ゴジラxメカゴジラ

「ゴジラxメカゴジラ」(2002年、東宝)


 東宝ロボット怪獣のなかでも最も有名な存在、メカゴジラ。
 本作は、そのメカゴジラを、21世紀のゴジラ映画にふさわしい最新技術とSF設定で映画化した、みごたえのあるSFメカ活劇である! 孤独な女主人公や、メカゴジラの戦闘描写が最高にかっこよい。兵器、自衛隊、ロボットものが好きなら、必見である!

 また、随所に、ゴジラというSF作品の設定を上手く解釈し、とりこんである点も、SFとしてみどころがある。すなわち、アイディアで勝負している作品であり、よく考えられているといえる。
 本作においてはじめて、「なぜメカゴジラはゴジラの形をしているのか?」という疑問に対するSF的な回答が明確に示された。
 SFメカ、ひいてはSF設定は、物語上、科学設定上の必然性があってこそ、創作されるべきである。本作は、その意味において、すばらしい模範となっている。

物語
  「ゴジラ2000」以降のゴジラは、全て、第1作「ゴジラ」(1954年)の続編という設定で、それぞれ独立した作品として、制作されている。たとえば、昨年の「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」と本作とは、全く関連性がない。
 中でも本作は、さらにユニークな世界観である。初代ゴジラの出現以降、ガイラ、モスラといった、ゴジラ以外の怪獣も日本をたびたび襲っている、という設定なのである。

 これにより、1966年、対特殊生物専門の自衛隊、<特生自衛隊>が設立されている。
 特生自衛隊は、対怪獣兵器として、メーサー砲車を主軸とし、幕僚幹部から直接に指揮をうけ、怪獣の死体処理部隊をも保有するなど、第四の自衛隊ともいえる、特殊機関なのである。

 本編の主人公は、この特生自衛隊の若き女性自衛官、家城茜。
 天涯孤独、他人を信頼することを知らない彼女が、他者と理解しあえるかどうか、そこがみどころのひとつである。

 茜は、1999年の対ゴジラ戦闘で、メーサー砲車を指揮していたが、事故により、上官を死なせてしまう。以来、彼女は、心に深い傷を負ってしまい、ますます周囲から孤立していく。

 一方……。
 他の特殊生物ならともかく、ゴジラという存在は、別格である。通常兵器では、勝ち目がない。
 そう考えた特生自衛隊は、館山沖で、初代ゴジラに関連する「ある物体」を回収し、「3式機龍」を建造する。

 「機龍」は、人工筋肉およびDNAコンピュータを搭載し、最新の生体ロボット工学により、ゴジラとの格闘戦もおこなえるほどの滑らかな動作を実現した遠隔操作式の多目的兵器である。
 加えて、ミサイル、ロケット、レールガンなどの兵器のほか、対象物を絶対零度に凍結させ、原子レベルで粉砕する超兵器「アブソリュート・ゼロ」を搭載しており、これならゴジラに勝てる! と思われた。

 やがて、2003年。左遷され、ひとり黙々と自衛隊で訓練をつづけていた茜が、機龍部隊に配属される日がやってくる。だが、上官を死なせた茜に対する仲間の視線は冷たかった。
 むしろ、茜は、機龍開発チームのオヤジ(主人公だってば)に好意をもたれていた。しかし、部隊内での不和は、解消されないままだった。

 そんなとき、ゴジラが再び上陸。機龍隊は、満を持して出撃する。
 戦闘時、内部にきわめて高いGがかかるため、「機龍」は遠隔操縦式である。オペレーターとして選ばれた茜は、輸送機「しらさぎ」上から、必死に操縦する。猛攻撃をくわえる「機龍」に対し、なぜかゴジラは反撃しない。そして、ただひと声、咆哮した。

 同時に、「機龍」が機能を停止。あろうことか、機龍隊の輸送機を攻撃しはじめる。

 「機龍」には、その基本構造に起因する、重大な欠陥があったのだ−−!

 この事故により、横浜・八景島近辺は、壊滅。
 「機龍」開発を推進した内閣の総辞職のうわさすらささやかれる中、開発陣は、総力をあげて、「機龍」の欠陥を修復する。

 だが、ふたたび「事故」が発生しないという保障はない。「機龍」への信頼は失われかけていた。
 そんななか、またもゴジラが出現する。出動要請をしない首相に対し、機龍隊は、いかなる行動をとれるのだろうか。そして、「機龍」は、ほんとうにゴジラに勝てるのだろうか?

特撮的みどころ
 メーサー光線で雨が蒸発する描写など、東宝特撮の伝統・メーサー砲車の活躍ぶりも、もちろん見ごたえ十分である。本作の90式メーサー砲車は、かの66式メーサー殺獣砲車の発展型であり、オールドファンには感涙モノであろう。
 メーサー車は自走式でなく、牽引式であり、機動力が低い。ゴジラに近接しての砲撃は、きわめて危険であり、観ていて面白い。

 だが、なんといっても「機龍」、つまりメカゴジラの描写のかっこよさにつきる。
 最先端のVFXと伝統的な特撮技術とを理想的なかたちで融合させ、全長60メートル・重量40000トンもの巨大な機械のドラゴンが、これまでにない大格闘を展開する。これは興奮する!

