:この文章は、Kazuffinさんの <カードキャプターさくらのTRPG工房>に寄稿させて頂いたものです。
 <カードキャプターさくらのTRPG工房>では、無償で<カードキャプターさくらRPG>を配布されています。その解説という名目で作成されたため、この文章の題材は<カードキャプターさくら>が中心となっています。


空科傭兵団・出張版
TRPGってなに?


空科傭兵団師団長:清水三毛(特別寄稿)



原画:バープリさん、彩色・加工:清水三毛
 この電子拠点の題名にある、TRPGって、いったいなんのことだろう。
 そう思われる方も多いことでしょう。

 そこで!

 わたくしが解説いたしましょう。

 Table-talk Role Playing Game、の略称だといえば、少しわかってきたのでは。

 RPGってありますよね。ファミコンなんかで。

 あれは元々、プレイヤーがゲーム内の登場人物になりきって、その役を演じることが出来るゲーム、という意味なのです。
 (Play a role、で「役を演じる」というイディオムでしたよね)

 だから、ドラゴンク○ストや、ファイナルファ○タジーシリーズのゲームでは、プレイヤーは戦闘にしろ物語部分にしろ、多少、選択の幅が与えられています。

 ああしたコンピュータRPGの元祖が、この、TRPGなのです!



 コンピュータを使わないで、人間が審判・司会・進行をすることにより成り立っているRPG。それが、TRPGです。



 和製英語ですが、4,5人のプレイヤーと審判でテーブルを囲んでワイワイ遊んでいる光景が目に浮かぶようで、なかなか上手く名づけたものだと思います。

 本場アメリカでは、ペンシル&ペーパーなんて言うようですが、よく知らないです(笑)。

 全てのはじまりは、D&D(ダンジョンズ アンド ドラゴンズ)という、アメリカのTRPGDでした。たしか、1974年に発表されたものです。
 今までにない形のゲームだったので、爆発的な人気をよんだそうです。
 それが、いまでは様々な国産TRPGが作られ、遊ばれているわけですね。

 今でも主流は剣と魔法の世界、いわゆるファンタジー系ですが、他にも宇宙SF系や、完全にアニメのキャラになりきれるものなど、様々なTRPGがあります。


<TRPGは、ここが面白い!>


 なんといっても、人間が審判や司会をやるわけですから、プレイヤーの選択肢はそれこそ無限にあります。これがいいのです(^^)。


 例えば、コンピュータRPGだったら、宝箱が目の前にあっても、あなたのキャラクターが鍵をもっていなければ、開けられないでしょう。

 しかし。TRPGでは、剣で叩き割って開ける、ということだって可能です。

 コンピュータRPGにはプログラムという制限がありあす。しかし、TRPGにはそんなものはありません。ルール内であれば、プレイヤーが思いつく限りのことが出来るのです!


 また、コンピュータRPGだと、強力な敵が現れた場合、あなたが戦いたくなくても、戦わされてしまうでしょう。

 しかし、TRPGでは、あなたが演技力に自信があるなら、口八丁で敵を説得したりして、戦闘をさけることが出来るのです。


 それだけではありません。ゲームの本筋とは関係ないところで、街中で可愛らしい10才の魔法少女を口説いたってよろしいのであります(^^)。

 じっさい、前あそんだTRPGでは、いきなり登場人物と婚約した人もいましたし(^_^;)。
 その場のノリで、お話の方向やキャラクターの性格なんかが変わったりするのも、面白いですね。TRPGでは、アドリブが重要です。


<TRPGは、ここが厄介だ>


 まず、一緒に遊んでくれる友達がいないと困ります。
 あと、場所と時間もですね。
 プレイがノッってくると、優に6,7時間はたってしまうし、非常に騒々しくなるので、気をつかうところです。
 友人の家か、でなければ、公民館などを一日かりきって遊ぶといいでしょう。


 演技が必要というのも、嫌な人がいるかな。
 しかしこれは、気にしなくていいです。演技するのがいやなら、「……と、いいます」というように、客観的に発言すれば良いだけなので、問題ありません。



<さらなる詳細説明>


 より詳しくTRPGを知るために、実際のプレイの様子をみてみましょう。
 ただ説明ってのもつまらないので、物語仕立てで参ります。



登場人物


 ミケール・シミズ大尉:さくらーにしてTRPG愛好家。虚弱体質。

 ジョニー・ラコ軍曹:筋肉いっぱいの機動歩兵。TRPG経験あり。。

 サンダー・ガイラ二等兵:筋肉いっぱいの機動歩兵その2。TRPG未経験者。



<はじめてのTRPG! の巻>


 <ロジャー・ヤング2>は、巨大な宇宙戦艦だ。

 その船内では、いままさに機動歩兵たちが出撃しようとしていた。目の前にひろがる惑星クレンダス3に降下し、敵異星生物どもを叩き潰すのだ。

「緊張しすぎだな、新兵ども。あんなざまではロクにパワードスーツを機動できまい」

 装甲動力戦闘服の射出管の前で、おびえた小鳥のように集まっている兵士たちがいる。それをみて、シミズ大尉はかんがえた。これでは軍の備品であるパワードスーツを無駄に破壊されるだけだ。

