ゴジラ(1984年版)

ぼく、他の獣鬼兵を治療したり、光学盾を展開したり色々できるんだよ
「ゴジラ」(84年版)(1984年、東宝)
 9年ぶりに復活した新生ゴジラ。初代ゴジラの直接の続編という設定で、ハードSF風に現実感あふれる物語が展開される。清水の原体験となっている作品。たった1匹で自衛隊を殲滅し、首都を蹂躪する姿は、まさしく怪獣王の名に恥じないものだ。

物語
 伊豆、大黒島。嵐の夜、噴火とともに巨大な何かが身をおこす。偶然、漁船船員がそれを目撃していた。
 1954年に両親をゴジラに殺された科学者、林田博士は、その目撃談をゴジラの復活を示唆するものと気づき、対応を練る。
 ほどなくして、ソ連の原子力潜水艦がゴジラにより撃沈される。NATOとワルシャワ条約機構軍の緊張が高まっていく。
 社会の混乱をおそれ、ゴジラ生存を秘密にしてきた政府だが、ついに事実を公表した。
 アメリカとソ連は、ゴジラに対し戦術核の使用を申し出る。首相は国内で核を使うことに躊躇するが、最後は政治家として理想的な判断を下す。
 そんなある日、ついにゴジラが上陸。自衛隊の警戒網も役に立たず、原子力発電所が壊滅する。林田博士は現地に飛び、ゴジラの帰巣本能を利用した対ゴジラ誘導装置の開発を急ぐのだった。
 ほどなくして、東京湾内を進行するゴジラの姿が自衛隊により補足された。我先にと避難をいそぐ都民が、各所でパニックをひきおこす。
 陸上自衛隊、航空自衛隊が、東京湾に大部隊を展開し、上陸するゴジラを迎撃する。だが、数発の熱線で、迎撃部隊は壊滅。ついに東京への上陸を許してしまうのだった。
 自衛隊にのこされた最後の手段は、首都防衛移動要塞T−1号こと<スーパーX>だけだ。対ゴジラ用カドミウム弾を塔載した空中要塞が、新宿副都心でゴジラと激戦を展開する!
 一方、戦いのさなか、ソ連核ミサイル衛星が誤って核ミサイルを発射してしまう。目標は東京のゴジラ! ソ連軍人カシリン大佐は発射を止めようとするが、ゴジラと自衛隊の戦闘にまきこまれ、殉職してしまう。もはや核ミサイルを迎撃できるものは米軍しかない!
 はたして、人類はゴジラに勝てるのか? 米軍は、ソ連の核ミサイルを迎撃できるのか? そして、林田博士の誘導装置は間に合うのだろうか? 

特撮的みどころ
 まず、東京湾での空自、陸自の迎撃戦がものすごい。攻撃機と戦車、ミサイルなどによる圧倒的な弾幕がすさまじい。そして、それらを一撃で全滅させるゴジラの圧倒的な破壊力に注目したい。これでこそ怪獣王である!
 だがなんといっても、本作の最大のみどころは新宿決戦であろう。自衛隊の空中要塞、スーパーXとゴジラの新宿での戦いが大迫力。中野監督の手になる爆発は、黒煙を多くふくむ重量感のあるもので、かっこよい。
 高層ビルを盾にし、膨大な火力と火力との激突が、大地を震わせる!!
 派手な爆発! 吹き飛ぶ高層ビル! すばらしい!
 この、空想超兵器という分野は、リアリティ重視の平成ガメラ体系では一切みられないものなので、ゴジラで楽しもう。この84年版ゴジラやビオランテも、かなり現実感がある設定でよく出来ているが、空想上の自衛隊の兵器が出てきて楽しい。
 架空の超兵器もまた、怪獣映画の大きな魅力なのである。

 初代ゴジラをみたあとに、これをみよう!!(本作では、2作めから<メカゴジラの逆襲>まではなかったことになっている。本作は初代の直接の続編という設定である)

SF創作的みどころ
 本作は、ややテンポは遅いものの、ゴジラという巨大な存在により、日本はおろか、各国がどのような影響を受けるか? という政治・軍事戦略的な描写が、非常に見ごたえがある。SF、とくにスペースオペラにおいては、大規模な災害や、宇宙戦争などを描くことが多い。そうした作品では、この84年版ゴジラのように、政治・戦略的に緻密な描写が求められるのである。おおいに参考になろう。
 ゴジラが原子力潜水艦を撃沈したことにより、NATO軍とワルシャワ条約機構軍との対立が高まっていくあたり、そして戦術核の使用について決然と判断を下すカッコイイ日本国首相のすがたには、感動せずにはられない。現実世界の政治家もこの首相くらいかっこよければ……ゴフゴフ。
 また、戦うメカニックの描写技術も、この映画から学ぶことができる。圧倒的な力を持つ敵に対して果敢にたちむかっていくスーパーXの勇姿は、まさしく戦う機械の鑑である。魅力的なメカを描くには、そこにいたるまでの話の流れで、メカの見せ場を作ってやることが大事だといえよう。
 むろん、搭乗員をかっこよく描くことも大事だろう。戦いの後半、スーパーX搭乗員の名台詞が忘れられない。
「司令! カドミウム弾はもうありません! 通常兵器だけです!」
 ゴジラに対して通常兵器だけで挑むことは、死を意味する。だが、機長(司令)はこうこたえるのだ。
「かまわん。発進する!」
 まさしく漢(おとこ)!

 地味ながら、ハイパワーレーザー砲車もリアルなデザインで、良い味をだしている。
 また、スーパーXの姿勢制御のさいに、機体下部の熱核ターボファンジェットが傾いている。このような細かな描写にも注目したい。細部の描写が、魅力的なメカを生みだす!
   
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獣鬼兵図鑑には「鴨に似た味で美味」って書いてあるし(;;) でもがんばるもん!表紙へGクラッシャー!!


リュート「映画をみたら、さっそく怪獣の絵をかいてみましょ♪」