の女の子が主人公だなんて、ムチャクチャ清水好み(笑)。素晴らしいよこれは!! |
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