竜の卵

 著者:ロバート・L・フォワード
 出版:早川書房
 感想:
 天文物理学ネタの、実にハードSFらしい作品である。(ハードSFとは、自然科学を設定・テーマの主軸にすえた本格的なSF作品をいう。アクションが中心の古典スペースオペラなどと対比される)

 重力は地球の数億倍、30秒に1回自転し、鉄原子の嵐が吹き荒れるという中性子星に知的生命が発生したら、どのような種族になるのか?

 そんな彼らと人類の探査チームの最初の接触(ファースト・コンタクト)の過程と、彼ら種族の急速な進化の過程が交互に描かれ、かなり高度な内容にもかかわらず、一気によまずにはいられない。
 SFは科学知識だけでは書けない。しかし、作者に筆力と科学知識が同時に備わっていれば、それはもう、鬼に金棒である。本作は、それを端的に示す好例である。

 多少難しい用語もあるが、気にしないでどんどん話の筋とセリフをよもう! こういう理論的にしっかりした「ハードSF」こそが、SFの神髄だという人もいる。非常にSFらしいSFだといえる。

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Copyright Mike Shimizu 2003.8.4.