 次の瞬間、大尉はスペースチタニウム装甲でも砕けそうな大声で怒鳴る。

「どうした、エテ公ども! そんなことで、くそったれなアラクニドどもに熱核手榴弾をブチこめるのか! キャップトゥルーパー部隊の名がなくぞ!」

 傍らにいた、実戦経験のあるらしいたくましい兵士が口添えする。刈り上げた金髪と赤銅色の筋肉がたのもしい青年だ。

「大尉。怒鳴るよりも、自分なら、緊張をほぐすほうがよろしいと考えます」

「むっ! なるほどな! で、ラコ軍曹、貴様ならどうする!?」

「はっ。ここはひとつ、<カードキャプターさくらTRPG>などを遊ばれるとよいのでは?」

「むっ! なるほどな! いささか無理のある展開だが、名案だな軍曹! さっそく、<カードキャプターさくらのTRPG工房>から、基本ルールをダウンロードしろ! ちゃんとKazuffin殿にお礼のメールをだしておけよ!!」

 ラコ軍曹の返事は、連邦宇宙軍式の完璧な敬礼であった。

「サーイェッサー!」



 すぐに準備はできた。サイコロを幾つか用意し、シミズ大尉はプレイヤーであるラコ軍曹と、新兵代表であるサンダー二等兵の前に座った。

 パワードスーツの反重力ジェネレータを机代わりにして、紙、鉛筆、サイコロを配る。

「この紙が、キャラクターシートというものだ。そこに、お前達が演じるキャラクターのデータをかきこむのだ。データは、サイコロで決める」

「はっ、自分は、もうキャラクターを創りました。最初なので、木之本さくらでやりたいと思います。大尉どのはどんなキャラクターを?」

「サンダー二等兵。大尉は、GM(ゲームマスター)といって、審判・司会・進行役なのだ。まあ、映画の監督のようなものだ。だから、大尉が担当するのは、我々以外のキャラクター、つまり敵クロウ・カードや一般市民などだ」

「見事な説明だ、ラコ軍曹」

「はッ! 光栄であります!」

「そして、そうした、君たちプレイヤー以外のキャラクターを、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)という。覚えておけ。お前らが演じるキャラクターは、PC(プレイヤーキャラクター)というのだ。要するにPCというのは、お話の主役だな」

「サーイェッサー! 覚えておくであります! で、自分達はなにをすればよろしいのでしょうか?」

「キャラクターが出来ているなら、ゲームをはじめよう。こんなこともあろうかと、簡単な脚本を作っておいたのだ!」

「大尉、さすがにスキモノですな」

「黙らんか、軍曹! 貴様こそ部屋に等身大さくらちゃんカットアウトを飾っているだろうが!」

「連邦宇宙軍機動歩兵として当然であります、大尉!」

「よくいった軍曹!」



 かくして、ゲームは始まる。といっても、単にGM(シミズ大尉)が、プレイヤーたちに状況を説明するだけである。簡単なものだ。ではここからは、リプレイ(議事録)形式でみていこう。


シミズ大尉(GM):「では始める。今日から二学期だ。さくらが目をさますと、すでに遅刻ぎりぎりの時間だが、どうする?」

ラコ軍曹(ケロ役):「自分はケロを演じるので、さくらをおこすであります。『さくら、はよおきんと遅刻するでー』」

サンダー二等兵(さくら役):「はっ……えー、……『わかってるわよケロちゃん(裏声)』」

GM:「貴様ァ! 栄えある機動歩兵が、裏声なぞ使うなァ! 女性の演技が恥ずかしいのなら、客観描写か普通の男言葉でしゃべってもよいのだッ!」

さくら:「イエッサー! では、自分は慌ててランドセルを背負い、学校へいくであります!」

ケロ:「自分としては、ちゃんとさくらちゃん♪ らしく演じてもらいたいものですが、仕方ないですな。では、自分は家でゲームをしていましょう」

GM:「む。なかなか良い導入だな! さて、さくらが学校へいくとだな……」




 なんと、教室の机が、全て校庭につみあげられているではないか。放課後、さくらはケロと連絡をとり、クロウカードの仕業ではないか? と話しあうことにした。


さくら:「大尉、自分が自由に行動すると、原作とは違うストーリーになってしまいます。よろしいのですか?」

GM:「当然だ。状況により自在に変化する物語進行こそが、TRPGの醍醐味なのだからな! おっと、知世が新たなる戦闘衣装をもって追いかけてくる。『ぜひともこれを着てくださいな〜!』」

