三龍戦騎


気候、風土
 ●1、気候
 アマミツヨは、海洋面積が大きい天体である。一説によると、地表面の8〜9割が海洋で覆われているという。陸地のほとんどは島嶼であり、赤道付近に集中しているため、三龍帝国をはじめとする共榮圏各国のほとんどは、熱帯、亜熱帯気候区に属している。

 三龍帝国は、そのほとんどが熱帯・亜熱帯気候区にあり、気温の年格差が小さく、年間を通して温暖である。年平均気温は23度前後。年間降水量は2,000mmを超える。台風が多いため、共榮圏では、低い建物が多い。近代的な建材はないため、木造・サンゴ造・石造の建築物が多く見られる。

 共榮圏では、毎日のように三龍豪雨(地球でいうスコール)があり、降水量が多い。日射量も多いため、おもに常緑広葉樹の熱帯雨林が形成される。
 土壌は養分に乏しい地域が多いため、農業はイモ類の栽培が中心である。また、特産物として、ニガウリ、竜果サボテンなどの独特の植物が見られる。
 主食はイモ類が多いが、地方によっては稲作も盛んであり、三龍帝国では、米食はそれなりに広まっている。

 帝国外延部では、熱帯モンスーン気候や、サバンナ気候区に属する地域もある。それら地域では、夏の雨季と、冬の乾期にわかれているのが特徴。サバンナ気候区の地域では、樹木がまばらな大平原地帯が広がっている。

 ●2、風土
 恐竜は家畜としても利用されるが、恐竜の肉を食べることは宗教的理由により禁じられているため、共榮圏に暮す人々のタンパク源は、海洋や河川の魚介類、恐竜卵、それに昆虫類である。
 気温が高いため、故郷の星で盛んだった「スシ」や「サシミ」は、ごく沿岸に近い地域をのぞいては食されていない。保存食や、加熱調理した料理が多く見られる。
 また、沿岸を離れると、保存料として香辛料を多用した、刺激的な料理が多くなる。

 共榮圏では、宗教的理由により、科学技術の不均衡がみられる。民間では、地球での中世レベルといってもよい技術程度で、例えば電化製品やプラスチックなどはほとんど利用されていない。しかし、軍、とくにシンテツ兵は、電子装置や精密火器を自在に操るのである。これは、共榮圏の特異な文化背景、歴史背景によるものである。また、民間でも、銃砲の類は、それなりに近代的なものが出回っており、荒っぽい世界であるから、人々はその扱いに慣れている。

 都市部をのぞけば、各地の集落は、龍神御嶽とよばれる精霊信仰の聖地を中心に構成される。
 御嶽は、祖先の霊や、自然精霊を祭る聖域であるが、明確に寺院などの施設があるわけではない。たいていは森そのものや、その中の自然石などがそれと定められ、現地の龍神司(りんがみツカサ、りゅうじんツカサ)によって守護されている。
 ツカサは、現在では地方領主として、軍事のほか行政や司法を担っているが、元来は、村落共同体を支配する女性神官であり、現在でも、地元の龍神御嶽において年間数十もの神事をこなすというツカサが多い。
 ツカサは成人したアラガミ師であるから、必ず女性である。アラガミ師の常として、老化が遅く、美貌を保つものが多い。地元では権力をほしいままにしている者もいる。また、広く共榮圏では、女性に特別な霊的な力があると信じられており、その力が一族の男性を守護するという民間信仰がある。
 ひとつの共同体は、辺境では200人程度、ふつうは数千人以上で構成される。
 対照的に、ガルナス・メイのガーグ宗王国では、荘厳なガーグ正教寺院(牙洞院)が、巨大な宇宙港のように林立し、多くの蘇龍機が離発着している光景がみられる。

 共榮圏の人々は、その暑さのため、あくせく働く気風はなく、ほとんどの人々は気楽に日々を過ごす。特に、午後は、2時間(日本語訳)ほど、昼寝の時間をとる習慣があり、無理をして自然に逆らわないという意識がある。

