三龍戦騎


 「ここは三龍! 生命の躍動をこそ賛美する、森と海の世界!」
 ――三龍帝国に亡命した某人類学者の言葉

1、概略
門出の朝

 1−1、歴史背景

 かつて、人々は星々を渡る船を建造し、自由に恒星間宇宙を往来したという。

 しかし、それは遠い伝説の時代となった。天文学的規模の災厄<大浄闇>(だいじょうあん)の結果、汎銀河文明が崩壊してしまったのだ。現在、宇宙航行をはじめとする高度技術は失われ、人々は、故郷の星「地球」の存在すら忘れ去っていた。

 そんなはるかな未来。銀河の彼方の惑星アマミツヨで。

 大海洋にほぼ惑星全土を覆われたこの星で、かつて入植した地球人類の子孫をはじめとする知性種属の末裔は、どうにか生き残っていた。狂暴な自動兵器や野生生物が徘徊するアマミツヨで、人類の末裔たちを支えたのは、恐竜たちだった。
 アマミツヨ世界には、かつて地球では滅亡したはずの古生物が、数多く生存していたのである。

 それら恐竜の由来は、科学技術が大幅に衰退してしまった今日では、解き明かされないままとなっている。収斂進化の産物なのか、それとも太古の昔に何者かの手によって地球からアマミツヨに移入されたものなのか?
 真相はともあれ、アマミツヨ、ことに<大三龍帝政共榮圏>(だいみつりゅうていせいきょうえいけん)諸国の人々にとっては、今現在、恐竜たちが存在していることこそが重要だった。

 かつて、アマミツヨでは、<赤の嵐>とよばれる災害により、ほとんどの兵器、車輛、機械装置類が使用不能になるという惑星規模の事件があったからだ。これにより、自動兵器や敵国の軍勢と戦うために、恐竜は欠かせない存在となった。
 そしてなにより、アマミツヨの過酷な生態系を人々が生き抜くために、恐竜たちは必要だったのだ。

央天青の門


 現在、アマミツヨを二分する<大三龍帝政共榮圏>諸国と、<ファーグニル共和連合>諸国間での軍事衝突は、小康状態を保っている。
 しかし、国境沿いなど一部地域では紛争が頻発し、また、失われた科学文明の遺産をめぐる争いは絶えることがない。

 とくに、両勢力の緩衝地域として認められた中立群島海域<央天青>(おうてんせい)では、旧世界の遺産が多く発掘されるため、各国の勢力が入り乱れ、さまざまな事件が続発している。そうした場所を舞台に、<アラガミ師>たちが活躍する。

三龍帝国紋章
 1−2、ゲキとトモガミ
 アマミツヨの恐竜は、<マブイモチ>とよばれる人々と意思疎通し、高度な戦闘行動をおこなうことができるよう、遺伝子操作されているらしい。
 マブイモチのなかでも、高い能力をもつものは、生まれたときから自分の相棒たる恐竜とともに育てられ、<アラガミ師>として生きていく。彼女たちこそが、機械兵器を保有しない帝政共榮圏を、共和連合の侵攻から防衛する要といわれている。

 アラガミ師は、通常は、ごく簡単な火器を恐竜に搭載して戦うだけだ。火力、防御力ともに、共和連合軍の装甲車輛と戦うには不十分といわれる。
 しかし、アラガミ師は、強力な敵に遭遇した場合、自らの恐竜とともに、<アラガミ>とよばれる第二形態に変態(龍化)することができる。これは、共和連合軍の戦闘車輛どころか、大型艦艇にも十分に対抗できる、強力な戦力であると高く評されている。

 現代の我々にとって、アラガミに近いイメージをもつ存在は、神話のドラゴンか、怪獣映画に登場する強力な大怪獣であろう。とくに後者は本質的にもアラガミを思わせるものがある。

 アラガミやアラガミ師が、そもそも何と戦うために生まれた存在なのか、また、誰の手によって創造されたのか、今でははっきりしたことはわからない。アラガミは、星々の深淵での戦いに参加した「古の天龍」たちの末裔だとする説もあある。