さくら:「今は忙しいので、手をふってその場を立ち去ります(笑)」

ケロ:「もう現場に到着したころでありますか、大尉。では、自分はさくらと合流します。そうだ。クロウカードの気配を感じとれないものでありますか?」

GM:「よし。気配を感じることができたかどうか、<判定>を行ってもらおう。さくらも行ってよいぞ。……なんだその顔は、サンダー二等兵。

 ああ、<判定>をしらんのか。判定というのはだな、ゲームの中で、ある行為が成功したかどうかを確かめることをいうのだ。これに失敗すると、たいてい悪い結果がおこる。コンピュータRPGと違って、いつでも何でも出来るのだから、ガンガン判定の申し出をGMにするのが、TRPGのコツだぞ!」

さくら:「はッ、了解! で、どのように?」

GM:「ほとんどのTRPGでは、GMが振ったサイコロの目の合計よりも、プレイヤー側のサイコロの目が上回れば、その行為が成功したことになるとか、そういった感じだ。このゲームでは……(実際の判定方法はさくらTRPGのルールを参照してください)」

(さくらとケロのプレイヤーは、サイコロを転がした。GM側の目を遥かに上回った!)

GM:「成功だ。では、ふたりは奇妙な気配をかんじる」

さくら:「ケロちゃん、これは……!」

ケロ:「……クロウカードの気配や!」

GM:「むっ、だいぶ板についてきたな、サンダー二等兵!」

さくら:「光栄であります、大尉どの(笑)」

GM:「では、巨大なアメーバのような、黒い流動体が夜の校庭から沸きあがってくる。それは、問答無用でさくらたちに襲いかかってくるぞ! 戦闘開始だ!」


(解説)
 TRPGでは、たいていの行為を成功させるには、判定に成功しなければならない。むろん、戦闘もである。というより、シミュレーションゲームを祖先にもつTRPGでは未だに戦闘は大きな位置を占めるので、初心者プレイヤーは、まず戦闘時の判定方法を大雑把に覚えておこう。細部は、現場でGMが教えてくれるはずだから大丈夫だ。
 なお、本筋と関係ない些細な箇所では、判定を省略することもよくある。

 あと、状況が盛り上がっている場合、あまり判定させすぎると白けることがある。そうした場合、上手なGMはこっそり判定箇所を減らしたり、難易度を甘くするなどの調整を行ったりするものである。



 カードの精霊との戦闘は、知世(NPC)の協力もあって、終局に近づいた。さくらは封印の判定をおこない、見事に成功させた!


さくら:「汝のあるべき姿にもどれ! クロウ・カード!」

GM:「判定に成功したか。では、
 ……精霊は杖の先で、光の渦とともにカードに吸いこまれていく。やがて、封印が完了したカードが、さくらの足元におちる」

ケロ:「ようやった、さくら!」

GM:「知世がビデオカメラ片手に駆け寄ってくる。『大丈夫ですか、さくらちゃん!』」

さくら:「『ありがとう知世ちゃん。おかげで助かったよ』と、礼をいって、カメラにむかってVサインをだしておきます(笑)」

GM:「では、今回のシナリオはこれで終了だ。経験点は、……」





シミズ大尉:「どうだった、はじめてのTRPGは」

サンダー二等兵:「楽しかったであります! おかげで、すっかり緊張がとれました!」

ラコ軍曹:「これで、ごくつぶしの機動歩兵部隊と呼ばれずにすみそうだな、サンダー? バグどもを殲滅するぞ! ついてこい、出撃だ!!」


(終わり)







 如何だったでしょうか。

 だいたい、このような雰囲気で遊ばれるものです。こんな簡略化されたリプレイでは、いまひとつノリは伝わりにくいのですが。

 本格的なリプレイや、TRPGの解説本は、角川スニーカー文庫や、富士見ドラゴンブックなどからたくさん出ています。様々なTRPGのルールブックも、手軽な文庫で売られています。より深くきわめたい方は、そうした書籍などを研究されるとよいでしょう。

 さらに深く研究されたいなら、各種ホビーショップにあるゲーム専門店や、書泉グランデなどの大型書店のゲームコーナーをまわってみましょう。海外製の珍しいTRPGがいっぱい並んでいます。そういうTRPGはたいていセットで、豪華な箱に入っています。


 最後にちょっとした助言を。


 TRPGは、会話中心なので、時として混乱することがあります。GMは紙に、現場の簡単な地図をかいて説明すると分かり易くなるでしょう。とくに迷宮シナリオでは必須です。

 ガシャポン等のさくらちゃん人形を用意しておいて、戦闘時などに並べると、キャラクターの位置関係が分かりやすくなるし、盛りあがるのでお勧めです(^^)。





 仲の良い友だちを集めて、明け方までTRPGをするのは、他では味わえない楽しい経験です。ぜひとも、一度おためしあれ。

 ただし、周りに迷惑をかけないよう、十分気をつけてね(笑)。



文責:清水三毛


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