TV特撮「ウルトラマンコスモス」の、映画版3作めである。 本作は、テレビや映画で、多様な展開をみせたウルトラマンコスモスの完結編に位置づけられる作品だ。ヒーローものの根元に迫る哲学的テーマや、豊かなSF特撮描写が見ごたえのある大作である。 怪獣もたくさん登場するが、厳密には怪獣映画という雰囲気ではないかもしれない。しかし、怪獣好き、SF好きなら見る価値のある作品であると考えるので、ここに記す。 |
ある日、新生チームEYESの隊長となったフブキとムサシは、久しぶりの再会を楽しんでいた。 だがそこに、宇宙から巨大な戦艦が飛来。強力なロボット怪獣を放ち、宇宙ロケット基地を攻撃する。 ウルトラマンコスモスがあらわれ、破壊を防ごうとするが、同時に出現したウルトラマンジャスティスに攻撃され、コスモスは消滅。ロケット基地は、爆散してしまう。 突如襲来したその巨大航宙船は、将来的に宇宙の秩序を乱す可能性のある有害な生物を抹殺するようプログラムされた自動兵器であった。 人類は、「宇宙正義」により、有害種であると認定されたのだ。 機械知性は、一方的に、人類を殲滅することを宣告し、一切の交渉を拒んだ。 この人類消滅の危機に対し、各国、とくに米国は、徹底抗戦を決意。 防衛軍、米軍、ロシア軍を主軸とした戦力−−主に攻撃衛星や原潜から、レーザーや核ミサイルが一斉発射される。 だが、それは全く効果がなかった。襲来したロボット怪獣により、地球の都市は次々と破壊されていく。 「なぜコスモスは、人類の味方をする?」 ウルトラマンジャスティスは、地球上で女性の姿をとり、疑問を解消しようと観察をつづけていた。 彼女は、かつて、人類と似たような種属を殲滅しようとしたが、猶予を与えたことがあった。 しかし、その種属は、サンドロスという邪悪な怪獣となり、結局はジャスティスとコスモスによって撃破されたのだ。 この、過去の苦い経験から、彼女は、もはや人類には猶予を与えないと決断し、機械知性と共闘して、地球軍やコスモスに矛先を向けたのである。 フブキ隊員の声にも、耳を傾けようとしないジャスティスだが、ある日であった少女との交流が、彼女の頑なな心にひとつの転機をあたえようとしていた。 そして、開始された機械知性軍による一斉攻撃。 都市を破壊するロボット怪獣軍団に対し、地球の怪獣、リドリアス、ボルギルス、呑龍(ドンロン)などが立ち上がり、果敢な戦いを挑む! みな、かつて自分達を助けてくれた人類や、コスモスのために、戦っているのだ。 そして、彼女の見知った少女もまた、ガレキの下から愛犬を救おうと、自らの危険もかえりみず、必死に頑張っていた。 「なぜ、他者のためにここまでするのだ?」 ジャスティスの胸のうちで、人類に対する評価が変わりつつあった。いま、彼女は、なぜコスモスが地球の怪獣と、人類を守ろうとしたのか、理解しつつあったのだ。 いっぽう、消滅してしまったムサシとコスモスをよみがえらせるために、旧チームEYESの面々や、ギャシー星人のシャウたち、チャイルド・バルタンまでもが、ムサシの郷里へと集まっていた。 彼らの想いは、はたしてコスモスを復活させられるのか? 防衛軍と新生EYESは、機械知性軍による、人類殲滅を、阻止することができるのだろうか? そして、ウルトラマンジャスティスは−−! |
まあ、それはおいといて。 キャラ的には、ジャスティスの人間版・ジュリが、これまでにないヒロイン像で、素敵である。 漆黒の衣装をまとった美女で、無表情、かつ鋭い視線が印象的だ。 冷酷に人類抹殺を試みるかとおもえば、1匹の小犬に心動かし、自らの信じる「正義」に疑念を抱き、動揺する。 そんな、複雑な背景をもった神秘的な異星人女性である。彼女とEYES、ムサシとの等身大レベルでの葛藤なくして、本作は成立しなかったといえよう。 人間版が女性なのに、変身後のジャスティスは男性っぽいというパターンも、これまでの円谷にはなかったのでは。 映像的には、敵・機械知性の擁する、惑星殲滅用の巨大航宙戦艦が、SF特撮好きにはたまらない出来である。この巨大戦艦が火星の軌道上を通過する場面などは、SF映画の面目躍如たる名場面だ。 今回は、メカ描写にも非常に力が入っている。敵の大型母船や、攻撃用の降下艇、各国軍の戦闘機、ミサイル、潜水艦、攻撃衛星など、多数のメカが登場する。 機械知性軍との宇宙空間戦、空中戦は、とても見ごたえがある。弾道ミサイルの軌道は、ちょっと不自然だったが、メカ好きにはたまらん。 怪獣は、前回のレイジャのような怪獣らしい新怪獣は見れないものの、機械知性軍のあやつるロボット怪獣が、3種もの形態を有しており、楽しませてくれる。 ド派手な都市破壊シーンもだが、合体したり、大型化するなどして、徐々に手強くなっていく様子が、観客を興奮させる。 また、宇宙空間での戦闘描写もよかった。 ウルトラマン2人との凄絶な戦闘シーン、そして、大気圏再突入し、真っ赤に燃えながら、敵母艦と戦うウルトラマン! これは、全く新しい映像である。 また、今回、佳境に登場する新たなヒーローが、ある意味、円谷っぽくないデザインで、魅力的であった。あいつを主軸にした映画もみたい、そう思わせたほどに。 とくに、一方的に自らの「宇宙正義」を実行しようとする機械知性たちの姿は、現実世界をも想起させるものである。見終わってから、親子で、あるいは友人などと「正義」の意味について議論してみるのも、本作の鑑賞法として良いかもしれない。 アメリカやロシアという、実在する国家名称を用い、各国首脳が討論する場面なども、見ごたえがあった。こういう政治劇的描写は、ウルトラでは珍しいのではないだろうか。 設定としては、機械知性たちが、いわゆる<バーサーカー>の変化球のようで、おもしろい。はたして、誰が、宇宙正義の維持などというハタ迷惑なプログラムをもった兵器群を宇宙に放ったのか、などと考えると、作品を見終わったあとも、色々と想像力が刺激され、興味深い。 ただ、SF設定としては、コスモス復活のための理論−−「仲間の想いがムサシを蘇らせる」というのがメルヘン的で、SF理論とはいい難い点が気になる。画竜点睛を欠いたか。 とはいえ、ムサシの危機に際し、旧チームEYESの面々や、劇場版2に登場したシャウ(萌えよ)など、主要キャラクターが一同に会するというのは、ファンには嬉しい展開だ。 劇場版1作目から通して見れば、よりクライマックスでの感動が増すこと間違いナシである。 とくにわたしは、1作目から劇場で見ているので、「久しぶりの再会」というキャラクターたちの心情に、完全に感情移入し、不覚にも目頭を熱くしてしまった。 こういう、いわば同窓会的なキャラの使い方は、実際に長いあいだ継続された番組だから可能なことであり、長編を書くさいには参考とすべき技術であろう。 |
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