 アラガミ師たちのほか、<シンテツ兵>も帝政共榮圏の重要な戦力である。
 シンテツ兵は、アマミツヨに生息する機械生命体<シンテツ>の戦闘種と共闘契約を結び、アラガミ師の補助戦力として活躍する。
 シンテツは、金属組織をもつ昆虫に似た機械生物であり、さまざまな火器や装備を選択できる。かつての<赤の嵐>の名残りや、強力な生体兵器には対抗できないものの、安定した性能が特色だ。

 アマミツヨは、全土の多くを海でおおわれた海洋天体である。
 アラガミ師のほか、河川や海辺を自在に往来する水棲人<カワアガニ>も、古代ワニや巨大亀に騎乗し、水中戦闘可能なアラガミ師として活躍する。彼女たちは、海棲人と地上人との仲介役ともなる。

森林
 陸を覆っている熱帯雨林では、<星覇>とよばれる、女性のみの獣人種属がその本領を発揮し、高い魅力と、白兵戦能力で敵を圧倒する。

 また、ガルナス帝国という爬虫人類の国家には、生体強化鎧をまとった戦士<竜撃士>になれるガルナス・ダガン、半機械の竜型兵器<蘇龍機>をあやつるガルナス・メイといった人種が存在している。彼らは、地上に残された旧時代の遺跡を熱心に研究し、高い科学力をもつ。
 しかし、情熱的で一直線な性格のため、星覇、アラガミ師、天魂といった女性主体の種属に主導権を握られがちで、いつの時代も、三龍帝国や星覇王国の重要な同盟軍とされてきた。

 かれらに共通する特徴は、いずれも、人間を超えた力をもつ恐竜や機械生物などと協力して戦うという点にある。かれらを<覡>(ゲキ)、相棒となる生物・兵器を<伴神>(トモガミ)という。

 覡と伴神は、連合軍の侵攻から共榮圏を守る戦士として、人々の尊敬を集めている。しかし、真の脅威は、宇宙からやってくる。かつてこの銀河を荒らしまわり、文明を滅ぼした<天魔>の襲来に備え、覡たちは日々の修練を怠らない。
 また、アマミツヨの各地には、いまなお、天魔の眷属、つまり強力な戦闘宇宙生物が人知れず眠っており、それらが覚醒した際にも、覡が戦いに赴くのである。

 このほか、食人性能をもつ無人の殺戮機械も、しばしばアマミツヨに出現する。

 PCとなる覡と伴神の敵は、連合軍や犯罪者のほか、そうした宇宙生物や殺戮機械だ。

 自分の相棒である<伴神>と力を合わせ、信頼を深めて、そうした敵と戦い、アマミツヨの平和を守る。これが、三龍戦騎RPGの基本遊戯形態である。

 1−3、PCの立場
 PCは、基本的に、帝政共榮圏の見習い軍人となる。

 帝政共榮圏、とくに三龍帝国では、アラガミ師の少女が一定の軍事教練を終えると、成人儀礼と実戦訓練をかねて、恐竜とともに一人旅におくりだす風習がある。彼女たちは、おもに央天青の訓練部隊に配属され、練習生として、現地の小規模な軍事衝突、希少生物種の保護、異種属間での紛争などの処理に任ぜられる。
 また、そうした新米アラガミ師の補佐役として、シンテツ兵、カワアガニなどの傭兵や商人などが、軍やアラガミ師に雇われることは、よく見られる契約形態である。

ウツロヒ宿の光景


 PCは、こうした新兵として、軍や市民からさまざまな厄介ごとの解決を依頼される。央天青の帝国方面軍は、軍令部から見放されかけているのが現状であり、予算は、新米アラガミ師たちの月給を支払うだけで精一杯という状況である。
 事実上、PCは、自分たちで稼がないと、装備代金や、相棒である恐竜やシンテツ(伴神という)の維持費を捻出することができない。任務がない期間中は、副業として、民間から依頼を受けることをも、央天青方面軍は認めている。そもそも、共榮圏では、軍民の区別が曖昧なので、あまり問題とならない。

 こうした背景から、(一部の例外をのぞいて)アラガミ師になれるのは、10歳から15歳までの女性だけである。シンテツ兵に関しては、性別や年齢についての制限はない。



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清水三毛 2005.6.改訂