ご存知、世界で始めてのRPG、Dungeons & Dragonsを映画化した作品。劇場公開時は、200頭ものドラゴンが空戦をやるというのが宣伝文句になっていて、わたしも渋谷まで観にいったものだ。 ダンジョンとドラゴンというのは、要するにファンタジーを象徴する地下迷宮と龍をさしているのであって、本作でもそれが端的に描かれている。 あらためてテレビ放映で確認してみると、いかにも、ファンタジーのTRPG好きの監督が作った映画という風情である。悪の魔法使いである宰相が、強大なレッドドラゴンを使役する魔法の杖を求め、それを阻止しようとする女王は、ゴールドドラゴンの軍勢を繰り出す。主人公は庶民の盗賊や、まきこまれた魔法使い見習い、ドワーフ。政府の追跡部隊として、エルフもちゃんと登場する。 魔法学校の図書館、冒険者の酒場、盗賊ギルドといった「お約束」の舞台も、ちゃんと映像化されていて、ドワーフと仲が悪いエルフなどの描写もある。 当時は、TRPG好きなら必見、と紹介したものだが、後に公開された「ロード・オブ・ザ・リングス」三部作があまりに重厚長大で圧倒的だったので、今ではそうとも書きづらくなってしまった。 対照的に、同じファンタジー映画とはいえ、本作は、ファンタジーRPGの定番といえる要素をうまくとりまとめてあって、気楽に見れる娯楽作となっている。もう少し、シナリオに捻りがあれば、なお良かっただろう。 ドラゴン映画としてみると、流石に、王都上空で繰り広げられる無数のドラゴン同士の空中戦は見事である。ドラゴンの群れを実写化した映像は、ギャオス・ハイパー以外ではこれぐらいのものだろう。 とくに、悪の宰相に対して、王女自らがゴールドドラゴンに騎乗して空襲をかける場面などは、実に見ていてわくわくする。 宰相のたてこもる塔に対して斉射される、ドラゴンの火球ブレス! 反撃のファイアボール弾幕! そして、レッドドラゴンとの空中格闘! ただ難点を言えば、冒頭と、この佳境以外ではドラゴンが登場しないということであろう(笑)。 お話の一方の主要人物である王女が、主役のシーフやメイジ見習いと絡んでこないのも、いまひとつ盛り上がりを欠いた要因か。あと、平和主義、一般市民と魔法使いの平等を挙げる女王が、ドラゴンに乗って最初に宣戦布告するというのは、ハナシとして……いいのか??(笑) 思うに、監督がD&Dファンだからこうは作れないだろうが、わたしなら、主人公が最初から最後までゴールドドラゴンに騎乗し、悪の宰相側は、レッドドラゴンやワーグに騎乗したゴブリンなどにする。 題名にドラゴンと謳っている以上、それぐらいしてもよかったかもしれない。監督がRPGのD&Dの熱烈なファンとのことだから、それは無理だろうが。 ドラゴン映画の系譜としてみると、本作以外にドラゴンハート、サラマンダーあたりも挙がってくるか。絵でいえば、本作か、サラマンダーのドラゴンが、王道とはいえかっこいい。キャラとしてみると、騎士とともに冒険する「うしおととら」的なドラゴンハートが面白かった。ただあれは、映画としては、いまひとつ爽快感はなかった記憶があるが。 ストレートに、主人公がドラゴンに騎乗し、悪の宇宙怪獣などと近代兵器で撃ち合うドラゴン映画を作ってもらいたいものだ。ヘリコプターや戦車がある世界なのに最後は弓矢や斧でドラゴンと戦ったり、最後は悪の王子を倒して終わりとか、そういうのはちょっと困りものである。もっとハデにいこうぜ。 まあ、本作では、ドラゴンの力を、魔法の杖によって手に入れたものが勝つ、という筋書きになっており、ドラゴンの絶大な力、超自然的な存在感は表現されていたといえよう。この点でいえば、ただのデカイ動物にすぎなかったハリウッド版ゴジラよりは、「怪獣」「ドラゴン」らしいといえる。絵としては、ハリウッド版ゴジラのほうがドラゴンたっぷりであるが。 なぜアメリカ人は、ファンタジー映画だとちゃんと龍を描けるのだろうか? おそらく、舞台が現代だと、不必要なリアリティを盛り込みたくなってしまうのだろうな。ドラゴンや怪獣が、米軍ごときに負けるわけないじゃん! 本作は、龍の偉大さ、龍に騎乗して戦うということの楽しさ(の片鱗)を垣間見せてくれた点で、評価したい。三龍戦騎的には、ここがみどころである。ああ、龍に乗りたい……。 |