 産業は、第192工廠に依存しており、重工業などはほとんどみられない。主体は一次産業である。

 共榮圏には無数の島があるため、帝国政府でも、人口構成の詳細までは把握しきれていない。起源は不明だが、恐竜の生態系は、密林や海洋によって分断され、ジュラ紀・白亜紀といった年代別、地域別の生態系が比較的維持されている。もっとも、しばしば出現する<戦術生物>は、環境保全の観点からいっても大きな脅威であり、アラガミ師たちは、積極的にこれに立ち向かう。
 また、先進的な兵器をもたない一般の臣民であっても、共榮圏を侵略し、自然を破壊する者――すなわちファーグニル連合軍に対しては、敢然と立ち向かう気概をもっている。

 ●3、自然災害
 海洋面積の巨大さ、赤道を分断する大陸がないこと、これらの理由から、アマミツヨでは<環赤道海流>が発達し、浅い海で、多くの豊かな生態系が生み出された。
 しかし同時にそれは、地球ではみられなかった巨大な台風<豪嵐>の原因ともなった。
 豪嵐は、永久台風ともよばれ、消滅することのない強力な嵐として、赤道近辺を周回する。当然、その暴風圏では航空機や船舶は行動できないし、電波障害が生じ、無線なども使用できなくなる。
 豪嵐の接近により生じる災害から、人々や友軍部隊を守るのはアラガミ師の役目であり、三龍戦騎RPGの典型的な物語のひとつである。

 ときおり地底などから復活する天魔の眷族や、太古のマガツたちが大きな災害であることはいうまでもない。特に、強大なマガツが定期的に襲来する地域では、もはや撃退することができないため、豪嵐のようなものとして、人々が受け入れて生活する傾向がある。天魔は、一般市民にとっても絶対的な「敵」であるが、心情的にも、マガツを殲滅するのはやりづらいところがある。

 裂空花も、自然災害のひとつといえるだろう。これは、アマミツヨに適応した元・宇宙植物で、種子弾を成層圏まで打ち上げることができる。このため、高空にもどる手段として、天魂に利用される。かわりに天魂はこの花を守り育てる、一種の共生関係にある。
 本種は、高さ100mになる結晶質の花を咲かせ、10年かけて集光葉で太陽光発電を行い、その電力で、子房の高揮発性ガスをプラズマ化させ、種子弾を秒速5,000mで発射する。いわば生体電熱砲である。
 種子弾内部には、クラスター爆弾のように、種子が数十個はいっている。これは成層圏で散布され、ジェット気流によって全土にばらまかられる。

 うちあげの爆発半径は500mにもなるため、他種族はこの花の芽を駆除しようとするが、天魂は保護育成しようとするため、揉め事の原因となることがある。
 その場合、現地のツカサ(アラガミ師)が行政決定を下して決着することが多い。裂空花保護を認める行政決定がなされると、その地域の統治権は天魂に委譲され、元の住民は補償金をもらって他所へ移住することになる。現代日本で言うと、ダム建造のため、山村の水没が決定されるのと似ている。

 数百年に一度、本来の宇宙への打ち上げ能力を取り戻した大型種が生じることがある。その爆発規模は1メガトン、致死半径は18kmにも及ぶ。当然、同乗した天魂も残らず吹き飛んでしまうが、それでも……と、星界への帰還を夢見て、種子弾に乗る天魂もいるらしい。

 このほか、災害ではないが、熱帯性気候である共榮圏では、熱帯性疾患が猛威を振るっている。熱病、寄生虫病の類は特に多発する。全般的に医薬品が不足しており、奥地の無医村などに新米アラガミ師などが派遣されることがままある。また、微生物サイズの天魔の存在を示唆する報告もあるという。

 共榮圏には、数百年に一度、外宇宙から、<マレビト>が来訪する。半ば伝説となっているが、その来訪が予想される年には、大規模な歓迎の祭りが催される。彼らは大浄闇以後も、航宙船によって銀河をめぐり続ける旅人であり、共榮圏の人々に多くの知識をもたらすものとされている。マレビトの種属は様々。

 ●4、種属対立
 共榮圏内部でも、歴史的経緯などから、激しい種属対立がある。そこから生ずる紛争の解決にいたるまでの物語を描くのが、本作であるといえる。
 しかし、そうした人々でも、こうした自然災害や、ファーグニル軍の侵攻に対しては一致団結して立ち向かうのであり、そうした一面も、三龍戦騎RPGの一側面である。
 そして、究極の敵、天魔の再襲来にあたっては、ファーグニル軍と共榮軍すら、ともに協力して戦うことになるはずである。



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清水三毛 2005.8.