ダイノトピア 地下世界への冒険
 著者:James Gurney
 出版:株式会社翔泳社
 感想:
 小説ではなく、イラストと文章が半々くらいの、豪華なハードカバー書籍。

 恐竜好きにはたまらない、恐竜ネタの冒険ものである。本作は、厳密には科学考証はさほどなされておらず、SFとはいえないかもしれない。
 しかし、恐竜SFは、「失われた世界」など、SF草創期から存在する、SFというジャンルの原点ともいえるサブジャンルであり、きわめて重要である。
 また本作は、そうした初期のSFに通じる、SFというより秘境探険物語に近い味わいがあり、これまた、通好み。
 また、「SFは絵だ」という考えからすれば、本書の美しい絵だけでも、みる価値はある。よってここに紹介する。

 1860年代、遭難した科学者の親子が、イルカにたすけられて不思議な島にながれつく。
 そこは、知性を持つ恐竜たちの王国だった。遭難者たちの子孫である人間たちと恐竜が言葉を交わし、文明をきずいているさまはなんともSFっぽい。(ファンタジー?)

 挿し絵が毎ページごとにあり、これが素晴らしい。壮麗な水の都、恐竜王国の首都、グランドキャニオンのような谷間にきずかれた街など、異世界情緒たっぷり。主人公たちは、この世界を旅するうちに、さまざまな謎をときあかしていく。
 その旅路の雰囲気が実に、冒険SF好きのツボを刺激するのである。
 冒険SFにおいて重要なのは、異世界らしさの演出である。
 本作では、例えば、翼竜のりという職業があるあたり、いかにも恐竜と人が共存する世界という雰囲気がでていて、素晴らしい。TRPGにおいても、こういう架空の職業を考案できるかどうかで、フィールド・アドベンチャー系シナリオの成否が決定されよう。

 また、絵柄も写実的なので、冒険のたのしさを肌でかんじられて、よい。
 人間ひとつとっても、アフリカ系、チベット系と、文明形態・容姿がはっきりと読者にわかる絵柄なので、感心した。清水のようなマンガ絵では、本格SFのふんいきはでないのかもしれない。

 恐竜がしゃべるとか、タイプライターを打ついうのがおもしろい。足跡文字もあるし。理屈付けはないんだけど。
 ヒロイン?の女の子がプロトケラトプスというのは、拙作イラスト「しましまドラゴン」と共通しているようで、嬉しい。


 
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2003.8.4.