著者:C.L.ムーア 出版:早川書房 感想: 短編集。熱線銃をもった無法者が主人公が、太陽系の各惑星を渡り歩き、奇怪な事件にまきこまれる話。と、これだけ聞くと、よくある大昔のスペースオペラである。 しかし、派手な戦闘場面はなく、宇宙のあちこちで主人公が遭遇する不可思議な事件と、神秘的な異星の美女とが、幻想的な筆致でえがかれていく。 著者は女性であるが、実に魅力的に、超自然的な存在である「魔女」たちを描いている。 本書に登場する、すべての怪奇かつ幻想的な事件の核心に、そうした異星、もしくは異世界の美女が絡んでいる点が面白い。(だからこういうタイトルなんだろうけど) 特に、冒頭に登場するシャンブロウちゃんは、邦訳が出た当時、ファンクラブまで結成されたという伝説があるほど有名なSF美女なのである。 「仔猫のような」と描写される愛らしい異星の少女なのだが、実は、その正体は有史以前から存在する未知の生物で、……などという壮大な設定も神秘的でよい。 なにしろ「さらもか」(清水造語)である。まぁつまり、今でいうケモノ系女性キャラの走りのような、非人間的な愛らしさを有しているのである。欧米でも猫系少女は人気ありとみた!(くふっ! 此奴はたまらん!) 挿し絵が松本零士というのも雰囲気があって良い。滅びた古代の神や、シャンブロウの設定など、クトゥルーを思わせる部分もある。この作品、ラヴクラフトも誉めてたそうだ。 なお、巻末の野田昌宏大元帥による後書きが非常に笑える。氏は、国内におけるSF研究の第一人者なのだが、本書を自分以外の人間が訳してしまったことを、猛烈に悔しがっているのである。 ……よっぽど、シャンブロウを訳したかったようである(^_^;) |
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