TVでおなじみのウルトラマンコスモスの、映画版2作めである。(とはいっても、初めて見る人にもわかりやすいから、大丈夫だ) ウルトラマンというと、怪獣モノというよりヒーロー色が強い印象があるのだが、本作は、実に堂々たるSF怪獣映画となっており、怪獣好きとしては、必見の一作となっている。 サイパンや北九州でのロケも、壮大な世界観を構築するのに多いにやくだっており、SF怪獣映画らしい雰囲気がよくでていて、とても良い。 というか……カッコイイ宇宙怪獣が大群ででてきたり、ラフィール殿下っぽい少女が怪獣と一体化して宇宙怪獣を迎撃したり、南国サイパンで展開される少女と主人公のほのかな恋愛とか、地球規模のエネルギーシールドとか、新たなウルトラマン登場とか、アメリカ警察が本物のM16ライフルを構えたりとか……、とにかく、派手で、もりだくさんで、燃える映画なのである! |
ウルトラマンコスモスと別れた春野ムサシは、チームEYESをすでに辞職し、宇宙飛行士になるという夢を実現していた。 そんなある日、遊星ジュランの調査におもむいたムサシは、守護獣が無残に殺されており、緑豊かだった星が砂漠化しているのを目撃。そして、宇宙怪獣・スコーピスの襲撃をうける。 スコーピスは、自然が豊かな星を大群で襲っては滅亡させる、おそるべき怪獣兵器なのである。 なんとか地球にもどったムサシは、友人の結婚式を祝うため、サイパンへやってきた。 美しい夕焼けの海で、ムサシは、人魚のような美しい少女を目撃する。 少女の名は、シャウ。かつて、故郷の星をスコーピスの大群によって滅亡させられた異星人である。彼女らギャシー星人は、ふたたび故郷の星に生態系を復活させるため、ひそかに地球の海底に移住し、ブルーエリアという広大な疑似空間ドームをも作り上げていた。だが、生命の合成は難しく、未だにかれらの星の生態系を復活させられるみこみはなかった。 そんなおり、怪獣兵器スコーピスの1頭が、サイパン・ロタへと上陸。リゾートホテルを破壊し、光弾を乱射。パニックに陥るアメリカ人を尻目に、市街を壊滅状態へ陥れる。 少女、シャウは、海底怪獣レイジャと融合し、スコーピスと激戦をくりひろげるも、とうていかなう相手ではなかった。このままでは、スコーピスの本隊が地球に押し寄せるのは時間の問題だ。 この危機に、海洋怪獣専門のチームとムサシ、そして防衛軍は互いに協力し、スコーピス撃退の方法を研究する。 それは、海底怪獣レイジャの放つK2電波を、地球規模で展開し、バリアーにするという壮大な防衛計画だった。 だが、そのためには、海底にひそむギャシー星人の協力が不可欠だった。ムサシたちは、海底に築かれた、ギャシー星人の壮大な疑似空間を訪れる。 そこには、地球とは異なる、もうひとつの世界が広がっていた……! はじめてムサシと握手し、いくばくかの言葉をかわすことで、シャウは、地球人と交流することを知りつつあった。 だが、ギャシー星人の青年ジーンは、かたくなに地球人を拒み、ムサシを殺害しようとまでする。 スコーピスの大群は木星圏を突破、アステロイド・ベルトを粉砕し、急速に地球へと迫りつつあった。シールド完成のためには、ジーンの協力が必要だ。 ムサシは、戦いではなく、対話をこころみることの大切さをジーンに訴え、なんとか協力してもらおうとするが……。 |
海底怪獣レイジャは、シャウやジーンと融合合体し、敵と戦う。そのしなやかで敏捷な動きは、これまでの日本の怪獣のイメージを遥かに凌駕している。拙作の獣鬼兵バムソードやラクシャーサは、こんな動きで映像化してもらいたい! そういえる怪獣映像に、ようやく巡りえたという感動をおぼえた。 海上をとぶチームSEAの戦闘機の直下から、海をわって出現するレイジャ、シャウと合体し、砂浜で身をもたげ、飛翔するレイジャなどなど、海洋生物らしい滑らかな動きと生物感にあふれ、実にカッコイイ。 怪獣兵器スコーピスも、最初は、なんだかレギオン+ガメラみたいだと思ったのだが、動いているのをみると、そのかっこよさにほれぼれである。 まず、翼を展開した高速形態での機動性が、すごい。まるで戦闘機のように素早く宇宙をとびまわり、地球の空で、レイジャと激しい空戦、それも編隊での空戦を展開する! これまで、このように複数の怪獣が、リアルな空気感のなかでドッグファイトを演じる映像はなかった。このような斬新な怪獣戦闘のビジュアルをみることで、まだまだ日本の怪獣には可能性があることをわたしは実感した。 着陸したスコーピスは、一転、重戦車のような重量感があり、怪獣らしい風格に満ちている。 角から破壊光線をまきちらし、瞬時に市街をカイメツさせる。 その破壊力は、かのキングギドラにも引けをとらない。しかもスコーピスは、数十頭も襲来するのである! このスコーピス軍とチームSEA、チームEYES、防衛軍空軍、そして2匹のレイジャとのめまぐるしいほどの大格闘は、見ていて、実に爽快であり、ため息がもれるかっこいい映像の連続であった。もちろん、最後には、コスモスたちが登場するのである……! サイパン、北九州、シールドジェネレータ基地などで、コスモスTV本編ではあまり見られなかった都市破壊シーンをたっぷりみられるのも、非常に嬉しい。実に、怪獣映画らしいつくりであるといえる。 あと、米国警察のパトカーがスコーピスの暴れる市街に急行し、警官たちがM16をすばやく構える映像も、個人的に、ヒジョーに燃えた! 実写ウルトラで、こんな画面がみられるとは。ヤンキー魂をみせてもらったぜ!(爆) 異種属と理解しあうことの難しさ、これは、多くのSFで中心的な主題とされるものであり、本作は正面からその難題にいどんだ意欲作といえよう。 しかしなんといっても、シャウである。 海底にきずかれた南国ちっくな疑似世界にとじこもった異星の少女シャウは、最初は感情表現が下手で、孤独感にあふれていた。そんな彼女が、ムサシとの交流をへて変わっていく。おそらく、恋愛めいた感情もいだいていたのではなかろうか。この過程が、なんだかとってもスペオペちっく。 とくに、結婚式を祝うムサシたちの真似をして、シャウがたったひとりでシャンパンを振りまいてはしゃいでいる場面は、故郷を滅ぼされた彼女の孤独感をうまく表現した名シーンだとおもう。 そんな少女が、怪獣と合体して宇宙怪獣と戦うのである。なんだか、第三世代型獣鬼兵みたいじゃないか。ヒジョーに、燃える展開である。未成熟なボディーラインのみえるタイトな衣装とあいまって、ヒジョーに良いッ。ブハッッ(吐血) ……本作は、さまざまなSF要素のつまった盛りだくさんの怪獣映画といえる。難解なSF理論をふりかざした本格SF映画ではない。しかし、スペースオペラ的といおうか、娯楽SFらしい爽快感にあふれた傑作である。 舞台が南の島というのも、嬉しい。怪獣映画には、南の島が、よく似合う。 |
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