 対特殊生物ミサイル多連装ランチャー、680ミリ多連装ロケット・ランチャー、二連装メーサー砲、連装レールガン2門、そして近接戦用のメーサー・ブレード、最終兵器たる「アブソリュート・ゼロ」。

 全身、武装のかたまりである。中盤、これらの武装を一斉発射しつつ、市街を進撃するメカゴジラの姿には、非常に興奮させられる。
 その姿は、歩く巨大戦艦とでもいえようか。展開される圧倒的な弾幕に、陶酔感すら覚えてしまう。
 バーチャロンフォースにおいて、わたしはボックス・ダンの少ないミサイル塔載量に不満をおぼえていたものだが、このメカゴジラの圧倒的なミサイル、光線の弾幕は、その不満を一挙に解消するほどの迫力があった。

 また、ゴジラとの戦闘においても、零距離からミサイルを発射し、そのミサイルが高G旋回をとげ、次々とゴジラに着弾するなど、斬新で迫力のあるメカ戦闘描写が続出するのである。

 空中切り離しからの高速着陸シーン、全身のロケットノズルをふかしてのゴジラとの高速肉弾戦などなど、随所で、これまでの東宝メカ怪獣にみられなかった、空前絶後の超高速機動戦が展開される。

 近接戦闘も、ゴジラとくんずほぐれつ、高層ビルをなぎ倒し、メーサーブレードで斬撃を加え、大迫力である。とくに、兵装ユニット強制排除後に、格段に機動性能があがり、連続近接攻撃でゴジラを窮地におとしいれるあたり、メカ怪獣ならではの名場面といえるだろう!

 また、ミサイル、光線の画面上の効果にも注目である。
 光線といっても稲妻状のビームと、パルス状の連続型のビームとでは形態が異なる。
 また、爆発化学エネルギー兵器であるとはいえ、無誘導であるロケット弾と、誘導されるミサイルとでは、弾道が全く異なる。

 今回のメカゴジラをみていると、その相違がよくわかるのである。
 これだけの兵装を一斉に展開してくれる怪獣はなかなかいない。本作では、そうした視覚効果上の各種兵装の差異にも注目したい。

 さらに、歴代メカゴジラで初めて、本物のゴジラなみに長い尻尾を装備している点も、外観的なかっこよさの演出に一役かっているとおもう。

 手前味噌のようで恐縮だが、拙作「サイバードラゴン」のイメージに、現時点でもっとも近いロボット怪獣。それが、今回のメカゴジラなのである! わたしは、本作のメカ戦闘描写の新鮮さ、そして迫力に、非常に感動したッ。
 
SF創作的みどころ
 今回の機龍の、メカゴジラというより、サイバーゴジラ? とでもいうべき構造、設定が、まずSF的に面白い。現実のロボット工学の進歩も考慮に入れているあたり、勉強のあとがうかがえ、非常に良い。
 また、ネタバレになるので書かないが、初代ゴジラの設定をふまえ、実に上手いアイディアをもりこんでいるのである。全体的に本作は、アイディア勝ちの作品といえよう。

 また、遠隔操縦式のロボット戦闘で、はたして感情移入できるのか? と思わせるが、これも、物語後半で、ドラマ展開をもりあげるための仕掛けとなっており、実にみごとである。
 後半、ついに戦友を信じることを知った茜が、放射線と強大なGに耐えつつ機龍とともに戦う姿には、ドラマとメカ描写の、完璧な融合がみられたといっても過言ではない。

 メカ描写は、難しいものである。メカの性能をきっちり視聴者にみせないと魅力的なメカとはならないが、物語上の必然性がないのにメカ描写をやっても、冗長な展開となってしまう。
 本作は、メカゴジラにからむSF設定が非常によく考察されており、それが作品のテンポのよさ、展開の意外性につながったといえる。

 特生自衛隊や、機龍という超兵器を保有することについての周辺各国への政治的配慮など、そうした面でも、本作は描写がなされており、リアリティの追求を狙っているようである。現代日本を舞台とするSFである以上、これは必要なことであり、その姿勢は高く評価したい。

 また、ミリタリー的には、自衛隊の撮影協力がえられているため、随所で実物の護衛艦、装甲車、戦車などがみられるのも、よい。90式戦車が高速で走りぬけるさまは、軍事マニアでなくとも、興奮させられるだろう。
 F2戦闘機が、避難民の背後の夜空で、つぎつぎと撃墜されていく絵は、迫力があった。
 また、プロップだが、最新の「9ミリ機関拳銃」も画面にうつる。88式? 対艦ミサイルも市街戦でゴジラに使用されていた。

 ただ……自衛官が主役のひとりであるにもかかわらず、軍事組織らしい描写という点では、やはり平成ガメラ3部作、そして「ゴジラ・モスラ・キングギドラ〜」のほうが、それらしくできている感がある。
 メカゴジラ建造現場に子供がいたりするせいだろうか。周辺各国に配慮が必要となるような戦略兵器の建造に、子供が立ち会うことなどないと思うのである。このあたりの描写については、金子修介作品に一歩後れをとっているかもしれない。

 とはいえ、全般的に、本作は、メカゴジラがらみのSF設定、そして意外性のある物語展開に、学ぶところが多いといえよう。



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表紙へアブソリュート・ゼロ!!


2002.12.15.